水質汚染深刻 お台場海浜公園 トライアスロン・マラソン水泳
Paris2024 セーヌ川浄化作戦 「泳げるセーヌ川」を取り戻す 14億ユーロの水質改善プロジェクト 巨大地下水槽 パリ市民の悲願Media-closeup Report
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台風8号、明日未明東北地方に上陸へ 強い雨のおそれ 大雨は水質汚染を招く懸念
気象庁によると、 関東の東にある台風8号は、7月27日午前6時には千葉県銚子市の南東230キロの海上をゆっくりした速さで進み、このあと進路を北寄りに変えて27日夜遅くから28日未明に東北に接近し、上陸する見込みである。
東北や関東甲信ではしだいに風や雨が強まっていて、28日にかけて台風の中心から離れた場所でも大雨になるおそれある。
こうした中で、2020東京五輪大会のトラアスロン競技は、7月26日に男子が開催され、今日(7月27日)女子がお台場海浜公園で開催された。
今日の女子トラアスロン競技は、台風8号の影響による風と雨の中で、開始時間を遅らせてスタートし、バミューダのF.ダフィー選手が優勝して競技は無事終了した。
大会事務局は、7月26日の水温は「30度」、7月27日は「28度」と発表した。しかし最も懸念されている水質については検査データの発表がない。
台風8号の影響で、断続的強い雨が降り、27日朝までの24時間に降る雨量は多い所で、関東甲信で80ミリが予想されていた。
東京都が豪雨に襲われると、隅田川沿いの下水処理場は下水処理能力を超えると、未処理の下水を隅田川に放出する。その影響でお台場海浜公園の水質が急速に悪化する可能性が大きい。東京都は早急に、トライアスロン(スイム)とマラソンスミングの会場となるお台場海浜公園の水質検査を実施して公表すべきである。
猛暑下では水温の上昇も問題で、競技実施海域の海域の水温は、「31度C」が安全基準とされている。7月26日の水温はギリギリの「30度」。お台場の競技海域は、「汚染水」の流入を抑えるために3重の「水中スクリーン」が張り巡らされているが、この影響で海域が「温水プール」状態になり、夜間でも水温が下がらない可能性が大きい。国際競技団体は、安全基準を超えた高水温下での競技実施を避けるために、2019年12月、異例の早朝6時30分競技開始を決めた。
8月4日、同じお台場海浜公園でオープンウォータースイミング(女子)が開催された。台風8号の接近以後は、幸いにも雨は降っていないので水質汚染は進んでいないが、これまでに流れ込んだ未処理の下水の影響は残っていると思われる。選手はこの中を10キロメートルも泳がなければならない。4日は海水温は29.3度と発表され、依然として高水温は続いていて選手への悪影響が懸念される。8月5日は、オープンウォータースイミング(男子)が朝6時30分スタートで開催される。懸念は海水温である。
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台風8号 出典 tanki.jp
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女子トライアスロン(スイム) お台場海浜公園 トラアスロン競技(男女 7月26日/7月27日)は、水温と水質は問題ないとして「無事」開催された
出典 IOC MEDIA
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ロケーション抜群 お台場海浜公園
「お台場海浜公園」は、東京湾に数多くある海浜公園の中でNO1のロケーション。とにかく眺めは抜群。
ここで五輪大会のトライアスロンやマラソンスイミング開催される。キャッチフレーズは「史上最も都会的コース」である。国際トラアスロン連盟は「お台場海浜公園」を会場にすることを熱望したという。
レインボーブリッジが目の前に広がり、対岸の都心の高層ビル街、東京タワー、晴れていると真っ青な空と海が広がる。海辺にはきれいな砂浜が続く。砂浜は人工的に造成されたものだ。向かいの島は、江戸時代末期、ペリー黒船襲来に備えて建設されたお台場の一つ、砲台が設置されていた。今は史跡になっている。とにかく最高のロケーション。
夏には花火大会が開催されたり、今年の1月下旬には「お台場海浜公園」の会場に「五輪のシンボルマーク」を設置された。夜間はライトが点灯され、五輪大会のランドマークになっている。
素晴らしいビーチだが、実は深刻な水質汚染問題を抱えている。
レインボーブリッジ向こう側に隅田川の河口があり、大雨になると大量の未処理の下水道排水が東京湾に流れ込む。かつての東京湾の水質汚染の原因は工場排水だった。今は工場排水は規制が厳しく強化され、水質汚染の主役は、生活排水となった。
「お台場海浜公園」の海は下水道排水が原因の深刻な水質汚染に襲われている。
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レインボーブリッジや都心の高層ビル街が見渡せる景観は素晴らしいが… 筆者 撮影 2018年11月
海水浴場として認められていない「お台場海浜公園」
実は、「お台場海浜公園」は東京都の条例で、水質基準が満たされていないために、海水浴場として認められていないのである。
海面に顔をつけて泳ぐのは禁止で、足だけを海水に入れるいわゆる「磯遊び」を楽しむ砂浜になっている。
港区は、この「お台場海浜公園」を区民の憩いの海浜公園にしようと力を入れている。「泳げる海、お台場」の実現が悲願なのである。
かつては貯木場だった入り江に、昭和40年代から海浜公園としての整備が行われ、1996年(平成8年)に現在の形でオープンした。
2013年に東京が2020夏季五輪の開催地に選定され、お台場海浜公園でトラアスロンやマラソンスイミングの会場になることが決まると、港区ではお台場海浜公園の整備を更に加速した。
2017年(平成29年)から毎年、夏の1週間程度、期間を区切って特別に海水浴場にするイベント、「お台場プラージュ」の開催を始めた。去年も8月10日から9日間開催し、砂浜は多くの市民でにぎわった。た。その他、トライアスロンなど特別なイベント開催時は、遊泳を認めている。
しかし、港区の熱意は理解できるが、いかんせん、お台場の水質を改善しないことには、恒常的な海水浴場にはならない。
そのためには、水質汚染の原因となっている隅田川から流れ込む未処理の水洗トイレなどの生活排水を止めないことには抜本的な解決にはならない。下水処理場の能力を改善して100%処理を達成することでしょう。
「お台場海浜公園」は、水質問題という爆弾を抱えていたのである。
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お台場海浜公園に掲示されている遊泳禁止の立て札 海水浴場として水質基準を満たしていない
「公園内で許可の無い」という追加の張り紙が張られていた 筆者 撮影 2018年11月
大腸菌が基準値を超えて中止になった五輪テストイベント 「トイレの臭い」がするという苦情も
その懸念が、昨年の夏についに表面化した。
昨年の8月中旬、この「お台場海浜公園」を会場に、トライアスロンとパラトライアスロンのワールドカップ大会(W杯)、そしてマラソンスイミング(オープンウオータースイミング)が開催された。この大会は2020東京夏季五輪大会のテストイベントも兼ねていた。
この内、パラトライアスロンは、競技海域の大腸菌の数が基準値を超えたとしてスイムは中止になってしまった。大会は自転車とラン(長距離走)のデュアスロンになった。
前日に、温帯低気圧にかわった台風10号が首都圏を襲い大雨を降らした。
隅田川沿いにある下水処理場の処理能力を上回り未処理の水洗トイレなどの生活排水が未処理で東京湾に流れ込んだ。東京都の下水道処理は、雨水(あまみず)と汚染水を分離しない合流式の処理システムなので、大雨が降って下水道処理場の処理能力が超えると、大量の汚染水を未処理で放出する。
競技前日に主催者が行った水質調査では、国際トライアスロン連盟の基準値(100ミリリットル以下で250個)の約2倍の大腸菌が検出され、「レベル4」、競技中止と判定されたのである。
さらにトライアスロンやマラソンスイミングに参加して、コースを泳いだ選手からは、「トイレの臭いがする」、「臭い」などの苦情が続出した。
「臭い」の問題は、個人差があり、「臭いは気にならなかった」という選手もいたが、外国人選手を中心に「臭い」を指摘する声が複数でたことで、「悪臭」の問題も深刻だ。
また海水の汚濁がひどく、海の中は濁っていて視界がほとんどない。泳いだ選手からは自分の手の先も見えなかったという声も出された。
「お台場海浜公園」の周辺の海の海底には、これまで東京湾に流れ込んだ生活排水の膨大な量のヘドロが堆積していることが明らかになっている。
こうした海底のヘドロが悪臭や汚濁の原因となっている可能性がある。
きわめつけはトイレットペーパーの残滓のような浮遊物が海の中にウヨウヨ漂っているということだ。
こうした海を、トライアスロンやマラソンスイミングの会場にしていいのだろうか、大きな疑問がわく。
大量の砂を投入 水質改善効果は?
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伊豆諸島の神津島から砂の投入工事 2020年2月14日 お台場海浜公園 筆者撮影
先週から、東京都は伊豆諸島の神津島から砂を運び込み、海底に投入する作業を開始した。海底のヘドロを砂で覆い、海水の汚濁や「臭い」を抑え水質改善をしようとするものだ。砂は汚物を吸着したり、濾過(ろか)する効果もあるという。貝などがすみつくことで、水質を浄化する効果も期待できるとしている。3月末までに、約2万立方メートル砂を約6000万円かけて投入する予定である。
五輪大会開催まで半年を切っている中で、水質汚染への批判が出ている中で、急遽始めた工事である。半年で水質改善の効果が出るという到底思えない。なぜもっと早く手を打たなかったのか問題だろう。
しかし、「臭い」や「汚濁」の問題には効果があるかもしれないが、大腸菌などの水質汚染の改善にはほとんど役立たない。
一度、大雨に見舞われると、大量の下水道の汚染水が東京湾に流れ込み、せっかく投入した砂も汚染され、再びヘドロで覆われる可能性が大きい。
大雨で未処理の下水道排水が東京湾に流れ込むのは、年間約100回に達するという。
「アスリートファースト」はどこへいった
小池都知事は、たびたび「アスリートファースト」という言葉を繰り返す。
一度、大雨が降ると大腸菌がうようよし、「トイレの臭い」が立ち込める。海底にはヘドロが堆積して、1メートル先も見えないほど濁り、浮遊物が舞っている。こうした海で世界各国から訪れる選手に泳がす大会運営は、何が「アスリートファースト」なのだろうか。
マラソンと競歩は、国際オリンピック委員会(IOC)の英断により、暑さ対策で選手の健康に配慮して札幌開催に踏み切った。まさに「アスリートファースト」である。
お台場海浜公園の汚染された海を、トライアスロンでは1.5kM、マラソンスイミングでは10km、選手は周回コースで泳ぐことなる。
「アスリートファースト」という言葉をもう一度思い起こしてほしい。
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お台場海浜公園の会場に設置された巨大な五輪マーク 夜間は点灯される 筆者撮影
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トライアスロン、スイム(女子) 五輪テストイベント 2019年8月 お台場海浜公園 筆者撮影
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トライアスロン、スイム(女子) 五輪テストイベント 2019年8月 お台場海浜公園 選手の後ろに見えるオレンジ色のラインは汚染水の流入を防ぐために設置された「水中スクリーン」 筆者撮影
パラトライアスロン、スイム競技中止 大腸菌が基準の2倍に
2019年8月、2020東京夏季五輪大会とほぼ同じ時期に合わせて、トライアスロンとパラトライアスロンのワールドカップ(W杯)、マラソンスイミング(OWS マラソンスイミング)の国際大会が開催された。この大会は、五輪大会のテストイベントを兼ねていた。
8月17日、パラトライアスロンのワールドカップ(W杯)は、お台場海浜公園のスイムコースの水質が悪化したとして、急遽、スイムを中止してランとバイクのデュアスロンに変更されるという事態が発生した。
主催者の国際トライアスロン連盟(ITU world triathlon)は、競技前日の8月16日金曜日の午後1時に実施された最新の水質検査で、大腸菌のレベルが基準値を大幅に越え、ITU競技規則の水質基準で「レベル4」に上昇したことが明らかになり、当日のの8月17日、午前3時に危機管理会議を実施して協議の結果、パラトライアスロン競技をランとバイクのデュアスロンのフォーマットに変更することに決定した。
ITUによると、お台場海浜公園のスイム会場内で、8月16日金曜日の午前5時と午後1時に二回海、海水を採取して水質検査を行った。午前5時のサンプルでは、数値は上昇したもののITUが定めた基準値内に収まったが、午後1時に採取されたサンプルでは、ITU基準の大腸菌が上限の2倍を越える数値(基準値:大腸菌 250個/100ml以下)が示された。両サンプルとも、腸球菌の数値(基準値:腸球菌数 100個/100ml以下)は基準値内に収まっていた。
これらの結果や前日のデータを考慮し、ITUは水質リスクが「レベル4」という判定を行い、メディカル代表や3名の技術代表がスイムの中止を決定してパラトライアスロンはデュアスロン競技とすることが決まった。
8月15日と16日に予定したトライアスロンの大会(健常者)は、それぞれ前日に行われた水質検査に問題はなく、予定通り実施された。
一方、8月11日に同じ会場で開催したオープンウオータースイミング(マラソンスイミング)の大会では、参加した複数の選手が、「トイレの臭いがする」、「異臭がする」など悪臭を指摘する声が相次いだ。
「お台場海浜公園」の水質が急激に悪化した原因はゲリラ豪雨である。前日の8月16日、大型の台風10号は温帯低気圧に変わったが、東京は断続的に強い雨が降った。大量の雨が降ると、雨水と生活排水を一緒に処理する下水道処理場の処理能力が
オーバーして、未処理の生活排水が隅田川から東京湾に流れ込み、お台場海浜公園の海域に達したものと思われる。懸念されていた豪雨による水質汚染悪化が現実のものとなった。
問題は、お台場海浜公園が、「安全・安心」な海域ではなく、水洗トイレ排水などの生活排水源と直接つながっている水質の安全性が確保されていない「危険」な海であることが改めて明らかになったことである。大腸菌は、自然界に出ると1日程度で死滅する。その大腸菌が基準以上に検出された事実は重い。
大会終了後の8月20日や21日にも東京は激しいゲリラ豪雨に襲われた。お台場海浜公園の大腸菌のレベルは、再び数倍に上昇したのは間違いないだろう。
毎年、夏の東京は、何度となく台風や豪雨に見舞われる。2020東京大会の開催時期も例外ではない。お台場海浜公園の水質が基準を満たして大会が開催できるかどうか、まさに綱渡り、「神頼み」である。
水温、水質で懸念噴出 オープンウオーター(OWS マラソンスイミング)のテスト大会開催
2019年8月11日、連日猛暑が続く中で、マラソンスイミングの2020東京五輪大会のテスト大会が、男女約40名の選手が参加して、お台場海浜公園で行われたが、参加した選手から水温や水質を懸念する声が相次いだ。
テスト大会は5キロの周回コースで行われた。本番では男女ともに10キロを泳ぐ。
前日の10日、大会の主催者の組織委員会は、急遽、午前10時スタートで予定していた男子5kmの競技開始時間を3時間早めて、午前7時に変更し、女子のスタートを7時2分とした。
その理由は、猛暑での水温の上昇の懸念だった。マラソンスイミンを統括する国際水泳連盟(FINA)は、選手が健康的に泳げる水温の上限の基準は31度以下(水深40センチ)と定めている。この日は午前5時の時点で29・9度だったという。水温上昇は選手の体力を消耗させるのである。
五輪本番は午前7時のスタートを予定してが、FINAのコーネル・マルクレスク事務総長は水温次第で午前5時~6時半に変更することも示唆している。
レース終了後、2012年ロンドン五輪金メダルのウサマ・メルーリ(チュニジア)は「これまで経験した中で最も水温が高く感じた」とぐったりとした様子。女子の貴田裕美(コナミスポーツ)は「熱中症の不安が拭えなかった」と漏らしという。(共同通信 8月11日)
さらに深刻なのは、水質問題である。競技会場のお台場海浜公園は、大腸菌汚染だけでなく、悪臭や海水汚濁の問題を抱えている。
このコースを泳いだ複数の選手は、「正直臭いです。トイレのような臭さ」という感想を明らかにし、「検査で細菌がいないとなれば、信じてやるしかない」と述べたという。また海水の汚濁がひどく、泳いでる自分の手先も見えないほど汚れているという。
組織委は今回のテスト大会で、約400メートルにわたってポリエステル製の膜を海中に張る「水中スクリーン」を設置し、大腸菌類などで汚染された海水が入り込むのを防いだ。五輪大会本番ではこの「水中スクリーン」を3重に張る計画である。しかし、「水中スクリーン」では悪臭や汚濁の水質改善にはならない。
台風や豪雨に見舞われた場合には、隅田川から流れ込む大量の汚染水が、お台場海浜公園にも流れ込み、3重の「水中スクリーン」を設置しても、水質の維持は可能かどうか未知数である。
さらに、「水中スクリーン」を3重に張ると、汚染水の流入は抑えられるかもしれないが、競技区域の海水温は、照り付ける太陽熱で「温水プール状態」になるのは必須だろう。連日の猛暑の中では夜間でも海水温が下がらず、国際水泳連盟(FINA)の上限、「31度」は早朝でも達成するのは困難になるという懸念が大きい。 2019年12月、国際トライアスロン連盟は、トライアスロン競技の開始時間を、男女個人は1時間前倒して午前6時30分開始とし、混合リレーは午前8時30分から7時30分に繰り上げることを決めた。
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競技会場に設置された「水中スクリーン」 2019年8月8日 筆者撮影
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競技会場に設置された「水中スクリーン」と外側を航行する水上バス 2019年8月8日 筆者撮影
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「お台場海浜公園」の水質汚染問題はいまに始まったことではない
大腸菌基準越え 英タイムズ紙報道
2020夏季五輪大会の開催都市を決めるIOC総会の直前の2013年8月、英国タイムズ紙は、お台場海浜公園周辺の海水に安全基準を超える大腸菌が含まれ、水質汚染が懸念されると報じた。
タイムズ紙は競技が実施される8月に最も水質が悪化すると指摘。2012年と2013年8月に測定された大腸菌の数値は、国際トライアスロン連合が定める大会開催基準値の上限の数百倍に達していたと伝えた。
調査で東京湾に潜った大学教授が体調を崩した事例を紹介し「一晩中、下痢や嘔吐(おうと)が続いたとし、大量の貝や魚の死骸があり、腐敗した物質が口から入ったのだと思う」とのコメントを掲載した。
これに対して東京招致委員会は、これまでにトライアスロンや水泳オープンウオーターの大会がお台場で開催されたが、「問題が起きたことはない」と反論した。
水質問題に懸念を表明した舛添前知事
五輪大会関係者が公式に「お台場海浜公園」の水質問題に言及したのは舛添要一前都知事である。
2014年6月、都知事に当選した舛添要一氏は、東京都が担当する競技場整備計画を大幅に見直すことを表明した。招致計画では約1538億円だったが、改めて試算すると当初予定の約3倍となる約4584億円まで膨らむことが判明したのである。
そして8月には、舛添前知事は記者会見で「お台場海浜公園」の移転を検討したいと表明した。
その理由として、まず「大腸菌の基準値が超えている水質問題」を挙げ、さらに「羽田の管制空域の下にあって、取材用のヘリコプターが飛べない」ことを挙げた。
「水質問題」への懸念は6年前に問題化していたのである。
移転先として横浜の山下公園などを挙げたが、地元の港区などから猛反対にあい移転案はこれ以上動かなかった。
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出典 TOKYO MX NEWS 2014年8月14日
組織委員会も横浜移転を検討
2015年5月、今度は、森大会組織委員会が国際トライアスロン連合のカサド会長と東京都内で会談し、競技会場を「お台場海浜公園」から、横浜市の山下公園での実施を検討するよう要請した。カサド会長は「可能性を検討していく」と述べた。
森会長は「横浜市の強い希望もあった」と述べ、武藤敏郎事務総長は「費用面は関係なく、大きな大会の開催経験がある所でやったらどうかということ」と説明した。山下公園は2009年から世界シリーズの開催実績がある。ただし、この時は表向きには水質汚染問題を特に理由に挙げていない。
国際競技団体やIOCも水質問題への懸念を表明
2017年10月になると、今度は国際トライアスロン連合(ITU)が、お台場海浜公園周辺の水質に懸念を示して、東京都に下水対策の強化を求めていることが明らかになった。
大会組織委員会の水質調査で、国際大会開催の基準値を20倍も超える大腸菌群などが検出されたいたことが明らかになったからである。
この調査は、東京都と大会組織委員会が行ったもので、2020東京五輪大会と同じ時期の2017年8月に、お台場海浜公園周辺の海域の水質・水温を測定したものである。
調査を行った期間は、21日間連続で雨が降り、1977年に次いで、観測史上歴代2位の連続降水を記録した。
調査結果によると、降雨の後は、水質が顕著に悪化することはっきりと示された。(調査結果の詳細は下記参照)
2020五輪大会が開催されるのは時期は真夏、毎年、台風や集中豪雨の襲われるのは必至である。お台場海浜公園周辺の水域の水質レベルは、依然として極めて危険なレベルにあることが明らかになった。
これに対して大会関係者は「会場変更の可能性はない」とし、今後、都が中心となって水質改善の取り組むとした。
ところが翌年の2018年4月、タイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機構(GAISF)の会議などで、複数の国際競技連盟が、東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判し、国際トラアスロン連盟は「お台場海浜公園」の水質問題を指摘した。
これを受けて、IOCのコーツ副会長を代表とする調査チームが来日し、2020東京大会の準備状況のチェックが行われた。
「お台場海浜公園」については、コーツ副会長は「トライアスロンについては引き続き水質に問題があるが、今年と来年にもっと詳しい水質調査や、水中に幕を設置する実験を行うとの報告を受けている」と述べ。2020年東京五輪の一部会場の水質に懸念が残るとして改善するよう求めた。
「お台場海浜公園」の水質汚染問題は、最近浮上した問題ではなく、2020東京五輪大会招致の段階から、関係者の間では懸念されていた問題だった。さらに開催準備が本格化した2014年当時、舛添前知事は、会場変更について言及しているのである。大会開催まで5年以上の期間がありながら、対策に乗り出さず、事実上、問題を放置していた責任は大きい。
本番は3重の『水中スクリーン』を検討 「大腸菌等の抑制」を目指す 大会組織委員会
大会組織委員会は、大会終了後、記者団に対して、「五輪大会本番と同じコースと設備で、今回の大会を、国際競技団体(IF)や国内競技団体(NF)、大会組織委員会が一体となって運営した。今回、気象予報士1名を含む2名の気象専門家が常駐し、気象条件を常時把握する体制をとり、暑さ指数(WBGD)の予測をして、競技開始時間の変更を行った。また水質検査の結果を踏まえてパラトライアスロンのスイムを中止して、バイク、ランのデュアスロンに変更したが、変更の判断は、ワールドカップ(W杯)のテクニカルチームとメディカルチームが行い、大会組織委員会はオブザーバーの立場だった」と述べた。
また、水質汚染防止対策の「水中スクリーン」の設置については、「昨年の実験で、1重の『水中スクリーン』で十分な効果があってので、今回の大会では、1重の『水中スクリーン』で対応した。来年の本番の大会では、3重の『水中スクリーン』の設置で準備を始める」とした。
「水中スクリーン」を設置すると水温が上昇する懸念があるのではという質問に対しては、「昨年の実験では、そういうファクトはなかった。実験では狭いエリアで行ったのに対し、本番では広いエリアになるので、水温上昇への影響は少ないのでは思う」とし、『水中スクリーン』を開けたり、閉めたりすることが可能な開閉式にして、水温上昇の影響を抑えることを検討したいとした。
昨年、オリンピック期間7月24日~8月9日、パラリンピック期間8月25日~8月31日の計22日間、東京都と大会組織委員会では、お台場海浜公園の競技エリアの水質検査を行うと共に、競技エリアの一部に、1重の「水中スクリーン」と3重の「水中スクリーン」を設置して、「大腸菌等の抑制効果」を検証する実験を行った。
その結果、台風等の影響を直接受けたことなどより、お台場海浜公園の海域では、大腸菌類の数値が27日間のうち12日間で、2つの競技においての水質基準を超過したことが明らかになった。なにも対策を講じななければ、この海域での競技は開催できなかったと可能性が大きい。
一方、「水中スクリーン」設置区域内では、「1重」の区域内では、水質基準を超過したのは2日間で、3重の「水中スクリーン」設置区域内では、すべての期間で水質基準をクリヤーし、「水中スクリーン」は「大腸菌等の抑制効果」があることが明らかになった。
水温については、実験を行った17日間の平均で、「1重」では、1.1°C、「3重」では、1.4°C高く、最高では1重、3重ともに2.7°C高くなるという結果がでた。
「水中スクリーン」の設置エリアは、実験とは違い、本番ではより広いエリアになるので、水温上昇にどの程度の影響かあるが分かっていないが、3重の「水中スクリーン」を設置すれば、水温上昇の懸念が高まるのは当然だろう。最後のチャンスになり今年のテストイベントで3重の「水中スクリーン」をテストしなかったことが悔やまれる。
また3重の「水中スクリーン」は、構造が複雑で設置に時間がかかり、開閉式にすることが現実的に可能なのかどうか、疑念が残る。
さらにマラソンスイミングの選手から出された、「トイレのような臭いがする」とか「異臭がする」といった「臭い」の問題についても、組織委員会は「トライアスロンの選手からは苦情が出ていない」として問題視する姿勢が見られない。
「大腸菌」、「水温」、「臭い」、3つの課題を後1年で解決できるだろうか。
2020東京五輪大会のスローガンは「アスリートファースト」、世界各国から訪れるトライアスロンやマラソンスイミング選手に、「安全・安心」な競技エリアを準備するのは大会組織委員会の責務である。
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出典 水質調査結果 東京都
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東京都の下水道処理場(水再生センター) 隅田川水系に集中している 出典 東京都
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お台場周辺の海域 大腸菌が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌が上限の7倍も検出
2017年10月、2020東京大会組織員会は、マラソン水泳とトライアスロンが行われるお台場周辺の海域で、大腸菌(Coli)が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌(faecal coliform bacteria)が上限の7倍も検出されたと公表した。まさに衝撃的な数値である。
この調査は、東京都と大会組織委員会が行ったもので、オリンピック開催時期の21日間、パラリンピック開催時期のうち5日間、マラソンスイミングとトライアスロンの競技会場になっているお台場海浜公園周辺の水質・水温を調査したものである。
調査を行った2017年8月は、21日間連続で雨が降り、1977年に次いで、観測史上歴代2位の連続降水を記録した。
調査結果によると、降雨の後は、水質が顕著に悪化すること分かった。今回の調査期間では、国際競技団体の定める水質・水温基準達成日数は、マラソンスイミング基準では10日で約半分、トライアスロン基準はで6日で約3分の1に留まった。
お台場海浜公園周辺の競技予定水域は、競技を開催する水質基準をはるかに上回る汚水が満ち溢れていることが示されたのである。
参加選手の健康問題を引き起こす懸念が深まり、国際競技団体などから批判が強まった。
これに対して、組織委は、雨期に東京湾から流れ込む細菌の量を抑制するために、競技予定水域を水中スクリーンを設置して東京湾から遮断するなど様々の実験を行い、水質改善に努めるとした。
国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長は「トライアスロン競技連盟は依然として水質を懸念している。今年と来年に行われる水のスクリーニング、カーテンの入れ方などの実験についてプレゼンテーションを受けた。この姿勢には非常に満足している」としたが、水質問題に依然として懸念が残るとして改善を求めた。
東京湾の水質改善は、着々と進んではいるが、とても海水浴ができるような“きれいな海”とはいえない。東京湾に流れ込む川からは大量の汚染水が流れ込む。海底にはヘドロが蓄積している。オリンピック開催期間は真夏、ゲリラ豪雨は避けられない。東京湾は、“汚水の海”になることは必至だ。
そもそも東京湾に、選手を泳がせて、マラソンスイミングやトライアスロンを開催しようとすること自体、無謀なのではないか。
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お台場海浜公園における水質・水温調査地点 東京都オリンピック・パラリンピック事務局
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水質調査結果(トライアスロン) 東京都オリンピック・パラリンピック事務局
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水質調査結果(マラソンスイミング) 東京都オリンピック・パラリンピック事務局
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お台場海浜公園における水質・水温調査地点 東京都オリンピック・パラリンピック事務局
「水面に顔をつけない」が条件の海水浴場
2017年夏、葛西臨海公園に「海水浴場」がオープンした。水質改善が進んだ東京湾のシンボルとして話題になった。
かつては東京湾には葛西のほか大森海岸、芝浦など各所に海水浴場があったが、高度経済成長期に臨界工業地帯の工場排水や埋め立て工事で1960年代に水質悪化が進み、海水浴場は姿を消した。東京湾では、約50年間海水浴が禁止され、房総半島や三浦半島までいかないと海水浴ができなかった。
港区では、「泳げる海、お台場!」をスローガンに掲げ、お台場海浜公園に海水浴場を開設しようとする取り組みに挑んでいる。
ところが、お台場海浜公園は、水質基準を満たさないため通常は遊泳禁止である。
港区では、2017年7月29日(土曜)・30日(日曜)の2日間、範囲を限定し、安全面等に配慮しながら行う“海水浴体験”を開催、訪れた親子連れは、“海水浴”ではなく、ボート遊びや水遊びを楽しんだという。なんと「水面に顔をつけない」ことが条件の“海水浴体験”だった。
お台場の海は、「水面に顔をつけない」で足を海に入れる「磯遊び」程度の水質しか保証されていないのである。この海で、マラソンスイミングやトライアスロン(スイム)の競技を開催すれば、参加選手は“汚染”された海水に顔をつけ、海水を口に含まざると得ない。選手の健康問題を組織委員会はどう考えているのだろうか。
なぜ、素晴らしい自然環境に囲まれたきれいな海で開催しないのか。日本には素晴らしいビーチが豊富にある。これまでしてお台場の開催にこだわる姿勢には良識を疑う。
「水中スクリーン」設置で水質改善
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お台場海浜公園 出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会
お台場海浜公園は、2017年夏に行われた水質調査で競技団体が定める基準値を大幅に上回る大腸菌などが検出され、水質対策が迫られていた。
東京都では、2018年夏、ポリエステル製の膜、「水中スクリーン」を海中に張って大腸菌などが流れ込むのを防ぐ実証実験を行った。3重の「水中スクリーン」で囲った水域ではすべての日で基準値を下回り、「水中スクリーン」で囲う水質対策は効果的だとした。
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出典 東京都
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出典 東京都
今回の実証実験は、組織委員会と東京都が、2020東京五輪大会の開催期間にあたる7月から9月にかけての27日間で行い、お台場海浜公園の入り江内の2か所にポリエステル製の「水中スクリーン」を張って、大腸菌などが流れ込むのを防ぐ実験を実施した。
「水中スクリーン」は1重に張ったエリアと3重に張ったエリアの2か所を設け、それぞれのエリアで水質改善効果を検証した。
今年の夏は、首都圏は台風や豪雨に見舞われ、首都圏の下水が東京湾に流れ込み、「水中スクリーン」が張っていない水域では、半数近い13日間で大腸菌が基準値を上回った。7月29日には台風の影響で、国際トライアスロン連盟の基準値を142倍も上回る数値を示した。
五輪大会が開催されるのは時期は真夏、毎年、台風や集中豪雨の襲われるのは必至である。依然としてお台場海浜公園周辺の水域の水質レベルは、極めて危険なレベルにあることが明らかになった。
一方、「水中スクリーン」スクリーンを1重に張ったエリアでは大腸菌の基準値を上回ったのがわずか2日で、3重に張ったエリアではすべての日で基準値を下回った。
組織委員会と東京都は「『水中スクリーン』の効果が確認できた」として、2年後の東京大会で「水中スクリーン」を設置する方向で進めるとした。
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出典 東京都
しかし、今回の実証実験では、泳げる範囲がわずか60メートル四方で設置経費は7500万円だったとされる。
トライアスロンのスイム(水泳)のコースは1.5キロメートル、オープンウォータースイミング(OWS(マラソンスイミング)コースは10キロメートルの周回コースで、台場海浜公園の入り江のほぼ全域に設定される。水質改善効果を上げるためには3重の「水中スクリーン」が必須だが、広範囲に設置した場合、水質改善効果が維持できるかどうかは未知である。また設置経費も膨大なり、10億円近くにも達する懸念もある。
トライアスロンの水質基準は、大腸菌数、250個/100ミリリットル以下、水温32度C(水深60センチ)以下マラソンスイミングの水質基準は、トライアスロンとは異なり、糞便性大腸菌群、1000個/100ミリリットル以下、水温31度C(水深40センチ)以下などが国際水泳連盟(FINA)によって定められている。
例年、首都圏の夏は台風や集中豪雨にたびたび襲われる。2020年、8月も同様であろう。大雨が降ると、お台場海浜公園周辺の海域は大腸菌がウヨウヨする海となる。猛暑で海水温は高温となる。悪臭や汚濁対策も必要だ。まさに選手の健康を脅かす危険と隣合わせた競技会場である。
こうした大会運営は、「アスリートファースト」とは到底言えない。
東京湾には、雨が降ると、隅田川などの河川から、生活排水などの汚水が浄化処理されないまま流れ出ることが原因で、首都圏の下水浄化システムを改善しない限り、抜本的な水質改善は不可能である。
そもそも、お台場海浜公園は、水質基準を満たさないため、「遊泳禁止」、海水浴場として認められていないのある。海に入って、いわゆる「磯遊び」は可能だが、「顔を海水につけて」遊ぶことはできないのである。
しかし、港区はトライアスロンなどのイベント開催は特別に許可をしている。
2016年にトライアスロンにお台場海浜公園を泳いだ井ノ上陽一氏によると、「トライアスロンのスイムは、レースによっては、それほどきれいな海で泳げず、それに耐えることも大事」としている。特に東京、関東近辺の大会では、きれいな海は望めず、川や湖だともっと視界が悪い場合もあるという。必ずしも、きれいな水域を選んでレースが開催されるのではないようだ。
井ノ上陽一氏のウエッブには、お台場海浜公園の泳いだ様子の写真が掲載されている。
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お台場海浜公園の水中 出典 井ノ上陽一氏 「お台場で泳いでみた!トライアスロンスイム(海)の現実」
筆者は、ほとんど泥水の中を泳いでいる様子に唖然としたが、井ノ上陽一氏によると視界が悪いのは別に驚くには当たらないとしている。トライアスロンスイムは世界各地で行われているが、必ずしも自然環境に恵まれた会場で行われるとは限らないという。
しかし、問題なのは、視界の良し悪しもさることながら、水質汚染が悪化しているかどうかで、海水浴場として環境基準を満たしていない「汚染水域」で、五輪大会の競技を開催して、選手を泳がせることである。
これまでにたびたび、小池都知事や森組織委員会長から「アスリートファースト」という言葉を聞いた。「アスリートファースト」を掲げるなら、競技会場を水質基準をクリヤーしている鎌倉や房総半島のビーチに変更したら如何か? いまからでも遅くはない。マラソンと競歩は暑さ対策札幌開催を決断した。
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水質汚染問題に直面したリオデジャネイロ五輪
2016リオデジャネイロ五輪では、セーリングやトライアスロン、ボートなどの会場となるコパカバーナ地区の湾岸部、グアナバラ湾の水質汚染が深刻で選手の健康被害が懸念され、競技の開催が危ぶまれのは記憶に新しい。
AP通信が行った独自調査によると、2015年3月以降に競技会場で採取された水から、高い数値のアデノウイルスのほか、複数のウイルスや細菌も検出されという。
汚染の原因は下水処理整備の遅れだ。人口1000万人のリオデジャネイロの生活排水の7割近くがグアナバラ湾に最終的に流れ込むという。
さらに汚染に拍車をかけるのが、リオデジャネイロの貧民街。リオデジャネイロは世界でも有数の観光地だが、人口632万人の23%を占める143万人が貧民街に暮らしているという。ブラジルで最も貧富の差が大きい都市でもある。貧民街では下水処理施設の整備はほとんど手が付けられていない。
グアナバラ湾は「巨大なトイレ」と揶揄されている。
招致段階でリオデジャネイロ州政府は五輪開幕までにグアナバラ湾に流入する汚水の80%を下水処理できるようにすると公約した。この処理事業を支援しているのが日本の国際協力機構(JICA)で、現在四つの下水処理場が稼働している。 しかし、各家庭から処理場まで下水を集める配管の整備が遅々として進んでいない。リオ五輪組織委員会は、開催前年の2015年7月、公約としていた水質浄化が開幕まで不可能と認めている。
大量のゴミが海面を覆い尽くしているのも汚染の原因とされているが、リオデジャネイロ市では、湾内のごみを回収する「エコポート隊」を投入するなど窮余の対策に追われた。大量のゴミを片付けても、下水処理を行わなければ水質改善はほとんど絶望的である。
水質汚染問題の抜本的な解決はできなかったが、国際オリンピック委員会(IOC)は「環境基準は満たされた」して競技は予定通り行われた。
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ゴミが散乱するグアナバラ湾 Antonio Scorza / Agência O Globo
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リオデジャネイロ五輪のマラソンスイミング 出典 Rio2016/Youtube
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リオデジャネイロ五輪のマラソンスイミング 出典 Rio2016/Youtube
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東京湾をきれいな海に これこそ2020東京大会のレガシー!
東京23区の下水道のほとんどが合流式で整備され、雨水と汚水を一緒に処理するシステムである。雨が大量に降ると下水道が処理できずに、そのまま河川に放流される可能性がる。東京都は下水処理能力の向上に取り組んでいるが、一瞬で大量の雨が降るようなゲリラ豪雨が発生すると処理能力の限界を超えてしまう。
再オープンした葛西海浜公園も、大雨が降ればで、COD濃度が一気に跳ね上がり水質基準を超えて、海水浴場が再び閉鎖になる懸念と隣り合わせている。
水質改善の抜本的な対策は、下水道を合流式から分流式に切り替えることで、分流式は雨水・汚水を区別して処理する方式のため、雨が降っても汚水が未処理のまま雨水に混ざることはない。
東京23区は、下水道整備を急ぎ、昭和30年代に経費のかからない合流式で下水道を整備した。1970年に下水道法が改正されて、下水道はようやく分流式で建設されるようになったが、現在でも合流式で整備した下水道が広いエリアで稼働している。東京都内の下水道が分流式に切り替わるには、あと30年以上は必要とされている。
さらに東京湾には、埼玉県や千葉県、茨城県からの生活排水も流れ込む。
東京湾の海底には、過去の環境汚染の“負の遺産”である汚染物質が大量に含まれているヘドロが海底には堆積したまま、水質改善は滞り、未だに年間約40回程度の赤潮や4~5回程度の青潮が発生している。東京湾に本格的に海水浴場が蘇るのはまだまだ先になる。
2020東京五輪大会の開催経費は、関連経費を含めると「3兆円」、膨大な額の資金が投入される。
大会開催を契機に、この資金の一部を投入して下水道処理施設の改良を行い100%の下水処理を達成すれば、東京湾の水質改善は一気に進む。長年悲願の「東京湾に海水浴場」が実現するだろう。
これこそ、2020東京五輪大会のレガシーになると考える。大会後、赤字が見込まれ負の遺産になる懸念が大きい競技場建設より、東京湾がきれいな海になるほうがはるかに都民の未来の遺産、レガシーになることは間違いない。
2020年東京大会まであと半年、この間に東京湾の水質改善が飛躍的に進むことはありえないだろう。
“汚染”された海、東京湾で選手を泳がす2020東京大会、何が「アスリートファースト」なのだろうか。
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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)
2018年5月9日
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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
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