いつからだろう、草に触れてみたくなくなったのは。
いつからだろう、手が土まみれになることを、億劫に感じるようになったのは。
都会のコンクリートジャングルの中で、いつしか僕は、自然と触れ合う少年の心を失っていた。
今日は練習後に道場裏で草むしりがあった。
少年の心をすっかり失った僕には全く気が進まなかった。
皆が草むしりをしているのを傍目に見ながら、岩で虫をつぶしたりしていた。
そんなことばかりしている所を、“農園番長”こと照本に見つかり、「ちゃんと草をむしれ」とのお叱りを受けた。
しぶしぶ身をかがめてはみるものの、やはり草や土に触れる気にはなかなかなれず、寄ってくる虫に気が散ってしまって、それを払いのけるためにじっとしていられない。
そんな僕の姿を見た“永遠の少年”照本は…
ミミズを投げてきた
僕は頭が真っ白になった。
照本が時折破天荒な面を見せるのは、周知の事実であったが、いざ自分が対象になると、ただただ「怯える」しかなかった。
「照本の奇人っぷりもとうとうここまできたか…」
しかし、ふと、そこで立ち止まってみた。
彼は決して悪い人間ではない。
これには何か訳があるはずなのである。
もしかして彼は僕に少年の心を取り戻してほしかったのではないだろか。
コンクリートジャングルに閉じ込められた、無邪気な少年の心を。
ミミズはそんな僕の心を解き放つための「鍵」だったのではないだろうか。
照本君、あの時僕は君の優しさ(ミミズ)に怯えることしかできなかった。
でも、君のしたことの意味がわかった今、少しだけ少年の心を取り戻せた気がする。
虫に、草に、そして土に触れてみたいって、思えるようになった気がする。
ありがとう。“農園のゼウス”こと照本、ありがとう。
最後に
僕も虫を怖がっている人を見かけたら、そっとその虫を拾って、その人に投げつけることにします。
(注)多少のフィクションが含まれていなくもない気がするような、しないようなです。
コメント一覧
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えんど
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山本
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大将(本物)
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taisho
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山本
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