■ TLC、さすがの集客力
TLCヒッツ・ステージ。
TLCの来日公演@ビルボードライブ東京を観賞。2ndショウ。通常なら開演近くなると収納されるスクリーンが中央に設置されたまま。ヴィデオでのレフト・アイの“出演”を予感させる。バンドはそのスクリーンを邪魔しないように、ドラムが一番左手に配置。左からドラムのレックス、キーボードキーボード兼ベースのトレ、ギターのエリック・ウォールズ、キーボードのケネス・ナイトの布陣。バンド・メンバーがステージ・インし場内が暗転、当初の開演時間から3分過ぎの21時33分、ヴィデオによるイントロがスタートしてすぐにT・ボズとチリが見えると、オーディエンスは一斉に立ち上がって拍手と歓声で彼女らを迎えた。平日夜でありながら、ほぼ満員というのはさすが彼女らといえる人気ぶりだ。
一種のカリスマ性のあったユニットであるから、その熱狂度も半端なものではない。次々と繰り出されるベスト的なヒット・チューンの数々や目の前にいる生の二人に、その一挙手一投足に感激し、陶酔するオーディエンス。インカムをつけてのダンスで魅せるパート、唯一椅子に腰掛けて聴かせた「レッド・ライト・スペシャル」での歌唱を堪能するパート、当時のヴィデオ・クリップとリンクさせて(音源での)レフト・アイのラップをバックに歌い踊る“TLC”ステージなど、彼女らの魅力の多くをさまざまな形で披露してくれた。
クールなヴォイスのT・ボズ、細身で愛嬌を振りまくチリを見ると、それぞれの魅力に改めて気づかされる。1階フロアのみならず、2階、3階までも常に手を振り、オーディエンスの歓声に応える二人。「ウォーターフォールズ」の前には、オーディエンスのなかから数人をステージに上げ、TLCと一緒にダンスを披露するパフォーマンスもあるなど、ファンを大切にする姿勢をずっと崩さなかった。MCでも饒舌で、コミカルなやり取りやダンスなど、親しみのあるアットホームな空間もあった。
ただ、ものすごく満足したかというと、そうではなかった。1つは構成。インカムで登場した彼女らのリップシンクの多用や、以前のTLCのパフォーマンスとは根本的に異なるということは、以前から解かっていたことなので、問題にならなかった。昨年の“スプリングルーヴ09”での「エイント・2・プラウド・2・ベッグ」のような、ヴィデオを駆使してのレフト・アイ出演による“TLC”復活で通して欲しかったということもない。楽曲はおおよそレフト・アイが生存していた時のものだが、T・ボズとチリによるTLCを観に来たという腹積もりでいたのだから。
少々“ステージ”として緩くなってしまったのは、「アンプリティ」後のその場での即興サイン会が原因の一つかもしれない。「アンプリティ」を終え、オーディエンスに感謝の言葉を述べると同時に、オーディエンスがステージに次から次へと集まり、CDやレコードなどを持ち寄ったファンへの即興のサイン会が始まった。バンドは演奏を続けたままである。T・ボズもチリも一人一人にサイン、時にはプレゼントをもらってハグ、タッチと丁寧な対応で応える。それが5分以上続いたであろうか、バンド・メンバーから声がかかると「もう1曲やっていい?」というチリの発言から「ノー・スクラブズ」へと雪崩れ込み、さらにこの曲が終わると同時に再びステージへ殺到するファンへのサイン会が始まり、ステージ・アウトとなった。
なにも、サイン会が悪いのではない。ファンにしてみればこれほど嬉しいことはないし、観ている方も基本的には微笑ましいと思える。だが、来るもの拒まずで対応しているのは本当に有難いが、それと同時にこれはショウなのである。TLCがそこにいて、ファンへ親切な態度で接してくれる、それでいいじゃないかという人もいるだろう。しかしながら、純粋にライヴ・ステージとして堪能したい者にとってみれば、サイン・パフォーマンスはあくまでもデザートやサイド・メニューであり、メイン・メニューは歌曲によるステージなのだ。
もちろん、ジョーなどのように、ファンとのハグやサインをステージ・パフォーマンスの一貫として取り入れるステージもある。そのように練られていれば不満もないが、即興サイン会から1曲を経てまたサイン会で終わる流れは、正直少し倦怠してしまったところがあった。2回のサイン・パフォーマンスの時間は10分を超えていたと思われ、開演から約1時間(22:38)で終演となると、実質演奏は1時間未満であったということ。アンコールもなく(サイン会を挟んだことで、「ノー・スクラブズ」が事実上のアンコールとなっていたのかもしれない)、これで一番安価な席でも12000円となるのだから、価格に見合うかといわれると、やや残念に思えるところは拭えない(そうだとしても、二人のステージングにグルーヴしていたのではあるけれども)。その時間があるのならば、本当の終演後にサイン会を開いて、さわりまでを披露するにとどまったショート・ヴァージョンの「ガール・トーク」や「シリー・ホー」をフル・ヴァージョンで演じてくれた方がよかった。
もう一つは、このステージだけなのかもしれないが、やや独りよがりな観客がステージに上がってしまったということ。目の前の二人に歓喜するあまりアーティストに歩み寄り、そこで会話が生まれたりすることはまったく問題ないし、かえってハプニングとして楽しめる結果となるなら、このステージのみのものとして感動を増加させる効果ももっていることもある。ただ、(ダンス・タイムにもステージに上がった)前列に陣取ったその女性客は、その後、何かを言ったことでマイクを向けられると、日本語で自分の名前を連呼。T・ボズが思わず「彼女は何を言ってるの? 日本語だと解からないわ?」と絶妙の返しをしたのにも関わらず、自分の名前を愛称で言い、チリに「ステージに上がってきたら」と言われるとそのままにステージに上がって、「マイ・ネーム・イズ・○○ちゃん」と言った後、一人満悦して自分の愛称を連呼してオーディエンスに拍手を求める“ワンマン”ステージを繰り広げてしまった。これには会場からも冷笑がチラホラ。その流れから、前述のサイン会構成へと繋がったので、自分の倦怠度も高まってしまったのかもしれない。
何もそういうファンとの掛け合いが悪いことと言っているのではない。上手いツッコミを入れたり、その場を盛り上げるパフォーマンスなどは、いっそうそのライヴの質や貴重性を高めることにもなる。とはいえ、そこはこのステージの雰囲気を壊さないことが大前提だ。要するに、TPOを弁えなかったり、“過ぎて”しまうと、一気に価値を落としてしまうことになりかねないということだ。
まぁ、T・ボズやチリと何度も目が合い、指を差されたし、何よりも健在であることを実感出来たのだから、悪くはないとしておくか。たまたま、選んだステージの巡り合わせが、ほんのちょっぴり悪かったということ。日頃の行いが出た、と思って、また彼女らの楽曲をしばらくは堪能することにしよう。
◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRO
01 What About Your Friends
02 Baby Baby Baby
03 Creep
04 Red Light Special
05 Diggin' On You
(Dance Time)
06 Waterfalls
07 Girl Talk(Short Ver.)
08 Damaged
09 Turntable
10 Silly Ho(Including intro of“Fanmail”)(Short Ver.)
11 Unpretty
12 No Scrubs
13 BAND OUTRO
<MEMBER>
T-BOZ(Vocals)
CHLLI(Vocals)
Kenneth Knight(Keyboards)
Erick Walls(Guitar)
TRE'S(Bass/Keyboards)
Lex(Drums)
コメント一覧
野球狂。
MOCHIKO
最新の画像もっと見る
最近の「ライヴ」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事