東日本大震災を受けてのチャリティー・イヴェント“J-WAVE LIVE SPRING ~Heart to Heart~”に参加出来ることになったので、渋谷のO-EASTまで駆けつけた。MCはJ-WAVEナヴィゲーターのDJ TAROとレイチェル・チャン(Rachel Chan)。セッティングの間のMCタイムでは、スペシャル・ゲストとしてジョン・カビラ、丹羽順子も登場。自慢の大きな低音ヴォイスを披露してくれていた。DJ TAROは、ピンクのチェック柄のジャケットと緑のポロシャツによる自称“生ハムメロン”スタイルで、J-WAVEナヴィゲーターのモノマネも披露していた。
チャリティ・イヴェントということで、節電を意識して出来る限り最小限の照明やステージもアコースティック・セット。参加アーティストは登場順に、高橋優、さかいゆう、中田裕二(ex.椿屋四重奏)、BONNIE PINK。
高橋優は、詞に込められた情感を表情豊かに歌唱する、魂のヴォーカリスト。社会問題をテーマにした世界観が魅力で、今思ったことを素直に思ったままに伝えるという、無骨だがストレートなスタンスはリスナーに強く刺激を与えるだろう。多少、尾崎豊に影響を受けたのかなという印象も。サポートにはハットを被ったキーボードが一人ついていた。
実は、高橋優の存在は「こどものうた」で知っていたのだが、
その時の“ノリ”や“勢い”で批判性の高い歌は作れることもあるけれど、その後の楽曲群を聴いて、まだしっかりとした信念を持ってやっているのは素晴らしいと思った。タイプは異なるが、神聖かまってちゃん(なんか)を評価するんだったら、それ以上に高橋優を評価しなきゃダメだと思う。
さかいゆうは、KREVAなどとのコラボや先日のインコグニートのブルーノート公演でも飛び入り参加していたので知っていたが、オリジナルの曲を生で聴くのは今回が初めて。自身を象徴するような曲というフリからの「ソングライダー」という曲が絶品だった。レゲエ調のバックビートがかすかに走るなかで、浮遊感を携えたネオソウル系のエレピとともに幻想的なグルーヴが流れるミディアム・スローだ。まだ本格的にアルバムを聴いたことがないので、これを機会にCDをチェックしてみたいと思った。続けて披露された「おぼろ月夜」「ふるさと」はチャリティー・ソングで、日本のルーツ・ミュージックともいえる童謡・歌謡をさかいゆう流にソウルフルに仕立てたもの。最後は“ガタンゴトン”のコール&レスポンスも含めた「train」で終えた。
この日一番の歓声を受けたのが、中田裕二。中田自身は「僕は新人なんで」と謙遜していたが、元来、先日解散した椿屋四重奏のメンバー。イケメンでもあるし、女子の人気は高いはずだ。出身は熊本だが、バンドを仙台で結成したということもあり、この震災で影響を深く受けた一人でもあった。MCでは時折涙を堪えるような声にもなっていた。実際に被災地へ行って、仙台の、東北の明日の希望を信じて作り歌った「ひかりのまち」を披露してくれた。声質こそ違うが、その歌唱スタイルやサウンド・ワークといい、爽やかな(泥臭くない)吉井和哉を彷彿させる印象だった。サポートはギター、ドラムの2人。
トリはBONNIE PINK。トリということでやや長めに時間をもらったそうだが、楽曲は3曲。MCでは震災で自身が思ったこと、取り組んだことを話してくれた。ただ、相変わらずのMCベタなので、やや冗長だったかも知れない。ジャラジャラと音を立てる服や曲間ではチューニングに終始したりというマイペースぶりを発揮しつつ、緩くも真摯に語るいつもながらのボニーの世界へ。ただ、歌い出すと、これがガラッと変わるから解からない。地震直後に書き上げた曲「The Sun Will Rise Again」をはじめ、今だからこそ歌うのに相応しい選曲を披露した。サポートは従来のボニーのツアー・ギタリストの八橋義幸。
4者4様の震災後の被災地、被災者、日本への想いが詰まった2時間半だった。セットは豪華ではないステージではあったけれど、通常以上にダイレクトにオーディエンスの耳や心、魂に伝わった有意義なステージであった。高橋優が歌った「福笑い」には、“きっとこの世界の共通言語は 英語じゃなくて笑顔だと思う”という詞がある。この言葉にあやかるならば、かける言葉や物理的に与えるものがなくても、その笑顔という無償で最高の贈り物を届けて、自身も周囲も元気付けるようになればこの上ない……と感じたライヴだった。
◇◇◇
<SET LIST>
≪高橋優≫
01 素晴らしき日常
02 少年であれ
03 福笑い
≪さかいゆう≫
01 ソングライダー
02 おぼろ月夜~ふるさと
03 train
≪中田裕二≫
01
02
03 ひかりのまち
≪BONNIE PINK≫
01 anything for you
02 grow
03 The Sun Will Rise Again
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MCの二人。芸達者なDJ TARO氏と癒しヴォイスのレイチェル・チャン(落ち着いてるヒデシー=秀島史香っぽいイメージかな……笑)。
高橋“ゆう”、さかい“ゆう”、中田“ゆう”じ、という“ゆう”トリオに仲間はずれを感じつつあったボニーに対して「BONNIE PINKはボニー・ピンキ“ュウ”」とフォローをしたDJ TAROは、実は“中田”だったことが発覚。“ゆう”と“中田”つながりという微笑ましい話題で、イヴェントは幕を閉じました。(笑)