説教でたどるパウロの生涯

 「使徒行伝」などの説教を通して、パウロの生涯を学び、信仰生活の道しるべとします。

決別から和解へ

2025-01-26 19:40:00 | パウロの生涯に学ぶ
パウロの生涯(08)

決別から和解へ
(パウロとマルコ)


※この項目は説教というより、解説になります。

※聖書は特記しない限り、新改訳2017(新日本聖書刊行会)を使っています。

※この項目は、いのちのことば社の『新聖書辞典』を参考にしました。


(新改訳2017の巻末地図より)


戦線離脱

「パウロの一行は、パポスから船出してパンフィリアのペルゲに渡ったが、ヨハネは一行から離れて、エルサレムに帰ってしまった。」(使徒13:13)"

パウロたち一行は、キプロスを離れ、小アジアに渡り、ペルゲに着いた時に、助手のマルコが離脱し、エルサレムに帰ってしまいました

早速の離脱でした。

マルコがなぜ戦線を離脱して、エルサレムに帰ってしまったのか、その理由には諸説あります。

1.ホームシックになった。

2.キプロス伝道だけだと思っていたのに、小アジアの、しかも奥地にまで行こうとした。キプロスの困難を見て臆病になった。

3.上記2との関係で、主導権がバルナバからパウロに移ってしまったのが気に入らなかった。(バルナバが軽んじられている)


エルサレムでの信徒時代

ここで、伝道旅行に参加する前のマルコについて見ていきます。

マルコは、キプロス出身のバルナバの従兄弟でしたが、
実家がエルサレムにあるので、
エルサレムに生まれ育ったと思われます。
家庭は裕福であったが、父親は若くして亡くなったらしく、母に育てられた。
 
ペテロは手紙の中で、
私の子マルコが、あなたがたによろしくと言っています。」(Ⅰペテロ5:13)
と書いているので、
マルコはペテロの導きによって、クリスチャンになり、洗礼もペテロから受けたであろう。

最後の晩餐は、マルコの実家の2階で行われたので、マルコは公生涯のイエス様、さらには復活のイエス様も直接見知っていたと思われます。


伝道者として

「エルサレムのための奉仕を果たしたバルナバとサウロは、マルコと呼ばれるヨハネを連れて戻って来た。」(使徒 12章25節)

使徒の働きによれば、
バルナバとパウロがエルサレムに行ったときに、伝道旅行に連れて行くつもりで、エルサレムにいたマルコをアンティオキアに連れて行った。

なぜマルコを伝道旅行に連れて行ったのかというと、
マルコは公生涯のイエスを見知っていたので、証人として証しするためであったであろう。



パウロとの決別

    「バルナバは、マルコと呼ばれるヨハネを一緒に連れて行くつもりであった。
    しかしパウロは、パンフィリアで一行から離れて働きに同行しなかった者は、連れて行かないほうがよいと考えた。
    こうして激しい議論になり、その結果、互いに別行動をとることになった。バルナバはマルコを連れて、船でキプロスに渡って行き、
    パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられて出発した。」
     使徒の働き 15章 37〜40節


    マルコが戦線離脱してエルサレムに戻ってから、2〜3年後のこと。
    エルサレム会議を終えたパウロたちは本格的に異邦人伝道をすべく、2回目の伝道旅行を決行しました。

    しかし、誰を連れて行くかということについて、バルナバはマルコを連れて行きたかったが、
    パウロはかつて離脱した者は連れて行かないほうがいいと言って反対した。

    結局、バルナバとパウロは別行動を取るようになり、マルコはバルナバと一緒にキプロスに向いました。



    パウロの役に立つマルコ

    そして、その後、10年ちょっとした頃にローマの獄中で書かれたパウロの書簡には以下のように記されています。

    「私の同労者たち、マルコ、アリスタルコ、デマス、ルカがよろしくと言っています。」(ピレモン24)"

    「私とともに囚人となっているアリスタルコと、バルナバのいとこであるマルコが、あなたがたによろしくと言っています。このマルコについては、もし彼があなたがたのところに行ったら迎え入れるように、という指示をあなたがたはすでに受けています。」
     コロサイ人への手紙 4章 10節

    決裂から10年余り経った頃、
    マルコはパウロの良き働き手となっていました。
    パウロの「同労者」と言われ、さらにパウロの名代としてコロサイ教会に派遣されようとしていた。


    パウロが処刑される直前に書かれたテモテへの第二の手紙によると、
    「ルカだけが私とともにいます。マルコを伴って、一緒に来てください。彼は私の務めのために役に立つからです。」         (Ⅱテモテ4:11)

    ここでパウロはマルコのことを「彼は私の務めのために役に立」と言っています。 
    そして当時、小アジアのどこかにいたテモテに、コロサイにいるマルコを連れて一緒にローマに来てほしいと言っています。


    伝承によると、マルコはその後、エジプト最大の都市アレキサンドリアで伝道活動をして、教会の基礎を築いたと言われています。

    その後、マルコは自分が直接見聞きしたり、ペテロを通して聞いたりしたイエス様の逸話をもとにして『マルコの福音書』を執筆しました。



    所 感

    ピレモンへの手紙の中でパウロは、逃亡奴隷のオネシモについて、
    「彼は、以前はあなたにとって役に立たない者でしたが、今は、あなたにとっても、私にとっても役に立つ者となっています。」  (ピレモン11節)
    と言っています。

    神様は役に立たない人間を役に立つ者に造り変えることがお出来になります。

    おそらく背後にはマルコの母教会であるエルサレム教会の信徒たちの厚いと配慮があったと思います。
     
    また、パウロが2回目の伝道旅行をしている間に、マルコはバルナバと一緒にキプロス伝道をしていました。

    この時にマルコは、バルナバに励まされながら、伝道者として訓練され、鍛え上げられていったと思います。

    そして10数年の年月を経て、パウロの役に立つ者に変えられていったのです。

    私たちは役に立たない人がいても、
    神様はどんな人でも造り変えることがお出来になると信じて、
    その人のために愛と忍耐をもって祈り
    また、その人が決して孤立しないようにバルナバのように配慮していきたいと思います。

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    初陣での勝利

    2025-01-26 09:15:00 | パウロの生涯に学ぶ
    パウロの生涯(07)

    初陣での勝利(キプロス宣教)


    ※聖書は特記しない限り、新改訳2017(新日本聖書刊行会)を用いています。

    ※聖書内でサウロと表記されている場合でも、説教内では便宜上パウロと表記しています。


    (新改訳2017の地図より)


    「二人は聖霊によって送り出され、セレウキアに下り、そこからキプロスに向けて船出し」(使徒 13章4節)

    セレウキア港からキプロスまでは100キロ弱の距離です。
    海外宣教の初陣の地にキプロスを選んだのは、キプロスがバルナバの出身地であったからでしょう。

    地理的な知識(土地勘)もあり、人脈などもあったと思いますので、バルナバはそれを宣教に利用しようとしたのかもしれません。

    しかし、この伝道旅行が人間的な計画やプロジェクトではなく、聖霊なる神様の一方的なプロジェクトであったということは、まもなく分かります



    ユダヤ人伝道

    「サラミスに着くとユダヤ人の諸会堂で神のことばを宣べ伝えた。彼らはヨハネも助手として連れていた。」(使徒の働き 13章5節)

    キプロスは大部分がギリシア人なのですが、パウロたち一行は、ユダヤ人の会堂で伝道をしました。

    パウロたちは、旧約聖書(当時は聖書と言えば今の旧約だけしか無かった)の知識がある人たち――全知全能の唯一まことの神様を知り、メシアを待ち望んでいる人たち――を伝道の対象として、
    彼らに「ナザレのイエスこそが待ち望んでいたメシアである」と宣べ伝えていたようです。



    聖霊主導の宣教

    「島全体を巡回してパポスまで行ったところ、ある魔術師に出会った。バルイエスという名のユダヤ人で、偽預言者であった。
    この男は、地方総督セルギウス・パウルスのもとにいた。この総督は賢明な人で、バルナバとサウロを招いて神のことばを聞きたいと願った。
    ところが、その魔術師エリマ(その名を訳すと魔術師)は、二人に反対して総督を信仰から遠ざけようとした。」(使徒の働き 13章 6〜8節)

    パウロたちはユダヤ教の会堂で、ユダヤ教の知識がある人たちを対象にして伝道していましたが、
    聖霊は彼らの思いをはるかに越えて働かれました

    まさに「天が地よりも高いように、わたしの道は、あなたがたの道よりも高く、わたしの思いは、あなたがたの思いよりも高い。」(イザヤ 55:9)のです。


    ローマ帝国からキプロス総督として派遣されていたローマ人のセルギウス・パウルスという人(以下、総督と言います)が、バルナバとサウロを招いて神のことばを聞きたいと願ったというのです。(7節)

    これは、まさに聖霊がパウロたちより先回りをして働かれたと言ってよいでしょう。


    しかし、宣教の業が祝福されようとすると、悪魔(サタン)も、それを妨害しようと仕掛けてきます。

    実は総督には、バルイエス、またの名をエリマという、お抱えの魔術師がいたのです。昔の日本でも政治家が陰陽師を抱えていたのと似ているかもしれません。

    魔術師エリマは、もしご主人のセルギウス・パウルスが正しいまっすぐな道に行ってしまったら、自分はクビになってしまうと思いました。

    そこで、エリマは、総督を正しい信仰から遠ざけて、総督の心が再び自分に向くようにしました。

    「ところが、その魔術師エリマ(その名を訳すと、魔術師)は、二人に反対して総督を信仰から遠ざけようとした。」(使徒の働き 13章 8節)

    しかし、ここで神様が介入され、神様が総督の入信を妨げようとするサタンの働きをやっつけてくださいます。

    本当に映画でも観ているような、手に汗握るハラハラする展開です。
    9節から11節に、パウロと魔術師の対決が記されています。
    (ここから唐突にサウロの名前はパウロに変わります。)


    「すると、サウロ、別名パウロは、聖霊に満たされ、彼をにらみつけて、
    こう言った。「ああ、あらゆる偽りとあらゆる悪事に満ちた者、悪魔の子、すべての正義の敵、おまえは、主のまっすぐな道を曲げることをやめないのか。
    見よ、主の御手が今、おまえの上にある。おまえは盲目になって、しばらくの間、日の光を見ることができなくなる。」するとたちまち、かすみと闇が彼をおおったため、彼は手を引いてくれる人を探し回った。」

    総督の入信を妨げようとするサタンの働きを、神様が打ち破ってくださいました。
    サタンがいかに妨害を仕掛けて来ようとも、聖霊なる神様は、パウロたちの働きを助けられたのです



    現代への適用

    私たちが聖霊なる神様主導で伝道や奉仕の業を始めていくなら、
    聖霊なる神様が先頭に立って働かれ、聖霊が私たちを助けてくださいます。
     
    旧約聖書のサムエル記第一の17章には有名な少年ダビデと巨人ゴリアテとの対決がありました。
    そこでは、ダビデは「この戦いは主の戦いだ(Ⅰサムエル17:47)」と言って、いつも使い慣れている石投げ一つで、ゴリアテをやっつけました。
    神様が働かれたのです。


    私たちも福音宣教の働きの中で、あるいは教会の奉仕などで、サタンの妨害に遭うことがあります。
    日常生活や仕事でも、障害物や壁が立ちはだかって、うまく進まないということがあります。
    病気になってしまうこともあります。

    そのような時には、自分の知恵や力で何とかしようとするのではなく、
    まず神様が働いてくださるように、神様に祈りましょう。
    牧師や教会で祈ってもらえるなら、祈ってもらいましょう。

    主イエス様も、
    「あなたがたのうちの二人が、どんなことでも地上で心を一つにして祈るなら、天におられるわたしの父はそれをかなえてくださいます。」(マタイ 18章 19節)
    とおっしゃっておられます。


    信仰の勝利

    さて、神様が魔術師エリマをやっつけてくださいました。
    そして
    「総督はこの出来事を見て、主の教えに驚嘆し、信仰に入った。」(使徒13:12)
    と書いてあります。

    パウロたちの初陣は神様が助けてくださって、見事勝利を獲得することができました。

    しかし、思いがけない出来事も起こりました。それはまた次回に。


     
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