夜明けのダイナー(仮題)

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SS:Pure White <その1>

2010年12月29日 23時31分12秒 | ハルヒSS:長編
      <0日目>   (プロローグ)

高校2年生と言う肩書きを持つのも残す所あと3ヶ月となった。
年を明け3学期に入り、通常の高校生ならば最大のイベントと呼べる物が迫っていた。 そう
 
      『修学旅行』   である
 
ハルヒの力が弱まって来ているとは言え、高校2年になって佐々木団の一件に始まり、今更書ききれない程の出来事が数多く発生していた為、俺はこのイベントを失念していたのだ。 班決めを行うまでは。

「今から修学旅行の班決めを行います」
何時の間にか2年5組に入り、更に委員長の座に『復職』していた朝倉涼子の一声により三学期早々、この教室内は騒然としていた。
ちなみに班分けの内容は <30人のクラス=男子3人+女子3人の班×5班> と言う公式が出来上がっていたので、俺・谷口・国木田と言うお馴染みの面子で男子班の1つはあっさり完成したのだが、それと組む女子の班が『ハルヒ・朝倉・阪中』となったのは少々意外であった。
まあ、ハルヒと組むのは既定事項みたいな物で、ある程度予想されていた事ではあったが、残る2人……阪中はハルヒを気に入ってる為、何となく理解出来たが残る枠にまさか朝倉が来るとは――修学旅行が平和裏に終了する事を切に願う。 『血の惨劇』とか、妙なサブタイトルは要らんぞ。
「佐伯さん・大野木さん・成崎さんで組んだから、わたし余ったのね。 でも涼宮さんと一緒だから結果オーライなのね」 良かったな阪中、兎に角宜しくな。
「瀬能さん・剣持さん・西嶋さんで組んだから、わたしはどうしようかと思ったけど。 涼宮さんを直接監視出来るし……宜しくね♪」 ナイフは機内持ち込み禁止だからな、朝倉。
 
ちなみに修学旅行の行き先は『北海道』、4泊5日の行程だ。 当然そんな日程で北海道を全て回れる訳無いので、スキー合宿メインの観光少々と言った感じ、か。

そのスケジュールはと言うと

<1日目> 北高   9:00
         ↓      バス
     伊丹空港  10:00~11:30
         ↓      チャーター便 (ボーイング777・貸切) ※昼食<機内食>
     函館空港  13:30 
         ↓      バス
     函館市内観光 (函館山・外人墓地・五稜郭)
         ↓      バス
     湯の川温泉 17:00 (泊)

<2日目>  出発   8:00
         ↓      バス
        函館駅  9:00
         ↓      団体列車
       ニセコ駅 11:20
         ↓      バス
    スキー場到着後昼食・スキー合宿   ニセコ(泊)

<3日目>  終日スキー             ニセコ(泊)

<4日目>  出発   8:30
         ↓      バス
       ニセコ駅  9:00
         ↓      団体列車
        小樽駅 10:50
(昼食後解散~小樽・札幌選択フリー:小樽→札幌間・各自移動)
  札幌市内ホテル 17:30までに集合    札幌(泊) 

<5日目>  出発   9:00
         ↓      バス
      札幌市内観光 (道庁・時計台・羊が丘展望台)
         ↓      バス
         昼食  11:30~13:00 (サッポロビール園・ジンギスカン食べ放題)
         ↓      バス    
     新千歳空港 14:00~16:00 (土産購入)
         ↓      チャーター便 (ボーイング777・貸切)
       伊丹空港 18:00 
         ↓      バス
        北高   20:00 

実在するモデルの高校の修学旅行と内容は違うだろうが、そこは理解して頂きたい所だ。
そもそも単なるスキー合宿なら、この県の近隣のスキー場で充分であると思うし、折角北海道に行くなら観光もしたいしな。
何々? 『北海道に行くなら洞爺湖行って木刀買え』とか理解出来ない発言が聞こえてたが放っておこう。 第一、コースから外れて木刀買いに行く意図が解らん。
 
班決めを終了し、本日の授業を終えて文芸部室へ向かう。 何時もの様にノックすると
「はぁ~い」 今日も暖かいエンジェル・ヴォイスが出迎えてくれる。
ちなみに朝比奈さんは既に鶴屋さんと共に地元の有名大学に推薦で進学する事が決定していたので、こうして団活に参加していらっしゃるのだ。 あと実質二ヶ月、北高ライフを満喫したいとの意向で――。

「こんにちは朝比奈さん、よう長門・古泉」
「おそいわよキョン! 何やってたの?」
「悪いなハルヒ、谷口と国木田に捕まってた」
「全く、さあ始めるわよ!」

最近の部室での活動は、と言うと長門は読書、朝比奈さんはお茶汲みの後、古泉とボードゲーム。 俺はと言うと
「あー、また間違ってる。 この公式を当てはめるって言ったでしょ!」
ハルヒに勉強を教えて貰っている、去年の年末からだが。
『SOS団から落第生を出さない為よ!』とハルヒは言ってはいるが、俺としては正直、助かっている。
このマンツーマンの指導のお陰で俺の成績はクラスの中段まで上がって来ているからである。
土曜日の不思議探索後や、日曜日を使って俺の家に上がりこんで勉強を教えて貰うってのは過剰だと思うが。
「所でみくるちゃん、去年の修学旅行はどうだった?」 去年の修学旅行のコースは今年と一緒だったよな
「え~っと、苦手なスキーがあったので困りましたけど、フリータイムとか楽しかったですよ」
お土産に頂いた『白い恋人』は全て妹に取られて枕を涙で濡らしたのは、今や思い出か。
「あたし達が北海道行ってる間に不思議を発見したら直ちに連絡するのよ!」
「は、はあぁ~い」
やれやれ……と言ってる間に長門の本を閉じる音で本日の活動は終了。 北風吹く夕空の下、5人揃って坂を下る。
 
 
――この5人揃って下校するのもあと少しで終わり、か。 薄暗い冬空が寂しさを更にかき立てる。
 
 


     <1日目>

「おっきろ~~!!」

うわ、何だ!? 何が起こった?
「さあ、今日から修学旅行よ。 キョン、さっさと支度して行くわよ!」 何だハルヒか、って
「おいハルヒ、何故此処に居る?」
「何故って、あんたを起こしに来たのよ」 わざわざ朝早くからご苦労なこった
「次からは『幼馴染が優しく起こす』って感じにしてくれ」
「ばっ、バカキョン!!」
床に置いてあった座布団を投げられた。 顔面ヒットかよ、痛ってーな。 しかし、そんな気に障る様な事言ったか、俺? ハルヒが部屋から出て行った後、支度を済ませ一階に降りる。
最近、週末になるとハルヒはウチに来るので俺の両親とすっかり打ち解けていて……ちゃっかり今朝の朝食まで一緒に食べてやがる、何てこった。
そのうち『SOS団支部』とか言ってウチの空いている部屋を勝手に占領しそうな勢いだな。 やれやれ。
 
「じゃあ行ってくる」
「行ってきます!」
「いってらっしゃ~い、キョン君・ハルにゃん!」 妹に見送られて家を出る
「なあ、ハルヒ」
「何よ」
「カバン、やけにでかくないか?」 どう見ても海外旅行に行く位の荷物量だな
「き、気のせいよ。 女の子は色々と必要なのよ!」
「そうなのか。 あ、俺の荷物軽いから、これを持て。 代わりにお前の荷物を持ってやるよ」
「あ、ありがとキョン」
しかし一体何が入ってるんだ? 基本的に制服で行動し、スキーウェアはレンタルと決まってるんだから、そんなに荷物が多くなる訳は無いのだがな。

今日は教室に入らず体育館に集合だ
「おはよう、キョン」
「お、国木田。 おはよう。 谷口は?」
「ようキョン、待ちに待った修学旅行だな」
「谷口、浮かれすぎて現地で遭難するなよ」 8時半には全員集合し、校長の挨拶を終え正門前で待っているバスに乗る。

所で俺達の学年は9クラスあるのだが、停まっていたバスは7台しか無い。 何故か?
予算の都合とかで55人乗りバス(補助席抜きで45人乗り)に乗せれるだけ乗せようと考えた学校側の策略の結果こうなった訳だ

<1クラス30人(5班)×9クラス+引率の先生方>の公式の元――
   1号車   1組+2組(2班)
   2号車   2組(3班)+3組(4班)
   3号車   3組(1班)+4組+5組(1班)
   4号車   5組(4班)+6組(3班)
   5号車   6組(2班)+7組
   6号車   8組+9組(2班)
   7号車   9組(3班)+校長+副担任連中

明らかに『詰め込んだ』感じがあるな。 俺達の班は4号車、6組の長門の班も4号車らしい
「よう長門、おはよう」
「……おはよう」
「修学旅行だな、楽しみか?」
「……スープカレー、カレーラーメン。 楽しみ」
「長門さん、カレーラーメンは室蘭よ。 今回行かないから」
「……残念」 朝倉の突っ込みで本に視線を戻す長門。 
「所で朝倉」
「何?」
「何で俺の隣に座る?」
「だって涼宮さんは阪中さんの隣だし、谷口君と国木田君は一緒だし。 必然的にわたしとキョン君が一緒よね♪」
――ハルヒ、後ろからジト目で睨みながら俺の座席を蹴るな。 バス会社から苦情が来るぞ。 谷口、涙流してこっちを見るな。 うっとうしい。 長門まで冷たい視線……って何故だ?
「キョン! 修学旅行だからって気を抜くんじゃ無いわよ。 SOS団の恥さらしにならない様に行動しなさい!」 
へいへい、団長様こそ北海道まで行って奇怪な行動しない様にな。   お、バスが動き出した。 時間通りだ。
 
所で北高から伊丹空港まで大した距離では無いのだが、道路事情が悪いせいか予定通り10時に空港到着。 大きな荷物をカウンターに預け飛行機に搭乗するまでロビーで待機する。
行き帰りの飛行機はボーイング777の貸切。 さすがに大口団体、定期便の混乗だったら他の乗客が乗れないからな。

さて、搭乗時間だ。 機内でも俺の座席はハルヒの前だ。 俺の隣は国木田が来た。
「そう言えばハルヒって飛行機乗るの初めてか?」
「何回かあるわよ、家族旅行とかで。 キョンは?」
「初めてだ、正直、緊張してる」
「ふ~ん、国木田に手でも握ってもらえば?」
「ばか言うな。 そこまでビビリじゃ無いぞ」
「あっそ。 あ、動き出した」
――動き出してから滑走路に行くまでの時間って何でこんなに長いのかね。 タキシングだっけ?この時間って無駄じゃないか。
ほら、俺の後ろの席の奴がイライラし始めたぞ。
滑走路に着いたら今度は息つく間もなく後方にGが掛かる。 思ったより揺れるな、と考えてる間に機体は宙に浮いていた。
「一度くらい自分で飛んでみたいわね」とか後ろの席の人間が言ってたが『お前が願えば飛べるだろうよ』と言いかけて止めた。
そりゃマジに飛んでもらっては困るからな、ハルヒよ。 さすがに雑用係も一緒になって飛べないだろうし。 手を繋いで飛ぶってなったら、それこそ何処のピーターパンだよ? と心の中で自分に突っ込みを入れておく。

ベルトサインのランプが消えた頃、機内食が配り始められる。 谷口、アテンダントの人をナンパするな。 北高の恥だ。
あとハルヒ、機内食がショボイとか文句を言うな。 物足りないのか? そんな時はだな
「あ、すみません。 この機内食、美味しいですね。 もう少し食べたいのですが、おかわりありますか?」
「はい、しばらくお待ち下さい」
「ハルヒ、機内食ってのは少量ではあるが大抵、予備がある。 但し、普通に『おかわり』と言っても基本的に持ってきてくれないがな。 そんな時は一言加える事によって持ってきて貰える事もある。 まあ、あくまでも例外だからな。 国内線の機内食は例外を除き廃止されたから、このネタが使えるのは国際線だな。」
「飛行機乗った事無いのに、詳しいのね」
「雑学の本で知った。 お、ハルヒ来たぞ。 あ、ありがとうございます」 
アテンダントにお礼を言ってハルヒに機内食を渡す。 何故かアテンダントの方の視線が生暖かい気がするんだが……何かしたか、俺?
 


気が付けば眼下は一面の銀世界。 北の大地がお出迎えだ。 『ドスン』と衝撃の後、減速Gが働く。 函館空港に到着だ。
「は~るばる~来たぜ函館~♪ ってか」 谷口、お前何歳だ?  
また7台用意されたバスに分乗し函館市内観光に向かう。 飛行機から降り立ってバスに乗る前、外気に触れたのだが、風が無いせいか気温の割に内地より寒くない気がした。 当然、防寒対策を万全にした上での話、だがな。
今夜の宿泊地である湯の川温泉を過ぎ函館市内を通り抜け函館山に向かう。 夜に山頂から街を見下ろすと夜景が綺麗に見えると言う名所だ。 昼間、しかも生憎の曇り空なので眼下に見える景色はモノトーンであったが。
そして外人墓地・函館港・五稜郭等を見学して夕方、湯の川温泉に到着。 チェックインして5人づつの部屋に分かれる。 荷物を置いて早速
「大浴場に行くか?」 「おう!」
露天風呂から見える海の景色は雄大で、ぬるめの湯加減と相まって、まさに気分は極楽。 やはり日本人は温泉だね、と思いながら湯船に浸かっていると
「キョーン、覗くんじゃ無いわよ~!」
「は、ハルヒ!?」 垣根の向こうから聞き覚えのある声
「どうして俺が居るのが解ったんだ?」 まさか、垣根の間から覗けるのか!? なんてね
「あんたの声がしたからよ!」 谷口じゃあるまいし、のぞきの趣味はねーよ。
そして夕食、大広間での食事であったが、さすが北海道。 海産物が美味い。 修学旅行の食事とは思えない、特に蟹が……って
「ハルヒ、蟹、いらないのか?」
「知ってるでしょ、剥くのが面倒だから嫌いって」
「しょうがねーな。 ほれ、剥いてやったから、替わりにそれ寄越せ」 俺とハルヒの分を交換する
「あ、ありがと」 全く、世話の焼ける団長様だ。 やれやれ……って、またしても周囲の視線が生暖かい。 何故だ?
「素でやってるから怖いわね」
「本当にキョンは自覚無いんだね」
「ごゆっくりー!!」
「涼宮さん、羨ましいのね」  何なんだ、皆して。 単に蟹の中身を出してやっただけなのにな。
 
食事を終え部屋に戻りカードゲームを始めようと用意していたら
「ん、電話?」 俺の携帯が鳴る。 おや、ハルヒか
「もしもし、どうした?」
『今から部屋に来なさい!』
「おいおい、女子の部屋に行くのは無理だぞ」 先生方の監視があるからな
『朝倉を向かわせたから、一緒に来なさい! 先生に見つかったら「ミーティング」とか言っておけば良いのよ』 マジかよ、と思った瞬間

   コンコン  

「キョン君居る?」  本当に来たよ朝倉
「何の用だ?」
「涼宮さんに言われなかった?」
「部屋に来いと言われたが」
「そうよ、じゃあ来て♪」 仕方無い、行くとしますか。 
部屋の中から「裏切り者ー!」とか何やら怒号が聞こえて来たが気にしない。 静かにしろよ谷口、周りに迷惑だ。
エレベーターを上がって女子の部屋の階に着く。 確かに先生が居たが、委員長である朝倉が「ミーティングです」と言うとあっさり通してくれる。
成程、その為に朝倉を寄越した訳か。 しかし、肝心の『呼んだ理由』が未だに不明だ。
「ここよ、入って」 言われるがままに部屋に入る
「何の用だ、ハルヒ」
「今から不思議探索に行くわよ!」 ――何だって!?
「おい、こんな冬空の夜にか?」
「そうよ、文句ある? こんな時にこそ探索するのよ。 北の大地・冬の夜、何が転がってるか解らないわ!」
「百歩譲って探索に行くのは賛成するとしよう、制服で行くのか?」
「バカね、その為に私服持って来たんでしょ?」 は、何だって?
「おいハルヒ、俺は私服なんて持って来て無いが」
「はい、あんたの分」
「え?」 確かにこれは俺の服だが、何故これをハルヒが?
「今朝、あんたの家に行った時、妹ちゃんに用意して貰ったのよ。 ほら早く着替えなさい!」 何てこった

女子が見てる前では着替えるのを躊躇うので、部屋にある洗面所を借りて着替える。 道理でハルヒの荷物が多かった訳だ。
「しかし、どうやって外へ出るんだ?」
「大丈夫、朝倉に任せたから」 おいおい、任せっぱなしだな。 良いのか朝倉?
「空間制御はt「こんな事に使うなぁー!!」」
「声が大きいよキョン君、涼宮さんに聞かれちゃうよ。 ほら、行った行った♪」
要するに朝倉が先生方の注意を引き付ける間に、階段から下に出ようと言う段取りらしい。 考えたな、ハルヒ。
「あたしが『外出したい』って言ったら、朝倉が『任せて』って言ってくれたから」
マジかよ、とんだ不良委員長だな。 伊達にクラスメイトをナイフで刺そうとした――って、どうした朝倉?
「……本当に刺そうかな♪」 わ、悪かった。 さあ、気を取り直して行くかハルヒ。 って、どうしてジト目で俺を見る?
「……随分と仲のよろしい事で」 え、誰と誰がだ?
「頑張って行って来るのね!」 サンキュ、阪中。 でも頑張る事でも無いと思うがな。
 
作戦通り朝倉がエレベーター前の先生の気を引いている間に、俺とハルヒは階段に向かう。 そしてロビーを抜け外へ
「遅かったですね、お待ちしておりました」
「……待っていた」
古泉・長門も呼び出したのか。 全く、ハルヒの思いつきで――
「おや、私服ですか。 随分と用意が良いですね」
「ハルヒが何時の間にか用意してた、古泉は?」
「まさか探索するとは思いませんでしたから制服です。 長門さんもですね」 まあ長門は基本、制服だからな
「さあ行くわよ!」 ってハルヒ、走ろうとするな! 下は雪が凍ってる、滑るぞ。
宿を出て少し歩くと路面電車の駅がある。 古泉が下調べしてくれたおかげで迷わず行けた。 そこから電車に揺られる事しばし、昼間行った函館山に再び登る事になった。 ちなみに今回の探索の費用は『割り勘』。 ハルヒは何故か上機嫌、妙にテンションが高いな。 まあ普段の探索は地元で昼間ばかりだから、知らない場所で夜って事で舞い上がってるのか?

ロープウェーで山を登り、山頂に到着。 そして
「見て見て!!」 眼下に広がる函館の夜景は――
「ほお」
「素敵ですね」
「……素晴らしい」
澄んだ夜空の下、まさに『100万ドルの夜景』とは言ったものだ。 
昼間は曇っていたせいで面白みの無い景色だった街並みが、たった半日で、こうも見違えるのか。
「ふっふ~ん♪ キョン、抜け出した甲斐があったでしょ?」
「まあな、確かに悪くは無いな」
「もっと素直に『良い』って言ってみなさいよ、全く……」 プイと横を向いてしまったハルヒ。 やれやれ、機嫌を損ねてしまったか。 古泉、何だその顔は。 言いたい事があるなら言ってみろ。
「いえ別に。 貴方も相変わらずだ、と思いまして」
そんな中、長門はずっと夜景を見つめていた。 何か想う事でもあったのだろうか……。



   (その2に続く)
 


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