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深浦九段対藤井七段戦（第66期王座戦挑戦者決定トーナメントより）
深浦九段の先手で始まったこの将棋。序盤は居飛車模様から互いに相手の出方を見ながら、じっくりした駒組みで進行した。
先手は３八飛から歩を切って後手の出方をさぐる。先手の３八飛車を対し、後手は右玉へと駒組みを進める。
両者、細かな駆け引きを続けながら互いに飛車を下段に引きあい、長期戦の流れへ…。
先手が９八香で地下鉄飛車を匂わすと後手は右玉解消へ動く。玉引きで飛車の横利きが止まった瞬間、先手は２四歩の突き捨てから2二歩と桂取りに打つ。桂は３三に逃げられるが、取りたかったのは香子。対局後、取った香を後手が９九に打つ順が検討されていたが、４二にいる角の働きで後手の反撃が強力な展開になってしまうようである。
香を駒得されてぐずぐず出来ない後手は9筋から仕掛ける。先手はその攻めを放置、角の利きで８四香打ちと飛車を狙う。飛車をよそへ追いやり８三成り香から８四角と出て、先手の攻めは有望かに見えた。
しかし、後手は平然と８六歩の突き捨てから８七歩打ちで成りと攻めを狙う。
先手は8五に桂を打って攻め駒を強化するが、後手は8八歩なりで金をはがしておいて用意した５一角引きが最善の受けだったらしい。７三桂成りに対しても７一に打った香も一連の冷静な受けで、このあたりではすでに大勢は決していたらしい。
大盤解説に登場する棋士はいつも錚々たるメンバーだが、この人だちでさえ読めない手をさす藤井七段。縁台将棋の自分にわかるはずもないが、藤井七段の硬軟自在な差し回しの安定感は何となくわかる。
陣形に隙がないというか、桂馬や香子など動きの不自由な駒まで生き生きしているというか、ただ所定の場所に張り付いているだけじゃないというのが伝わってくる。金銀桂などすべての駒（玉を含め）がいつも働きやすい状態でそこに位置しているバランスのよさを感じる（先日の早指し戦では危険地帯にあえて踏み込んで来るとか）。
本日も先手の２一歩成りから取られた時も、その役を与えられていたように感じた。藤井七段にすれば８四から攻め上がってくる駒になるのまで想定していたのだろう。
局後、他のいろんな手順が検討されていたが、読みの深さを示し、藤井七段の駒を動かす手は早かった。
強敵深浦九段を撃破し、藤井七段の王座戦挑戦の可能性はすごく高まったと感じた本日の一局だった。
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