膵臓の主な働き
膵臓の主な働きは、消化酵素(膵酵素)の分泌(外分泌)と血糖を調節するホルモンの分泌(内分泌)です。
膵臓の80%は膵酵素を作る外分泌腺です。
膵酵素は細かい導管に分泌され、導管からは水分や重炭酸イオンが分泌され膵液が作られます。
導管は合流を重ね、最終的に1本の主膵管となり十二指腸に分泌します。
膵液の1日の産生量は1.5リットルにも及びます。
膵酵素には、炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白質を分解するトリプシン、キモトリプシン、脂質を分解するリパーゼなどがあります。
手術の危険度や合併症
ほとんどの膵臓手術は開腹手術ですので、一般的な開腹手術に伴う合併症はおこる可能性があります。
1、 膵液漏
膵臓の手術に特有の合併症として膵液瘻というものがあります。
これは膵臓にキズがつくことによって膵臓の外分泌腺から分泌される消化酵素を含む膵液がお腹の中に漏れることです。
膵液は食物を溶かす働きがありますが、胃や腸の中では粘膜が保護しているため自分の組織を溶かすことはありません。
しかし腹腔に膵液が漏れたときは、周囲の組織を消化するように溶かし腹膜炎を併発することがあります。
血管を溶かしてしまった場合には出血することもあります。
膵液が漏れる膵液瘻が発生しても、膵液が腹腔内に貯まらずに外へ出るようにうまく誘導する道(これをドレナージと呼びます)があれば、ほとんどの場合膵液瘻は自然に治癒します。
※ドレナージは体内にたまった余剰水分や血液などを体外に抜く措置のことで、ドレーンは留置する誘導管ですかね?すなわち体内から何かを排出するために入れる管。
⇒ドレーンの留置には臨床症状のない膵液瘻であれば無用に長期に留置すべきでないとの見解がある。
ドレーンの長期留置によるドレーンからの逆行性感染という外因感染があるからだという。
ではいつ抜去するか?
一般的には術後7日前後ドレーンを留置している。
膵液瘻の発生頻度は術後8日目抜去では23%、術後4日目では3,6%であるというドレーン留置は術後合併症の危険因子であるという結果がある。
明らかな膵液瘻、胆汁漏、腹腔内膿瘍などの合併症がなければドレーンを不用意に長期留置することは慎まなければならない。
ドレーン廃液による微量な出血を認めた場合は厳重な管理が必要である。
食事をすると消化酵素をたくさん分泌する刺激となりますので、多くの場合は絶食で治癒するのを待つことになります。
そのあいだは点滴で栄養を補います。
腹腔鏡手術では、外套管を挿入する際に腹腔内臓器や血管を損傷する合併症が報告されています。
気腹に伴い炭酸ガスが血液中に入るガス塞栓症という合併症がおこる可能性もあります。
炭酸ガスは空気などと比べて血液に溶ける割合が高いので塞栓による障害は発生しにくくなっていますが、塞栓をおこした臓器の機能障害がおこることが報告されています。
手術中は、やはり周囲臓器の損傷が問題となります。
特に肝臓、腎臓、脾臓、門脈、下大静脈などの損傷では出血が問題となります。
大量に出血したときには輸血が必要になる場合があります。
膵臓の損傷、特に膵管を損傷した場合は、術後の膵液瘻(膵液がお腹の中に漏れること)を併発して腹膜炎などを起こすことは開腹手術の場合と同じです。
気腹で心臓に負担がかかっているので、不整脈、心筋梗塞などの予期しない合併症も併発する可能性があります。
2、胆管炎
胆管と空腸との吻合を介して腸液が胆管に逆流することがあります。
この場合、術後早期や、退院した後も胆管炎を起こすことがあります。
高熱が出て、内服の抗生物質や点滴の抗生物質が必要になるようなことがあります。
また胆道ドレナージをする必要がある場合もごくまれにあります。
3、胃排泄遅延
膵頭十二指腸切除の後には胃の動きの回復が遅れ,胃液や食物が長時間胃内にとどまったままになることがあり,胃排泄遅延と呼びます。
最終的には自然におさまりますが,胃の動きが回復するまで絶食にするとともに、胃液を抜くための細いチューブを鼻から胃の中まで入れることがあります。
その他、胆汁漏、感染性合併症(化膿)、術中出血、術後腹腔内出血、下痢、糖尿病、腸閉塞、腹膜炎、後出血などの合併症があります。
退院後の生活
膵頭十二指腸切除の場合は消化管を切除・再建していますので、術前と比較すると食べられる食事の量が減りますし、一般的に体重が1割以上減ってしまいます。
しかし、徐々に回復していきます。
手術後として、特別な食事の制限、生活の制限はありません。
ただし、手術の創部の痛みは個人差がありますが少なくとも数ヶ月間は運動をするような場合には腹部に痛みが残っていたり、ひきつれ感があったりします。
日常生活の範囲内で軽作業程度なら術後1〜2ヶ月からは大丈夫という人が多いです。
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