江戸時代、浪人になった侍は数知れず居たが、再び禄を食むことが出来たのはほんの僅かだったとされる。
時代劇では、そういう先の見えない浪人が道を踏み外し、魔道に落ちるシチュエ-ションが定番中の定番。労咳の女房の治療費を得るため要人暗殺の一味に加わる。そいでもって主人公と切り結ぶが敗れ、「妻には内密に・・・」とか繰り言残して絶命。そんな演出見飽きたわい(笑)
当然のことながら、その手の浪人役を演じるのは知名度がある役者が多いのだが、悲しいかな撮影当時は第一線(ゴ-ルデンドラマのレギュラ-クラス)からは退いている状態の方が結構いらっしゃる。何とも言えない悲哀に満ちていて、浪人の説得力を感じざるを得ない。制作サイドもそのあたり判っててオファ-出したのかと勘繰りたくもなる。
スタ-ダムから落ちた役者の絶望感など市井の我々には想像もつかないが、筆舌に尽くし難いものがあるのだろう。ちやほやしていた連中が掌を返したように消え失せてしまうのだから。そら刹那的になりますわな。
浪人役とは違うが、お嬢(美空ひばり)が里見浩太朗主演の「大江戸捜査網」にゲスト出演したことがあった。お嬢は銀幕スタ-だったこともあり、映画より格が落ちるTV時代劇への出演は滅多なことでは無かったが、当時の彼女は大変な難事だったんである。
身内の不祥事から紅白歌合戦の出場が途切れ、あおりを受けて仕事が激減していた時分でもあった。古巣の東映が気をつかったのかもしれない(ひばり映画で大儲けさせて貰ってるもんな)。むろんいい役どころだったが、疲れ切っている感ありありで痛々しかった。精神的にもっともツラい時期だったのではないか。
「宮仕えはツライよ」なんて自慢でしかないからな。浪人(非正規労働者)よりツライものなんてこの世に無ぇんだYO!
毒を吐きつつ文を締める。
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