夜明けのダイナー(仮題)

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SS:埋めネタ「ファミレス午前3時」

2011年03月26日 06時01分44秒 | ハルヒSS:中短編
 
 受験勉強の息抜きに、と言ってキョンと出掛けたENOZのライブ。
 そう、今は高校3年の夏休み。 みくるちゃんは卒業して大学に行ったけど、SOS団は解散せず続いていた。
 古泉君からライブ・チケットを貰ってキョンと2人、大阪にあるライブハウスに出掛ける。
 夕方からのライブは盛り上がってアンコールが3回。
 更にENOZの4人と目が合って言われるがままに、あたしはステージに上がった。
 ……ちょっと恥ずかしかったけど、キョンも居てくれたから――
 
 気が付けば楽屋にまで、お邪魔して
 「「間に合わなかった~!!」」
 終電に乗り遅れた。
 「どうしよう、キョン」
 「どうしよう、って言ったってハルヒ。 歩くには遠いし、ホテル代もタクシー代も無いぞ」
 「甲斐性なし!!」
 「関係無いだろ!? 仕方無いじゃないか」 
 近くにファミレスを見つけたので、入店する。

 ライブ前に食べた早い夕食から、時間が過ぎていたから始めは食事に。 
 でも、胃袋の限界は早くに訪れた。 後はドリンク・バーで始発の時間まで粘らないと。
 向かいに座るあいつは満腹感と疲労で半分、舟を漕いでいる。
 「駄目よ、寝ないで!!」
 今日も朝から大阪市内を色々回ったせい、かな。 キョンが疲れているのは。
 昔は、あたしの思いつきで、こいつを振り回していた。 今は違う。 
 実は緊張している、少しだけど。
 高校に入って、他の誰より。 当然、自分の両親よりも一緒の時間を過ごして来た。
 一緒に居ると落ち着く反面、話をすると舞い上がってしまう。 特に最近……そう、原因は分かっている。

 精神病、『恋』ってやつだ。

 今はただ、あたしから一方的に話を振っている。 
 一緒にいる時間は無駄にしたくない。 一分、ううん一秒でさえ。
 相変わらずの間抜け面で舟を漕ぐ、目の前のあいつ。 
 「エアコンが寒いから」 とドリンク・バーで注いだホット・レモンティーは冷め切っていて、もう飲みたくはない。
 そろそろ東の空が白ずんで来る頃ね。


 実はタクシー代位は持っていたけど、黙って居た。 2人で居たかったから。 
 でも「ホテルに泊まる」なんて、言える訳無いでしょ、あたしの口から!
 勿論、あいつからそんな事を言ってくれる訳も無く――昼間、お金を出させ過ぎた所為よね。 少し反省。
 早く此処を出て眠りたい、布団の中で。 出来れば2人一緒に、夢の世界へ。
 『あの夢の続き』を見たいと願い、指を唇につけてみる。

 キョンは完全に落ちていた。 やれやれよね、あたしを置いて自分だけ寝てしまうなんて。
 顔を横にしてうつ伏せている、あいつの唇に、さっきの指を触れてみる。
 「……ハルヒ」
 どんな夢を見ているのかしら? あたしの名前を呼んで。


 夜が明ける。 そして、また一日が始まる。
 この想いを打ち明けられないままに、太陽はまた地上を照らし始めた。

 
 
 
   <ファミレス午前3時>   ~Fin~

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