防衛省は14日、ロシア海軍艦艇6隻が北海道北側の宗谷海峡を通過したと発表した。北海道周辺では2月にロシア艦艇24隻が確認されており、6隻は同一の可能性があるという。24隻のうち10隻は10、11両日、津軽海峡を通過している。
同省によると、14日午前0時ごろ、北海道の宗谷岬の南東約130キロで、駆逐艦1隻や潜水艦3隻を含む計6隻を確認。その後、宗谷海峡を西に進んだ。海上自衛隊の護衛艦が警戒監視に当たった。
防衛省は14日、ロシア海軍艦艇6隻が北海道北側の宗谷海峡を通過したと発表した。北海道周辺では2月にロシア艦艇24隻が確認されており、6隻は同一の可能性があるという。24隻のうち10隻は10、11両日、津軽海峡を通過している。
同省によると、14日午前0時ごろ、北海道の宗谷岬の南東約130キロで、駆逐艦1隻や潜水艦3隻を含む計6隻を確認。その後、宗谷海峡を西に進んだ。海上自衛隊の護衛艦が警戒監視に当たった。
(CNN) キリスト教のロシア正教会トップのキリル総主教は12日までに、性的少数者らが性の多様性を訴えるプライドパレードが「ウクライナの戦争」の原因の一つになったとの認識を示した。 【映像】革命から百年、復活のロシア正教会 同総主教はプーチン大統領の長年の盟友とされる。キリル氏はモスクワでの説教で、「(ウクライナ東部の)ドンバス地域での紛争は世界の大国と名乗る関係国が差し出す価値観といわれるものに対する根本的な拒否に根差している」と主張。 「どちらの立場にくみするかのテストはあなたの国がプライドパレードの催しを受け入れるかどうかになる」と指摘。これらの関係国の仲間になるためにはパレード開催が必要とし、この要求に抵抗した場合、力で押さえられることは承知の通りだとも続けた。 総主教はウクライナの戦争を人間が神の教えを守る形而上学的な意味合いを持つ闘争とも形容。「国際的な関係の領域で現在起きていることは政治的な意味合いを帯びているだけではない」とし、「政治とは違ったはるかに重要な人間の魂の救済の問題である」と説いた。 「神の教えに背けば神聖さと罪の境界線をあいまいにしながら教えの尊さを損ね、さらに罪を人間の振る舞いの一つの例や見本ともなり得るとして助長する人々は決して許されるものではない」とも強調。「この問題に関する本当の戦争が現在起きている」と訴えた。 ロシア正教会は同国の独自性を裏づける基盤の一つとも受け止められている。キリル総主教はロシアによるウクライナ侵攻の開始以降、批判的な姿勢を打ち出さないことで教会内部からも圧力を受けていたとされる。 今回の発言は逆に、プーチン氏が思い描いているとされる精神的かつ現世的なロシア帝国創出に支持を寄せる内容ともなった。
中国総領事が日本威圧ツイート 林外相「コメント控える」
3/11(金) 17:40配信
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共同通信
中国の薛剣・大阪総領事がツイッター上で、ロシアに侵攻されたウクライナの教訓に関し
、弱者が強者にけんかを売るのは愚行だと日本語で書き込んでいた。軍事大国の自国と
ロシアを重ね合わせながら、中国動向を警戒する日本を威圧したとも受け取れる内容。
林芳正外相は11日の記者会見で「個人の発信の一つ一つにコメントするのは差し控えたい」
と述べた。
薛氏のツイートは2月24日付。自らの意向に沿う台湾関係者の発言を紹介した
動画を添付した上で、ウクライナ問題から得た「一大教訓」は「弱い人は絶対に
強い人に喧嘩を売る様な愚か(な行為)をしてはいけないこと」などと書き込んでいる。
ロシアの孤立が進む中、中国は何を思う ウクライナ情勢は台湾有事の
“シミュレーション”
北京冬季オリンピックが閉幕した翌日、プーチン大統領はウクライナ東部で
親ロシア派武装集団が一方的に独立を宣言している二つの人民共和国(ドネツク人民共和国、
ルガンスク人民共和国)を独立国家として承認する大統領令に署名した。そして、
その3日後、ついにロシアはウクライナへの侵攻に踏み切った。
プーチン大統領はウクライナについて、ロシアにとって単なる隣国ではない、
われわれの歴史、文化、精神的空間は不可分だとの認識を示していた。
ウクライナへの侵攻から既に10日が過ぎるが、国内外のメディアからはさまざまな報道がなされている。「ロシア軍の侵攻は思ったように進んでいない」「ロシア軍兵士の士気が下がっている」「クレムリンの中でプーチン大統領に物を言える人がいない」など、ロシアについてネガティブに報じるものが多いが、プーチン大統領としても、一度侵攻に踏み切った以上は弱気の姿勢を見せられなくなっている。また、通常兵力を比較してもロシア軍の優勢は明らかであり、欧米諸国がウクライナ軍への軍事的支援を強化したとしても、双方の攻防は長期化する可能性がある。
一方、ロシアのウクライナ侵攻を連想する形で、日本国内でも「台湾有事」を懸念する動きが加速化している。確かに、侵攻前からバイデン政権はロシアに対して政治的圧力を掛けてきたが、結局はロシアの侵攻を食い止められず、欧米諸国の対応は経済制裁やウクライナへの軍事支援に留まっている。そういった対応を中国が自らの台湾侵攻に照らし合わせ、あらゆる戦略を練っている可能性は高い。近年、インド太平洋では英国やフランス、ドイツやオランダなども軍艦を派遣するなどプレゼンスを強化しており、対欧米という対立軸は中国にとってウクライナもインド太平洋も変わらない。
しかし、ウクライナ情勢が進むにつれ、中国にとっては誤算もあったように感じられる。上述のように、プーチン大統領がウクライナへの侵攻を進めてから、ロシアを非難する反戦デモが全世界に拡大するだけでなく、欧米がロシアを国際送金網SWIFTから除外するという重い制裁に踏み切り、国連総会では対ロシア非難決議が141か国の賛成多数で採択されるなど、ロシアの孤立は予想以上のスピードで進んでいる。
また、北京五輪開会式の際にプーチン大統領が訪中して習国家主席と会談し、対米で戦略的共闘を強化することを共有したものの、パラリンピックを前にロシアが侵攻したことで、中国にとっては泥を塗られた形だろう。プーチンリスクに直面した中国は、今後どこまでプーチンを信じたらいいのか熟慮しているかもしれない。
そして、ロシアの孤立化を目の当たりにした中国は、台湾への侵攻によって世界からの孤立を恐れていることだろう。習政権は発足当初から米国に対して新型大国関係(米中が衝突・対抗の回避し、互いの核心的利益と尊重し、ウィン・ウィンの協力を米中関係の基本にする関係)を受け入れるよう要求してきたが、それは今日ではもう不可能と判断し、米国との競争や対立は避けされないものと認識している。しかし、世界からの孤立は習政権も回避したいと考えており、ウクライナ情勢が進むにつれ、中国にとっては誤算が大きくなってきている。
対外的影響力を拡大したい中国からすると、当然ながらロシアの侵攻に支持を表明することはできない。しかし、中国にとっての最大の競争相手も米国であることから、ロシアへの風当たりが強まる中でも習政権はプーチン政権との戦略的共闘を進めていくことになる。しかし、これまでのような雰囲気でそれはできなくなっており、習政権としてもロシアとどこまで戦略的共闘をするかを模索せざるを得ない状況になっている。ロシアのウクライナ侵攻は、習政権にとって重い課題となりつつある。
◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。
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河北春秋(11/19):つらい境遇を若いうちに体験すると、何かし…
2021/11/19 10:00 (JST)
© 株式会社河北新報社
つらい境遇を若いうちに体験すると、何かしら前向きな教訓をそこから得る人が多い。
中国の文化大革命の混乱期、少年だった習近平国家主席は「下放」と称する厳しい
農作業に長い間、従事させられた▼指導者毛沢東を崇拝する幼少期からの教育、
さらには懲罰的な労働。そこから得たのは「毛の心にかなった模範的な共産党員に
なること」。中国の近現代史に詳しい愛知学院大の柴田哲雄准教授が著書『汪兆銘と胡耀邦』
で指摘していた▼毛を指導者の理想像とするかのような習主席の思想傾向には、
こうした背景がある。以前の指導者の江沢民元総書記や胡錦濤前総書記の場合は
少し事情が違う。成人に達してから迫害を被ったため、事態を批判的に見たようだ
▼中国共産党がこのほど採択した「歴史決議」は、習主席への個人崇拝をさらに推進する
内容となっている。民主化の道筋や少数民族の人権問題などは、当然ながら触れてはいない。
有益な教訓どころか、誤った政治手法を学んだらしい▼中国と米国とで「地球を2分割する」。
バイデン米大統領とのオンライン会談で習主席は平然とそんなプランを口にした。
開いた口がふさがらないが、そういう指導者が隣国にいる不運は心に留めておきたい。
習政権はもう数年は続きそうだからだ。(2021.11.19)
ウクライナ侵攻の背景や今後の見通しは? ロシア・ソ連史専門の東北大・寺山教授に聞く
2022/3/9 17:21 (JST)3/10 11:23 (JST)updated
© 株式会社河北新報社
「ロシアはプーチンから解放され、国をつくり直さなければいけない」と話す寺山教授=2022年3月8日、仙台市青葉区の東北大東北アジア研究センター
ウクライナにロシアが侵攻を開始して2週間。終結の兆しは見られず、戦闘は激しさを増す。戦禍に至った背景や今後の見通しについて、ロシア・ソ連史を専門とする東北大東北アジア研究センターの寺山恭輔教授に聞いた。(編集局コンテンツセンター・佐藤琢磨)
[寺山恭輔(てらやま・きょうすけ)氏]京都大大学院文学研究科博士課程修了。1996年東北大東北アジア研究センター助教授、2013年から現職。専門はロシア・ソ連史。長崎県対馬市出身。58歳。
■NATO入り阻止できず、占領へ
―侵攻をどう受け止めていますか。
「驚きはない。クレムリンに近い匿名の情報源によると、プーチン大統領は2021年11月19、20日、ショイグ国防相やパトルシェフ安全保障会議書記、ゲラシモフ参謀総長ら側近と会合を開いた。ウクライナを狙った地政学的な修正プラン実現に向けた全面的準備が進行中で、後はいつ実行するかが問題だということだった。今年に入り、具体的な日時も示されていた。ロシアの政権内部も全員がプーチン大統領を支持しているわけではなく、(外部
に情報提供する)まともな人もいる。ウクライナのゼレンスキー大統領の暗殺が未遂に終わっているのは、その協力もあったと思われる」
―プーチン大統領が全面侵攻を決断した理由をどう考えていますか。
「補給もままならず、他の専門家も指摘するように短期間で終結させる予定だったのだろう。2014年のクリミア半島侵攻で成功を収め、今回も同様に展開できるとみていたのではないか。侵攻がウクライナ住民に歓迎されると幻想を抱いていたと考えている」
「しかし現実は、ウクライナ東部のドネツクやルガンスクでウクライナ人約1万4000人が亡くなる戦争が14年以降、8年間も続いていた。親ロシアのルカシェンコ大統領が独裁するベラルーシと異なり、ウクライナでは選挙がきちんと行われ、親ロシア、親EUと揺れながらも民主的な制度が機能していた。その間に戦闘経験を積んだ人たちが今立ち上がっている」
「北大西洋条約機構(NATO)入りを目指すウクライナの方針がロシア侵攻の引き金になったかもしれないが、04年にはよりモスクワに近いバルト三国が加盟している。ウクライナはロシアや
ベラルーシと同じスラブ民族の兄弟国。ロシアはウクライナをベラルーシのようにしたかったのだと思う。ロシアはあらゆる手を尽くしてウクライナのNATO入りを阻止したかったができず、力ずくで占領するしかないとの決断に至ったのではないか」
■プーチン大統領、側近を「共犯」に
―2週間もの戦闘はロシア側の誤算でしょうか。
「チェチェン紛争の時を思い出す。当時のエリツィン大統領に国防相は『空挺(くうてい)部隊なら3時間で首都を制圧できる』と進言したが、10代の未熟な兵士を送り込んで返り討ちにあった。今回もロシア政権は当初の作戦に失敗し、苛烈な空爆を始めた。プーチンは自分を解放者と思い込んで侵攻を決めたが、全く歓迎されていない。今行っているのはウクライナへの懲罰的攻撃だ」
―人道回廊の設置もなかなか進んでいません。
「ロシアは15年に介入したシリア内戦でも人道回廊を作ったが、市民が逃げている最中に爆撃した。想像したくないが、今回も逃げる市民を狙って爆撃し『ウクライナ軍の仕業だ』と言うのだろう。ウクライナは国土が日本の1.6倍。首都キエフからポーランド国境までは仙台から名古屋ぐらい離れている。ロシア軍に囲まれている状況ではどうやっても逃げられない」
―終結が見通せません。
「もちろん早期に終結してほしいが、時期は分からない。重要なのは、プーチンに核のボタンを押させないこと。冒頭で話した
情報源によると、今月初めに軍や治安機関のトップら側近に核使用の賛否を問い、今のところ支持する声しか出ていないという。プーチンは側近を核使用の共犯にしたかったのではないか」
「ポーランドが保有する旧ソ連製のミグ戦闘機をウクライナに提供しようという米国との計画があるようだが、ロシアはそれを『NATO参戦』とみなして核使用の口実とするかもしれず、とても懸念している」
■毎日のように体制寄り討論番組
―即時停戦を願う世界の声はロシア国民に伝わっているのでしょうか。
「例えば元モスクワ国際関係大教授のワレリー・ソロヴェイ氏は、ネットで得た国内外の情報を動画投稿サイトのユーチューブで発信しているが、登録者は50万人ほど。1億4000万のロシア国民と比べごく少数だ。情報源がテレビだけの多くの人は真実を知らず、プーチンによる正義の戦争とみなしている」
「ロシアのテレビ局NTVは、第1次チェチェン紛争の映像を現
地から放送した。それがロシア国民の政権批判を呼び、1996年の一時停戦につながったとされる。NTVはプーチンの大統領就任後の00年にオーナーが横領などの容疑で逮捕され、国営企業ガスプロムの傘下に入った。現在、大きなメディアは全てプーチン政権の支配下。ロシアでは毎日のように夕方ごろから体制寄りの討論番組が放送される。大多数の国民は政権のプロパガンダしか見ることができない。間もなく自由なインターネットも遮断されるだろう」
―ロシア国内でも反戦デモが行われています。
「ロシア国民しかウクライナを助けられない。国際銀行間通信
協会(SWIFT)の取引停止は、平和的な手段でロシア国民に経済的打撃を与え、その意識に影響を与えられる唯一の手段。気づいてほしい。『どうか立ち上がって』という世界中からの声なきメッセージに。経済的にはもう届いているはずだ」
「2月初旬は1ドルが76ルーブルほどだったが、侵攻を始めてすぐ90、100と下落していき、8日現在で150ルーブルにまで低迷した。1カ月余りで価値が半分になった。世界中の企業も撤退している。『おかしいぞ』『政府の言うことは本当なのか』と疑問に思う人が増えてほしい」
「ロシア当局が拘束しきれないほど多くの人が街へ繰り出し、一斉に反プーチンの声を上げることに望みを懸けるしかない
ディア支配を進め、ソ連時代のKGBをルーツとするFSBを強化するなどプーチンは20年以上かけて現在の体制を築き上げた。簡単ではない。それでもプーチン体制に終止符を打たなければこの戦争は終わらない」
■「戦後の終わり」迎える
―この先、世界はどうなるのでしょうか。
「第2次世界大戦で、旧ソ連が2000万人を超す犠牲者を出すことによって得られた国連安全保障理事会常任理事国のステータスは消滅するだろう。今回の侵攻で、ロシアは権利を自ら放棄したとも言える。それは『戦後の終わり』を迎えるという意味でもある」
「常任理事国の拒否権は戦争を止めることができないおかしな制度。ウクライナもロシアも多くの死者を出している。平和のための新たな仕組み作りに向けた機運が高まるといい。日本も将来を見越しながら行動するべきであり、安全保障をはじめ食糧、エネルギーなどあらゆる問題を率直に議論していかなければならない」
これは地球的規模の危機の到来 それを人類は乗り越えられるのか??
いままでの安穏とした意識ではいられなくなる。これから具体的に直面するのだから。
概念が変わる、意識がかわる。
「人類があまりに巨大な力を持つようになった結果」これは違う、、人類は巨大な力を持っていない、、なぜなら自然現象には無力だから。巨大な力を持っているなら、、自然現象をコントロールできるはず。
社新書)は45万部のベストセラー(撮影・露木聡子氏、斎藤さん提供)
経済思想家で大阪市立大学大学院経済学研究科准教授の斎藤幸平氏が、気候戦争としてロシアのウクライナ侵略を読みとく。
* * *
北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大から、ウクライナ東部の領土問題、プーチン大統領のロシア帝国復活という野望にいたるまで、ロシアによる予想外の侵攻をめぐって、様々な原因がメディアで取り沙汰されている。当然、今回の戦争は単一の理由で起きたことではなく、複合的な原因や事情が折り重なっている。
ただ、そのなかで、気候変動にからむ事情が、日本のメディアでは見落とされがちではないだろうか。気候変動問題が解説に登場しても、それは間接的なわき役としてだ。例えば、ロシアからの天然ガス輸入にドイツが大きく依存していることは、しばしば議論の的になっている。その際には、ドイツが「愚かにも」脱原発と脱石炭を掲げて再生可能エネルギーにかじを切ったことが、ロシアの国際銀行間通信協会(SWIFT)排除などの強い制裁措置に尻込みをさせたという批判を呼んでいる。一方で、ロシアにエネルギーの根幹を握られている危うさが今回の危機で浮かび上がり、再エネへの転換こそが安全保障につながるという反論も出た。
だが、こうした議論は、あくまでもエネルギー政策の方向性をめぐる次元の話であり、どちらの立場も、ロシアの侵略が欧州連合(EU)の気候変動政策にもたらす影響を分析したものにすぎない。逆にここで欠けているのは、気候変動のほうがロシアの政治経済にもたらしている影響の分析である。
■必要となる「人新世」の概念
そのような分析のために必要となるのが、「人新世」という概念だ。「人新世」とは、人類があまりに巨大な力を持つようになった結果、地球という惑星のありかたを改変した時代を指す。なぜこうした新たな時代区分が必要かといえば、人間が自然を支配・操作し、自然の脅威がなくなる「自然の終焉(しゅうえん)」を目指した近代化の果てが、むしろ、改変し過ぎた自然に人間が翻弄される、逆転現象をもたらしているからである。
その最たるものが、気候危機だ。多くの科学者が警告しているように、気温上昇によって、地球環境は人類にとって過酷なものになり、干ばつや豪雨、山火事などが多発し、食糧や水といった最低限の生存のための条件も今後、危うくなっていく。
この「人新世」の危機という視点を抜くと、新型コロナのパンデミックやロシアの戦争は、冷戦よりも歴史の時計はさらにさかのぼり、世界大戦へと突入していった100年前の帝国主義の時代への逆戻りのようにみえる。もちろん、多くの論者が指摘するように、プーチンの専制はナチスやヒトラーを想起させる類似性はある。だが、時代は単に反復するのではないからこそ、差異にも注目しなければならない。
要するに、21世紀の戦争は、「人新世」という完全に新しい環境で遂行されている。つまり、戦争や紛争にも地球環境的要因が影響を与えるようになるのだ。
例えば、シリアの難民問題を生むことになった内戦やアフガニスタンでのタリバーン復権がそうで、気候危機の影響による干ばつで多くの人々が困窮した結果、政治的に不安定になったと言われている。つまり、シリアやアフガニスタンの難民は、愚かな独裁者が引き起こした内戦の痛ましい犠牲者であると同時に、「気候」難民なのである。気候変動の被害が、年々、拡大するにつれ、世界秩序の不安定性は高まっていく。
同じように、今回のロシアの侵略戦争の原因を、ロシア帝国再建という帝国的野望だけに求めることはできない。ましてや、錯乱した独裁者の暴走とみなすのは不適切だ。プーチンの意識や振る舞いは——仮に彼が本当に錯乱しているとしても——、「人新世」の気候危機に対する適応の必要性によって規定されていると見たほうがよいだろう。
そのためにはまず、「寒いロシアは温暖化で得をする」というようなステレオタイプは、捨てねばならない。むしろ、今回の戦争は、愚かな帝国主義的侵略であると同時に、「気候」戦争としての側面がある。自然的要因が社会的要因とますます切り離せなくなる人新世という時代においては、気候変動という視点から今回の戦争もとらえなおす必要があるのだ。
■気候危機と新たな覇権争い
では気候戦争とはなにか。それは、気候危機を前にして、新しい世界秩序を確立し、覇権の維持を目指すグローバルな闘争の一形態である。危機のもとでの新たな覇権をめぐる争いは、無論ロシアだけのものではない。この争いには、今回のウクライナとロシアの緊張関係を生むきっかけとなった欧米だけでなく、中国も深くかかわる。
それが、再エネや電気自動車への経済インフラの全面転換であり、EUのタクソノミー(環境に配慮した経済活動かを認定する基準)に見られる規制作りである。欧米や中国は、自分たちが独自に制定する基準のもとで、他国の規格外の商品を排除しつつ、「環境に優しい」自国の新商品を他国に売りつけようと争っている。それが脱化石燃料による経済成長を目指す「緑の資本主義」の中核戦略をなす(付言すれば、この新たなルール作りの蚊帳の外に日本がいるせいで、日本の政治もメディアもこの新しい世界秩序にむけての闘争について関心が極めて低い)。
だが、「緑の資本主義」も資源やエネルギーを必要とする。必要とされるのは、もはや化石燃料ではなく、リチウム、ニッケルやコルタンといったレアアースなどの新しい資源だ。そうした資源獲得をめぐって、南米やアフリカで米中の緊張関係が高まっているのは周知のとおりだ。
今後、化石燃料の需要は伸び悩み、リチウムが「21世紀の石油」となる。当然、そうした転換は、これまでの化石燃料の輸出で金もうけをし、諸外国への影響を保持してきた国にとっては大きな損失となる。
長期で見たときのロシア経済にとって、これは憂鬱(ゆううつ)の種だろう。ロシアは石炭、石油や天然ガスの輸出大国であり、経済は化石燃料の上に成り立っていると言っても過言ではない。世界の脱炭素化が実現していけば、化石燃料への需要も大きく低下する。そうなれば、ロシア経済は致命的なダメージを被る。それは、オリガルヒと呼ばれる新興財閥の超富裕層たちに支えられたプーチン自身の権力体制に対する死刑宣告になるだろう。だとすれば、プーチンがそのリスクを認識しているのは間違いない 。事実、ロシアは、すでにレアアースの世界シェアを増やすべく、動き始めている。
■ロシアを襲う気候危機
一方、現在の「緑の資本主義」は、気候変動対策としてはまったくもって不十分であり、世紀末までの気温上昇は、パリ協定の1・5度目標を大きく上回る2・4~2・7度になると言われている。当然、そのレベルでの気候変動は、社会や生態系に極めて大きな被害をもたらすことになる。ロシアもまた例外ではない。
プーチンは気候変動について、「ロシアが暖かくなれば毛皮のコートを着なくてよくなる、農業生産性も向上する」と冗談を述べたとされ、彼は気候変動懐疑派だという評価も散見される。また、北極海の海氷が融解すれば、北極海航路(NSR)と呼ばれる新たな航海ルートが開けるため、そこでの利権を周到に狙っているという報道もある。
確かに、その意味では、ロシアにとって気候変動の恩恵は存在する。だが、そうした楽観的予測は一面的である。事実、ロシアへの気候変動の負の影響は極めて大きい。ロシアにおける気温上昇は世界の他地域と比べて2.8倍のペースで大きく進んでおり、その結果、永久凍土の融解が進行している。これによって起きる地盤沈下は、国土の65%を永久凍土が占めるロシアにとっては深刻な脅威だ。
2月末に発表されたばかりの「国連の気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第6次評価報告書(AR6。第13章)でも指摘されているように、地盤沈下によってビル、道路、空港、パイプラインにすでに大きなダメージが出ており、その対策に大規模の出費がかかるようになっている。2020年にシベリアで大量の燃料が流出する事故が発生し、周辺地域に非常事態宣言が出されたのを覚えている人もいるだろう。これも気候変動によって凍土がゆるみ、燃料貯蔵庫の柱が倒壊したせいで起きた惨事である。
そして、今後気温上昇が3度以上になれば、永久凍土がインフラを支える力は今世紀末までにほとんどなくなる。その被害額は、2050年までに、970億ドル(約10兆円)という試算もある 。
気候危機によって、凍土のなかに閉じ込められていたウイルスが拡散するという問題もある。すでに2016年にはトナカイの死骸から炭疽(たんそ)菌が広がり、70人以上が感染する事件があったし、マンモスの死骸から未知のウイルスも発見されている。それ以外にも、シベリアでは山火事、さらには、15年間で400人以上が亡くなっている洪水など、自然災害リスクも増大していく。極北の地のこうした急激な変化やリスクを抑え込むことが今後ますます難しくなる。
そうしたロシアに壊滅的な最終打撃として加わると予想されるのが、夏の干ばつによる小麦の生産量減少だ。ロシア南部は2010年に干ばつに見舞われたが、気候変動が加速化するなか、それ以上の事態も当然、危惧される。ソ連時代の飢餓の記憶がプーチンを襲う。
だからこそ、昨年の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、二酸化炭素排出削減を西側から求められたプーチンは、「ロシアの方がG7よりも削減している」「ロシアは砂漠化、土壌侵食、永久凍土融解といった複合的脅威に直面している」と危機感をあらわにしたのだ。
■プーチンのジレンマ
要するに、ロシアも気候危機への適応を迫られている。だが、ここには深刻なジレンマがある。自分たちの経済を支えている化石燃料を手放すことを、プーチンはできるだけ遅らせたい。当然、自らの影響力が低下するのも避けたいだろう。だが、脱炭素化を遅らせれば、自分たちの社会が瓦解(がかい)し、ロシアそのものが失われてしまうかもしれない。
このような厳しい状況だからこそ、プーチンの一挙手一投足は気候危機とは切り離せない。ウクライナへの侵略も、気候危機への適応戦略の一面があるとみるべきなのは、そのためだ。
だが、エネルギーシフトを行い、欧州や中国が牽引(けんいん)しようとする「緑の資本主義」への適応を目指しさえすればロシアも中国のようになれるのか、という問題がある。それが難しいのは、プーチンもわかっている。中国は、脱炭素化に対応できる技術力を身につけているが、一方、ロシアにはそのような技術開発を進める力はおそらくない。そうであるとすれば、脱炭素化を目指す場合、旧来の原子力を使うという道しかない。そのような原子力への強い執着は、今回の戦争でロシアが原子力発電所を攻撃し、奪取した事実にも表れている。
■狙われるウクライナの天然資源
そして、気候変動の影響、とりわけ干ばつなどを考えたときにロシアにとってますます重要になるのが、ウクライナ産の穀物に他ならない。周知のように、ウクライナは「ヨーロッパの穀倉地帯」と呼ばれ、ロシアと並ぶ小麦の輸出大国である。その量は、ロシアと合わせれば、世界の小麦の輸出市場の29%を占めるほどだ。トウモロコシの輸出も多い。中国もウクライナから最も多くトウモロコシを輸入している。
今後、気候変動によって世界的な干ばつや熱波が深刻化し、食糧危機のリスクが増大していくなかで、ウクライナの豊かな土壌がますます重要性を増していくのは疑いようがない。ロシア国民の胃袋を満たすだけではない。ウクライナの穀物輸出に依存する中国はもちろん、中東やアフリカにも、大きな影響力を持つことができる。気候変動が進めば進むほど、戦略物資としての穀物の重要性は増していく。
さらに、ウクライナは天然資源にも恵まれている。とりわけ半導体製造に必要な、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの原材料ガスの主要産出国である。ネオンガスにいたっては世界の70%もの量を供給している。
そうした資源を生かしながら、ソ連時代から宇宙分野や核開発の拠点だったウクライナは「東欧のシリコンバレー」として、ITやハイテク産業の発展に注力してきた。人口4400万人のウクライナで、IT技術者は20万人にも及び、グーグルなどの海外企業からも多くの発注を受けていたのである。ウクライナにR&Dセンターを置く企業もアマゾンからサムスンまで数多くある。1人あたりGDPでみればロシアより貧しいウクライナではあるが、科学技術の水準は非常に高いのだ。
食糧、資源、IT。これらは、まさにロシアが気候危機に直面するなかで、のどから手が出るほど欲しいものばかりだ。その意味で、今回の戦争はNATOの東方拡大阻止という最重要課題への対応であるとともに、気候危機への適応戦略の一環なのである。
■深まる気候変動の危機
悪いニュースは、これがロシアだけに言えることではない、ということだ。今後、気候変動が深刻化するなかで、水、食糧、資源、エネルギーをめぐる紛争や戦争の火種は増えていく。
そして、その気候変動の悪影響についての科学者たちの予想は、ますます悲観的になっている。今回のウクライナ侵攻が始まった数日後、IPCCが第6次評価報告書の一部を成す3千ページ超えの文書を公表した。公表に合わせた会見で、グテーレス国連事務総長は、この報告書はまさに「人類の苦難の縮図」であると述べた。それほど、気候変動の危機は深まっている。
「人新世」の危機は、当然、世界中のありとあらゆる次元に影を落とす。だからこそ、今回のロシア侵略を新たな「気候」戦争としてもとらえる必要がある。また、ロシアに対する欧米や中国の対応も、気候危機のもとでの覇権をめぐる帝国間の争いとしてとらえなおさねばならない。
「人新世」の危機は私たちがかつて経験したことのない事態であり、脱炭素化を進めると同時に、帝国主義的競争が激化しないような平和への道を、人類は新たに思考しなければならない。さもなければ、この惑星の未来は暗い。冷静に書かれたIPCCの報告書だが、最後の一節には、もう一刻の猶予もないという科学者たちの切迫感がにじんでいる。
「居住可能で、持続可能な未来をあらゆる人々に確保する『機会の窓』は、急速に閉じつつある。(気候危機への)適応と(気温上昇の)緩和に向けて、先を見据えた世界的な協調行動が、これ以上少しでも遅れるならば、このわずかな機会を失うことになるだろう」
戦争が長期化すれば、より多くの命が失われるうえに、この窓は永久に閉じることになる。
(寄稿)
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今回のウクライナ進行はプーチンの本性が早く出過ぎた、プーチンが焦った(アメリカが出てこないから好機と思った)行動だと思います。ロシア国民がどれだけ賛同するか???(プーチンがどこまでロシア国民を押さえていたとしても)戦争は兵力だけの問題か??? もちろん圧倒的なロシア軍だとおもいますが! 第二次世界大戦と違うのは、、、田中さんのおっしゃられている情報伝達の力です、プーチンはその面で不利ですよね。NHKで見たプーチン宮殿の、軍隊に警護させたところで。世論、地球論では(今は、、第二次世界大戦と違うのは、、すぐに知れ渡ってしまうという事。)ロシア国民に対してプラスなのか???エネルギー問題もあるでしょうが、このやり方で良かったのか?プーチンの独断ではないか、努力する方向がちがっていたのではないか。、、、世界的に見たら不利だと思われますが、、、ただ 権力を持っているので やけくそになって 核弾頭だけは使用しないで欲しいですね、世界 核戦争のスイッチだけは押さないでほしいですね。
私見ですが 正義を守る保安官(アメリカ)が弱体化した、今はそう強くもない、今回はウクライナまで出てこない、、、と見切ったロシアやくざ(プーチンか)が好き放題やりはじめた、すこしびくびくしながら、、それを中国やくざ(習近平)が、、参考にしようと見守っている、状態か。
共産主義諸国は基本、、やくざ、、独裁、、民主の考えは無い(民を思う心はない、自分の保身だけだ、その為には人命は関係ない、権力のまま暗殺、拘束、好き放題、、、長くは続かないだろうが?!今までの所業を見ていると。。)。 ロシア、中国、北朝鮮、ミャンマー、、ほか。独裁者が国民を支配している!、、、、いづれ崩壊するが、、いつかは わからないが?