昔、勇者は狼と戦っていた。
虎が狼に味方していたため虎とも戦わざるを得なくなった。
長い年月が過ぎて弱った勇者を突然ハイエナが襲った。
勇者は瀕死の重傷を負って斃れた。
虎は勇者が再起できないよう魂である銘刀を奪い取った。
刀なき瀕死の勇者は虎の味方にさせられた。
銃は虎に取り上げられた。
そのうち帯刀は許されたが使うために様々な条件をつけられた。
長い年月を経て狼は強くますます凶暴になった。
虎と狼は勇者の前後で吠え合うようになった。
狼は勇者の領分を少しずつ侵食し反応を見た。
勇者が刀を使うことはなかった。
許されていなかったからだ。
狼はまず南の方にある家を襲った。
勇者が助けることは許されていない。
虎も手を出さず勇者に旗色をはっきりさせるよう迫った。
勇者はためらった。
狼の領分に接していたからだ。
狼は次にすぐ傍の南の家に襲いかかるだろう。
だが読みははずれた。
狼は勇者の家のすぐ外に来ていたのだ。
勇者が扉を蹴破って刀を振り下ろすことは許されていない。
狼が単なる迷子かも知れず勇者を噛み殺す意図があるのか分からないのだから。
勇者は銃を所持できなかった。
銘刀を携えていたが使う前に狼に尋ねなければならなかった。
狼さん、悪意はあるの?
それとも迷子なの?
狼に言葉は通じなかった。
そこで勇者は狼に分かるよう尋ねた。
今度も狼は何も答えなかった。
すぐ南の家から刀を持って飛び出す音が聞こえた。
ついに狼は勇者の家の扉を破った。
そこで勇者は狼に分かるよう尋ねた。
狼さん、悪意はあるの?
それとも誤ってぶつかっただけなの?
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