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急遽、アンジェラ・アキ恒例の武道館公演“MY KEYS PLUS+ 2009~ピアノ弾き語りライブ in 日本武道館~”に参加することとなった。全席即日完売、さらに立見席が追加され、14000人が集うこととなった本公演、なんとアリーナ2列目(“MY HOME”プレミアムシート)という超良席で観賞することが出来た。
ステージはオクタゴン(8角形)でその上にピアノが1台あるのみ。座席も通常ステージがある1階北を除いては、すべて座席を配置。1階北の部分は長方形のブロックを組み合わせた壁オブジェ(これがスクリーンとなる)、その代わりに両ステージサイド(オクタゴンと同じ高さ)にスペシャル席をそれぞれ設置している。
2006年から行なわれているピアノ弾き語りライヴも今回で4回目。当初はナンバー29のTシャツを着ていたアンジーは(その時のライヴレポはこちら)、ナンバー32のTシャツ(ナンバーはアンジーの年齢を示す)を着るまでになった。
今回は“つながり”をテーマに、2006年から続けてきた一人での弾き語り“MY KEYS”に一味プラスした“MY KEYS PLUS+”としてのスペシャル公演。そのプラスとは、何かと縁が深いNHK繋がりでNHK東京児童合唱団ユースシンガーズ、そして新曲発表をギター弾き語りで披露するというもの。“ピアノが恋をした”というキャッチコピーでデビューしたアンジーが、“ピアノが恋をした女がギターに浮気した”というもの。そのようなプラスを含めて、ピアノ1台のみと思えない熱気と高揚が会場を包んでいく。
アンジーの公演は、MCが楽しい。そして長い。脱線する。純粋に楽曲を聴きたいという人には「その分、もっと楽曲を演奏してほしい」と思うかもしれない。だが、自分の見解はちょっと違う。どんなに楽曲に変化があったとしても、ポピュラー・ミュージックにおいてピアノ1台弾き語りで武道館のステージを2時間強務めるというのは難しい。原理主義とはいわないが、アンジーの楽曲なら飽きることは全くないという少数派は別として、単調にピアノ・ソングを続けられたら、飽きが来てしまうのは致し方ないところ。そこを、トークと多彩なアイディアを挟み込みながら展開させているから、あっという間に時間が経ってしまうという感覚になってしまうのだ。あのルックス(どこからどう見ても外国人)で徳島弁を惜しみなく話すというところも、魅力の一つだろう。
2曲目にボズ・スキャッグスの「ウィーアー・オール・アローン」のアンジー訳ヴァージョンを披露。元来、アンジーは洋楽のカヴァー(日本語詞ヴァージョン)を多く発表している。そこには、彼女自身が好きな楽曲ということもあるが、洋楽にはこんなにいい曲があるということを、彼女なりにどうにかして解かり易く伝えたいという気持ちもあるのだと思う。それが日本語詞ヴァージョンとなる背景なのだろう。そういう意味では、洋楽を知らない人たちとの“つながり”を考えたアイディアなのかもしれない。
恒例の“勝手に英語でしゃべらナイト”コーナーは、マイケル・ジャクソン・トリビュートとして「ウィアー・ザ・ワールド」を(自分は偶然その時マイケルTを着用していた…笑)。ここで椅子に置かれていた封筒その1を開ける。アンジーの武道館ライヴでは、“開けてというまで開けないで!(マジで!)”というアンジー直筆プリントが書かれてある紅白それぞれ2枚の封筒が置かれていて、それぞれがお楽しみとなっている。そのひとつがここで開けられる(べったりとのり封されているのでなかなかサクっと開けられないんだな、これが…苦笑)。そこには楕円の地球型をした紙に「ウィアー・ザ・ワールド」のサビ詞が書かれていて、“We're the world…”の“the”に下線が引いてあったりと、英語学習仕様になっている。スクリーンにはNHK教育よろしく黒板に英文(歌詞)が出て、下線部が浮かぶ(アンジーいわく)ハイテク仕様。右には“5時限目 英語 アンジー先生”とも。
下線(3)の“lives”では、「これはlifeの複数形で、なぜか“fe”で終わる単語はだいたい複数になると“ves”になることが多いのよ。“wife”とかも“wives”になったり……ってワイフ(妻)って単語を複数にする例を出すってのもどうかと思うけど(苦笑)」など、笑えるコメントをちょいちょ挟み込む。
マイケル・トリビュートとしては「前から一度みんなの前で歌ってみたかった」という「バッド」を。「この“BAD”が悪いって意味じゃなくて、カッコいいという意味だって知った時、凄い歌だと思ったの。だって“I'm bad, bad…”って、“俺ってカッコいい、俺ってカッコいい……世界で一番カッコいいのって誰?…俺”っていう歌よー。こんな歌、キング・オブ・ポップのマイケルしか歌えない」とここでも笑えるコメントを。
さらには、「マイケルの歌を歌う時にはマイケルになりきる、これが一番。みんなもマイケルの歌を歌う時は、どの曲でも最後に“ンダッ”をつけて歌ってくれれば、マイケル風になります」とのレクチャーも。
「ウィアー・ザ・ワールド」がリリースされた1985年は名曲がたくさんあった、というフリから1985年にリリースされたアンジーの思い入れ楽曲をちょっとずつ披露していく。まずは尾崎豊の「卒業」そして、衝撃を与えた曲ということで「セーラー服を脱がさないで」を。ここでおニャン子が聴けるとは思わなかった。(笑) そして、アンジーが「鏡の前で歌いまくっていて、もうこの人になりたくて仕方なかった」という小泉今日子の「なんてったってアイドル」を。“キョンキョンになりたかったぁー!!”の絶叫つきで。この脱線ノリは賛否両論あるかもしれないが、個人的にはアリだ。楽曲ってさまざまな想いとつながっているという意味では、テーマにもあっているし。
一転して「サクラ色」では、アンジーの友人との回想を。まだデビューしていないアンジーの友人のアンドリューが、ファミレスで「アンジーがデビューして僕が小説家として日本語訳本が出版された暁には、あとがきを書いてくれない?」と言われたと。夢のまた夢の話に唖然としたアンジー。それから彼女は、彼の励ましの言葉「もう終わりかもしれない、と思った時がスタートだ」の言葉を胸に先にデビュー。一方、売り込めど売り込めど断られるアンドリュー。ある時、アンドリューが「もう小説家は無理かも」と言った時、アンジーは彼に言われた「終わりと思った時がスタート」の言葉を返す。そして、月日が経ち、アンドリューの書いた小説が約30ヶ国で訳されて出版されることとなったとのこと(『ガーゴイル 転生する炎の愛』アンドリュー・デイビッドソン/著・東江一紀/訳) 。一瞬うるんだようなアンジー。そこから、その時の思い出を歌った「桜色」には、繊細ながらも力強い意志が天高く駆け上がるような歌唱をみせていた。
「HOME」からは、バックにNHK東京児童合唱団ユースシンガーズ(40名くらい?)を配しての“プラス”を。この少女たちの「ハイッ」という返事が気持ちよいとのことで、ここでもせーので「ハイッ」と言わせるアンジー。これだけでは飽き足らず、「何か…流行語大賞って何だっけ。政権交代? じゃあ“政権交代”って言ってみよう”のフリから清々しい発声の政権交代が聞かれると、さらには“草食男子!”も(“薬物汚染”は取りやめに…苦笑)。そんなイジりがありながら、「乙女心」「手紙」までを、彼女らをバックに展開していく。
新曲披露の「輝く人」で封筒2枚目オープン。ここではもうひとつの“プラス”として、ギター弾き語りを披露。ギターで作った曲だから、せっかくなので……とギターを抱えるアンジー。その立ち姿なかなか様になっているが、ショルダー・ベルトが髪の毛に引っかかってたのが気になって、一度やり直してのスタートとなった。(笑)
本編ラストは「ANSWER」で幕。すぐにスタンディングオベーション、さらにアンコール催促の拍手が鳴り止まない。アンジー・グッズに着替えて登場(ぶどうの缶ジュースが描かれた白Tシャツ…ぶどう、缶…武道館とのこと)したアンジーは、ひととおりグッズの売り子役としての説明を終えると、アンコール1曲目恒例のカヴァー曲を。本公演では、悲しいクリスマスの曲だけれどもと、ジョニ・ミッチェルの「リヴァー」を。彼女いわく「女性の気持ちを描かせたら、この人の右に出るものはない」とのこと。
アンコール・ラストはNHK朝の連続テレビ小説『つばさ』の主題歌となった「愛の季節」を。“シーズン、シーズン…オブ・ラヴ”のコーラス・パートが印象的な楽曲だ。最後は充実した表情を見せながら、方々に深々と礼、投げキッス、手を振って謝辞を表わし、ステージ・アウト。
非常にスマートで美しいシルエットなアンジーだが、ピアノに向かう彼女はどちらかというと野性的だ。野性的というよりも、体内にうずいている情感を鍵盤にストレートに叩き込みながら本能で歌うという感じ。演奏する時は、世良正則(笑)のように足を開いて、魂で弾くという印象が強い。とはいえ、決して下品に見えないのは、純粋に自身の気持ちを、心情を、聴いてもらいたいという真摯な姿が明確に見えているからだと思う。
ピアノの弾き語りという形式でありながら、毎年連続して武道館を満員に出来るというのも、解かるような気がした。
◇◇◇
<SET LIST>
01 Our Story
02 ハレルヤ
03 We're all alone (Original by Boz Scaggs)
04 This Love
05 We're the world (Original by USA for AFRICA)
~勝手に英語でしゃべらナイト~
BAD(Michael Jackson)
Man In The Mirror(Michael Jackson)
卒業(尾崎豊)
セーラー服を脱がさないで(おニャン子クラブ)
なんてったってアイドル(小泉今日子)
We're the world (Original by USA for AFRICA)
06 On & On
07 サクラ色
08 It's So Hard to Say Goodbye to Yesterday
09 宇宙
10 HOME(with NHK東京児童合唱団ユースシンガーズ)
11 乙女心(with NHK東京児童合唱団ユースシンガーズ)
12 手紙~拝啓 十五の君へ~(with NHK東京児童合唱団ユースシンガーズ)
13 輝く人(新曲)(play with guiter)
14 たしかに
15 ANSWER
≪ENCORE≫
16 River (Original by Joni Mitchell)
17 愛の季節