いきもの散歩

近所の自然観察、飼育している川魚の記録

トンボ観察@8月上旬 〜昼下がりはぶら下がり〜

2018年08月11日 | 昆虫類
8月上旬に静岡県で観察したトンボたち。
いつもは静岡県東部で散策をしながらトンボなどの生き物を観察しているが、今回はベニイトトンボやモノサシトンボを一度見てみたくて、静岡県西部にも行ってきた。


〜8月上旬に観察したトンボ〜
ホソミオツネントンボアオイトトンボ+、オオアオイトトンボ
アサヒナカワトンボミヤマカワトンボハグロトンボ
モノサシトンボ+
アオモンイトトンボアジアイトトンボ*
クロイトトンボムスジイトトンボ
キイトトンボベニイトトンボ+
コシボソヤンマミルンヤンマ*、ヤブヤンマギンヤンマ
ウチワヤンマタイワンウチワヤンマコオニヤンマオナガサナエ
オニヤンマ
ミヤマアカネマユタテアカネヒメアカネ*、コノシメトンボリスアカネ+
コフキトンボショウジョウトンボ
シオカラトンボオオシオカラトンボハラビロトンボ
チョウトンボコシアキトンボウスバキトンボ
全35種
+ 初見
* 今年初見


ホソミオツネントンボ



♂(上)、♀(下)

オオアオイトトンボを林縁や林内で探していたら、ホソミオツネントンボをよく見かけた。
ホソミオツネントンボは成虫で越冬する。今回見かけたのは、7月以降に羽化したと思われる越冬前の個体。地味な色をしているが、越冬後にオスは鮮やかな青色になる。


♂ 2018.05中旬

今の時期にホソミオツネントンボを見ると「越冬中の個体を見てみたい!」と毎回思うのだが、実際に冬になると寒さに負けて探そうとすらしない。


アオイトトンボ

林道を横切るように飛んできて、木にとまったオス。アオイトトンボは初見。複眼の色や胸部周辺に白粉がふいていることから、普段観察するオオアオイトトンボでないことには、すぐに気づいた。


こちらのメスは、樹林のある暗い池周辺の下草で見つけた。上のオスに会うまでは、オオアオイトトンボとばかり思っていた。

アオイトトンボに会えたとなると、コバネアオイトトンボ(静岡県RDL2017@絶滅危惧ⅠA類)も見てみたくなる。そして、アオイトトンボ属3種(オオアオイトトンボ、アオイトトンボ、コバネアオイトトンボ)をきっちり同定できるようになりたい。

@参考
類似☆ オオアオイトトンボ × アオイトトンボ  識別検討図 : 蝶鳥ウォッチング


オオアオイトトンボ

林縁や林内を探したが、会えたのはメス1頭だけ。
この場所で見かけるアオイトトンボ属はオオアオイトトンボだけなので、普段はしっかり同定しないのだが、今回は「翅胸側面の金緑色部の第2側縫線への届き具合」「胸部の白粉の有無」「産卵管の大きさ」「腹部第9節の膨らみ」などの同定ポイントをしっかりチェックした。


アサヒナカワトンボ

橙色翅型♂


無色翅型♂




猛暑の日中は、ほとんど見かけない。しかし、夕方になると、ちらほら見かけるようになった。また、日中に比べてかなり涼しく感じる夕方には、10頭以上を見かけた。その中には、縄張り争いをする橙色翅型♂2頭、木の葉などにとまる複数の無色翅型♂、小さな虫を捕食する♀、完全には成熟していないフレッシュな個体などを確認した。
この湧泉地では4〜12月の間、アサヒナカワトンボを観察できる。8月は見かける個体数が激減するので、春や秋に比べて羽化数がかなり落ち込むのだろうと思っていた。しかし、今回の観察で、単に「日中に見かける数」が減るだけで、羽化数に大きな落ち込みはないのかもしれないと思った。
湧水により年間を通じて15℃前後の一定した水温のため、出現期間中は絶え間なく羽化が続く。そして、猛暑の日中は、湧出水が流れる草むらの中に身を潜めている。夕方になり涼しくなると、観察しやすい場所に出てくる。実際の状況は、こういうことなのかもしれない。


ミヤマカワトンボ

川の上流域にて川石にとまるメス

猛暑の日中はほとんど見かけなかったが、夕方になると川石にとまる個体をちらほら目にするようになった。この川では、昨年は8月上旬・中旬がピークだったのだが、今年はシーズンの終わりが近づいている印象だ。昨年の夏は天候不順、今年の夏は連日の記録的な猛暑といった天候の違いによるものなのかもしれない。


ハグロトンボ



太陽の下のハグロトンボを久しぶりに撮影できた。


♂ 川の中〜上流域の周辺にて


♂ アオハダトンボとの混棲地にて
1ヶ月近く確認できていないアオハダトンボかと期待したが、ハグロトンボのようだ。


モノサシトンボ

♀ モノサシトンボを見るのは初めて


オスの腹部第9, 10節は青白くなる。



モノサシトンボは樹林のある暗い池やその周辺の林道で見かけた。

モノサシトンボを見てみたくて、静岡県西部の池へ向かった。しかし、なかなか会うことができなかった。半ば諦めていたところ、林道で1頭を見つけることができ、ホッとした。その後に、別の池へ行ってみると、そこでは10頭ぐらいに会えた。
到着時間が少し遅れてしまい、欲張った計画を立ててしまったこともあり、じっくりとモノサシトンボを観察できなかったのが残念だ。秋にもう一度、この池には行きたいと思っている。その時に再会できることを願う。


アオモンイトトンボ

♂ 静岡県西部の池にて


産卵する異色型♀

今回は、静岡県東部の平地でのアオモンイトの生息状況を把握する時間がとれなかった。「相変わらずよく見かけるが、7月下旬と比べると数は減った」といった状況ではないかと予想している。


アジアイトトンボ

♂ 静岡県西部


交尾 静岡県東部

アジアイトトンボは今年初見。そして、交尾を初めてみることができた。また、オレンジ色をした未成熟♀にも初めて会えたのだが、ピンぼけ写真しか撮れないまま見失ってしまった。
静岡県東部の平地では、アジアイトにまだ会ったことがない。古い文献や少し古いWebページを見ると、東部でも平地の普通種として多数が生息していたようだ。アオモンイトはよく見かけるのに、何故、アジアイトは平地で見かける機会が減ってしまったのだろう(単に探し方が悪い?)。平地でよく見られた頃の状況を見ておきたかった。




クロイトトンボ

オオフサモ(特定外来生物)にとまるオス。この池では、同じく特定外来生物のボタンウキクサ(ウォーターレタス)もよく目にした。


ムスジイトトンボ

池にてオス2頭を確認。もう1頭は水面に浮かぶ藻にとまっていたが、藻が波に揺られるため撮影できなかった。メスは相変わらず見かけない。


キイトトンボ






静岡県西部にて撮影。100頭以上を見たと思う。


ベニイトトンボ



オスは複眼の色が朱赤色、メスは緑色。



ベニイトトンボを初めて見るために、静岡県西部に行ってきた。静岡県RDL2017では絶滅危惧ⅠA類であるが、今回100頭以上を見たのではないだろうか。3つの池を回ったが、すべての池で確認した。
100枚以上撮影したが、白飛び等でほぼ全てが没。満足できる写真が一枚もなかった。秋にまた行く予定なので、その時に再撮影したいが、ベニイトトンボのシーズンがちょうど終わった頃になってしまうのかもしれない。




コシボソヤンマ
@17:25

昨年、コシボソヤンマのオスが縄張り飛翔していた川に到着。飛翔しているオスの姿は見られない。とりあえず川辺に降りてみることにした。すると、水際にいたメスが飛び上がり、すぐ近くにとまった。そして、腹部を曲げ、産卵するような姿勢を見せた。しかし、すぐに飛び上がり、他の産卵場所を探すかのように、上流側へ水面上を低くゆっくり飛んで行ってしまった。このメスはおそらく産卵中だったのだろう。驚かせてしまったようだ。

@17:30-17:40

メスが再び産卵に戻ってこないか待っていると、どこからともなくオスがやってきた。そして、水面上を低く飛び、5メートルぐらいの範囲を上流から下流へ、下流から上流へと往復飛翔し始めた。
少し暗いとは言え、肉眼でははっきりと見えるのに、その通りには撮影できない。歯痒い。しかし、自分の撮影技術や機材では、どうしようもないし、頑張るところではないとあきらめ、じっくり観察し目に焼き付けることにした。

@17:40
オスの往復飛翔を眺めていると、下流側から水面上を低く赤味のあるトンボが飛んできた。オスはすぐにそれに反応し掴まえると、足元近くにとまった。だらだらと往復飛翔していた姿からは想像できない素早さだった。とまっている様子を見ると、掴まえたのはコシボソヤンマのメスで、既に交尾態になっていた。絶好の撮影チャンスと思うや否や、交尾態のまま竹林に飛んでいってしまい、樹上にとまった。

@17:50
メスがやってきて、近くの川べりにとまった。最初に見たメスだろうか。産卵をしたがっている様子だった。そして、川に降りる階段の最下段の下に入り込んだ。その部分を直ぐ様、覗きこんでみたのだが、姿は見つからなかった。

@18:00

コシボソヤンマの撮影が全くダメだった自分を慰めるかのように、ルリタテハが近くにとまった。この日最後の一枚を撮影し、家路についた。

@後日



上2枚は同一個体のオス。2年ぶりにコシボソヤンマのぶら下がりを見つけることができた。
コシボソヤンマのオスの体色は濃褐色と表現するようだ。確かに、ミルンヤンマの艶々した黒とは異なるものだ。


こちらはメス。メスのぶら下がりは初めて見る。オスから数十センチしか離れていない横の枝にぶら下がっていた。
遠目に見るとメスは全体的に赤褐色のように見える。しかし、写真で見ると部分的なのだね。複眼の色を見ると若齢個体のようなので、成熟するに連れて赤褐色の部分がさらに広がるのかもしれない。


ミルンヤンマ

♂ 今年最初に会った個体


♂ 複眼の色がまだオリーブ色の未成熟個体





別のメス



遠目に見ると腹部第3節がかなりくびれているように見えたのだが、コシボソヤンマではなかった。



その糞の量は、何時間ぶら下がってのものなの?

ミルンヤンマは今年初見。今回は10頭(♂*8, ♀*2)のぶら下がりを確認した。
できれば8月中に産卵と黄昏飛翔を一回は見ておきたい。


ミルンヤンマの産卵 2016.08中旬




ヤブヤンマ

産卵するメス。


産卵場所は、ビオトープ池の水際から少し離れた湿った土。



再びヤブヤンマの産卵を見ることができた。前回の産卵は午前中だったが、今回は午後だった。また、メスを探すように時々ホバリングしながら、池を飛翔するオスを見ることができた。


ギンヤンマ



オス単独の静止個体を見るのは初めてかも。一日中飛び回って、さすがに疲れたのかな。


ウチワヤンマ

♂ 静岡県西部
この池ではタイワンウチワヤンマと混棲していた。その割合はどんな感じなのだろう。


タイワンウチワヤンマ

♂ 静岡県西部


コオニヤンマ

♂ 清流にて
メスを待っているのか、チョウやアサヒナカワトンボなどを狙っているのか、その両方なのか。


湧泉地の細流でハグロトンボを撮影していると、メスが突然目の前に現れ、産卵し始めた。途中ホバリングをしながら、間欠的に打水産卵をした。ホバリング時には卵塊を作っているそうだ。


オナガサナエ

川沿いを散策していると、オナガサナエのメスに会った。
メスの尾毛は白い。初めてメスを見た昨年は、しばらくオジロサナエだと思っていた。


10cmの距離から撮影しても逃げなかった。


オニヤンマ






今回も撮影できたのはオスばかり。しかし、産卵を今年初めて見ることができた。また、産卵しているメスに、オスが後ろから忍び寄り、掴まえて交尾に持っていく様子も観察することができた。


ミヤマアカネ

翅がぼろぼろのオス





まだ縁紋が白い未成熟♂


かわいい表情を見せる(?)メス


マユタテアカネ

♂ 朝からオベリスク姿勢







今回はマユタテアカネをじっくり観察する時間を取れなかったこともあり、翅斑型♀には会えなかった。


ヒメアカネ




薄暗い林道で2頭の未成熟オスを見かけた。ヒメアカネは今年初見。
昨年はメスに会えなかった。また、過去を振り返っても、自信を持ってヒメアカネのメスと同定できたのは1頭だけ。マユタテアカネ、ヒメアカネ、マイコアカネのメスをしっかり識別できるようになりたい。


ヒメアカネ♀ 2016.08上旬


コノシメトンボ

数頭の未成熟♂にしか会えなかった。


リスアカネ

♂ 樹林のある薄暗い池にて

リスアカネは初見。翅端に斑紋がある種類(ノシメトンボ、コノシメトンボ、リスアカネ、マユタテアカネ@翅斑型♀)で、まだ見たことがないのはノシメトンボだけになった。今年中に会っておきたい。


コフキトンボ

静岡県西部の池で撮影したオス。
この池では、オビトンボ型♀に会えることを少し期待していたのだが、見つからなかった。


ショウジョウトンボ



シオカラトンボ



♂(上)、♀(下)


オオシオカラトンボ

単独メスを撮影していたら、オスに持って行かれた。


メスの腹部第8節の膨らみが上手く撮影できた、と思う。


ミズバショウの葉にとまるオス。オニヤンマが近くをパトロール飛翔すると、飛び上がって追い払おうとした。このような場合、オニヤンマは相手にしないことが多いのだが、今回は売られたケンカを買っていた。


枯れたミズバショウの葉がダブルベッド代わり?


交尾後、水芭蕉園で産卵を始めるメス。オスが警護飛翔していた。


ハラビロトンボ

老熟♀ 静岡県西部
2頭(♂*1, ♀*1)だけ見かけた。


チョウトンボ




チョウトンボの交尾を遂に撮影できた。交尾飛翔ではなく、短い時間だが、とまってくれたおかげ。
産卵に関しては、よく見かけるのだが、撮影となると意外と難しく、未だにきっちり撮影できていない。ちょこまか場所を変えて産卵するし、こちらに気付いていると草陰で産卵し、撮影がしにくい。


コシアキトンボ

樹林のある池で、池にせり出した木の枝で休むオス。


ウチワヤンマやオオヤマトンボが生息する広い池で、水際に立つ棒にとまるオス。
こういう棒を時々見かけるが、誰かが意図的に立てているのだろうか。


ウスバキトンボ

静止個体を見かける機会が増えてきた。


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今回はモノサシトンボやベニイトトンボを見てみたく、静岡県西部に足を運んでみた。そこでは全部で21種類のトンボに会え、めちゃめちゃ暑くてつらい楽しい時間を過ごした。



ただ、今回最も興奮したのは、縄張り飛翔していたコシボソヤンマのオスが、飛んできたメスを掴まえ、交尾に至るところを間近で見れたことかな。このようなシーンを撮影するのは自分には無理だが、このようなヤンマの生態をもっと見たい。自分が知っているヤンマ(ギンヤンマは除く)の観察ポイントは僅かしかないので、それには他にも探す必要がある。新たな生息場所を探す過程は嫌いではなく、むしろ楽しむタイプなのだが、猛暑続きの今はさすがに腰が重くなってしまう。




1 コメント

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テレビ番組にて画像使用のご相談 (盛 伸一郎)
2018-08-18 20:03:16
いきもの散歩
管理人様

突然のご連絡、大変失礼致します。
私、東京でテレビ番組を制作しております盛と申します。

この度、管理人様が過去に運営されていた
近所の自然観察.logにて2013/06/27に投稿された「田んぼに棲むカニ」に掲載されている
カニが巣穴から顔を出している画像を
テレビ番組にてご使用させていただけないかご相談したくご連絡致しました。
(下記に該当の記事のURLを掲載させていただきます。)


http://riverfishjp.blog.fc2.com/blog-entry-9.html?sp


番組や使用方法など詳細についてご相談させていただきたく、
一度ご返信を頂戴することは可能でしょうか?

お忙しいところ恐れ入りますが、
ご検討のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。



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