【空き家問題】
国土交通省の資料によれば、2001年時点で日本全国の空き家は820万戸と言われています。
しかしその内訳をよく見てみますと、木造の一戸建ての空き家は220万戸程度であり、多くは賃貸用の住宅となっています。
NETや報道では空き家800万戸という数字だけが独り歩きしているように思います。
また空き家の課題は、その形態
木造一戸建てなのか、
賃貸用のアパートやマンションなのか、
商店街の店舗なのか
ごとに整理して課題を解決する必要があると思います。
また地域や場所により、その解決方法も違ってくると思います。
以前、『なぜ空き家が多いの?』というblogを書かせていただきましたが、相続の課題と土地の固定資産税の課題があることをお伝えしました。
もう一つ。接道のために建て替えができない、という建築基準法の課題もございます。
数年前になりますが東京の杉並区の物件で、家を建て替えたいとの相談を受けたことがあります。しかしその土地は道路に1.8mしか接道していないために、建て替えができない土地ということがわかり、行政とも相談しましたが、結局のところ建替えは不可との結論に至りました。
リフォームして住むことも検討しましたが、シロアリ被害があり、雨漏りの課題、基礎が無筋に加え、柱梁・筋交いなどの構造的な課題もあり、費用面で断念しました。
※建築基準法上、道路に2m以上接道していなければならない、という規定があります。
お隣の所有者に20㎝程度の土地を購入させていただけないか、相談もしましたが、お隣の土地にも住宅が建っており、いますぐ20㎝分の土地を売却することはできない、との回答でした。
お隣の住宅を建て替える際に、20㎝分の土地を売却することも検討してもよいとのお話でしたが、建替えの時期も未定とのこと。またそのようなよいお話も親世代から子世代に代替わりすることにより、果たしてどのようになるか、わかりません。
杉並区の土地は閑静な住宅街にあり、駅にも比較的近く、買い物や学校、病院などへのアクセスもとてもよいところです。
土地の所有者は建て替えてそこに住みたいと思っていても、建築基準法上の規定により、建て替えができないために、空き家になったまま、放置してしまっているお家もあります。
【空き家問題をなんとかしなければ】と空き家が多くなってきているのだから、新築ではなく、空き家の有効利用をしましょう!という風潮には少し疑問があります。
まず最初にも書かせていただきましたが、空き家の種類・内訳をきちんと整理して考える必要があると思います。
また地域性や場所なども加味して議論しなければ、最適な回答はないように思います。
また以前のblogでも書かせていただきましたが、既存住宅には
【構造的な課題】、【温熱環境の課題】をきちんと年代別に確認した上で、その利用方法を考える必要がある考えております。
カテゴリー:【我が家の地震対策】参照
https://blog.goo.ne.jp/admin/entries?ymd=&category_id=977de149ceb3413372a9089ada7d5189#block1
カテゴリー:【我が家の暑さ・寒さ対策】参照
https://blog.goo.ne.jp/admin/entries?ymd=&category_id=5433681794adab72e9e1193d81293876#block1
そして、現在、空き家の50%以上を占めている【賃貸用物件】に対してはその質、構造的な課題も確認した上で、どのような利用方法があるのか、検討が急務と思います。
また現時点でも賃貸住宅の供給が続いている現状を鑑み、供給側へも現状をきちんと把握していただきながら、供給方法を考えていただく必要があるように思います。
駅前や商店街のシャッター街の空き家問題は、また別の解決方法が見つかりそうです。
商店街の活性化のためにも、魅力的な街並みの形成のためにも、なんらかの解決方法が必要と思いますが、構造的な課題はきちんとクリアすることをおススメします。
店舗利用の場合はそれほど暑さ・寒さ対策を考えなくてもよい場合もありそうです。※光熱費はかかりそうですが、、、。
廃校になった学校などを魅力的な利用をしている事例も散見されます。
また空き家の中にも昔の風情のある魅力的な建物があることも事実です。
空き家とひと言でひとくくりにするのではなく、その種類・内訳ごとに、また地域や場所柄ごとにいろいろと最適な解決方法はみつかりそうです。
ただ、空き家には【構造的な課題】、【暑さ・寒さの課題】をきちんと考えた上で最適な利用方法、解決策を考えましょう。
ひと・すまい・くらし一級建築士事務