海通いの日々

　母殿は、多趣味な方である。

　これまでも、父殿と結婚された当初に山登りを始められた他、バイクに乗ろうと思い立ったのも母殿であるし、魚釣りに凝ったこともあれば、スケートも自分で靴をお持ちになっているくらいだし、ハムスターなど小動物を飼ったり、観葉植物を育てられたりもする。水泳は少女時代から得意でいらっしゃったようだが、これまで不思議とマリンスポーツには縁が無かった。それが今夏海水浴に行って、海の家でボディボードを借りて乗ってみて以来急に興味をかきたてられ、今は毎週のようにサーフィンの練習に海に通うようになっている。私もお供でついていく日々である。

　出かけるのは専ら、江の島近辺か鵠沼などの湘南海岸である。波がおだやかで初心者向けである上に、スクールを開いているサーフショップの数も多い。我が家からは電車を乗り継ぎ２時間余りかかるので、行く時は５時起きということもざらだが、それだけ魅力があるのかよく続いている。ショップでウェットスーツと練習用のボードを借りて、肌寒くなりかけている海に入っては今日はこんな風に乗れた、今日はうまく波をとらえられなかった、と都度目を輝かせている。本当は、ショートボードと称される、軽くて格好も良いボードに乗ってみたいのだが、それにはまだ力量が追いつかないようで、それより大きめのボードで練習を重ね、陸上でもイメージトレーニングができるようにスケートボードに乗ってみたりもされている。先日は、台風２７号だか２８号だかが接近している雨の最中に出かけ、生徒は母殿一人で、いさんで海に出たものの今までになく波が高く、ボードを抱えてポイントまで出て行くこともままならず難儀されていたが、そうした困難も新たな発見として楽しんでいらっしゃる様子である。

　　　　　　　　　　

　私はついていって母殿が練習に励んでいる間サーフショップ内で遊ばせてもらったり、終わってから近辺でお刺身定食や海鮮丼など食べさせてもらうのが楽しみである。父殿はというと、何度誘われても、冬のさなかに海に入るなど桑原桑原と全く取り合わず、おつきあいで同行するのも月に一回程度であるが、海を見るのは嫌いではないので、先日は外房方面をめぐり、御宿で降りていかにも太平洋らしい荒波を眺めた後伊勢エビのお刺身を堪能したり、先日の台風の折も同行して江ノ電を途中下車しながら沿線の海岸を歩いたりした。全くのところ、台風だというのに海に入ってる人がいかに多いか、驚くばかりであった。

　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　

　私の学校の運動会は当初の予定の日曜日が雨で中止になり、先週の平日に行われた。その代わりに昨日学校公開日に、校庭で練習した花笠音頭を父殿はじめみなさんに披露した。次第に身もたくましくなり、かつ洒落っ気も出はじめているこの頃である。お出かけの機会が多いので、先日から自分の携帯電話を持たせていただけるようになった。スマートホンなどでなく飾りっ気のない極シンプルなものだが、子供用ではないちゃんとした携帯電話で、遠出の際はやや得意げに持ち歩いている。