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史上最も華麗なセーヌ川開会式で幕を開けるParis2024
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Paris2024 セーヌ川開会式 出典 Paris2024
パリ五輪2024は、7月26日から8月11日まで開催され、32競技329種目が行われ、参加選手数はTokyo2020より約600人少ない1万500人に絞った。男女それぞれ5250人で、五輪史上初めて男女同数の大会となる。日本選手団は史上最高の409名、JOC(日本オリンピック委員会)は、金メダル20個、メダル総数55個を目指す。
前回のTOKYO2020は、新型コロナのパンデミックの影響で無観客試合となったが、コロナも収束して、再び満員の観衆を前にして熱気を取り戻した五輪大会となる。大会期間中には約1500万人以上の観光客がパリを訪れ、チケットの販売枚数は史上最高の880万枚以上に達する。
主要競技会場は、、セーヌ川に沿って集中的に行われ、エッフェル塔やグランパレ、コンコルド広場、アンバリッド廃兵院などのパリを象徴する歴史的ランドマークが利用される。
異色なのはサーフィン会場、タヒチのティーポオで開催され、史上初の海外開催となる。
合計41(39)の競技会場が整備されるが、95%が既存または仮設施設利用する。新設はアクアスティックセンター(Aquatics Center/Sant-Denis 6000席 アーティスティックスイミング、飛び込み、水球)とスポーツクライミング( Le Bourget Climbing venue/Saint-Denis)の2競技場のみだ。
オリンピック選手村は、パリ北部のサンドニに約20億ユーロ(約3200億円)を投じて建設された、約70%が民間資金で、公的資金は6億5000万(約1000億円)ユーロが投入された。
大会期間中は約14000人の選手や関係者の宿泊施設となる。大会終了後は2220戸以上の一般市民用の住居と770戸以上の高齢者や学生向けの住居が設けられ、医療施設や学校も整備されて約6000人が暮らすニュータウンとなる。また約6000人が働くオフイススペースも整備される。
パリオリンピック2024 NBC 視聴者大幅増 東京五輪の82%増 五輪復活 Peacockが牽引NBC Universal Media Close-up Report
開催経費は、インフレの影響で当初予算から約35%増加し、組織委員会予算で約44億ユーロ(約7400億円)、競技会場やインフラ整備を担当するオリンピック施設庁(SOLIDEO)予算で約45億ユーロ(約7600億円、合計89億ユーロ(約1兆5000億円)程度とされている。
ちなみにTokyo2020では組織委員会経費が6404億円、国や東京都が7834億円、計1兆4238億円、ほぼTokyo2020と同額の開催経費となった。
開催都市が選べる追加競技は、ブレイクダンスが初採用された。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンはTokyo2020に続いて採用したが、野球・ソフトボールと空手は実施しない。若い世代の重視を強調した戦略だ。
Paris2024の最大のハイライトは、史上初のセーヌ川(River Seine)で開催される開会式、206 の国と地域の選手や関係者、6000から7000人を乗せた85隻(当初計画は160隻)以上のボートが、セーヌ川を約6km(4マイル)を約40分間かけて航行、ルートにあるパリのランドマーク、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オルセー美術館、、ポンヌフ(パリ最古の橋)、コンコルド広場、グラン パレ、エッフェル塔を通過する史上、最も華やかな開会式になる。 当初計画では「開かれた大会」を目指して、空前の60 万人以上の観客動員を計画したが、警備の難しさから32万6000人程度(有料席10万4000人、無料招待席22万2000人)に半減された。
パレードの出発地点のオステルリッツ橋(Pont d'Austerlitz)から最終地点のエッフル塔前のイエナ橋(Pont d'Iena)の間の川岸下部エリアはチケットの購入が必要な有料席、川岸上部エリアは組織委員会の招待者専用無料席が設置される。当初計画にあった市民が自由に出入り可能な席は無くなった。
セーヌ川沿いには観客のためにルートに沿って 80 の巨大なスクリーンが設けられる。セーヌ川沿いの住宅やビルなどがからチケットを持たない20万人が観戦すると見ている。
開会式の芸術監督はフランスの演出家トーマス・ジョリー氏が務める。パラリンピックの式典の芸術監督も担当する。詳細は明らかにされていないがフランスの多様な文化的景観を反映させて、伝統と現代の要素が融合したものになるという。
式典の振付師モード・ル・プラデッ氏は、パレードルート沿いのすべての橋にダンサーを登場させ、音楽とダンスで選手団を歓迎すると発表。式典には合計3,000人のアーティストが参加するが、そのうち400人を動員する。 全員がダフネ・ビュルキがデザインしたユニークな衣装を身にまとうという。
フランスのテレビ司会者で衣装監督のビュルキは、ドレスメーカー、ヘアスタイリスト、メイクアップアーティストのチームを監督する。持続可能性への取り組み、新しいデザインに加えてヴィンテージやリサイクル素材を使用する。世界のファッション界をリードするフランス、どんなコスチュームで登場させるのか注目だ。
セーヌ川のパレードに引き続き、エッフェル塔の向かいにあるトロカデロ広場(Trocadéro square)では120人の海外首脳や政府関係者が参列して式典が行われる。
またコンコルド広場(Concorde square)や市内各所にはイベント広場が設置され、パリ市内は五輪一色に染まる。
Paris2024のエスタンゲ会長は、「世界にはまだ華麗なパレードを開催できる場所がある。この友愛のメッセージこそがオリンピックの魔法だ」だと語っ嘉。まさに世界に冠たる歴史遺産都市、パリの街中を舞台にして開かれた歴史に残る大会となった。
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セーヌ川開会式パレードのコース 出典 LeMonde/Paris2024
パリオリンピック 競技会場 完全ガイド Paris2024 華麗な舞台 歴史遺産 Media-closeup Report
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Paris2024 IBC(国際放送センター)
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IBC CDU Paris2024 出典 OBS
Paris2024の放送・デジタル・プラットフォームのメディアの拠点、国際放送センター(IBC/International Broadcast Centre)は、ル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre)のホール2B、3,4,5の4つのホールを占有して設置された。ホール3は大会開催を契機に新設された。総面積は約40000平方メートル。
国際放送センター(IBC/International Broadcasting Center)は、世界各国のテレビ、ラジオ、デジタルサービスなどの放送機関等のオペレーションの拠点となる施設である。IBCの設営・運営は、五輪大会のホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)であるオリンピック放送機構(OBS/Olympic Broadcasting Services )が行った。
Paris2024で放送権を取得したMRHs(Media Rights Holders)は30、MRHsから放送権を取得して放送サービスを実施した放送機関やデジタル・プラットフォームは130に達した。
この内、米国NBCユニバーサル、英国BBC、ドイツARD/ZDF、中国CGM、オーストラリアSBS、日本NHK/民放などの60の放送機関は、IBC内に専有ポジションを設けた。その中で最大のスペースを占有してオペレーションを行ったのは米国NBCユニバーサルである。
OBSは、開閉会式などのイベントや全競技の国際映像・音声信号(ITVR:International Television and Radio Signals/World Feed)のライブ中継制作や信号の伝送、各放送機関等の専用ユニーポジションの設置やオペレーションの支援、記者リポートポジションやビューティカメラの設置、信号の伝送や配信などを行う。
IBCのOBSエリアには、コントロール(Contribution)、分配(Distribution)、伝送(Transmission)、ストレージ(VTR Logging)など行うシステムが設置され、オフチューブ・コメンタリー・スタジオやSNGサテライトファームなども整備される。また放送機関(MRHs)エリアには、各放送機関等がサテライト・スタジオや放送機材、ワーキング・スペースを設置、ユニー・オペレーションを行う。
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IBC CDU 出典 OBS
OBSは、Paris2024で41競技場(内サーフィンはタヒチ)で開催される32競技329種目のすべてを4KUHD(Ultra High Definition 12Gbps )/HDR(High Dynamic Range)、音声は 5.4.1 immersive audioでライブ中継を行い、テレビ、ラジオ、デジタルサービスのライツホルダー(MRHs)に4KUHDを基本にして、1080p60 HDR、1080iSDR、デジタル・ストリーミングなどのさまざまなフォーマットで配信される。総配信時間は史上最高の 11,000 時間超(東京2020では1万200時間 [15.8%増] リオデジャネイロ2016では7100時間[55%増])、 イヤニス・エグザーチョス(Yiannis Exarchos)OBS会長は「全部合わせると1年半以上かかる」と自慢した。この内、 3,800 時間から 4,000 時間はライブ中継( 競技と開閉会式やセレモニー) である。
オリンピックを支えるメディアの果たす役割は極めて大きい。国際オリンピック委員会(IOC)は、メディア戦略を重要な柱として位置付けている。とりわけ競技中継を世界各国で行う放送メディアは、オリンピックの存立基盤を握るとまで言われている。そのメディア戦略を担うのがIBCなのである。
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CCTVのサテライト・スタジオ IBC 出典 OBS
IBCの建物やオーバーレー(仮設スペース)、電源、空調、光ファーバーなどのインフラの整備は開催都市が行い、 2024 年 1 月にOBSに引き渡された。そしてOBSのIBC 建設チームがパーティションなどの内装工事や放送機器を設置し、ホストブロードキャスターとしてのオペレーション環境を整える。 5月にはライツホルダーの放送機関等(MRHs)が 入居を開始、それぞれの放送オペレーションの拠点を作り上げる。OBSのIBCの開設準備は通常26か月(約2年)前に始められる。IOCから放送権を取得したMRHsは30以上、MHBsを通して世界100の国と地域の130超の放送機関等に配信された。
IBCの開所は6 月 26 日、以降、会期終了まで24時間オープンする。
ホストブロードキャスター業務に従事するOBSは、世界110の各国・地域の約8300人の放送専門家集団を投入する。OBSのパーマネントスタッフは165人(マドリードの本部に常駐 世界28の国と地域のスタッフで構成される多国籍組織)だが、各大会に世界約100か国から8000人以上のスタッフを雇い入れる。その他1,300人のフランス人学生が研修プログラム(BTP/Broadcast Trainning Programme 有償)で参加してOBSをサポートする。
フランスを音連れた各国放送機関等(MRHs)のスタッフは合計10000人程度、IBCで働いたスタッフはOBSのスタッフを含めると10000人程度がオペレーションを行ったと見られる。
ル・ブルジェのIBCの面積は約40000平方メートル、東京2020のIBCが設置された東京ビッグサイトに比べて全体で約13%、MRHsの占有面積で18%削減された。使用電力量は東京2020に比べて44%、リオデジャネイロ2016に比べると配信時間は2倍に増えたが約72%も削減される。
OBSは、IBCのIP化とクラウドの導入を進めることで、ライツホルダー(MRHs)の自国でのリモート制作を可能にした。これまで放送機関はIBCに放送機材を設置して要員を派遣してオペレーションを行ってきたが、それが不要になり経費を大幅に効率化できるようなった。主要放送局はいずれもIBCでのオペレーションを削減、その結果がIBCの規模縮小につながった。
また 東京2020から、OBSはMRHsとのアクセスを効率化するために集中テクニカルアリア(CTAs:Centralised Technical Areas)を設けIBCのレイアウトを大幅に見直した。CTAsに両者が映像・音声信号を送受信する放送機材を集中的に設置することで、熱、換気、空調を抑えて、電力消費削減を達成して省エネ効果を上げることも可能になる。以前のIBCレイアウトでは各エリアに分散していたが、CTAsの設置でIBCスペースをより効率的に使用してスリム化を果たした。
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CTAs:Centralised Technical Areas 出典 OBS
ル・ブルジェ国際展示場IBC
IBCが設置されるル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre)は、パリの北部、シャルル・ド・ゴール空港から南に13km、オリンピック・パラリンピック選手村から東に8kmに位置する。ホール 2B、3、4、5 合計 4 つのホール (Hall3は新設) を使用して整備され、総面積は 40,000 平方メートル。大会期間中、OBS と MHBs(Media Rights-Holders) のさまざまな放送機材や管理的施設が設置されて、テレビ、ラジオ、インタネットなどのメディアの主要活動拠点となる。
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ル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre) 出典 Le Bourget exhibition and convention centre
2年に一度開催されるパリ・エアショー(パリ国際航空宇宙ショー)で世界的に有名なコンベンションセンター。航空宇宙業界の国際見本市で世界最大規模を誇る。1909年に創設され、航空機や戦闘機のデモンストレーション飛行も行われるダイナミックな見本市としても知られている。2019年ではフランス国内外から2,453社が出展・139,840人の業界関係者が来場し、フランスにおいて航空業界の発展を牽引している。2023年にも開催され、2025年にも開催予定。
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5つの展示場ホールを有し展示場面積の合計は約80,000平方メートル、隣接した飛行場を備えるユニークなコンベンションセンターである。
オリンピックの視聴者数は世界で30億5000万人
国際オリンピック委員会(IOC)では、東京2020で、オリンピック関連の番組やニュースをテレビやデジタル・プラットフォームで見た視聴者数は、世界で30億5000万人、視聴時間は総計230億時間に及ぶと推定している。この内約64%の視聴者はテレビとデジタル・プラットフォームの両方で視聴したとしている。
一方、デジタル・プラットフォームは280億ビュー、22億4000万人のユニーク・ビューヤー数を記録し、リオデジャネイロ2016に比べてビュー数は139%増、ユニーク・ビューヤー数は74%増と大幅に増加したとしている。
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出典 IOC/OBS
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OBS Team 出典 OBS
ホストブロードキャスターOBS
OBSは、2001年に国際オリンピック委員会(IOC)が五輪大会のホストブロードキャスター業務を担う組織として全額出資して設立した“子会社”である。
スペインのマドリッドに本部があり、スイスのローザンヌにも拠点がある。30の国と地域の約160人の常勤スタッフが在籍するグローバルな組織である。OBSの運営に関わる財政的負担はIOC責任を持つ。
現在のIBS CEOは、イヤニス・イグザーチョス(Yiannis Ezachos)氏、 1964年ギリシャ生まれで、アテネ法律大学で法律と映画を専攻、卒業後、文化・芸術関連のテレビ・ラジオ番組を制作、ギリシャ国営放送、ERTの執行役員を歴任して、2012ロンドン夏季五輪後にOBSのCEOに就任した。
これまで五輪大会のホストブロードキャスター業務は、開催都市組織委員会(OCOG)の責任だった。大会ごとにOCOGが開催国の放送機関と協力してホスト・ブロードキャスターを担う組織をゼロから作り上げる必要があった。しかし大会規模が拡大るにつれて、ホストブロードキャスター業務を担うために大量の機材と人員を確保することが強いられて、開催地の負担になった。
ちなみに1964年東京夏季五輪や1972年札幌冬季五輪、1998年長野冬季五輪はNHKがホストブロードキャスターを務めた。
一方、メディア戦略を最重要視する戦略をとる国際オリンピック委員会(IOC) にとっては、すべての大会で放送サービスの最高水準の品質を維持して、ライツホルダー(MRHs)にサービスすることが重要である。IOCの収入の70~80%は放送権収入で占められているからである。放送権収入が入らなくなったらオリンピック存続の死活問題となる。高額の放送権料に見合うサービスをMRHsに提供し続けることはIOCに課せられた最重要の課題だ。
大会開催都市が世界各地に広がる中で、IOCはコンテンツの品質水準を確保するために、常設のホストブロードキャスターを担う常設組織の必要性を痛切に感じるようになり、全額出資をしてオリンピック放送機構(OBS)を設立することに踏み切った。IBCの設営・運営や中継業務などホストブロードキャスター業務を実施するための機材や要員、経費をIOCが責任を持ち、開催都市への支援(Contoribution)とした。その原資はIOCが放送機関等から受け取る放送権料である。
このスキームで、これまで開催都市に課されていた財政的負担と放送機材や要員の確保の負担が軽減され、オリンピック大会が欧米だけなく発展途上国など世界各国で開催される可能性を開いた。
OBSは、2005年にマドリードに本部を設立して組織を整え、2007年には常勤スタッフを18名から146名に一気に増大させた。
2028年北京夏季五輪では、開催都市の組織委員会(OCOG)、北京五輪組織委員会(実働部隊は中国中央電視台[CCTV])とジョイント・ベンチャーを組みホストブロードキャスター業務を行った。中国国内の配信業務はCCTVが請け負った。
そして2010年バンクーバ委冬季五輪で、初めて単独でホストブロードキャスターを担い、国際信号の制作や配信業務、IBCの設営・運営などを行った。
2018年平昌冬季五輪からは、パラリンピックを含めて、OBSが全面的にホストブロードキャスターを務めるようになった。東京2020でもホストブロードキャスターはOBSである。
OBSは7つのミッションを掲げている。
・ITVR(国際映像・音声信号)の制作
・国際放送センター(IBC)の企画・設計、設営、運営、撤収
・競技会場や競技施設の放送オペレーション設備の企画・設計、設営、運営、撤収
・大会組織委員会が担当するOBSやRHBsが使用する会場の放送インフラの企画・設計、設営の支援
・RHBsの大会組織委員会への要請の取りまとめ
・オリンピック・アーカイブスの運営
・新たな放送技術開発の開発と導入
OBSのホストブロードキャスター業務
OBSは、ホストブロードキャスターとして中継車(OB-VAN)50台やブロードキャスト・コンパウンド(Broadcast Compaundを設置して競技やイベントの映像・音声信号の制作を行う。
ライブ中継用に1,000台以上のカメラ、36800本のマイクロフォンを配置、パリの象徴的な風景を撮影する12台のビューティカメラや15機のドローン、エッフル塔から対岸に渡る空中ケーブルカメラを設置して高精細4KUHDでライブ中継を行い、Paris2024の感動を伝えた。
各ベニュー(競技会場やイベント会場)には、OBSのベニュー・オペレーション拠点であるブロードキャスト・コンパウンド(Broadcast Compaund)設営、中継映像・音声信号制作や、TOC(Technical Operation Centre)を整備して、各ベニューからIBCへの映像・音声、データ信号の送受信のポイントとなる。IBCに送信される4KUHDは72チャンネルに達する。
競技場内にはCamera Position(OBS用・放送機関ユニー用の中継カメラ設置エリア)やMix Zone(アスリートインタビュー・エリア)、インフォ―メーション・オフイス(BIO)が設けられ、電源・通信インフラ・高速インターネット、各種のケーブリング等が準備される。
MRHsに対しては、ユニーカメラ・ポジション(Uni-Camera Position)、コメンタリー・ポジションCommentary Positions)、プレゼンテーション・ポジション(Occasional Presentation Positions)、記者リポート・ポジション(Stand-up Position)、ソーシャルメディア・ポジション(Social Media Position)、ベニューTVサテライトスタジオ(TV Studio Facilities)などのサービスが提供される。オペレーションに必要な電力、ケーブリング、インターネットアクセスも準備される。
エッフェルタワーを背景にしたトロカル広場や閉会式・陸上競技が行われたスタッド・デ・フランスの2カ所にOBS Broadcastig Towerを建設して、MRHsのユニーTVスタジオの設置を可能にした。このサテライト・スタジオからParis2024の象徴的な風景を背景にして各放送機関のキャスターやゲストが出演することになる。
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Mix Zone 東京2020 出典 OBS
史上初のセーヌ川開会式中継 OBSの技術力が試される
Parais2024で、OBSの技術力が最も示される重要な瞬間はセーヌ川開会式。 OBS は 3 隻の特別建造船を準備し、1隻当たり3台の中継カメラ搭載、3台の中継車を配置して、セーヌ川沿いの要所に130 台以上の中継カメラを設置、200台のSamsung Galaxyスマートフォンも使用、さらに8機のドローンカメラと3機のヘリコプターを配備して、陸、空、水上からの史上空前規模のライブ中継4KHDR中継に挑んだ。
200台のスマートフォンのUHD映像は、フランスの通信企業、Orange社が国内では初めて設置した5Gスランドアローンのプライベート・ネットワークが使用された。
5Gプライベート・ネットワークマルセイユ・セーリング会場やスタッド・デ・フランス(陸上競技・7人制ラブビー・開閉会式)、ベルシー・アリーナ(体操・バスケット・トランポリン)でもOrange社は5Gプレイベート・ネットワークを構築して、OBSの競技中継に使用された。
セーヌ川沿いに光ファーバー網が整備され、船上も含めて多地点からのFPU伝送・通信拠点はモンパルナスタワーを中心にエッフェル塔も使用された。
セーヌ川開会式の演出は、史上最も華麗でチャレンジングなスタイルで行われ、85隻のボートがセーヌ川を約6kmに渡ってパレードすると同時に、セーヌ川沿いに設けられた12の舞台や橋の上、川沿いの建物や屋上、エッフェル塔、トロカデロ広場などでさまざなパーフォーマンスを同時並行に繰り広げた。こうした多地点で行われるパーフォーマンスをリアルタイムで中継するのは、カメラの配置、回線構成、スイッチングなど極めて高度な技術力が必要となる。 しかもは4KUHDの 高画質で安定した映像を配信しなければならない、
OBSが特別に設計した機材も導入して入念な調整に取り組んだ。2023年7月には大規模な技術リハーサルを実施、OBSによるとシステムは順調に動き、微調整も完了し準備は万端という。7月26日の開会式には世界の約15億人の視聴者に高品質の画像と音声をライブで提供できると自信を示す。
一方、NBCも史上最大の中継体制で臨んだ。
セーヌ川に架かる橋に 8 台のユニーカメラや選手団ボートに 3 台のユニーカメラを設置した。Team USA のボートには 記者が1人乗船した。映像音声信号は、Broadcast RF または LiveU の RF 経由で送信された。セーヌ川沿いに 8 つの RF 受信サイトを設置した。また、バックアップのアップリンクも用意し、複数のインタネット接続を組み合わせたセルラー・ボーディング・システム(Cellular Bonding Systems) やStarlink 衛星アップリンクも投入した。これらの信号はすべてトロカデロ近くの敷地内にある NEPのOBVANに送られ、コネチカット州スタンフォードにある SPOCに送られた。
開会式の技術的なハイライトの 1 つは、OBSが設営したエッフェル塔からセーヌ川を渡ってトロカデロ宮殿まで伸びるケーブル・カメラ、開会式のために設置されたが、大会期間中は 1 日 3 時間程度、これを制御した。
OBS 新たな放送テクノロジーに挑戦
OBS が掲げる基本戦略は、「より少ないリソースでより多くの成果」、オリンピック放送の柔軟性、効率性、持続可能性を高めるとしている。▼OBSのオペレーションで称するリソーズを可能な限り別の大会で再利用する、▼会場や国際放送センター (IBC) での放送要件を大幅に削減、▼MRH の開催都市でのフットプリントを削減、▼業務をより最適化、▼放送可能なコンテンツとリモート ソリューションをより多く提供などを掲げる。
放送業務の複雑さを軽減することで、OBS は大幅なコスト削減と、より効果的で持続可能なオリンピック放送オペレーションを実現するとしている。
OBSがParis2024で導入したシステム
・被写界深度がより浅い映画用レンズ(Cinematic Lenses)を初めてすべての競技で使用。視聴者に迫力の臨場感あふれた映像サービス、アスリートの表情をリアルに伝える。
・マルチカメラ再生システム(Multi-camera replay system)
映画の「マトリックス」で有名になった特撮技術、SFX「パレットタイム」を放送技術に応用したマルチカメラモーションリプレシステム。数十以上のカメラを設置して異なるアングルから被写体を撮影してAIで瞬時に3 次元モデルとテクスチャ・マッピングを作成して合成連続映像を生成して、魅力的な映像を視聴者にサービス。 AlibabaとOBSが提携して開発したAIOBS Cloudでオペレーションを行う。14会場の21競技で17システムを設置(東京2020では10システム)され、卓球、バスケットボール、バレーボール、ビーチバレーボール、テニス、柔道、ブレキングなどの競技会場からサービスした。
・空中懸架ケーブルカメラ(Spider Camera)
4-Pointのワイヤーで動作させる最新鋭のカメラ・システムを強化
・ドローン搭載カメラ 15機
・アスリートの瞬間(Athelete Monmets) 17,000回使用
競技場にモニターを設置して、協議終了後にアスリートの家族や友人とライブで結ぶ。
・Dynamic Graphics
より多くのデータを提供することを強化することで、ストーリー性を強化し、より没入型のソリューションを提供する。ライブピンニングや生体認証データなどのダイナミックグラフィックスを導入する。
・バーチュアル・スタジオ・バックドロップ(Vertual Studio Backdrop)
IBCにバーチャルARスタジオを設置して、さまざまな背景映像でリポーターやアスリートが主演できる。各放送機関のリモート制作を容易にする。
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マルチカメラ映像生成システム(Multi-camera system) 出典 OBS
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4-Point スパイダーカメラ 出典 OBS
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アスリートの瞬間(Athelete Monmets) 出典 OBS
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Dynamic Graphics 出典 OBS
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ビューティカメラ 出典 OBS
Paris2024はAI五輪 人工知能 (AI) 自動ハイライト生成システムの導入
・OBS 自動ハイライト生成とOBS 生成支援編集システム
OBS はは、2024 年江原冬季ユースオリンピックで、制作および編集ワークフローに人工知能 (AI) 自動化を初めて導入して、オペレーションの効率を飛躍的に高めた
このシステムはIntel と協力して開発したもので、OBS 自動ハイライト生成とOBS 生成支援編集システムで構成されている。Paris2024では1日最大10,000本のハイライトを自動生成し、期間中に95000本を制作した。自動編集プロセスでは、自国のアスリートに関連した特定のコンテンツを求める各国のニーズに応えて、OBS は、AI機械学習によってトレーニングされたカスタマイスしたクリップ自動生成プロセスに挑む。
・Mix Zoneのインタビューの英語スクリプトAI自動生成
・映像ファイルのキャプション・サブタイトルAI自動生成
なども導入して、人工知能 (AI) を利用してオペレーションの効率化を進展させた。
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人工知能(AI)プロセッサー、「Intel Xeon」
AI五輪を推進したIntel
国際オリンピック員会(IOC)のTOPスポンサーのインテルは、Paris2024で公式「ワールドワイド AI プラットフォームパートナー」の称号を獲得した。インテルが開発した人工知能(AI)テクノロジーを世界最大の舞台で実装する。
インテルはOBSと協力して、最新鋭の人工知能(AI)プロセッサー、「Intel Xeon」を搭載した自動ハイライト生成システムを開発して導入した。これによりハイライト映像の制作と編集作業が大幅にスピードアップ・効率化され、より迅速に視聴者に提供できるようになる。
自動編集プロセスでは、自国のアスリートに関連した特定のコンテンツを求める各国のニーズに応えて、OBS は、AI機械学習によってトレーニングされたクリップ自動生成プロセスに挑む。14の競技分野でAI自動生成を実施する。
またインテルはサムスンと協力して、AI で競技映像を解析して、アーカイブ練習映像と照合して一人一人のアスリートを自動的に識別して、プロフィールを自動的に画面に表示するシステムも開発した。
さらにインテルは、 「Intel Xeon」 上に構築された AI を活用して、競技施設の 3D モデルが作成して、スマホアプリを介して屋内および音声ナビゲーションをサービスする。観客サービスにもAIが活躍する。
Intelは、Paris2024でエンドツーエンドの8K ライブ OTT ブロードキャスト配信ワークフローにも挑む。このサービスはインターネット上で配信する8K解像度の低遅延ライブストリーミングで、「Intel Xeon」AIプロセッサーを搭載したブロードキャスト・サーバーを使用する。OBSとNHKは開会式やコンコルド広場で開催される3×3バスケットボール、スケートボード、BMX(フリースタイル)、ブレイキングのアーバン・スポーツ4種目をでライブ中継制作、中国のCMG(China Media Group 傘下にCCTV)は陸上競技と閉会式を8Kでライブ中継制作する。この8Kライブ国際信号信号のファーマっトは60FPS/HDR/48Gbps、次世代コーディックH266/VVCで圧縮して、8K40 ~ 60 Mbpsで配信する。最新のインテル Xeon プロセッサーを搭載した PCやラップトップを使用することでわずか数秒の遅延で映像音声が視聴できる。接続するれば8Kテレビでも視聴可能で、世界中の視聴者が最高の解像度を誇る8Kライブストリーミングでオリンピック競技を楽しむ道を開いた。
インテルがマクドナルドの撤退を受けて「TOP」パートナーになったのは2018年、平昌冬季五輪2018では5Gタイムスライス映像、360度全方向VR、1218機のドローン編隊飛行などを披露、東京2020では3Dアスリート・トラッキングや VR トレーニングを導入し、北京冬季五輪2022では 初の5G初のライブ・ブロードキャストを実現させて、オリンピックの舞台でITテクノロジーのトップランナーとして名を馳せている。そしてParis2024では「AIオリンピック」を掲げて登場する。
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Live Cloud Broadcasting 出典 OBS
AOmega AIストロボ分析とモーション・トラッキング
「TOP」の Omega とは、人工知能 (AI)をフル活用して、より高速で、より関連性が高く、洞察に富んだデータを提供する。ダイビング、陸上競技、体操競技全体でストロボ分析を提供し、視聴者はアスリートの動きや生体力学をよりよく理解できるようにした。ダイビングでは、AI を使用して強化されたデータ ・グラフィックを生成し、各アスリートの空中および入水時のパフォーマンスに関する新しい情報を提供する。AI ベースのモーション・トラッキング テクノロジーは、カヌー スプリント、マラソン、マラソン スイミング、マウンテン バイク、ロード サイクリング、ボート、セーリング、トライアスロンで導入され、視聴者がアスリートの位置を追跡するのにも役立つ。
一方、飛び込みでは、OBS と Omega が協力して AI データ グラフィックを生成し、各選手の空中および入水時のパフォーマンスに関する新しいデータ セットを提供する。
Alibaba OBS Could Live Cloud Broadcasting
OBSはParis2024から初めてすべての国際映像信号(ホスト映像信号 ITVR)の配信をOBS Cloudで行う。OBS Cloudは世界4カ国の14か所のAlibaba Cloud(内2か所は高性能施設)に実装された。これまではIBCに大量の配信サーバーを仮設で設置してMRHs(Media Rights Holders)に配信していが、この配信オペレーションがAlibaba Cloudを利用することで大幅に効率化された。世界中で高速・大容量の光ファイバー網のインフラ基盤が整備されたことがクラウド化実現の大きな要因である。
さらにクラウド化することで、MRHsのニーズに応じて、映像・音声信号フォーマットのコンバートして配信サービスをが自由に行うことができる。
世界中のMRHsは、自国の放送拠点でHD、4KUHD、HD1080p60 HDR、HD1080iSDR、デジタル・フォーマットどニーズに応じたフォーマットを選択しての国際映像信号を受け取ることができる。MRHsは、開催都市のIBCに大量の放送機材や要員を派遣せず、自国の放送オペレーション拠点で、各局オリジナルのオリンピック番組のリモート制作が可能になる。とりわけ中小規模の放送機関ややデジタル・プラットフォーム、ソーシャル メディアのRHBsにとっては格好のツールだ。
OBSとMRHs双方の利便性は増し、大幅な効率化や経費節減が可能になった。OBS Cloud配信は衛星や光ファイバーの国際配信ツールに代わって主役の座に躍り出た。
Paris2024で国際映像のリモート配信を申し込んだ54のRHBsの内、3分の2がOBS Couldを利用した。この中には、4KUHD/HDRの配信サービスを利用した2つのRHBsが含まれる。
OBSにCloudを提供したAlibabaは、OBSが制作する全ての379の映像フィードと100の音声フィードが、OBS Live Cloudで配信されるとしている。
クラウド化に成功した鍵は、中国のIT企業、阿里巴巴集団(Alibaba Group)が提供する巨大なクラウドシステムである。Alibaba Groupは2017年に、国際オリンピック委員会(IOC)最高位スポンサー「TOP」となり、2028年まで3回の冬季・夏季五輪をIT分野で独占的にサポートすることになった。
2018年9月、「TOP」スポンサーの立場を活かして、Alibaba とOBSはクラウド上で作動する革新的なブロードキャスティング・ソリューション、OBS Cloudを立ち上げることで合意、ライブ中継信号の配信を始め、ハイライトなどのコンテンツの制作やストレージをクラウド上でスムーズに行うことを可能にした。
OBS Cloudには最先端の Intel® Xeonスケーラブル プロセッサが実装され、IBCやMRHsの高速・大容量接続などオリンピックの厳しい要件を考慮したソリューションを提供する。インテルも「TOP」に参加している。
東京2020で部分的に導入され、Paris2024では初めて100%のCloud Broadcastingが実施された。
しかし、高速・大容量の光ファイバー網が整備されていない発展途上国等に対しての国際映像の配信は、依然として衛星による配信に頼ることになる。OBSはMRHsのアクセスポイント、PoPs(Point of Presence)をParis1/Paris2、Frankfurt、Miami、Tokyoの世界各地5カ所に設置して便宜を図った。国際伝送ネットワークの総容量は4.2Tbpsに達するとOBSは想定している。
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OBS/Alibaba OBS Cloudを立ち上げで合意 2018年9月 出典 IOC
SDIからIPへ SMPTE ST-2110準拠したIPインターフェース(Internet Protocol Interface)実装
OBSは東京2020大会からIBCのシステムをすべて放送コンテンツのIP送信標準規格、SMPTE ST-2110に準拠したIPインターフェース(Internet Protocol Interface)を実装してIPプロダクションを実現した。
OBSは国際映像の制作に伴う映像・音声信号の処理や機器間の接続はすべてIP信号で行う。
IPプロダクションの実現で、IBCシステムの機器や要員は大幅に簡素化された。
4K/UHDの登場で、OBSが処理する信号フォーマットは、4K、HD、デジタル・サービスと多様化し、処理するデーター量も飛躍的に増加してIBCシステムの肥大化に拍車をかけている。また配信するコンテンツや時間数も飛躍的に増えて、従来のSDIのオペレーションでは機器や処理が膨大になり支障が出始めてきた。
IP化すれば、映像・音声信号に加えて制御信号、同期信号などの情報も同時に伝送可能になり、放送機器やケーブルを省力化することが可能になる。またマルチ・チャンネル配信が可能になるのでケーブリングは大幅に省力化を実現できる。
IPインタフェースの基盤を確立するの成功した鍵も、中国のIT企業、阿里巴巴集団(Alibaba Group)が提供する巨大なクラウドシステムでだ。
IP化の実現で、東京2020ではIBCの「肥大化」抑制に歯止めがかかり、面積で約30%(2016リオデジャネイロ大会比)、放送設備で約21%(同)の削減に成功した。
OBSのオペレーションはすべてIP化されて、IBCは「国際放送センター」から「国際データセンター」に変貌していった。
SMPTE ST 2110
世界の放送技術の標準化を定めるSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers 米国映画テレビ技術者協会)は、2017年9月、IPライブプロダクション相互運用性を図るSMPTE ST 2110規格を承認した。
ST 2110規格は、IPネットワークで伝送される多様な基本情報ストリームの運搬、同期、および記述をリアルタイムで指定する新しい企画標準で、ライブプロダクションから放送プレイアウトまで使用可能。従来のSDIをIPに置き換え、IPプロトコル(IP protocol)とインフラストラクチャーを活用する新たな放送オペレーションを可能にする。(8)
ST 2110規格では、映像信号や音声信号、補助データ信号の3種類の信号を別々にパケット化して伝送することが可能になり、各信号間の同期が精確にとれる仕組みが加わる。そのため、キャプションや字幕、多様なテキスト情報、複数の言語音声の処理などのオペレーションが容易になった。
SDIからIPへ
放送オペレーションでは、これまで、映像制作から伝送まで放送分野の独自規格、SDIで運用されてきた。しかし、映像の高精細化(HD/4K/8K化)にともなって、情報量が飛躍的に増え、HD(2K)の画素数は1920×1080px(pixel)、4Kでは3860×2160pxと4倍になり、8Kでは7680×4320pxとさらに4倍になる。
画質を改善するために、画像走査方式はインターレース・スキャン方式から、プログレッシブ・スキャン方式に変わり、ビットレートは約倍になる。
また動きの速い映像でも滑らかに表示できる高フレームレート化も進み、30pから60p、120pに向上し、色表現の画質に関わるビット深度(Bit Depth)も、8bitから10/12bitに高度化することで情報量は飛躍的に増加する。
伝送容量は、SD(270Mbps)からHD/1080i(1.5GBps)、HD/60P(3Gbps)、4K/30P(6Gbps)、4K/60P(12Gbps)、8K/120P(最高144Gbps)と増大し、伝送性能が追い付かなくなった。
これに対して、イーサーネットを利用したIP伝送では、2000年には10Gbpsだったが、光デジタルコヒーレント方式(coherent)が開発され2010年には100Gbps、現在では400Gbpsや600Gpsを実現し、800Gbpsの開発も進んでいる。
SDIでは同軸ケーブル1本で、HD1チャンネルの映像伝送が基本だが、イーサーネットIP伝送では、伝送容量の拡大に伴って、光ケーブル1本でHD/1080iが60チャンネル、4K/30Pが15チャンネルが伝送可能で、映像・音声信号の他に、制御信号、同期信号、インカムなど中継オペレーションに関わるすべての信号の伝送が可能になる。
SDIの機器間の接続は、機器間の同期をとるために外部同期信号が必要となるが、IP接続では、各機器は外部同期信号は不要で、スイッチングハブに接続するだけのシンプルな構成となり、機器やケーブルなどのシステムの簡素化が大幅に可能となった。
さらに放送オペレーション上で重要なのは、SDI伝送では片方向通信で送信側と受信側が固定されるが、伝送は双方向通信で、リモート制作などの柔軟性の高いシステム構築が可能になる。
OBSの国際映像の配信
OBSはすべての競技や開閉会式を含むイベントは4KUHD/HDRでライブ中継制作を行う。フォーマットは4KUHD/HDRを基本にして、HDやSD,デジタル・フォーマットて配信する。
配信するコンテンツは1万1000時間以上(東京2020に15.8%増)、その内ライブ中継は3800~4000時間、MCFは2350時、史上最高となった。
配信は、OBS Cloudで100%配信するとともに、4つの衛星、3168本の光ファイバーが使用された。
配信サービスの中核は“VandA Package”と呼ばれるパッケージ、SDIとIPでサービス。IBC内で配信。
・UHD VandA Package(12G-SDI) UHD VandA Package(IP)
映像:3840×2160 pixels 音声:5.4.1immersive audio BT2100-2/BT2020 ITU準拠 IPはSMPTE 2110
OBSの配信の中心になるUHD VandA Packageの信号フォーマットは4K UHD/HDR映像、immersive5.4.1 音声。81チャンネルの中継Feedが行われた
・HD VandA Package(SDI)(1.485G-SDI 50Hz/59.94Hz) HD VandA Package(1P)
映像:1920×1080i 音声:5.4.1immersive audio or Stereo SMPTE292M準拠 IPはSMPTE 2110
4K UHD をダウンコンバートしてHD映像もサービス、82チャンネルで配信された。音声はステレオsound。
・IP VandA Package
18Mbps/2.4Mbpsで動画配信。MCFサービスの主力配信チャンネル。
デジタルプラットフォームやソーシャルメディアはIP VandA Packageを利用する。
・8Kライブ中継コンテンツ配信 8K 7680×4320 pixels
NHKはOBSと協力してセーヌ川開会式やコンコルド広場のアーバンスポーツ(ブレイキング、スケートボード、バスケットボール3×3、BMXフリースタイル)を8Kライブ中継、中国CMGが陸上競技と閉会式を8Kライブ中継した。8KコンテンツはIBCで希望するMLHsに配信。
PoPs (Point of Presence)
OBSは光ファイバーのよるIPデジタル配信を強化するために、世界中に5か所のアクセスポイント、PoPsを設置した。アクセスポイントはParis1&2, Frankfurt, Miami, Tokyoの5か所に設置される。テレビ放送用インターネット通信速度は100Gbps、Posの帯域幅は東京2020に比べて32%増加させて、広帯域、高速、低遅延、安定性などのコネクティビティを強化した。
MRHsは、パリのIBCに要員を派遣して国際映像の分配を受けて自国に伝送するオペレーションを行わず、PoPSにアクセスして自国で国際映像を安定的に受け取ることが可能。IPリモートプロダクションが容易になった。
MDS(Multi-Distribution-Service Platform)
マルチチャンネル配信サービス(MDS)は、英語のコメントやグラフックスが入っている「完プロ」コンテンツの配信するサービスで、13チャンネルが配信(12×Sorts Channel,1×Olympic News Channnel)された。MRHsはそのまま放送することが可能なコンテンツだ。ウオームアップエリアのアスリートの様子やミックスゾーンの選手インタビューも含まれる。4つの衛星配信とOBS Cloudでサービスされる。
フルターンキーソリューションのMDSは費用対効果が高く、MRHsの放送オペレーション・スタイルを一変させた。MRHsは大会開催地に送る機材や人員を最小限に抑えて、自局で放送オペレーションを行うことが可能になる。MDSを利用したMRHsはParis2024では70余りに達した。現地派遣を止めて多額の経費が節約可能なMDSは小規模のMRHsに歓迎されている。
東京2020でMDSに参加したMRHsは52(2012年ロンドンでは23)、198の国と地域でこの配信サービスを利用して五輪大会のライブ中継放送が行われた。
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マルチチャンネル配信サービス(MDS) 出典 OBS
MCF(Multi-Clip-Feed)
スロー映像素材、別線カメラ素材、b-roll素材(補足映像、風景、資料映像)などやBehind the scenes素材(選手団の競技場到着、ウオームアップエリア、監督・コーチ・選手のリアクション、観客や競技場の雰囲気等)、Mix Zoneインタビュー素材、ビューティカメラ素材、会見素材などをライブ配信する。中継番組やニュースで使用される放送機関向けの「素材フィード」である。
Paris2024では28Feed、合計2350時間のMCFサービスが、4つの衛星配信で行われた。
主要放送機関はMCFで配信される多様な映像素材を使用して独自の中継番組やニュースを制作する。
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MCF(Multi-Clip-Feed)
Content+
Content+は、OBS Cloud上でサービスするOBSの主力コンテンツ・デジタル配信プラットフォームである。RHBsは、大会期間中に制作された全ての映像や音声コンテンツにアクセスできる。
Paris2024では、OBSはすべてのコンテンツをOBS CloudでMRHsにサービスすることを開始した。競技ライブ中継素材や選手のインタビューや会見、bihind-the-scenes素材、MCF Feed、独自制作ショート・ストリー、ソーシャルメディア用素材などで構成され、デジタル・プラットフォームを意識したサービスである。Paris2024では約17,000本の素材が配信された
この内、Content+の中核となるシート・ストリー、Tokyo2020並みの9000本をサービス。配信はすべてOBS Cloudで行われた。Paris2024でが初めて4KUHDでもサービス開始。
RHBsは、ライブ中継コンテンツについては、低解像度ファイルをほぼリアルタイムで参照しながら、競技やセレモニーのコンテンツを取得できるようになった。
RHB はコンテンツの一部をマークして、ライブ中継が継続中にも、ポストプロダクションのニーズに合わせて必要な素材をダウンロードすることで、ハイライト・コンテンツの制作が瞬時に可能になる。
Content+では、ダウンロード際に、映像フォーマット変換が可能で、テレビ(リニア)やデジタル・プラットフォーム、ソーシャル・メディアに対して、4KUHD を始め、HD映像、インターネット・プロトコの映像、スマホ向けの縦長映像、オーディオ・パッケージなど、RHBのニーズに合わせて多様なフォーマットでサービスする。
Paris2024では世界中の17 の RHBs と4 つの通信社が、Web ベースのインターフェイスを通じてこれらのクリップをダウンロードするフル サービスに加入した。この内、2つのRHBsは、4KUHD/HDRの配信サービスを利用した。
OVP(Olympic Video Player)
オリンピックビデオプレーヤー(OVP)は、デジタルプラットフォーム、Websites、Social Media向けの高度なマルチプラットフォームビデオプレーヤー。中小規模のMRHs向けのフルターンキー・サービス。
すべての競技中継がHD画質でライブとオンデマンド配信が行われる。ハイライト素材もサービスされる。Rio 2016初めてサービスを開始、14のMRHsが利用した。
OVPはRKBsがコンテンツをそのまま放送に使用することも可能で、競技やセレモニーなどのライブ・コンテンツやショート・ストーリー・クリップがナレーショの解説付きでサービスされる「完プロ」、フルターンキー・サービスである。またRHBsが自由にカスタマイズ可能なホワイトラベルソリューションの映像素材も提供し、360度VR素材も配信。 MRHsは独自のコンテンツや映像素材、ライブコメント、他のチャンネルなどを追加してサービスするかを自由に選択できる。
OVPはParis2024で初めて4KUHDライブストリーミングを行い、OBS Cloudで配信を実施した。
OVPは、発展途上国などの中小規模の放送機関は、自社で配信サービスを受ける放送機器や要員の手配、調整などの事前準備などが負担になっているが、こうした労力や経費が大幅に削減可能になる。
Olympic News Channnel
IOCがRio2016大会後に立ち上げたOTTサービス。OBSが制作するアスリートなどの特集企画コンテンツ、関連ニュース、競技のハイライト、過去の大会のアーカイブ映像、五輪以外の国際大会のライブ中継をなど、OBS Cloudで160超の国と地域に配信する。視聴者はPC,タブレット、スマホなどで直接、視聴可能で、Youtube、X、Insragramなどでもサービスされる。スマホ世代の若者にターゲッツを合わせたコンテンツ編成を行う。11の言語のナレーション・字幕付きの「完プロ」サービスで、マドリードのOBS本部内の拠点でリモート制作される。
MDSでも配信されるので、MRHsはそれぞれのニュース・番組やインターネット・サービスで使用することも可能。
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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)
2024年6月10日
© 2024 IMSSR
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廣谷 徹 Hiroya Toru
国際メディアサービスシステム研究所(IMSSR)
代表
横浜市青葉区あざみ野3-1-7-101 〒225-0011
Tel 045-903-9685 Fax 045-903-9685
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