雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(96)





 韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(96)


 ジョムスンは何も言わず部屋に入った。
 ひた隠しにしてきたことを知られ、スンジャは落ち込んだ。
 クマはスンジャに訊ねた。
「ママ、おばあちゃん何かあったの?」
「あとで話すからシャワーを浴びて着替えなさい」
 クマは部屋に入り、スンジャは水を飲み、部屋に入ってジョムスンを気遣った。
 一時の興奮と混乱は鎮まり、ジョムスンは虚ろな目を壁に向け放心状態に入っている。
 移植の話はまだしていない。ジョムスンの様子を見ながらスンジャは悩んだ。

――どうせならついでに移植の話までした方がいいかな? いいや・・・やっぱりダメだ。この様子じゃ倒れかねないわ。

「お義母さん、寝てください。倒れちゃいますよ」
 聞いているのかいないのか、ジョムスンは微動だにしない。そのままぼそりと口を開く。
「クムスンは――何と言ってた? 何と? 人でなしが生きてたと聞いて・・・」
「・・・」
「答えなさい」
 ジョムスンは強い口調でスンジャを見た。
「会わないと――言ってました」
「・・・」
「会いたくないし、聞かなかったことにして――暮らしたいと」
「・・・」
「だから会ってはいないかと・・・」
「どこまで・・・話した」
「大した話はしてません。父親の死後、半年で母親が出たと・・・その程度です。ああ、もうひとつ・・・母親を死んだことにしたのはクムスンのためだと。逃げたというより、その方がいいから――お義母さんが決めたと話しました」
 
「いい匂いだな」
 シワンとソンランが部屋から出てきた。
「ちょうどいいところに来ました」とクムスン。
「そうか」
 テワンがシワンにビールを注いでやる。
「お義姉さんには私が注ぎます」
 クムスンは援助金のお礼を言った。
 ソンランは杯を受けながら答える。
「あれはシワンの貯金よ」
 シワンは上機嫌で乾杯の音頭を取る。
 乾杯の後、ソンランは言った。
「テワンさん、私たちの部屋でビデオを?」
「ああ」
「でしたら片付けなきゃ。布団は乱れてるし、缶が置きっぱなしだったわ」
「布団は知らないけど、缶は捨てました」
「いいえ、残ってた」
「ああ、2本飲んだっけ。すみません」
「それともうひとつ。ベッドで横になったでしょ。それはやめて。私たちのベッドよ。ビデオは見てもいいけど、ベッドは使わないで」
「わかりました。ほんと気難しいな」
「そんなことないですよ。新婚ですもの」
 クムスンがソンランの肩を持った。
「フィソンでさえ入りません。お義兄さんのほうがめちゃくちゃです」
 テワンは言葉を失う。
 クムスンはテワンを見て軽く咳払いした。
 シワンはボソッと訊ねる。
「クムスンさんに何かした?」
「何もしてないよ」
「いや、間違いない」

 クムスンは外に出た。椅子に座って空を眺めた。考え事に耽った。
 テワンが出てくる。
「義姉とつるむなんてな・・・!」
「なぜ、チャン先生のところに?」 
「どうしてそれを? また連絡が来たか」
「違います」
「なら、なぜだ」
「クマのことはさておき――それには感謝してます」
「・・・」
「野球観戦したあと、お酒も楽しませてくれて――チャン先生にも文句を言ってくれた。家族にもそれをバラしちゃうし」
「・・・」
「ありがとう、お義兄さん」
「そうじゃなく――思い切り笑顔を見せろ。そしたらもっと可愛くなるから」
「心にもないこと言って」
「弟は面食いだと言ったろ」
「元気を出せ。すべてうまくいくさ」
 クムスンは嬉しそうにする。
「だからって男に笑顔は見せるな。俺以外はみんなオオカミだ」
「しょってるわ」
 クムスンは呆れる。
「流し目もダメだ。意外とセクシーなんだぞ」
 今度は舌打ちする。
「全部、お得意のくどき文句なんでしょ」
「おお、よくわかったな」
「シラケちゃうわね・・・それより、クマに連絡しなさいよ」
 そう言って、クムスンは部屋に入っていった。
 テワンはつぶやいた。
「ジョンワン・・・お前はひどいヤツだ」

 ベッドの中でジェヒはクムスンの言葉を思い返す。

――あの人のことをご存知ですか? 
――奥様か? 
――ええ。知ってたら・・・どんな人なのか教えてください。

 ジェヒは寝返りを打つ。横向きになる。

――あっちへ行ってよ。
・・・
――プライドないの?
――今、何と言った?
――だから、ついて来ないで!

 天井向きに戻る。
「白菜、おやすみ」


 タクシーの中でヨンオクは思い返している。

――私、透析を受けてる時に、もしもショックが来たら――意識が戻らないことも?

 カンファレンスでキジョンはスタッフの報告を聞いている。
 ジェヒはそんなキジョンを見つめ続ける。
「・・・呼吸、18回、体温は37度でした・・・」
 目を離すと今度はキジョンがじろりとジェヒを見やる。
「昨日行った注射によって・・・」
 報告は続く。


 ウンジュは解せない思案に沈んでいる。
 帰宅したヨンオクが部屋に入ってくる。
「ウンジュ」
 びっくりしてウンジュは振り向く。
「ママ、帰って来たの?」
「今日だけ、一時帰宅よ。何を考えてたの。ジェヒさんのこと?」
「・・・ママ」
 ヨンオクはベッドの縁に腰をおろす」
「何?」
「いいえ。違うはず」
「・・・?」
「ありえないことを想像してたんだけど――話にならなすぎて、私自身が呆れるわ。いいの」
「・・・」
「何でもないって」

 スンジャはクムスンがやってくるのを待った。
 クムスンの姿が見えてくると手招きした。クムスンは走って近寄った。
「まだいたのね。おばあちゃんから電話が」
「それだけど・・・クムスン、大変なことになったわ。知られちゃったのよ」
「どうして? 叔母さんが話したの?」
「そうじゃないわ。まあ、最終的には話してしまったんだけど・・・バレないうち簡単に話すけど――おばあさんに移植の話はしてないから。示談金を受け取ったことと――母親の生存を教えたと話してあるわ」
 暗い表情でクムスンは頷く。
「それと・・・あなたの様子を聞かれた。だから――あなたは、聞かなかったことにする、と言ってたと伝えたわ」
「わかった・・・」
「さあ、中に入って。私は仕事に行くわ」
「はい、行ってらっしゃい」
「クムスン・・・どうやって収拾をつけたらいいかな?」
「・・・」
「手術の話をするべきじゃない?」
「・・・」
「言うべきかどうか迷って、昨夜は眠れなかったわ。何も怖くないけど――下手に話をしたらおばあちゃん倒れるかも」
「ええ。黙ってて正解よ」
「手術に応じるべきかどうか、私は」
「・・・」
「とにかく仕事に行くわ。話はまた後で」

 クムスンは部屋に入ってくる。
 ジョムスンは黙ってクムスンを迎える。
「おばあちゃん」
「早く上がりなさい」
 二人は同時に話しかかる。
「おばあちゃんが先に話して」
「お前から・・・そうね、私から話すわ。まずは――謝るわ」
「・・・」
「悪かった。母親を死んだことにして。でも、私としてはそうするしかなかった。お前を産んでくれた・・・母親なんて言いたくない。口にすら、出したくなかった。人間じゃないわ。娘を捨てて逃げたのよ」
「・・・」
「獣よりひどい。仮にも人間なのに子供を捨てるなんて。それにお前の父親は・・・あの女のせいで雨の工事現場で働いたの。あんなに若かったのに・・・」
 ジョムスンは涙を浮かべた。鼻をすすって泣きだした。
「お前の父親ってのはいい男だったし――誰よりも頭がよくて、有望な人だったのよ。だから若い女の子たちは――みんなそろって惚れてたぐらい」
 クムスンの目にも涙がにじんでいる。
「外から帰ってくると遠くから見てても――近所一帯が明るくなると誰もが口を揃えてたわ」
「・・・」
「そんな人を殺されたのよ。憎むに決ってるでしょ。ある日、何も言わずにお前を置いて逃げたの」
「・・・」
「だからその日に死んだものと考えたわ。まさか、お前にだって逃げたとは言えなかった」
「・・・」
「そういう経緯だったのよ」
「そうだったの・・・」
「いずれにしても悪かったわ。勝手に決めちゃって」
 クムスンは笑みを浮かべて言った。
「子供に相談なんてできないでしょ。生存がバレちゃうもの」
「それはそうね」
「おばあちゃん・・・」
「何でも言って」
「私は平気よ。本当に大丈夫だから。心配なんかしないで」
「ならいいわ」
「じゃあ、私は行くわね。遅刻しちゃう」
「クムスン。本当に会わなくていいの?」
「・・・」
「気にはなるでしょ? もし、私のために会わないのなら・・・」
「そんなことはないわ。会いたくないわ」


 ピルトはフィソンの保育園を探しに行こうとジョンシムに切り出した。
「もう音を上げたの?」
 とジョンシムは皮肉を言ったりしたが、一緒に出かけて行った。
 よさそうな保育園を見た帰り、二人は満足して帰路についた。ジョンシムはさっさと帰りを急ぐが、ピルトはビルの工事現場の前を通りかかると、足を止めて工事の様子を眺めた。
 ジョンシムは振り返ってピルトを見た。ピルトはジョンシムに工事の様子の説明をした。説明を聞きながら夫の気持ちが知れ、ジョンシムは複雑な思いに落ちた。

 ウンジュはクムスンのことが気になって仕方がない。クムスンはそんなウンジュに気を遣った。自分を嫌っているのだと感じているようだった。
 院長が店に戻ってくる。連れを伴っている。
「ママ!」
 ウンジュの声を聞いて、クムスンは振り返った。
 母親だと知って動揺した。
「どうしたの突然?」
「そこで会ったの。邪魔したくないと言うのを無理に誘ったのよ」
「忙しいと思って」
「せっかくだから、お茶を」
 ウンジュはお茶汲みにクムスンを選んだ。
「冷たい緑茶を3つお願い」
 ヨンオクは熱い目をクムスンに注いだ。近くまで来たのもこの娘が気になってならないからだった。
 ヨンオクは給湯室に向かうクムスンの姿をずっと追った。
 給湯室にユリがやってきて話す。
「副院長の母親みたいね。だけど、全然、似てないわ」
「・・・」

「早く回復なさらなきゃ・・・私に何かできることは?」
「お気持ちだけで十分です」
「本心ですよ」とミジャ。「ずっとご病気ですから娘さんまで暗いんです」
「そうなの?」
「いいえ、何を言うんですか」
「最近、笑顔が見られないもの。息子のいう通り、ウソクさんには――難病患者のために頑張ってほしい」
「ウソクさん?」
「えっ? ああ、ファン・ウソク博士です。あっははっ」
 ウンジュも笑った。
 冗談やユーモアが苦手のヨンオクは黙った。
 そこにクムスンがお茶を運んできた。
 ウンジュの携帯が鳴った。電話に出たウンジュは席を外した。
 出て行こうとするクムスンをミジャが呼び止める。
「挨拶をして。副院長のお母さまよ。面識はあったわね」
「はい」
 クムスンは前に進み出た。
「こんにちは」
「元気だった?」
「・・・」
「珍しい名前なんですよ。ナ・クムスン」
「ええ。私も覚えています。病院でも会いました」
「そうなの? ナ・クムスン、座りなさい。病院って、病気だったの?」
「いいえ」
「ちょっと座って」とヨンオク。
「そうよ、早く」
 クムスンは仕方なく椅子に腰をおろす。
「印象のいい方ですね」
「ええ。ピュアな子です」
「今、お幾つなの?」
「・・・」
「21歳か22歳くらい?」
「年齢を聞いてるじゃない」
「満23歳になりますから――数え年では24歳で・・・」
「童顔なのね」
「・・・」
「こう見えても結婚して子供もいるんです」
「ええ。前に聞いたことが」
「早く結婚したようで、子供は3歳か4歳だったかと・・・何歳?」
「3歳です」
「本当に早婚なのね」
「・・・」
「かわいい盛りでしょ。性別は?」
「男の子よね」
 クムスンは頷く。
「ご主人は何を?」
 戸惑いながらミジャが説明する。
「死別して1人なんですよ」
「・・・」
「ごめんなさい」
「でも、頑張ってるから目をかけてるんです」
 ウンジュが戻ってきた。
「ナ・クムスン。どうして座ってるの? 今、大忙しなのよ」
 クムスンは急いで立ち上がり、礼をして出て行った。
 出て行くクムスンをヨンオクは気にかけた。
「結婚相手の話をしたこと?」ミジャは言った。「気にしなくて大丈夫ですよ」
「・・・」
「お茶をどうぞ」

 部屋を出たクムスンは急いでトイレに駆け込んだ。母親と対座した興奮と緊張、熱っぽい感情と動揺を懸命に鎮めた。
 それからユン室長の前に戻った。
 すぐ補佐についたが、仕事は手につかない。
「つらかったら夏休みを取りなさい。分からないけど、何かあるはず。でしょ?」
「はい」
「ボーッとしながらはさみでも使ったら危険よ。だから休んだらいいわ。見てる方が危ない」 
「以後、気をつけます」
「私も精神状態に影響されるタイプよ。考えといて」
「ありがとうございます」
 そこにヨンオクたちが出てきた。
 クムスンはあわてて顔を背ける。
 ミジャに挨拶して出て行く時、ヨンオクはクムスンを見た。
 クムスンはヨンオクに背を向け続けていた。




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