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第6部(6)九州蝕む原発停止の弊害 玄海町「茹でガエル」にby産経より転載

2014-01-23 08:05:47 | (英氏)原発・エネルギー問題

「2年連続の赤字なんて

 三桜電気は官公庁の電設工事や一般工事の受注を目指して営業を強化するなど経営努力を続けてきたが、23、24両年度とも3億円の経常赤字を計上した。

 大野は従業員270人の給与やボーナスを削減することなく踏ん張ってきたが、限界に近い。「原発が再稼働するまでは特殊事情なので仕方がないでしょう」と金融機関は融資を継続してくれるが、3年連続の赤字となれば、対応が変わる可能性も十分ある。

   × × ×

 「社長、このままでいいんですかね…」

 事務所で手持ち無沙汰でいるベテランのラインマンは、大野に申し訳なさそうにこう語った。

 この2年間、腕利きのラインマン90人のうち半数は、仕事らしい仕事もない状態が続いている。このままでは若手育成や技術力維持に支障が出かねない。

 「心配するな。もう少しで仕事は戻る。それまできちんと備えておけ」

 大野はこう答えるが、内心忸怩(じくじ)たる思いがある。

 ラインマンは資格があればできる仕事ではない。熟練工がマンツーマンで技術を伝授しなければならず、1人前になるには最低7年かかる。九電発注の仕事が減るということは技術力の劣化に直結する。採用を抑制したり解雇すると、発注が復活した際に対応できなくなる。

 そもそもラインマンは九州全域で500人しかいない。もし原発が再稼働して、急激に発注が増えても請負能力には限界がある。大野はこう漏らした。

 「山間部の送電線の補修はきちんと計画を立てて進めていくしかない。送電線にトラブルが起きてからでは遅いんですよ」

九電は年間売上高が1兆5千億円を超える九州最大の企業だけに、経営悪化の影響は九州全体を蝕(むしば)む。

 帝国データバンク福岡支店によると、九電グループ(70社)を主要取引先とする企業は全国に3214社、九州内だけで2336社もある。このうち電気配線工事などを請け負う建設業者が950社と全体の4割を占める。

 帝国データバンクが実施した平成23年と24年の業績比較では、建設業で減収となったのは5割近い475社、増収の432社を上回る。減収企業のうち30~10%減が205社で最も多く、30%以上とした企業も89社あった。多くは従業員100人以下の企業だ。

 24年末に自民党の安倍晋三政権に代わり、アベノミクスによる景気回復が進みつつあるが、このような企業はなお冬の時代が続く。

 現時点で九電グループを主要取引先とする企業の倒産は出ていないが、帝国データバンクの担当者はこう分析する。

 「原発停止の影響が出てまもなく3年が経ち、経営体質が弱い2次、3次下請け企業は持ちこたえられなくなっている。来春から夏にかけて影響がはっきり出るのではないか…」

   × × ×

 原発のお膝元でも再稼働が見通せないことへの焦りが募る。

 玄海原発は平成23年12月25日以来、全4基が止まったまま。14旅館が加盟する玄海町旅館組合長、小豆朋行(54)はため息混じりにこう語った。

 「今年の暮れには原発が動いてくれると思って、ここまで何とか踏ん張ってきたけど、いつまで待てばよいのですか。先が見えず、まさに綱渡りです。事故を起こした福島第1原発とは構造も立地条件も異なるのに、なぜここまで安全審査が長引くんでしょうか…」

原子炉は13カ月間運転すると2~3カ月間の定期検査を行う。定期検査中は約1千人の技術者や作業員が県内外から訪れ、数百人が町内に泊まるため各旅館は満室となった。

 だが、最後の4号機の定期検査が終わった24年4月、客足が止まった。

 一時は多くの旅館が廃業の危機に陥ったが、現在は、稼働率は60~70%にまで回復した。原子力規制委が今年7月に原発の新規制基準を施行したことにより、注水ポンプや電源装置、免震重要棟など新基準を満たすための対策工事が始まったからだ。

 小豆の旅館もぎりぎりの資金繰りが続いた。従業員の給与は支払ってきたが、小豆と妻、長女の給与は1年間滞ったまま。対策工事が始まったことにより、ようやく12月末に半年分の給与を妻や長女らに支払える見通しだという。

 とはいえ、対策工事のピークは過ぎ、11月ごろから徐々に作業員も減ってきた。給与の支払いやローンの返済、設備投資-など、定期検査のスケジュールに合わせて収支を見込んできただけに小豆は不安を隠せない。

 「今はよいけど、このままではじわじわと廃業に近づく。まさに湯温に麻痺したまま死を迎える『茹でガエル』です…」

 町旅館組合も手をこまねいているわけではない。

 町内の旅館ではスポーツ合宿の誘致などを進め、4月には1泊2食付き4千円で少年サッカー大会「玄海町旅館組合杯」を初めて主催した。

 町内で居酒屋と民宿を経営する溝上孝利(55)も有志11人で街おこしグループ「玄起海」を結成した。「棚田米」をアピールする餅つきイベントを開催するなど観光客の掘り起こしに取り組む。

 とはいえ、スポーツ大会やイベントだけで14旅館が生き残るのは難しい。玄海町の地域経済は原発と一体であり、住民のほぼ全員が再稼働を待ち望んでいる。溝上はこう語った。

 「玄海原発が事故を起こしたわけでもないのに町民が再稼働を望むことをエゴのように言われる。トヨタ自動車と一体となって発展した愛知県豊田市と何が違うんですか。われわれに対する世間の見る目がガラっと変わってしまったことが本当に悔しいですね…」(敬称略)

創業以来初めてです。このままでは、せっかくのアベノミクスが台無しになりますよ…」

 宮崎市の電設工事会社「三桜電気工業」の3代目社長、大野拓朗はこうこぼした。

 三桜電気は昭和21年に宮崎県延岡市で創業した。険しい山間部で高さ100メートルを超える巨大な送電線用鉄塔を建設したり、補修・点検を手がける技術を持つ。こうした企業は限られ、九州では5社しかない。

 従業員270人のうち90人は架線電工(ラインマン)と呼ばれる職人。彼らが中心となり、30度近い急斜面でヘリコプターから資材を受け取り、命懸けで鉄塔を建てる。鹿児島-熊本間の送電線「南九州幹線」や、関門海峡をまたぐ関門連系線、霧島連山を縦断する鹿児島幹線など、九州の電力の大動脈はいずれも三桜電気が請け負った。

 こうした特殊な技術力により三桜電気は年間売上高40億円前後を上げていたが、平成23年3月の東京電力福島第1原発事故以来、受注は3~4割も減った。

 理由は一つ。九電の玄海、川内両原発の計6基がすべて停止したことにより、九州電力の財務状況が急激に悪化したからだ。

 九電は、火力発電用の重油や液化天然ガス(LNG)などの燃料費がかさみ、24年度は3324億円の最終赤字となった。これに伴い、22年度に2369億円だった設備投資は、24年度に1599億円と35%も減った。

 送電線の補修・点検作業は延期された。山中にある送電線周辺のパトロールや樹木伐採、草刈りなども三桜電気が受注していたが、震災後は九電が自前でやるようになったという。

 


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