(その2より)
避妊薬飲んでるから膣内に射精して良い、と言う朝比奈さん(大)の言葉を鵜呑みに信じて、愚息を蜜壷に挿入したまま己の欲望を吐き出す覚悟を決めた。
「は、早くキテよぉ。 あらしぃ、もうらめぇ……」
軽く腰を浮かせつつ両足までも俺の腰に絡め、完全に俺の愚息を抜かせまいとする朝比奈さん(大)。 またしても呂律が回ってないのは身体の揺れる所為か、それとも快楽に因る物なのか。 或いはその両方なのか。
ドピュ。 ビュ、ビュビュッ。
「はあんっ、あついのぉ。 たっぷり膣内にキテるぅ、うふ、うふふふっ」
陰茎が震えると共に、答えを導き出すまで待てないとばかりに白濁液が勢いよく膣内に放出され、ある種の達成感が俺の全身を支配する。 そして朝比奈さん(大)は、自身の望みが叶ったのか嬉しそうに微笑みながら、チカラを抜いてベッドに沈みこんだ。 但し、下半身は繋がったまま――
方や俺は射精に対する脱力感はあれど、肩で息をする程の体力の消耗や疲労は殆ど無い。 成人向けDVDに出演する男優みたく、事後の息遣いは全く荒くない。 つまり
「キョン君も気持ち良かったでしょ」
「え。 あ、はい」
「でも、まだ満足して無いなぁ」
早漏だったのだ。
童貞で刺激に慣れて無いとは言え、幾ら何でも早いのではないか? 正確に時間を計測した訳では無いが、凡そ五分も挿入から経過して無いだろうか。 しかし
「キョン君も、でしょ」
「え?」
「だってホラ、まだビクンビクン波打ってるもの。 わたしの膣内で」
そう、俺の愚息は主の不満や不安なんぞ意に介する事も無く、萎えずに朝比奈さん(大)の蜜壷内部で第二次攻撃の指令を今か今かと待っている様であった。 まるでリベンジしたいと訴えてるかの如く、いきり立ったままだ。
「じゃあ今度は、わたしが上になるわね」
と言いながら、ゆっくりと上半身を起こした朝比奈さん(大)は、軽く俺の唇にキスをした後、仰向けになった俺の上に跨った。
艶やかに長く伸びる束ねられた栗色の髪が、左肩から重力に従い胸元へと垂れ下がる。
「んんっ」
その髪を左手でかき上げながら一旦軽く腰を浮かせる朝比奈さん(大)。 そして再び腰を沈めると
「んはぁんっ!」
徐々にリズムを刻む様に腰を上下し始めた。
その動きに対して一テンポずれて、たわわに実った胸元の果実が激しく上下にユッサユッサと揺れ動く。 俺は見上げる格好で、その様子を眺めて居るが、何と言うか改めてその胸の大きさに圧倒されると言うか、壮観な眺めと表現した方が良いのか
「やんっ、ジロジロ見ないでよぉ」
「あ、すみません……」
視線に気付く程凝視してたのだろうか、それこそハルヒ言う所の間抜け面で朝比奈さん(大)の特盛に見入ってしまったのか。 いやはや、弁明のしようも無い。
「なんてね、うふふふっ。 良いのよ別に。 それより」
やおら伸ばして来た右手で俺の左手を掴んだかと思うと
「さっきみたいに、し、て」
自身の右胸へと俺の手を押し当てた。
またしても程よく柔らかい感触と温かさが手のひらの神経を支配する。
「あん、あんっ、はあんっ」
リズミカルに揺れていた乳房を半ば強引に押さえる様に揉み始める。
朝比奈さん(大)の右胸深く俺の左手にある五本の指全てが沈み、柔和な乳房が指の隙間から零れ落ちるのではないかと錯覚させる程にはみ出て来た。
さて、残された俺の右手が手持ち無沙汰気味となってしまった。
そして今だ激しく上下運動を繰り返して居る朝比奈さんの左胸の処遇をどうするか……では俺の右手も左手同様に胸部を責めようか。 そう結論付けた矢先、思いもよらぬ光景を目撃した。 朝比奈さん(大)は自らの左手で自身の左乳房を持ち上げ
「あんっ、んんっ、んんっ」
何と乳首をクチに含んだのだ。
凄い、これこそ驚愕だ。 朝比奈さんが豊満なバストサイズであるが故に出来る芸当だろう。
「んん、んんっ、んむぅ」
乳首を吸っているから猥声もぐもった音となり、その情景は朝比奈さんが快楽に抗う様に思え、こちらの嗜虐心を殊更に刺激する。
そこで持て余している右手を朝比奈さんの腰に回し、軽く掴む。 続いて今まで休めていた己の下半身を朝比奈さんの腰に突き上げる様に動かし始める。
「んんっ、ぷはぁん、あん、んふむぅ」
悦楽に酔いしれてる朝比奈さん(大)の唇が時折乳房から離れ、その都度喘ぎ声が漏れ聞こえる。 はてさて、何時まで耐えれるのかな?
俺は幸いな事に射精に対する耐性が身についたのか、はたまた単純に精巣に精液が充填されてないだけなのか、射精感は当分訪れそうに無かった。 よって存分に朝比奈さんを責める事に集中出来る状況だった。
折角のポニーテールが堪能出来無いのは些か残念ではあるが、改めて見ると女性上位の体位も悪くは無いな。
激しいセックスで乱れた髪、普段の表情から想像出来無い悦楽に酔う顔、しなやかで艶やかなボディライン、そして精液と愛液が混合しクチュクチュと粘着質な音を立てる結合部。 その全てを文字通り下から上まで舐める様に見渡せる。 これが正常位だと攻める事に神経が集中してしまって見た目麗しい朝比奈さんのゴージャスボディを鑑賞する余裕なんぞ捻出出来なかったからな。
等と、半ば冷静に考察を重ねつつ朝比奈さん攻略に精を出してたが
「ぷはぁあ」
とうとう耐えられなくなった朝比奈さんの唇から乳房が離れ、再度リズミカルな動きを始めると
「あん、らめぇ、またイクぅ、イッちゃうのぉ……」
両手で自らの髪を掻き乱して、またしてもオーガズムに到達しようとしてた。 しかし俺は射精感が来ない事を良い事に攻撃の手を緩めなかった。
「やんっ、そんなぁ、はげしくされたらぁ、もう、らめぇ!」
喘ぐ声が絶叫へと変化を見せた、その刹那
「はああああん!!」
朝比奈さんは脱力し俺に向かって緩やかに倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息も絶え絶えになり視点も定まらないその姿は、まさしく絶頂に達したんだな。 そう確信した俺は、掻き乱された栗色の髪を優しく撫でながら、腰を動かすのを止める事にしたのだった。
やはり雑誌の記述やアホの谷口が言った通り、セックスで得られる快感は男性より女性の方が上回るのだろうか。 俺がオーガズムで達する絶頂感の何倍もの快楽を朝比奈さん(大)が体感してるのは明白だ。
しかし今更ながらに思ったが、朝比奈さん(大)は何故俺とセックスがしたかったのだろうか。
確かに朝比奈さんは俺の事を好きと言ったが、今の俺がハルヒと付き合ってるのは既定事項として知ってるとも言ってた。
俺も俺で彼女が居る身分で何をやってるんだ。 いくら成り行きとは言え節操無いな。
尤も朝比奈さん(大)さえ他言しなければ俺としてもハルヒ含め他の連中に黙っておいて、この出来事を墓場まで持って行けば良いだけの事だ。 なあに、誰にだって人生に一度や二度の過ちはあるだろ? これもその一つって事さ。
「ねぇ、キョン君」
独り反省会を脳内で繰り広げてた俺に、呼吸を整えた朝比奈さんが耳元で囁く。
「はい」
「わたしとエッチした事、後悔してる?」
「え!?」
「だって今のキョン君、少し困った顔してたもの」
「あ、いや、その……」
「涼宮さんの事、好きなんでしょ。 解ってるって」
「…………」
「でも今は、わたしだけを見て欲しいの」
それまで俺に覆い被さってた身体をゆっくり起こすと、腰を浮かせ愛液の溢れる蜜壷と繋がってた俺の陰茎を
「んんっ」
目を閉じながら軽く甘い声を発し、くちゅくちゅと粘着質を想像させる音を立てながら名残惜しそうにゆっくり引き抜いていく。
俺の愚息の先端と朝比奈さん(大)の陰唇とを精液と愛液の混合したドロドロとした液体が糸を引いて伸び、徐々に細くなりやがて途切れた。
今まで射精してた俺のスペルマはどの程度、朝比奈さんの膣内に残されて居るんだろうか。 そんな疑問は愚問とばかりにスルーする様に朝比奈さんはグラマラスな身体を俺の寝転ぶ右横に移動させ、背中を向けベッドの上に足を崩して座る。
続いて髪を束ねていたゴムを外し、左手首に通した。
激しい動きでかなり乱れた栗色の髪がふわりと、まるで籠の中にいた鳥が放たれるが如くに朝比奈さんの肩から、滑らかな背中のラインに沿う様に腰へと舞い広がる。 そして両手で軽く髪を梳く様に上げた後、左手で髪を束ね、何時の間にか右手で持っていたゴムで纏めると
「どう? 簡単だけど、下ろした髪より好きでしょ。 ポニーテール」
「あ、は、はい」
一連の作業を呆気に取られながら眺めてた俺に対し、朝比奈さんは頭を軽く左に向け、背中越しに不意な質問を投げかけて来た。
うむ、確かに優美な背中のラインに沿って下りた髪も中々セクシーで良かったが、やはりポニーテールは良いものだ。
今まではうなじのラインに惹かれてたが、裸体の背中と合わせたトータルバランスは結構な破壊力だ。 改めてポニーテールの魅力を認識させて貰った気がする。 うむ眼福、眼福。
「なぁに、見とれちゃって。 恥ずかしいなぁ」
「え、あ、すみません」
「冗談よ。 キョン君に見て貰えるなら構わないから」
身体をくねらせ上半身を俺に向けて、朝比奈さん(大)は柔和な笑みを浮かべつつ
「ねぇ、もっとシたい?」
生乾きの粘着液を纏った、いきり立つ俺の愚息を左手で軽く撫でながら優しい口調で俺に囁く。
この状態でNoと言える男は男を捨てるべきだろう。 ええい、こうなったら全てを忘れ何処までも快楽の海を溺れるまで行ってやろうじゃないか。
「はい」
戸惑う事無く返答する俺に朝比奈さんは軽く頷くと、向きを換えず四つんばいになり、滑らかなラインを描くお尻を突き上げる様に俺に向け
「……きて」
それに呼応する様に俺も上半身を起こし膝を立て、陰茎を右手で軽く持ち朝比奈さん(大)の腰に近づける。 今まで見えなかった菊門に軽く愚息の先端を当てがった後、ゆっくりと愛液溢れる蜜壷へ陰茎を滑らせ
「ひゃうんっ!」
「うっ」
挿入時に軽い抵抗を感じた後、一気に根元までインサートすれば
「はぁぁぁぁん!!」
「うをっ!?」
な、何だこれは。
先程とは全く違い、乳首をいじったり他に刺激を与えずとも愚息に締め付けられる感触があった。 とても同じ膣内に挿入したとは思えない圧迫感。
「はぁん、あん、あんっ、あんっ……」
適度に弾力を感じる朝比奈さんのヒップを両手で鷲掴みにし、グロテスクな陰茎を咥える様に飲み込む陰唇を眺めながら、先ずはゆっくりと腰を前後させると
「あんっ、もっとぉ、もっと激しくしてぇ!」
またしても甘美な声を上げ乱れ始める朝比奈さん(大)。 俺が腰を動かすスピードを徐々に速めるとそれに比例して上半身を支える腕のチカラが弱まり、今にも顔面がベッドのシーツに付きそうだ。
するとベッドに押し潰されたマシュマロみたいに柔らかい豊満なバストが朝比奈さんの脇越しに見え始める。 うむ、やはり特盛はスケールが違う。
まるで飢えた肉食獣が草食動物に襲い掛かる様に、容赦無く俺は朝比奈さん(大)を攻め続ける。
「ひゃあん、キョンくぅん、もっとぉ、もっとキテぇ! ちょうだい! せーえきいっぱい膣内にちょうだい! 出してぇ! いつもみたいに、アタマのなか真っ白になっちゃうくらい、たくさん出してよぉ……」
すっかり顔面を枕に沈め、両手でシーツを鷲掴みにして朝比奈さん(大)は絶叫に近い喘ぎ声を上げる。 それに呼応する様に下半身を叩きつけるスピードを限界まで速めた。
視覚・聴覚・触覚も刺激されれば行き着く先は、ただ一つ
「あ、朝比奈さん。 で、出るッ!!」
「はぁん、だしてぇ! いっぱい、あついの出してぇ!! わたしの膣内をキョン君のせーえきでいっぱいにしてぇ!!」
――挿入から愚息が快楽に対し陥落するまで、またしても呆気無く感じたのは俺が性行為に不慣れなだけだと思いたい。
「んあっ、いくぅ、いっちゃうぅ!!」
タイミングを合わせた訳では無いが二人同時にオーガズムに達し、今度はうつ伏せの体勢で朝比奈さんがベッドに全身を沈ませ、続いて俺も朝比奈さんに全体重を掛けない様に両腕のチカラを緩める事のないまま、ゆっくり朝比奈さんの背中に身体を重ねる。
丁度、枕元で互いの顔が近付いたのを合図に、どちらからともなく唇を合わせる。
まるで小鳥がついばむ様に、呼吸の乱れが収まるまで、何度も、何度も……
窓の一切無いベッドルーム。 名実共に外界と隔離された部屋に朝比奈さん(大)と二人きり。
以前、長門のマンションの一室で朝比奈さん(小)と共にした事があったが、その時と状況が全く違う。
一つのベッド、一糸纏わぬ姿、そして一つに繋がった身体。
結局、何度セックスしたのかも忘れる程に互いを貪り続けていた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
備え付けのティーバッグでお茶を淹れてくれた朝比奈さんから、ベッドに横たわった身体をゆっくり起こし湯呑みを右手で受け取る。 適度に冷まされた液体を口に含むと、激しく身体を動かして乾いていた喉に滲み渡って行くのを感じた。
「美味しいですよ」
「ティーバッグで淹れたのに?」
「朝比奈さんが淹れてくれたお茶だから、ですよ」
「うふふっ、ありがと」
我ながらキザな台詞を吐いたものだと思いながらも、本音だから仕方無い。 数口に分けて飲み干し、湯呑みを枕元にあるコンソール・ボックスの横に置く。
もう、この部屋に何時間滞在してるか? なんて、どうでもいい。 それより気になるのは体力を消耗した故に小腹が空いた事と、慣れない動きをした事によって股関節に違和感がある事だろうか。
「ごちそうさまでした」
「おかわり、いる?」
「あ。 では、もう一杯下さい」
湯呑みを朝比奈さんに手渡すと、朝比奈さんは恥ずかしさを見せる事無く、一糸纏わぬ姿のまま再びポットの前に向かって行った。
一言で表すなら滑らかな曲線美と在り来たりな表現になってしまうが、そんな艶めかしい後ろ姿をベッドの淵で腰掛て眺めて居たが、落ち着きを取り戻した所為で、ひたすら行為に励んでいた時には夢中で忘れていた事を思い出した。
先ず、朝比奈さん(大)は俺とハルヒが付き合いだした事を知った上で俺の事を好きと言った。 そして、これはあくまでも俺の予想ではあるが朝比奈さん(大)には現在交際してる男が居るであろう事。 更に行為の最中に時折、俺を何故か本名で呼んだ事。
「所で朝比奈さん」
「ん、なあに?」
全裸のまま、甲斐甲斐しくお茶を淹れていた朝比奈さんは丁度作業を終えたのか、此方を向き優しい声で答える。
「俺とハルヒが結ばれるって言ってましたけど、そんな未来の事を話して大丈夫なんですか」
例え禁則事項であろうとなかろうと、あっさり未来の事を現代人たる俺に対して軽々しく口外して良いのだろうか。 そんな素朴な疑問を投げかけてみたが
「え、だって『未来は確定した』って言ったじゃない。 あ、それとも『既定事項』に抗って涼宮さんと分かれてわたしと付き合う?」
いやいやいや、それはマズいでしょ! そんな軽いノリで付き合うとか言わないで下さい。
「なんてね。 冗談よ、冗談」
お盆に二人分の湯呑みを載せて朝比奈さんが、静々とベッドに戻って来た。 湯呑みから立ち上がる湯気越しに見える胸元にある二つのたわわに実る果実が一歩進む度に軽く上下に揺れる。
「はい、おかわりどうぞ」
お盆をコンソール・ボックスの横に置いて、朝比奈さん(大)は自分の湯呑みを持たず、そのままベッドにうつ伏せの体勢で寝転んだ。
「心配しなくても良いわよ。 それ以上の事は話さないから」
キョン君が聞きたいなら別だけどね。 そう言いつつ悪戯っぽい笑顔を浮かべて顔をこちらに向ける。
「そりゃ自分の未来の事ですから気にはなりますが、止めておきます」
ベッドに横たわった朝比奈さん(大)のゴージャスボディをじっくり鑑賞したい気持ちを抑えつつ湯呑みに手を伸ばし一口啜る。 欲求に素直に従って眺めたら、また朝比奈さん(大)の色香にやられ中毒患者の如く再び甘い果実に手を伸ばす羽目になるだろう。 なけなしの理性を保つ為にも此処で気分転換を図って気持ちを落ち着かせよう。 そう思考してたが
「熱っ!!」
「だ、大丈夫!?」
「あ、はい」
気を利かせて一杯目を温めに淹れてくれた事を忘れて、間抜けにも淹れたてのお茶を直接啜れば熱いに決まってる。 お陰で色香に呆けた気分は吹き飛んだ。 しかし、先程抱いた疑念を払拭する程の威力は無かったらしい。
改めて口にする前に息を数回、湯呑みに吹きかけお茶を冷ます。 朝比奈さんは未だ湯呑みに手を伸ばす事無く、俺の方に顔を向け
「実はね、わたし……」
枕を胸に抱えて、語りかける様にゆっくりと口を開いた。
「付き合ってる人が居るの」
「…………」
予想通りだ。 これで先程の疑問の一つは解消された。
そう思いつつも、この発言に対して俺はどの様に答えるべきか躊躇した。
「やはり居ましたか」と自分の意志そのままに答えるのもどうかと思うし、「どんな人なんですか」などと踏み込んだ発言をするのも躊躇った。 尤も、先にも述べたが朝比奈さんのルックスなら男が放っておく筈も無いだろうし、何ら不思議な事ではないよな。
「そうですか」
此処は無難な回答を選択した。 すると朝比奈さんは俺から視線を外し、枕を抱えた腕のチカラを強めたのか、枕と胸が互いに圧迫し合うボリューム感が一層増すのが見える。
「でもね」
間を置いた後に続いた朝比奈さんの言葉に、俺は耳を疑って正気を無くしそうになった。
「……彼には奥さんも子供も居るの」
「えっ!?」
純粋無垢で愛らしい朝比奈さん(小)からは微塵も想像出来無い展開だ。 なんてこった、朝比奈さん(大)から放たれた大人の色気は擦れた大人の関係に拠る物だったのか?
――腹立たしい。 俺も彼女が居る身分で朝比奈さん(大)に手を出しておいて言うのも何だが、妻子ある身で何をやってるんだ、その下衆野郎は!
朝比奈さんも朝比奈さんだ。 他に男なんて掃いて捨てる程にも居るだろうに、よりにもよって何故、そんな下衆野郎と付き合ってるんだ!! あぁ、忌々しい。
「絶対わたしと結ばれないって解ってるのに、諦める事が出来なかった。 彼が彼女と付き合う以前からずっと見てて……でも二人の仲を引き裂くなんて出来なかった。 だって、それが『既定事項』なんだから」
「…………」
深刻な内容である筈なのに何故か柔和な笑みを浮かべたまま語る朝比奈さん(大)に俺は何も言えず、ただ黙って耳を傾ける事しか出来なくなっていた。
「だから、せめて彼の『初めて』は、ううん『初めて』だけでも、わたしが奪いたい。 そう思ってたんだけど、それだけじゃ満足出来なくて、月に一度だけでもデートして欲しいなんてお願いしたの」
「…………」
「でも、彼女に気付かれそうになったから……うふふっ、女のカンは鋭いもんね。 だからTPDDを使う事にしたの」
「えっ!?」
TPDD、つまりはタイム・プレーン・デストロイド・デバイス(Time Plane Destroyed Device)の略称なのだが、確かそれって複雑な申請やら許可やら必要で気安く使える代物では無かった筈だ。 それが
「彼と会ってTPDDを使って時間移動してデートしたら、また元の時間に戻るの。 そうすれば、表面上は何事も無かった様に振舞えるもんね」
まさか、そんな下らない事で使うとは。 一体どうしちまったんだ、朝比奈さん(大)は? そこまでして、そんな下衆野郎と逢瀬を重ねたいのかよ!
しかしながら良くもまぁ、そんな悪知恵が思いついたもんだ。 確かに時間表面上は『朝比奈さん(大)と会ってない』事になる訳だし、よって浮気がバレる心配は無用と言う訳か。 いやはや、便利な物だな。 TPDDは。
「そうすると人間って欲が出て来るのよね。 月に一度じゃ満足出来なくなって、週に一度になって、今では殆ど毎日会ってるもの」
「はぁ」
此処まで来ると最早怒りを通り越し呆れ果てるしかない。 そりゃ溜息も出尽くすってもんさ。 朝比奈さんも大概だが、そいつも朝比奈さん(大)の色香に毒気をすっかり抜かれてるんじゃないか、とさえ思えて来たぞ。 うむ、俺もこの色香に惑わされない様に注意せねば。
しかし
「所で、その相手は家庭と朝比奈さんとの関係を両立させてる訳ですよね」
「そうよ。 仕事もキチンとして奥さんも大事にして、休日には家族サービスですって。 ホント表向きは理想のパパって感じよねぇ」
それに、と続けて言いながら朝比奈さんは物欲しそうな眼差しを俺に向けつつ、右手を俺の股間に伸ばし
「そう言えば今度、三人目のお子さんが生まれるってハルヒさんが言ってたわね」
愚息を、またしても弄び始める。
「ハルヒが?」
「凄いわよねぇ」
いやいや朝比奈さん。 別に俺が三人も子供を孕ませた訳じゃないんですから、愛おしそうに俺の愚息を撫でないで下さいよ。 それとも何ですか、未だ欲求不満なんですか? だったら朝比奈さん、これを機会にちゃんとした彼氏でも作って……なんて、それが出来るんならしてるんでしょうね。 愚問だったな、これは。 そうでなければ、不倫なんて愚行をする必要なんて無い筈だから。
しかし、ハルヒから「三人目の子供が生まれる」なんて聞くと言う事は、未来でもハルヒと朝比奈さんの関係は続いてて、しかもハルヒが知ってる男が朝比奈さんの不倫相手と言う事になる訳だよな。 すると朝比奈さん(大)の不倫相手は俺の知ってる奴って事か、もしかして。
(その4・最終話へ続く)
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