夢と現実のおとぼけバラエティー

実際に夢で見た内容を載せています。それと落語や漫才・コント・川柳・コラムなどで世相を風刺したりしています。

創作落語『無免許運転』

2019-10-20 17:01:59 | 夢と現実のおとぼけバラエティー
        


     ポン・テケ・テン・テン・テケ・ツク・ポン・テン・テン・ツク・ポン



             『無免許運転』



     え〜、まいど、ばかばかしいお笑いで恐縮でございます・・・
    ・・なんて高座に上がるたんびに同じことを言っております・・。
   そちらのお客さん、そんなに飲んでますと寄席の打ち出しまでにゃ、
     酔いつぶれてますよ・・。
   え〜、江戸のむかしに「負わず借らずに子三人」とか「余らず過ぎず子三人」
     ・・とか云われてまして、子供は三人ぐらいが丁度よい、
        ・・なんて考えられていたんでしょうな。
    ・・かとおもうと・・「死なぬものなら子一人、減らぬものなら金百両」
   などという言葉も残っていますが、これだと少子化社会になってしまいます。
      ともかく、この頃ァ、子供はもちろん両親の子であるんですが、
   同時に長家みんなの子供でもあり、さらに町全体の子供でもありまして、
     みんなに見守られて育った。
    こんにちでも赤ん坊が産まれるときァ、母子の生命の危険がともないま
   すが、江戸時代には、その危険度はもっと高うございました。
      母親が赤子を残して命を落としたなんて話はよくあったことで、
   残された亭主は、赤子の乳をだれかから分けてもらわなければならない。
 これを「乳貰い」と云ったそうですが、こんなときてきぱきと母乳を確保してくれた
  のが、同じ長家に住む女房たちでございました。
   「親がなくとも子は育つ」とは、この乳貰いのことでございまして、
  母親がいなくとも、赤子は周囲の人の世話でちゃんと育つという意味でござい
  ます。
 え〜、一方「育てたように子は育つ」とか・・「親の背中を見て子は育つ」なぞとも
  云われておりますが子供さんを見てますてぇと、その親御さんがだいたい
   どんなあんべえの人物かってのが、想像できますナ。






熊 「おう、八。 おめえのとこは、PTAの父親面談に行ったか?」


八 「いゃ、まだ行ってねェ・・」


熊 「おれは、いま、行ってきたとこだ・・」


八 「どうかしたか?」


熊 「なんだか知らねェが、担任の先生がぼやくんだ・・・」


八 「なんて、ぼやいてるんだ ? 」


熊 「人間の子が欲しいってんだナ・・」


八 「なにを? その先生の子は、人間じゃあねェのか?」


熊 「そうじゃねェ、・・生徒のことだ」


八 「生徒は、人間じゃぁねェのか?」


熊 「うちのせがれは人間だ!」


八 「どうも、話が呑み込めねェな・・?」


隠居 「これこれ、二人ともどうした?」


熊 「へぇ、じつは、かくかく、あ〜でもねェ、
   しかじか、こ〜でもねェってわけなんですがね、
   ・・八のやろうが、ちっとも解からねェんで・・」


八 「あたぼーよ! 闇夜にカラスが飛んでるような話が解かってたまるかってんだ!
   ねぇご隠居、解りますかい? このやろうの云うこと・・」


隠居 「まぁ、まぁ、・・うむ、解るようでもあるが・・、いや、解らんな。
    すまないが、その"こ〜でもねェ"ってところを
    もう一度云っておくれでないか」


熊 「へぇ、・・こ〜でもねェ・・」


隠居 「う〜む、読めた!! その先生の言いたいことはこうだナ。
    学校に入学する前に、人間の子としての躾(しつ)けがされてない子が多く
    て困る。・・そういうことだろう」


熊 「そう、そう、そういうことなんで・・へぇ」


八 「始めっから、そう言ゃあいいんだ・・」


熊 「べらぼーめ、始めっからそう云ってるんでェ!」


隠居 「おまえさん達も、いちおう人の親だが、・・躾けはうまくいってるのかな?」


八 「へぇ、いちおう、親なんですがね,
   ・・躾けってぇほどの大それた仕事はしてねェッす・・」


熊 「へぇ、あっしも、とりあえず親でげすが、
   躾けとか、面倒臭いことはでぇ嫌いで・・」


隠居 「これこれ、あきれた手抜き親たちだねぇ。
    それにしても、昔は、たいていの家に"家風"ってのがあってナ、  
    一家の権威ある年寄りが、きちんと管理していたもんだが・・」


八 「いまは"家風"を持ってる家は、ねェんですかい?」


熊 「引っ越しのどさくさで、何処かに落っことしたかも知らねェな・・?」


隠居 「 これこれ"家風"は物ではない。その家の"おきて"と云うか、
    まあ、そのようなもんだ。 いまは、核家族時代になっちまって、
    年寄りと別居してる家庭が大半だからナ。
    そういった"おきて"なんかも、うやむやになっちまったんだナ。
    それと、出来ちゃった結婚が増えてることもあるな」


八 「へぇ、そりゃまあ、どうしてで・・?」


隠居 「出来ちゃったァ!? しょーがねェから結婚するか・・。
    生まれたァ!? まあ、なんとかなるだろう・・ってとこじゃないかな」


熊 「あっしんとこと同じだ・・」


八 「行き当たりばったりだな。 あっしんとこも、まあ、そうだけど」


隠居 「親となる心構えもなにも出来てないうちに、
    赤ん坊のほうが先に生まれて来ちまう・・」


熊 「その心構えってのを教えてくれる師匠が、何処かに居ねェんで・・?」


隠居 「そういう教習所は無い。
    だから無免許で子供を養育してるようなもんだナ」


八 「へぇ〜、あっしらは無免許運転してたんだ・・!」




   ・・・その翌日、PTAの父親面談で



八 「・・てェわけで、あっしらは無免許運転してましたんで・・」


教師 「・・・(この無責任おやじめ!) そうでしたか、
   ・・じつは、私も教師には向いてないような気がして、
   ・・目下、学級崩壊させてまして・・」


八 「・・・(このインチキ教師め ! ) 先生も大変でしょうが、
  ・・自信を持ってやってくだせぇ」


教師 「地震ならありますけど・・」


八 「えっ?・・してその心は?」


教師 「はい、・・毎日揺れてます」





             お後がよろしいようで・・




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