今日は医療保険の話です。タイ人であれば誰でも入れる健康保険が有名な「30バーツ保険」です。タクシン氏が首相のときに創設された健康保険で、このおかげでお金のない庶民も病院へ行くことができるようになりました。実質的に無料で医療が受けられる制度で、最近では「バート・トーン(黄金カード)」と呼ばれることが多いようです。ただし、保険証のようなカードが発行されるわけではなく、使う時は例のバート・プラチャーチョン(タイ国民証明書)を見せます。そのIDカード番号が、そのまま保険の番号になっています。
わが家もタイ国籍のない私をのぞいて、皆この保険に加入しています。ところが、去年の7月9日のブログにも少し書きましたが、保険診療が受けられるのは、昨日書いた「タビアンバーン」に登録されている住所の近くの病院(もしくは診療所)に限られます。
妻は一昨日まではカムペンペットの実家のタビアンバーンに入っていましたから、健康保険もカムペンペットのひとつの病院でしか適用されませんでした。だから、まだ一度もこの保険を使ったことがありませんでした。子供たちは、バンコクにタビアンバーンがありましたから、熱を出した時や犬に咬まれたときなど、何度もこの保険を使ってほぼ無料の医療を受けました。
今回、妻がチェンマイにタビアンバーンを作ることができましたので、家族の健康保険もチェンマイで新たに作ることになりました。この「黄金カード」を作ってくれるのは、日本の国民健康保険のように役場ではなく、地域の病院(または診療所)です。そこで妻と私はチェンマイ県サラピー郡にある唯一の公立病院を訪ねました。
サラピー病院です。あまり大きな病院ではありませんが、救急患者を受け入れる体制も整っています。サラピー郡にタビアンバーンのある住民は、この病院でならほとんど無料で医療を受けることができるのです。
でも、大学病院のように各分野の専門医や設備が十分に整っているわけではないので、重症の患者はチェンマイ大学病院などの大きな病院に搬送されます。そういう場合は、この病院の医者が紹介状を書きます。そうすると大学病院でも、その傷病にかぎり、無料で医療を受けることが可能になります。また、がんなどの病気でも、抗がん剤や放射線治療などの専門的な治療を受けるために紹介状をもって公立の病院へ行くと、この健康保険が適用されます。私立病院では使えません。
妻も、ここに「黄金カード(健康保険)」を登録し、医師の紹介状を書いてもらってからチェンマイ大学病院(スアンドーク病院)で放射線治療を受けるつもりです。
これが病院の一般受付の横に設けられている健康保険の手続き窓口です。「ガーン・プラカーン・スコパープ(健康保険業務)」という看板がかかっていました。
登録に必要なのは、各人のタビアンバーン(コピー)だけです。タビアンバーンは、もちろんこの病院のあるサラピー郡になければなりません。原則は本人申請ですが、子供の場合は親が代理申請することができます。申請料は以前30バーツかかったらしいです。今は一切いりません。だから、「30バーツ保険」とは言わなくなってきたのです。
妻のこれまでの乳がん治療はすべて自費診療でした。そして私が加入している日本の健康保険から、被扶養者として一定の還付を受けてきました。私の場合は仕事をやめても、健康保険の任意継続を選択しましたので、2年間はまだ適用があります。でも「黄金カード」を使えば、実質的に医療費は無料なので、さらに楽になるのです。
ただし、「黄金カード」で受けられる医療の内容は、必ずしも最新の医療ではなく、たとえば抗がん剤の場合、先月まで妻がバンコクの大学病院で受けてきた薬は、タイでは保険適用外の薬でした。そういう場合は、たとえ黄金カードがあっても、自費診療を選択せざるを得ないことになります。その点では、日本の健康保険とそれほど変わりませんね。でも、タイでは年齢にかかわらず、ほとんどの検査や薬などが無料という点は、とても大きな違いです。
(サラピー病院はチェンマイ-ランプーン道路に面しています。この街道は大きなゴムの木の並木が特徴です)
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これは大いに評価すべき制度ですよね^^