渋谷の宮益坂にある箱、渋谷LUSHにて行なわれたライヴ、“お二階に、お三人様 vol.1”へ行く。HPなどの出演者欄にはLOOP THE NINE、Public Jam Statesの名前と“and more...”しか記されてなかったが、目当てはその“and more...”となったセカンドカーニバル(Second Carnival)だ。
セカンドカーニバルは、イシダトモヤ(Vo、Ba)、サカモトノブユキ(Vo、Key)、シラサワタカシ(G、Cho)、ナメカタユウキ(Prog/syn、Cho)の4人組。ライヴでは、サポート・ドラマーとしてスガヤヒロムが加わる編成。オフィシャルHPには“渋谷系とマンチェスターレイヴ、ギターロックとみんなのうた、変幻自在のエレクトロポップバンド”とあり、これがキャッチコピーといえそうだ。
彼らの5曲入りの1stEP「ぼくらの惑星ランデヴー」(ディスクユニオンやライヴ会場で販売)は、ジャケットのイメージやタイトル(「星空サラウンド」「COSMIC DRIVE」「プラネット・フライト」など)にもあるように、コスモロジックというか宇宙的なテーマに沿っている。メイン・ヴォーカルはベースのイシダトモヤで、小沢健二+草野マサムネといった風のソフトな肌触りのヴォーカルが心地よく響く。
宇宙遊泳を想起させる鍵盤のループとヴォーカルの浮遊感を活かした過不足ないプログラミング&ギターがマッチしたミッド「星空サラウンド」、『ヨシュア・トゥリー』期のU2(「I Still Haven't Found What I'm Looking For」のイントロとか)のようなギター・リフのループを軸とした導入から幻想的な世界観へ展開する「COSMIC DRIVE」、胎動と宇宙の漂流感をリンクさせたような、ゆったりとした安らぎを感じるヴォーカルが宙に舞うミディアム・スロー「プラネット・フライト」、星空の煌めきとアジアンな薫りも窺わせるアレンジによる流麗な世界観が魅力の、サカモトノブユキがメイン・ヴォーカルを執る「十六夜シーサイド」、“ラーラー、さよなら……”のフレーズが充足感と切なさとの狭間に彷徨う何ともいえない感傷を綴るミッド「さよならCLOVER」の5曲は、強烈なインパクトこそないが、訴求力の高い旋律とバランスによってブレのない世界観を創り出している。
さて、ライヴだが、上述のような楽曲性を期待して身構えると……実際には裏切られるかもしれない。もちろん、それは良い意味で。
ステージは、左奥にラップトップを据えたバンドマスター、巨漢のナメカタユウキ、中央奥にはサポートドラマーのスガヤヒロム、前列左からベース兼ヴォーカルのイシダトモヤ、中央にギターのシラサワタカシ、右にキーボード兼ヴォーカルのサカモトノブユキといった配置。通常メイン・ヴォーカルが位置するセンターにはシラサワタカシが陣取っているが、コーラスはするもののメインは執らない。そして、酩酊と恍惚を行き来するような、時には観客に背を向けて演奏に没頭する姿は、無精髭のルックスも手伝って、野性味も感じられる。仮にスタイリッシュな渋谷系か……などと決め付けると、その豹変振りにやられてしまうかもしれない。
この日演奏されたのは、前述のEPからのナンバーと新曲となる「アストロメモリー」(Astro Memory)。その音源が会場で無料配布されたのだが、推進力のあるビートとグルーヴ感のある未来への希望に満ちた展開が魅力のドラマティックなアップで、キャッチーながらも芯のあるサウンドが好感。全体的に“宇宙観”を前面に出したというサウンドではないが、高揚を煽る適度なポップネスとグルーヴを損なわないサウンド・メイクのバランスがいい。
TMネットワーク「GET WILD」が流れるなかでステージ・インやグダグダなMCなどまだまだこれからという部分も多分に含むが、ちょうどいいほどに琴線に触れる切なさと希望が散りばめられたサウンドは、日本人が好きな“ツボ”でもあるし、惑星的な宇宙観だけではなく、さまざまな要素を吸収し放出する姿勢は、“変幻自在のエレクトロポップバンド”にふさわしい。バランスを保ちながら音楽的振幅の広い心地よいグルーヴを展開していってもらいたいところだ。
ちなみに、夏の野外フェスティヴァル“ROCK IN JAPAN”のステージにおいてアマチュア・アーティストに演奏してもらうという、これからのアーティストを応援するWEBコンテスト企画“RO69JACK”にて、一次選考アーティストに残っているとか(RO69JACK 2010のHPで「アストロメモリー」試聴可)。近い将来、本格的にデビュー、となる日も近いのかもしれない。チェック・イット・アウト。
□ セカンドカーニバル「ぼくらの惑星ランデヴー」
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