自分が生きるのが精一杯。
人の面倒見る余裕はない。
長野県から満州へ国策で移民となった、岩間さんが戻ってきた頃には、村に受け入れる余裕はなくなっていた。
岩間さん一家は親戚の家を渡り歩いたが、どこも数日ほどしかいられなかった。
「中国に渡った連中が、また生まれ故郷へ戻ってきた。いい顔しなかった。
また来たのかっていうような、みんなそういう顔だった。困ったような顔しとった。
どこのうち行ったって母親の方の実家に行ったってそうだった。」
◇満州移民への聞き取り調査を続けてきた斎藤さんは、多くの引揚者が岩間さんと同じように故郷で冷遇されたと証言しているという。
ほとんどの引揚者は冷たく当たられた。「満州乞食」って言われたって言うし、お前たちは満州行って金儲けしてきたんじゃないかとか、そういう送り出したときとは正反対の、この故郷の状況だった。
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