夏の甲子園も、日程的に一番面白い日と言われる8強の対決が終了。いよいよ真紅の大優勝旗が間近に迫ってくるなか、1日間の休養日を経て、決勝へ駒を進める2校が決まる。
8強の戦い、準々決勝の結果は次のとおり。
早稲田実(西東京)8-1 九州国際大付(福岡)
東海大相模(神奈川)4-3 花咲徳栄(埼玉)
秋田商(秋田)3-6 仙台育英(宮城)
興南(沖縄)4-5 関東一(東東京)
戦前の優勝候補、東海大相模と仙台育英に加え、東京勢2校がベスト4に勝ち上がった。関東勢3校に東北勢1校で、完全に東高西低の図式に。
そして、準決勝の組み合わせは次のとおり。
■第12日:8月19日(水)
≪準決勝≫
11:00 仙台育英(宮城)× 早稲田実(西東京)
13:30 東海大相模(神奈川)× 関東一(東東京)
◇◇◇
大方の予想では小笠原、吉田の2枚看板を擁する東海大相模と剛腕・佐藤世那を擁する仙台育英との決勝戦が大勢だろうが、早稲田実には清宮、関東一にはオコエといったスター選手がいるから、メディア的にも面白いマッチメイクとなりそうだ。これまでの戦いぶりは以下を参照。
■ 仙台育英(宮城)
8月09日(日) 1回戦 12-1 明豊(大分)
8月14日(金) 2回戦 7-1 滝川二(兵庫)
8月16日(日) 3回戦 4-3 花巻東(岩手)
8月17日(月) 準々決 6-3 秋田商(秋田)
■ 早稲田実(西東京)
8月08日(土) 1回戦 6-0 今治西(愛媛)
8月13日(木) 2回戦 7-6 広島新庄(広島)
8月15日(土) 3回戦 8-4 東海大甲府(山梨)
8月17日(月) 準々決 8-1 九州国際大付(福岡)
■ 東海大相模(神奈川)
8月12日(水) 2回戦 6-1 聖光学院(福島)
8月15日(土) 3回戦 11-2 遊学館(石川)
8月17日(月) 準々決 4-3 花咲徳栄(埼玉)
■ 関東一(東東京)
8月11日(火) 2回戦 12-10 高岡商(富山)
8月16日(日) 3回戦 1-0 中京大中京(愛知)
8月17日(月) 準々決 5-4 興南(沖縄)
総合力という意味で言えば、東京勢2校よりも仙台育英、東海大相模の方が1枚上をいっており、実力や格ではその2校の決勝進出が順当となるだろう。
ただ、夏の甲子園大会は終盤になればなるほど、投手の疲弊により打撃戦となることの方が多い。これは逆に考えると、失点を如何に相手より少なくするかという戦いでもある。粘り強い守備力に加え、好不調の波が少ない機動力などを駆使しながら攻勢を強められるかがカギとなってきそうだ。
仙台育英は佐藤世那がエースだが、準決勝では百目木の先発もあり得るだろう。早稲田実の清宮、加藤、富田のクリンナップを球威でねじ伏せることに拘り過ぎると、伝統校の粘り強さに苦しむ場面も出てくるか。
一方、早稲田実のポイントは継投を含む投手陣の奮起か。地方大会では苦しんだ仙台育英の平沢が復調した今、上位から下位まで気の抜けない仙台育英打線からのある程度の失点は覚悟しているだろう。主戦の松本が九州国際大付戦のように巧みな制球力を発揮し、終盤は服部へのリレーと繋げれば、勝機は見えてくる。
東海大相模は準々決勝では右の吉田が先発したが、リードを許したまま小笠原にスイッチ。8回裏に追いつき、相手のミスもあって9回サヨナラ勝ちへと繋げた。小笠原に代わってからは失点は許していないが、制球力や配球などを見ると攻略のヒントが隠されてはいた。正直、花咲徳栄が8表までリードするような展開を予想していなかったのだが、この花咲徳栄の戦いぶりを関東一は参考に出来れば、大物食いの結末も。とはいえ、早稲田実よりは関東一が勝つ確率は高くはなさそう。オコエ、長嶋と本塁打は出ているが、そういう長打に頼る攻撃では、東海大相模に太刀打ち出来ないだろう。何より、中京大中京戦では無失点に抑えたものの、投手力の劣勢は否めない。如何に引っ掻き回して、関東一のペースで試合を展開し、阿部、金子、田邉などの投手陣の継投でどこまで交わせるかがポイントだ。
東京勢はどちらも先制点を許すとかなり厳しい戦いとなる。打ち合いを避けたロースコアでの展開が理想だが、失点は覚悟の上で、たとえ追いつかれても常にリードをする展開で終盤を迎え、相手の焦りを呼び込む状況に持ち込みたい。
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ちなみに、東京勢が東西両校ともに準決勝に進むのは1987(昭和62)年、帝京(東東京)と東亜学園(西東京)が代表となった69回大会以来28年ぶり。この時は準決勝で、帝京がPL学園(大阪)に5-12、東亜学園が常総学院(茨城)に1-2と共に敗れている。
東京勢にいいデータを挙げるとすると、平成(1989年以降)に入ってから、東京勢が夏の甲子園での4強以上に勝ち進んだのは6回あり、そのうち5回が優勝を飾っている。
平成元(1989)年 第71回 帝 京【優勝】/東亜学園(2回戦)
平成7(1996)年 第77回 帝 京【優勝】/創 価(8強)
平成13(2001)年 第83回 日大三【優勝】/都城東(2回戦)
平成14(2002)年 第84回 帝 京(4強)/桜美林(2回戦)
平成18(2006)年 第88回 早稲田実【優勝】/帝 京(8強)
平成23(2011)年 第93回 日大三【優勝】/帝 京(2回戦)
しかも、前の優勝からだいたい5年の周期(第71回の帝京の優勝から6年目、6年目、5年目、5年目)で東京勢は優勝しており、今回は前回優勝の2011年から4年目と、そろそろ東京から優勝校が出ても可笑しくない時期ではある。
“高校野球100年”の年、世界のホームラン王・王貞治が始球式をして、第1回大会にも出場した早稲田実の後輩たちが栄冠に輝く……といったストーリーはあまりにも出来過ぎているが、可能性は少なくはないか。
東京出身としては東京勢同士の決勝は望むところだが、100年にして初めて東北に優勝旗が渡る“白河関越え”というのも物語としては惹きつけられるものがある。
そういった思惑を覆すドラマが待っているのが高校野球の良いところでもある。純粋なぶつかり合いによる好ゲームを期待したい。