のごみ処分「世界最大の地下実験室」行ってみた 中国、砂漠行き交う重機
課題は沿岸部からどう運ぶか
中国は、原発から出る使用済み核燃料の保管状況の詳細を明かしていない。1990年代から稼働する広東省の原発では「敷地内の使用済み燃料プールは既に満杯」との報道もある。新しい原発は巨大なプールを備えているが、一部では、使用済み核燃料を金属容器の中で冷やす「乾式貯蔵」で保管中という。 原発を使う国々が頭を悩ます「核のごみ」の行き先。中でも高レベル放射性廃棄物は万年単位で貯蔵する必要があり、各国で試行錯誤が続く。日本では昨年、北海道の2町村が最終処分場の候補地に名乗りを上げ、論議を呼んでいる。 中国政府は、日本より早い80年代半ばから最終処分場の候補地選定を始めた。日本と同様に使用済み核燃料を再処理し、再利用できない放射能レベルの高い廃液をガラス固化体にして地中深くに埋める方針とされる。ただ「再処理や地層処分の情報はほとんど公開されていない」と日中経済協力会北京事務所の真田晃・電力室長は指摘する。 関係者によると、新疆ウイグル自治区など六つの候補地から、降水量や地殻変動が少ない北山地区が最有力視され、試掘を含む集中調査が行われてきた。中国の原発は沿海部に集中しており、最終処分場が北山地区に完成した場合、危険な核のごみをどうやって運ぶかが課題になる。北京の電力関係者は「中国全土に整備された鉄道網を使えばリスクは低い」と語った。
最終処分場計画「知らない」
10年前の東京電力福島第1原発事故後、中国の人々にも放射能汚染への恐怖心が広がった。2016年に江蘇省連雲港市で再処理工場建設の計画が浮上した際は住民が猛反発し、凍結に追い込まれた。 その苦い経験が念頭にあるのか。北山地下実験室を造る北京地質研究院の幹部は昨年、「建設過程で地元の民族資源や文化資源と科学技術を組み合わせ、観光地化する」という構想を明かした。迷惑施設の整備に見返りを用意する手法は日本と同じかもしれない。 既定路線のように見える最終処分場計画。だが、住民への説明は追い付いていないようだ。「核のごみの処分場? 知らない。こんな所を観光地にできるわけがない」。羊を放牧する住民は素っ気なく答えた。 (甘粛省酒泉で坂本信博)