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【#BuzzFeed Japan Medica】「隠れコロナ」の死亡者はそんなにいるのか? メディアで話題の「超過死亡」について検証する

2020-07-02 04:45:54 | コラム
メディアで話題の「超過死亡」。「新型コロナと診断されずに亡くなった人がいる」と医療体制批判に使われることが多いですが、実際はどうなのか検証しました。

新型コロナウイルスの流行によって多くの大切な命が奪われた。
ここに来て、複数のメディアで話題になっているのが、「超過死亡」の数だ。
「超過死亡」とは、平年よりも何らかの原因で増えている死亡のこと。
新型コロナによってどれほど上乗せされたのか、そして、新型コロナと診断もされずに亡くなった「隠れコロナ死」がどれほどあるのか。
日本の医療や検査体制の不備を糾弾する材料として挙げられていることも多いこの数字だが、事実はどうなのか。

BuzzFeed Japan Medicalは、3月から日本の超過死亡をウォッチし、論文も投稿中の横浜市立大学准教授(医療経済学)の五十嵐中さんを取材した。
様々なメディアに「隠れコロナ死」として取り上げられる「超過死亡」
5月下旬から「超過死亡」は様々なメディアに取り上げられている。主な記事は以下の通りだ。

日本経済新聞は5月24日、「コロナ感染死、把握漏れも 『超過死亡』200人以上か 東京23区2~3月 必要な統計公表遅く、対策左右も」という記事を出した。国立感染症研究所の公表データを元に、2月中旬から3月までに肺炎などの死亡者が東京23区内で200人以上増えた可能性があると報じている。

「同じ期間に感染確認された死亡数は都全体で計16人。PCR検査で感染を確認されていないケースが潜み、把握漏れの恐れがある」と書き、PCR検査の不足が「隠れコロナ死」を生んだ可能性を強調する記事だ。


さらに、同紙は6月11日、「特定警戒11都府県で『超過死亡』 緊急事態発令の4月」という記事で、特定警戒都道府県と指定されていた13都道府県のうち11都府県で平年より死亡数が大きく上回る「超過死亡」があった、と報じている。

こちらは住民基本台帳に基づく県別の人口月報を同紙が入手し、独自に分析した記事。

この記事でも、「持病の悪化が死因と医師が判断してPCR検査を受けなかったケースのほか、病院が新型コロナ患者を受け入れるため病床を減らし、入院治療を受けずに死亡したケースなども含まれる」と説明し、「隠れコロナ死」の存在を示唆している。

この記事に、五十嵐さんは「医師が感染に気づかなかった見逃し事例より、感染対策で入院を制限するなどした間接的な影響の可能性がある」と推測するコメントを寄せている。

産経新聞は6月12日に「都内死者 3、4月過去最多 『超過死亡』コロナ公表人数の12倍 医療逼迫影響か」という記事で、「その『超過死亡』は都が発表した新型コロナによる両月の死者数計119人の約12倍となった」と書く。

東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授(公衆衛生学)の「他に死者数を押し上げた要因は見当たらず、超過死亡の相当数に新型コロナが直接、間接に影響した可能性がある」というコメントを載せ、やはり「隠れコロナ死」を示す内容だ。

日刊ゲンダイは6月15日、「4月の『超過死亡』激増 東京1056人“隠れコロナ死”の可能性」という記事を公開した。

「超過死亡が大幅に増えた要因は、コロナの感染拡大以外に考えられません。急変して死亡するケースが多く、PCR検査に至らず、死因を心不全などとする例は少なくありません」とする医療ガバナンス研究所理事長・上昌広氏のコメントを載せ、日本のコロナ対策を批判する。

そもそも「超過死亡」とは?
そもそも超過死亡とはどういうもので、何のために分析されるものなのだろうか?

五十嵐さんはこう答える。
「いつもと比べて死亡者が増えている、ということが大前提となります。ただし、ただ増えただけでは超過死亡とは言えません。偶然ではちょっと考えられないぐらいに死亡者が増えている、というのが最も単純な定義になると思います」
この超過死亡を出すためには、二つのデータが必要となる。
実際に何人が死亡したのか
いつもならどれぐらい死亡するはずだったか
一つ目のデータは、公的なデータを調べればほぼ誤差なく把握できる。

問題は、2番目の「いつもならどれぐらい死亡するはずだったか」の算出方法だ。これには、決定版のやり方があるわけではない。偶然の要素や月・季節ごとの変化、さらに高齢化など長期的な影響をどのように組み込むかによって、「いつもの死亡数」は大きく変わり得る。

国立感染症研究所では、21都市について、「インフルエンザ関連死亡 迅速把握システム」のデータを出し、超過死亡も推計している。

「死亡診断書の死因欄にインフルエンザあるいは肺炎(病原体不問、飲食物が肺に入って生じた肺炎除く)の記載がある人」を保健所が抽出して、感染研に集められる。

この数字が、例年の死亡傾向を踏まえて算出した「死亡数の上限値」を超えると、「インフルエンザ・肺炎関連の超過死亡あり」と判断される。ただ「平年より多い」だけでは偶然の要素が影響した可能性があるので、それを排除するためだ。

参考:感染研「超過死亡データ」のうごき?(五十嵐中)

他にも、受動喫煙の影響を調べるために、受動喫煙がなければ死なずに済んだ死亡者を超過死亡の考え方で求めることがある。

年間1万5000人が受動喫煙で死亡しているという超過死亡の推計は、こうした計算によって算出されている。

3月から超過死亡をウォッチング 4月に異変が
五十嵐さんは3月半ばから個人的に超過死亡があるかどうか、政令指定都市の死亡データを集めて追いかけてきた。

「2、3月までのデータを見て、日本の死亡数はそもそも増えてすらおらず、当然超過死亡もみられない…と判断していました。正直、4月も同じ傾向で終わるだろうと思っていたのですが、結構、数が多かった。偶然なのかどうか、より掘り下げた分析が必要と考え、データを集める範囲を広げて解析を始めました」

東京23区・政令指定都市13市 (人口90万人以上の13都市)・盛岡市 (患者数ゼロの比較対照)という合計15都市の4月の死亡者数を、人口で割り算して死亡率 (10万人あたりの死亡数)を求めた。

その結果、さいたま市以外は、いずれも過去5年で最高値が出た。

日経新聞の分析では、2020年4月の死亡者数を、過去4年間の4月の死亡者数の平均から引き算して求めたデータを使っている。

「盛岡市も含めた多くの地点で、死亡『率』が高くなっていました。2020年3月の傾向ともやや異なっています。それでも、超過死亡としてカウントするためには、増えたのは偶然なのか? それとも偶然では説明しきれないレベルで増えたのか? を評価する必要があります」

人口の増減の影響は、10万人あたりの死亡「率」を使えば取り除ける。しかしそれ以外の要素の影響もある。例えば死亡率の数値は、月によって大きく変わる。冬は高く、夏は低くなる。

高齢化やインフルエンザ・熱中症の流行など、年単位での影響もある。単に平均値からのズレで判定するのではなく、これらの変動の影響を組み込みながら、2020年4月の各都市の死亡率そのものを、幅を持たせつつ予測した。

その上で、2020年4月の実際の死亡者数が、この予測値を上回っていれば、これまでの要因では説明しきれない「超過死亡」の可能性が高まる。
4つの予測モデルを使って評価した結果、使用した予測モデルによってばらつきはあるが、超過死亡そのものは複数の都市で見られた。
ただし、より多くの都市で超過死亡を検出した予測モデルでは、これまで感染者ゼロを貫いてきた盛岡市でさえも「超過死亡あり」と判定された。

隠れコロナ死はありそうなのか?
それでは、本題だ。
メディアが度々指摘しているように、新型コロナなのに、医師が見逃したり、PCR検査を抑えたりして、コロナが死因とされなかった「隠れコロナ死」は、このデータからありそうだと言えるのだろうか?

結論から言えば、五十嵐さんは、分析したデータから、隠れコロナ死が全国で一定数いるとはあまり言えなそうだとする。

その理由の一つは、4つの予測モデルによって、超過死亡のパターンが大きく変化したことだ。

「多くの都市で超過死亡を検出したモデルでは、患者がゼロの盛岡市や、4月の死亡者がゼロだった仙台市でも『超過死亡あり』と判定しています。逆に感染者数・死亡者数が最多の東京でも、超過死亡が検出されないモデルがありました」
「他のモデルでも東京の超過死亡の程度は、名古屋や大阪、仙台など他の都市に比べて小さいのです。公式にカウントされている新型コロナの感染率・死亡率と、超過死亡の大小との間に、有意な関連性は見られなかったため、『隠れコロナ死』『実はコロナ死』は考えにくいです」
「感染者の多さに関わらず、全国的に超過死亡が出ているのなら、他の要因が大きいのではないかと考えるのが自然です」

一方、ヨーロッパ全体のデータを公開している「EUROMOMO」がやはり超過死亡の週ごとのデータをグラフ化して公開しているが、2020年14週、15週(4月半ば)の超過死亡が突出している。
「EUROMOMOの推計法は、超過死亡の判定基準を小さめ (5〜6万人の死亡に対して1000人程度)にとっており、『超過死亡あり』の判定が出やすくなっています。判定のしやすさ如何にかかわらず、これだけ突出した死亡があれば、新型コロナの影響は否定できません」

「週ごとと月ごとのデータなので直接は比べられませんが、日本では1月の死亡率より4月の死亡率が上回るような地域はありませんでした」と五十嵐さんは言う。

「今の段階で超過死亡を論じるべきではない」という批判も
こうしたメディアの報道や超過死亡を論じる研究者に対し、批判的なのが名古屋市立大教授(公衆衛生学)の鈴木貞夫さんだ。

「超過死亡というのは大まかな指標です。確かに、欧米のように、新型コロナで大勢の人が亡くなり、それ以外に死亡者が増えるような状況がないときに、全体から死亡者を観察して計上された数との乖離がどのくらいあるかということを考えることは意味があるでしょう」

「翻って日本では、そもそも欧米の流行地の100分の1くらいの死亡しか報告されていません。この状況で、まず『過剰死亡があるかもしれない』と考えることにかなり無理があると私は感じます」

「実際に計算しても最新のデータだけが平年に比べて大きいというわけではないのです。それは超過死亡のなかに人口増加や高齢化の影響が含まれているからです」

その上で日経新聞の記事に、五十嵐さんが、「医師が感染に気づかなかった見逃し事例より、感染対策で入院を制限するなどした間接的な影響の可能性がある」と推測するコメントを出したことにも苦言を呈する。

「どのデータに『入院を制限するなどした間接的な影響』があると見たのでしょうか。感染者報告がない岩手県で同じような動向を示したのなら、コロナの影響は小さいとみるのが自然なのではないでしょうか。そもそも岩手県が県を挙げて『入院を制限』した事実があったのでしょうか」

BuzzFeed Japan Medicalは、五十嵐さんが死亡者数を分析した盛岡市の保健所に医療状況を尋ねてみた。盛岡市保健所企画総務課の回答は以下の通りだ。
「盛岡市内の医療機関で、新型コロナの影響で入院を制限したとか、必要な手術や治療を延期したという話は保健所では把握していません。新型コロナと関連づけて死亡者数が増えたと考えることもしていません」
「検査の基準をもとにPCR検査を粛々と行なっており、パンクしそうだから意図的に減らすということもしていません。そもそもその必要はありません」

これに対し、五十嵐さんは、日経新聞へのコメントはあくまでも様々に報じられている医療状況からの推測であると強調する。
「外来・入院減少の傾向は、医療機関へのアンケート調査やレセプト(診療報酬明細書)データベースの件数その他から、全国的に見られていました。しかし減少がなぜ生じたかまでは現時点で解析されておらず、鈴木先生のご指摘のように『入院制限』は強すぎる表現でした」
「先ほどの解析と並行して、病名その他がある程度分かるレセプトデータがそろい次第、新型コロナでどういう影響があったか詳しく分析するつもりです。新型コロナの医療への間接的な影響については仮説であり、今後の分析結果を待ってほしい」

一方で、鈴木さんはこう釘を刺す。
「来年、平均寿命が出たらすべて明るみになるので、今からぐらぐらな議論をしても仕方がない。平均寿命は、人口構成(人口、年齢分布)の影響を受けないので、コロナのせいで寿命が縮めば一発で影響が明らかになります」


「私は日本のPCR陽性率が低かったことをもって、見落とし事例は欧米ほど多くないと考えています。したがって、抗体検査陽性者が報告感染者数よりはるかに大きかったり、明らかな超過死亡が認められたりした欧米とは異なると思っています」

ただ、五十嵐さんも鈴木さんも、「超過死亡」という数字を、日本の対策批判などに利用する研究者たちがいることを懸念していることでは共通している。五十嵐さんはこう話す。

「死亡数のデータはあちこちから随時出てきますから、『増えている!』のような主張を補強しうる数字はいくらでも出せてしまう。ある意味怖い数値です」

「『増えたけれども偶然の範囲内で、超過死亡ではない』『超過死亡があっても、諸外国と比べれば小さい』 『超過死亡が広く出たが、出現パターンは感染とは無関係』…飛びつきやすい数字だからこそ、むしろ慎重にデータを扱わねば、と考えています」

五十嵐さんの分析は論文化され、現在投稿中だ。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-excess-mortality


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