原発問題

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【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※19回目の紹介

2015-03-11 22:00:00 | 【東京ブラックアウト】

*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽

第1章 避難計画の罠プロローグ」含むを複数回に分け紹介します。19回目の紹介

 

Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。

作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。

 

( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。


過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」

 

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**『東京ブラックアウト』著書 「プロローグ」⇒「第1章 避難計画の罠」の紹介

前回の話:【東京ブラックアウト】第1章 避難計画の罠 ※18回目の紹介

「当然、原子力発電所の事故そのものは最悪のケースを想定いただくのは結構です。しかし、私どもの避難計画には、その原発事故という最悪のケースに対して、どうやったらベストの行動ができるか、そのベストシナリオ、すなわち住民がその実現に向けて努力しようとする理想のシナリオを示していただくべき、と考えております」

 資源エネルギー庁の畑山原子力政策課長は、一層自信を深めるような口調で続けた。

「事務局案では、いたずらに避難に時間がかかることを強調するあまり、結局、再稼働反対派を勢いづかせることになるのではないですか?我が国の電力の低廉かつ安定的な供給を使命とする立場からは、事務局案には賛成できません」

 上からのトップダウンではなく、下からのボトムアップを通例とする日本の官僚制での意思決定では、コンセンサスがとれたもののみが成案となる。結局、恥を知らず、最後まで寝転がった者が勝ちなのだ。

 賛成できないと経産省資源エネルギー庁の原子力政策課長に明言されてしまっている以上、今日コンセンサスを得るのであれば、事務局案を撤回し、修正せざるを得ない。

 撤回しなければ、また改めて案を作成し、次回の日程調整から始めなければならない。せっかく押さえていた閣僚級の原子力防災会議の日程も再調整となる。「内閣府原子力災害対策担当室がモタモタしている」と再稼働推進派にいわれるのは、火を見るよりも明らかであった。

「・・・わかりました。それでは必要な修文を事務局で施しまして、後刻、メールにて各省にご確認いただければと存じます。その修文が終わりましたら、避難計画のガイドラインを含む原子力災害対策マニュアルを、原子力防災対策マニュアルを、原子力防災会議に報告いたします。

 そう守下副室長は切り上げた。黒城室長のいう通りの案を示したが、その通りにはならなかったと、あとで室長に報告すればいいだろう。

「余計な手間を取らせやがって」と守下は思ったが、と同時に、「自分の存在を経産省に高く売れた」とも思い直した。

 経産省に高く評価されて、次の人事異動では経産省の要職に戻してもらう。それが彼にとっての、一番の仕事のインセンティブであった。


 数週間後、官邸で閣議の直後に開催された原子力防災会議にて、環境大臣から原子力災害対策マニュアルが報告された。そこには次のように記載されていた。

「内閣総理大臣は、原子力緊急事態宣言と同時に、原災法第十五条三項に基づき、PAZ内の道府県知事及び市町村町に対して避難及び安定ヨウ素剤の服用の指示を行う。また、UPZ内の道府県知事及び市町村長に対して、屋内退避の実施及び避難等の防護措置の準備を指示する」

 原子力防災会議は淡々と予定のシナリオ通り30分で終了し、異論はまったく差し挟まれなかった。公開の場では、実質的な議論はなされないのである。

第1章 避難計画の罠プロローグ含む)の紹介は、今回で終了です。

ひきつづき、「第2章 洗脳作業3/12(木)22:00に投稿予定です。

「フクシマの交通渋滞は、みんな自家用車に乗って避難したから起きた。だから、自家用車は極力使わせない。一時退避場所に集まって、みんなしてバスで移動するんです。UPZの住民には屋内退避を徹底させて、勝手に避難はさせない。それがフクシマの教訓です・・・」

 

東京ブラックアウト(若杉冽)

原発ホワイトアウト(若杉冽)


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