2020年10月24日＿コスモス畑と二つの笑顔

秋桜面(おもて)に二つ花の笑み
うつくしき笑顔二つ秋桜
高千穂と秋桜(コスモス)間に笑み二つ
秋桜(コスモス)に笑顔二つがよく似合う　　　(←「富士には、月見草がよく似合ふ」：太宰治「富嶽百景」)
武士(もののふ)と笑顔二つに秋桜
秋桜(コスモス)に乙女華やぎ爺軽く


　幼なじみの旧友に連れられて、十三塚原史跡公園のコスモス畑を見に行きました。
　広大な茶畑のひろがるシラス台地の一角を、色とりどりのコスモスの群れが占めていました。遥か向こうに霧島連山が霞んでいました。小春日和でした。日が傾きかけていましたが、空は広く、青みが十分残っていました。見物客は私たちのほかには２，３組あるだけ。
　のどかな風景に、頭とからだのシコリがゆるゆると溶け出してゆくようでした。

　そこへ、二人の若い女がやって来ました。仲の良さそうな二人はコスモス畑の中に入り、互いに写真を撮り合う様子。
　「撮ってあげましょうか？」と友人が二人に声をかけました。そのように声をかけたくなるほどの楽し気な様子でした。
　友人は武道家です。古武士然とした、白髪、白髯、白鬚の厳めしい風貌と佇まいにもかかわらず、彼は、心根の極めて優しい、親切な人柄なのです。
　友人はコスモス群の中に入って行き、カメラを受け取ると、気さくな様子で二人に声をかけながらシャッターを切り始めました。時には少し離れたり近づいたり、腰をかがめたりもしていました。彼女たちは、コスモスの花群の上に顔を二つ並べるというポーズをとって、若い笑顔を浮かべていました。よく見ると、二人は20代後半と見え、表情に年相応の翳りと落ち着きが見受けられましたが、それでも若さ特有の華やかさが輝くかのようでした。普段は人見知りの私が、思わず「お二人の笑顔が素敵ですよ」などと声をかけたほどでした。友人は、５、６回もシャッターを押した後、「霧島連山を背景に入れようとおもったけれども、うまくいったかどうかわからない」と言いつつ、カメラを返しました。

　ごく些細なエピソードですが、印象深い思い出です。