夢と現実のおとぼけバラエティー

実際に夢で見た内容を載せています。それと落語や漫才・コント・川柳・コラムなどで世相を風刺したりしています。

創作落語 『祭りの山車(だし)』

2019-10-29 15:22:22 | 夢と現実のおとぼけバラエティー
        

      テン・テン・ツク・テン・テケ・テン・テン・テケ・ツク・テン



            『祭りの山車(だし)』




       はい、ようこそのお運びで、ありがとうございます。
        あちらこちらで、お祭りでございますな。
          町内では、提灯飾りを始めたり、
       お囃子(はやし)の方は録音テープですな、最近は・・
         まァ、そんな雰囲気がただよってまいりますが、
   江戸の庶民は、祭り囃子(ばやし)を稽古する音が聞こえてくるってぇと、
     もう、居ても立ってもいられなくなっちゃう。


留  「おゥ、今年の祭りは、
    町内の連中をアッといわせるような趣向でやらねぇか?」

定  「おもしれぇ。どうやる?」

留  「そうさなァ、仲間ァ10人ぐれぇ集めて、
    背中に龍の細(こま)切れの彫り物を彫るってなァ、どうだ」

定  「背中に細切れの龍か?」

留  「そうよ。祭りの時にゃァ、みんな下帯姿になって、
    後ろ向きに、横一列に並ぶんだ。
    するってぇと、一匹の龍が火ィ吹いてる彫り物が現れるってぇ趣向だ」


      ・・なんていたずらを、よくしたもんだそうでして、
          全員揃うと、そりァ格好いいもんでしょうが、
       龍の頭とか尻尾の男が、銭湯へでも行っちまって欠けると、
        どうもサマにならない・・。


     江戸を代表する祭りと云いますと、山王権現(日枝神社)の「山王祭」と、
       神田明神の「神田祭」がございます。
        「天下祭」とも云われたそうでして、祭りの行列が、
          江戸城内に練り入ることが許されまして、
           将軍や大奥のお女中たちもご覧になったそうで。
       六月の山王祭は、大きな獅子頭を先頭に、
                              「一ノ宮」から「三ノ宮」までの
           神輿(みこし)が続きまして、
       その後を、各町内から見事な「山車」(だし)が
  四十六台も続くという、まことに豪勢な行列でございますが、
    九月の神田祭も負けじと、「山車」は三十六台もくり出されたそうで。




町名主  「さてと、きょう皆様に集まっていただいたのは他でもない。
      夏祭りの山車(だし)のことですがな。
      何ぶん、うちの町内は貧乏所帯ばかりだ。
      だが、他所に負けない山車を作らないと、みっともなくていけない。
      去年は、代々伝わった山車を廃品に出しちまったんで、
      町中のガラクタを集めて、山車らしいものを作って、
      出てみたはいいが、
      ありァ、ひどかったねぇ。
      あんまりみっともないんで、直ぐ引っ込めちゃって、
      みんなで銭湯に行っちまったもんなァ」




権衛門   「そうだったよなァ・・。 肩身の狭い思いをしたぜ」


どじ平   「だけど、今年だって貧乏に変わりはねェんだろ?」


町名主   「ぇ〜、そこで、御相談というわけなんだが、・・」


無駄助   「おッと待ったァ。金なら無ェよ」


町名主   「そんな気遣いなら心配無用だ。
       お前さんたちから徴集できるなぞ、
       端(はな)から期待ちゃァいない」


権兵衛   「じゃあ、どおする・・?」


町名主   「だから御相談だ、パーッと威勢のいい案は無いのかねぇ」


無駄助   「そりァ、いい案がパーッと出て来るような頭ァ持ってりゃ、
       こんな貧乏してねぇ・・」


どじ平   「ベラボーめ。 江戸っ子が、そんな情けねぇこと云ってちゃ、
      いけねぇナ。
      金も頭もなかったら、悪智慧を働かせりゃあいいんだ」


町名主   「ほう、悪智慧をねぇ。・・で、どう働かすんだい?」


どじ平   「みんなで山車を作ってるフリをしてだナ、
       “透明山車”と洒落込むんだ」


無駄助   「フリをするだけなら、おいらに任せろ」


権衛門   「あたしゃ歳だから、監督だけする」


どじ平   「見せ場ァ、これからだ。いいか、
       祭りのクライマックスになったらだナ、“透明山車”は踊り狂う」


無駄助   「それから・・?」


どじ平   「踊り狂ったまま逃げて来ちゃう・・」





             お後がよろしいようで





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