全14曲中、デビュー・ミニ・アルバム『All My Girls』の「MY GIRLS」と「DESTINATION」「Baby Eyes」(後者2曲は別ヴァージョンにて収録)と、シングル「HERE WE GO」「Dear... 」「DO tha' DO tha' 」 を収録。「DESTINATION」はTARO SOULをフィーチャーしたD.O.I.によるヒップホップ・リミックス、「Baby Eyes」はDJ WATARAIのリミックスとしてアレンジ。オリジナルよりも攻撃的な濃い楽曲を狙っている。
バラード・ナンバーの2ndシングル「Dear...」をリリースした時、個人的には“早い段階で安易にバラードを出さない方がいいのになぁ”と思っていたのだが、このアルバムを聴いてよりその思いを強くしてしまった。
m-floのVERBALをフィーチャーした1stシングル「HERE WE GO」は、May J.の知名度を上げるためにVERBALを配したのかどうかは解からないが(そういう場合はやっつけ感覚が漂うことが多いが)、彼女の若さと勢いを巧みに活かしたナンバーで、VERBALのリリックとフロウも好調な質の高いナンバーだっただけに、その路線を続けてある程度の安定感を持ってからでも遅くないのでは?と感じていたからだ。
何もバラードを歌う技量がないということではない。ソウル・テイストのピアノ・バラード「My Way,Your Way」のヴォーカルを聴けば、彼女の歌唱力は確かなものということに異論を唱えることはないはずだ。
さらに、ボトム・ビートを効かせたミッド「why why why」やラテン調を施したアッパー「Baila Conmigo」、軽やかさと艶やかさを持ったダンス・ミッド「Jealous Girl」、トーキングモジュレーターを使いソウル/ファンク・テイストを垣間見せることに成功したミッド・スロー「Don't worry dear my boy」など幅広い楽曲をしなやかにこなすヴォーカルは、決して付け焼刃ではなしえないものだ。それだけに、じっくりと機を熟してからの濃厚な一発を出して欲しかったのだ。だからといって、「Dear...」が駄曲ということではない。ただ、このアルバム制作時あたりにリリースしていれば、もっと彼女サイドが打ち出している“新世代のR&Bプリンセス”に相応しい楽曲として完成したのではないか、ということだ。
そういう点から「Dear...」がR&Bの色気という点でやや浮いている感じもするが、若手のシンガーとしての、しかも1stアルバムとしての完成度は高いといっていい。さらなる成長が期待出来る作品だ。ラストの「LOVE BLOSSOM (FPM house mix)」では、4つ打ちハウスとの相性の良さも感じ取れるし、クラブ・シーンでも有用なシンガーになりえるだろう。あとは、年齢とともに深み、いうならばソウルをどこまで体得出来るか、ということだ。その可能性は、限りなく高い。
◇◇◇
Next DOUBLE?
May J.を見て聴いた時、ポスト“DOUBLE”は彼女かもなぁと思った。ルックスもそうなんだけども、そのヴォーカルにダンス・チューンと抜群の相性を感じたからだ。そして、ポップス寄りのR&Bを体現出来るシンガーと思ったからだ。
DOUBLEがTAKAKOのソロ・ユニットになってからは、だんだんと彼女の嗜好のブラック度や猥雑度が高い楽曲が多くなっているが、そもそもは松尾潔の息が掛かっているので、スムースなR&Bとの相性はいい。日本人に浸透しやすい“ポップ寄りのR&B”というのは意外と難しいのだけれど(R&B風のポップスではいけない、その境はどこかというのは、うまくいえないけれど)、それをこなせるシンガーなのだ。
ヴォーカルをみても、声量や安定感ではDOUBLE以上のものを持っているし、楽曲の吸収度も高い。歌詞は同性の若い女性への応援歌的なものや意志を強く持とうといったメッセージのものが印象的で、そのあたりは加藤ミリヤや青山テルマらのと似たような感覚を持っているが、サウンドへのアプローチはスムースR&Bがしっくりとくる歌唱だし。
これからはヒット狙いのキャッチー過ぎる楽曲を求めすぎて“R&B風のポップス”を歌うシンガーにならないように、制作陣をしっかりと厳選して、個性と可能性をさらに伸ばすような楽曲を創っていって欲しいところだ。
2006年暮れに2007年に“くる”アーティストは、May J.とJAMOSAと言っていたんだけど、やっと浸透してきたかなという感じで、よかった。DOUBLE好きにはMay J.はいいと思うし、AI好きにはJAMOSAをオススメしますよ。
まぁ、何よりMay J.とはバースデイが同じなんで、より肩入れしちゃうところはありますが。(笑)
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