今年も7月から、夏の節電期間を迎える。
電力業界は家庭や企業に対して自主的な節電を呼びかけることにしており、政府はこれで夏場の電力需要期を乗り切れるとみている。
だが、電力不足は解消されていない。
電力各社は、すべての原発が稼働を停止する中で火力発電の増強や他社からの融通を駆使するなど、電力確保に躍起となっている。「原発ゼロ」に伴って電気料金も上昇しており、家計や企業を圧迫している。
台風などの災害による発電所のトラブルも懸念される。「電力は足りている」との油断は禁物である。わが国が置かれている電力危機を忘れてはならない。
節電期間は9月までの3カ月間で、数値目標は設定しない。無理のない範囲で上手な節電を心がけることに異存はない。だが、節電頼みでは根本的な解決にならないことを、厳しく認識すべきだ。
東日本の供給予備率は安定的な電力供給に最低限必要な3%を上回り、8%を確保した。だが原発比率が高かった関西電力と九州電力の予備率は、融通分を合わせてもぎりぎり3%だ。九電の川内原発は再稼働に向けて最終段階にはあるが、楽観はできない。
関電では今月、姫路第2火力発電所でトラブルが発生し、対策工事の影響で最大100万キロワット近い供給力の低下が見込まれる。このため、他社からの調達を増やし、3%の予備率を何とか維持する綱渡り状態にある。
国内の全原発が一昨年9月から稼働を停止し、これを補うために運転開始から40年以上を経過している老朽火力もフル稼働している。このため、設備故障などによる計画外停止が増えていることにも留意したい。
発電所の故障をきっかけに突発的な大規模停電に発展すれば、社会や経済の混乱だけでなく、身体の安全も脅かされる。そうした事態を回避するためにも、政府は安全性を確認した原発を早期に再稼働させるなど、電力の安定供給を早急に確立する必要がある。
4月には、電力改革の一環として、全国的に電力需給を調整する「広域運用機関」が発足した。電力が不足した地域に対し、余裕のある地域からの電力供給を指示することができる。監視や指示には相応の技能も必要だ。人材育成も同時に進めなくてはならない。