OracleがOpenOffice.orgのコードをApache財団に寄贈、LibreOfficeとの再統一に向け前進
LibOとOOoが統合すれば良いんじゃないの? という記事はこれを筆頭としていくつかあって、でも日本だけじゃなくて世界中でそうなので、どうも統合されることが良いことのように取られているようです。
果たしてそうなんでしょうか。
極めて単純な話ですが、
OracleがApacheにOOoのソースコードを寄贈して、それを
IBMが継続するという発表なので、TDFが介在する余地はなさそうです。
そういう状況なのに、
TDFの言うことを殊更に強調するのは疑問があります。
ただ、TDFにも新生OOo(Apacheのincubator projectになったOOo)にも統合した方がいいよねという声があるのは事実です。
Apacheのプロジェクトは原則としてApache License 2.0でライセンスされるので、OOoのライセンスもLGPL3からAL 2.0に変更になると思われます。
ALはソースコードの公開義務がないので、プロプライエタリなソフトウェアに組み込みやすいです。
インフラとしては、バージョン管理システムはSubversionです。リードオンリーでgitが使えるそうです。
あと、Oracleは現状"OpenOffice.org"という商標を寄贈するとは一言もいってません。もちろん将来的にはわかりませんが。
IBMは
Lotus Symphonyの開発を行っています。これはOOoをベースにしたプロプライエタリなアプリケーションです。
IBMにとってはALの方が都合がいいというか、ALでないと困るということになりそうです。
一方LibOはLGPL3の状態でフォークしたので、LGPL3です。ライセンスの変更は現状極めて困難です。
また、すでにコミュニティが存在し、4回ほどリリースを行っています。開発者は200名程度だそうです。
もちろん日本語のコミュニティがあり、私も在籍しています(というか翻訳を行っています)。
リリースを行える、というのは、OSSプロジェクトにとって重要なことであり、リリースが行えるからといってうまくいっているプロジェクトとは限らないものの、リリースが行えないプロジェクトはダメプロジェクトです。それは断言できます。
LibOはフォークした時期とソースコードの量を考えれば、「信じられないほどうまくいっている」プロジェクトだと思います。
OpenOfficeProposalには、なかなか興味深いことが書かれています(あるいは書かれていません)。
OOoはOracle(その前はSun Microsystems - StarDivision)のハンブルグのチームによって開発されていましたが、その人達の名前は全く登場しません。
また、既存のコミュニティ(OOo日本語プロジェクトも含む)についても言及されていません。
現状ソースコードがあるだけで、他の何もない状態でスタートすることになります。
OOoのバージョン管理システムは
Mercuialであり、それからSubversionに移行(というか退行)するのはどう考えてもおかしいですし、かといってMercurialやGitをちょちょいとセットアップするわけにも行かないでしょう。ソースコードのライセンスを書き換える必要だってあります。
こういった状態で、統合するメリットって何があるんでしょうか?
IBMの意向を汲むとALでないとならず、現状のLibOのソースコード(もちろん翻訳を含む)は全て捨てることになります。
おそらくIBMが最初に取り組むのはソースコードのクリーンナップでしょうし、それはすでにLibOがやっていることです。
いくらLGPL 3とAL2が互換性があるからって、実際に組み込めるかどうかは全く別の問題です。
そして、その成果はLotus Symphonyというプロプライエタリなソフトウェアになるわけです。
一体誰がハッピーになるんでしょうか?
追記:
Apache Software LicenseをApache Licenseに修正
さらに追記:
6/9現在、
OpenOfficeProposalにhdu氏を始め数名の(元?)ハンブルグ・チームの名前を見かけるようになりましたが、チームごとごっそり移籍じゃないんで結局同じことだと思います。