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第1部(2)全基停止の夏 「超」綱渡りの電力供給 天候と他社頼み 産経から再掲載

2013-12-17 08:54:47 | (英氏)原発・エネルギー問題

第1部(2)全基停止の夏 「超」綱渡りの電力供給 天候と他社頼み 

2012.9.25 07:40 (1/4ページ)九州から原発が消えてよいのか

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 熱帯夜が続いた今夏。福岡市・渡辺通沿いにある九州電力本社ビル11階で、10人の男たちが未明まで汗だくになりながらキーボードを叩き続けた。

 10人は給電計画グループのメンバー。夏場の電力需要は気温によって大きく変動する。最高気温が1度上がれば九電管内で50万キロワット需要が増える。つまり1度ごとに火力発電所1基分の電力を手当てしなければならないわけだ。

 原発再稼働の見通しがたたず、九電の供給力はつねにギリギリの状態。10人は天気予報とにらめっこしながら翌日の1時間ごとの想定需要をはじく。その上で管内の火力や水力発電所の発電余力を積み上げ、供給が需要を下回らないよう配電計画を策定。この計画は即座に中央給電指令所に伝えられ、各発電所に電力供給量が指示される。それでも供給が不足するならば、中国電力など他社に融通を要請しなければならない。

 まさに司令塔といえる存在だが、その職場環境は過酷そのもの。激しい電力会社バッシングを受け、九電本社の空調は28度以上に設定されているが、それも午後7時に切れる。夜中まで煌(こう)々(こう)と明かりが灯っていると「一般家庭に節電を呼びかけながら何だ!」と批判されかねないので外に光が漏れないよう窓は閉め切ったまま。せっかく作った供給計画を「詰めが甘い」と突き返され、徹夜で再計算したこともある。

 リーダーである和仁寛・給電計画グループ長は毎朝テレビをつけるとまず天気予報を見るのがすっかり日課となってしまった。

 「超綱渡りの毎日だった。とにかく絶対に停電は避けなければならない。猛暑の予報が出ると冷や汗が出た。夏を乗り切れたので本当によかった…」

「超」がつく綱渡りとはどういうことか。

 4月に給電グループが立てた計画では、猛暑の際の九電管内の需要ピークは1634万キロワット。これに対し、原発6基(合計出力526万キロワット)がすべて再稼働できない状態に陥ったため、供給できる電力量は1574万キロワットにとどまった。

 このため、九電は7月2日から9月7日まで一昨年比で10%以上の節電をすべての電気利用者に要請。万一に備えて「計画停電」も立案せざるを得なかった。

 幸いにも節電意識が浸透し、家庭用で目標を上回る12%、オフィスビルなどの業務用でも10%の節電を達成でき、最大電力需要は1521万キロワットで収まった。これに対し、供給力は、ありとあらゆる電力確保に奔走した結果、1626万キロワットにまで向上した。

 数字だけをみれば、計画停電は杞憂だったようにもみえるが、電力需給の実態を追うと「原発ゼロの夏」がいかに綱渡りだったかよくわかる。

 まず今夏は気象条件に恵まれた。最高気温の平均は33・5度、猛暑だった一昨年に比べ1・3度低く過去10年間の平均(34・2度)も下回った。これにより需要のピークは相当抑えることができた。

 雨が多かったことも奏功した。水が豊富にあれば、141カ所ある水力発電の出力が上がるからだ。

 もし今年が猛暑渇水だったら…。需要は増大する上、水力発電は「無用の長物」となる。実際、今年も8月18日は予想以上に気温が上昇し、需要が予想を80万キロワットも上回った。

 しかも最大供給力1626万キロワットは実態を伴った数値とはいえない。他電力会社からの融通など86万キロワットを含んでいるからだ。九電自らがまかなえるのは1540万キロワット。今年の最大電力需要時の予備率はわずか1・2%に過ぎなかった。

 電力融通がいかに不確定要素かを裏付ける出来事も9月18日に起きた。中部電力が渥美火力発電所3号機の異常により、九電に予定していた融通を当日になって中止したのだ。和仁氏はこう言って表情をゆがめた。

 「九州で使う電気は九州で供給するのが原則です。不確定要素を含む他社融通に頼っている現状は自立して歩行できていないのと同じなんです。電力需給はすでに破綻していると言わざるを得ない」

 

融通電力を確保できたのも単に運がよかっただけといえなくもない。

 実際、6月までは他の電力会社との交渉担当者は苦悩の連続だった。中国、中部両電力などに「なるべく多く電気を送ってほしい。どれぐらい可能ですか」といくら要請しても、芳しい答えは一向に返ってこなかったからだ。

 風向きが変わったのは7月以降。関西電力の大飯原発3、4号機が再稼働したからだ。給電計画グループの河北倫具副長は「大飯の再稼働により関西圏の電力供給に余裕が出たこともあり、どの電力会社も融通電力量を上乗せしてくれるようになった」と振り返る。

 つまり、大飯原発の再稼働がなければ融通電力はもっと少なく、九州電力は計画停電に踏み切らざるを得なかった公算が大きい。瓜生道明社長も「大飯の再稼働は(計画停電回避の)必要条件だった」と明言する。何の不具合もない九電の玄海、川内の両原発を停止させたまま、他の原発再稼働により融通電力を確保するというのは皮肉としか言いようがない。

 夏を乗り越えた給電計画グループだが、安堵しているひまはない。9月に入ってからは冬場の電力需要増を見据え、供給計画の策定・見直しを続けている。

 オール電化が浸透したこともあり、一昔前に比べ各家庭の冬場の電力使用量は大幅に増えた。5%の節電を要請した昨冬の最大電力需要は1538万キロワットで今夏とほぼ同じ水準だった。

 19日に発足した政府の原子力規制委員会の田中俊一委員長の言葉は九電関係者を大いに落胆させた。原発再稼働について「現在の暫定基準の見直しが終わるまでゴーサインを出すのは無理」と断じたからだ。再稼働の新たな基準策定には数カ月かかる。つまり九電は「原発ゼロ」でこの冬を乗り切るしかなくなった。

 「夏を乗り越えたんだから冬も大丈夫だろう」。こんな声もあるが、そう簡単な話ではない。冬場の電力需要は夏場と傾向が大きく異なるからだ。

 夏場は日中に需要のピークが来るが、暖房による需要の多い冬場は1日のうち午前8~11時と午後5~8時の2回ピークが訪れる。電力業界ではこれを「ふたこぶラクダ」と呼ぶ。深夜早朝の電力需要があまり落ち込まないのも冬場の特徴だといえる。

 このような冬場の需要傾向は、揚水発電所の発電機能を低下させる。揚水発電は電力需要が少ない深夜早朝に、余剰電力を使ってダムに水を引き揚げ、必要に応じて放出し、発電する。いわば巨大な「電池」といえ、夏場の日中ピーク時の供給力確保には最適なシステムとなる。

 ところが、冬場のように一日中、一定の電力需要が続く場合、ダムに揚水する余剰電力を確保するのが難しい。九電は宮崎県木城町など九州3カ所に総発電量230万キロワットの揚水発電所を持つが、和仁氏は「冬場に揚水発電を見込むのは難しい」と打ち明ける。

 夏の節電要請期間が終了した9月7日、記者会見した瓜生社長は最後まで固い表情を崩さなかった。

 「冬場の電力供給も非常に厳しい状況になるのは間違いない。政府も考えていくと思うが…」


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