日韓の検査数の差でヒートアップしてますが、米国のことも忘れないでね…。
アメリカはご覧のように感染者59人で、あちこちブロックしまくってますが、検査できる州が実は3つか5つぐらいしかなくて、中国出張後に咳が出て検査に行った男性が3270ドル(約36万円)も請求されて心臓が止まりそうになっていることがわかりました!
検査1回で36万円+診療代
この気の毒な男性はマイアミに住むOsmel Martinez Azcueさん。いつもなら薬局でかぜ薬を買って家で寝てる程度の症状だったのですが、状況が状況だけに「家族や周囲に迷惑がかかったら大変だと思って、義務を果たしにいった」のだとMiami Heraldに語っています。立派。
病室の入り口で消毒液のようなものをシュシュッと吹きつけられて「コロナウイルスのCTスキャンが必要」と言われましたが、Azcueさんは医療機器メーカー勤務で年収55,000ドル(約600万円)。保険は最低限のものなので、CTスキャン(アメリカでは平均10~20万円もする!)は保険が効きません。先にかぜの血液検査をするように頼んで、それでかぜと診断されたのでやれやれと家に帰りました。
ところが2週間後。保険会社から3270ドル(約36万円)の血も凍る請求が舞い込んでしまったのです。「血をとって綿棒口に突っ込んだだけなのになんでだ…」。息も絶え絶えにMiami Heraldに窮状を訴えて保険会社に取材してもらって初めて「本人負担は1400ドル(約15万5000円)」とわかりましたが、「補償を受けるには過去3年分の医療記録を提出して既往症がないことを証明しなければならない」とかの厳しい条件付き。最後まで息が抜けません。さらに36万円というのは検査代だけで、よくよく聞くと、診察代や手当ての請求書(複数形)は病院側が準備中で、そっちの額はまだ決まってないのだといいます。
いったいいくらむしりとれば気が済むんだ!!!
検査できる州が3つか5つしかない
いや~こんな話を聞くと恐ろしくておちおち検査なんて行けませんよね。それじゃなくてもお金にシビアなアジア系は「死んでも病院に行かない(但し子どもは必死で医者にする)」と冗談で言われますし。入院・隔離なんてことになったら失業→医療費破産→ホームレスまっしぐらですよ、ええ。
ちなみに米CDCセンターの当初の検査基準は「武漢への渡航歴や暴露歴があり、尚且つ症状がある人」で、それ以外の人の検査は断るよう全米の医師に通達が回っています。どうせ病院行ったって検査は受けられないんです。
市中感染も5市で調べる!と発表して、少しやる気をにじませていましたが、全米100の医療機関に配った検査キットがまったく使いものにならなくて、3つの州でしかまだ使いこなせていない実態がPOLITICOの追跡取材で判明。
検査キットは”準備中”
改良版をCDCセンターが開発すると発表したのが14日で、だいぶ日にちが経ちますが、公衆衛生研究所協会(APHL)の話では、開発がいつ終わるのかもわからないし、FDAの認可が下りる時期も不明とのこと。同協会疫病担当ディレクターのKelly Wroblewskiさんによると、検査キットは1つにつき250ドル(約27,600円)のコストがかかるらしい…。トランプ政権がCDCとNIHの予算カットを叫ぶ今日び、財源確保も大きな課題みたい。25日にやっと25億ドル(約2760億円)の緊急予算措置が議会に要求されたので、やっと重い腰…ですね。
ドイツも検査代3万6000円は自腹!
それにしても医療制度がしっかりしている国ほど、くそまじめに申告して、検出数が増えて国境封鎖されてばい菌扱いされて経済が疲弊して国力が落ちるのってな~んか不公平。これについては欧州でも「イタリアは人口6000万人で感染300人、EUは6億人で感染50人っておかしくね?」という声が出はじめています。
ちなみにMorgen Postによると、医療先進国ベルリンで検査を受けようとするとこんな流れになるみたい。
イタリアから帰ったベルリンの男性がコロナウイルスの検査を希望
→ウイルス緊急ホットラインに68回電話しても誰も出ない
→一般医に回される
→医師が伝染を恐れて診察拒否。支援団体に回される
→支援団体は検査OK。ただし検査代300ドル(約3万6000円)は自己負担と言われる
う~ん、3万6000円かぁ…。アメリカの10分の1だけど、やっぱ高いわ…
感染ゼロのサンフランシスコ、オレンジカウンティが非常事態宣言
現時点の日・韓・米の検査数を表にまとめてみました。ご覧のように人口は日本の2.6倍なのにアメリカの検査数は445件で日本の半分です。でも昨日はサンフランシスコ、今日はLA南部のオレンジカウンティが非常事態宣言(予算をぶんどる宣言)しました。どちらも共通点はアジアの玄関口だということ。「感染ゼロなのになんで?」「過剰反応」と非難轟々ですけど、隠れ感染者を想定して早めに予算を確保する動きとみられています。
「1年で全世界の4~7割は感染」という予測の真意
いずれにしても、中国政府が億人単位で封鎖する空前の厳戒態勢を敷いても封じ込められなかったという現実は重いです。ハーバード大学のMarc Lipsitch疫学教授は「おそらく最終的に封じ込めは不能になるだろう」とThe Atlanticに語り、「今後1年で全世界人口の40~70%が感染してもおかしくない」という大胆予想を発表して大きな反響を呼んでいますよね。ここでおそらく教授が一番伝えたかったのは、「多くは軽症で、まったく症状が出ない人もいる」という但し書きのほうではないかと…。同じような仮説はほかの疫学の専門家からも出ていて、「かぜ、インフル、コロナウイルス」という季節の流行り病に落ち着くという、ひとつの帰結点が示されてもいます。
世論の突き上げを食らって中国政府は「河北省職員が1軒1軒回って症状のある人を隔離します!」と発表しましたが、そこまでしても無症状感染は止められません。21日には医学誌JAMAに、CT検査で正常な人からもうつる事例も出ていますし…。致死率60%の鳥インフルと同じに考えても読み誤るし、社会がいたずらに疲弊して機能不全に陥って、倒産と失業と自殺の二次災害をもたらすだけ。そうなっても不安を煽った人たちは一銭も補償してくれません。
現にインドでは類似の症状でコロナウイルスにかかってると思い詰めた3児の父(50)が家族を守るために自殺し、致死率2%の流行り病で自ら死を選ぶという、まったく釣り合わない悲劇も起こっています。サウジアラビアでも15日、中国人留学生が隔離病棟から身を投げてこの世を去りました。自殺後に届いた検査結果はすべて陰性。もちろんコロナウイルスの死亡にはカウントされていません。
Sources: Miami Herald, POLITICO, @gelles, The Atlantic, Morgen Post
satomi