*** june typhoon tokyo ***

FAREWELL, MY L.u.v / HALLCA @LOFT HEAVEN


 成長著しいフェアラブとナチュラルで魅せるHALLCA、作風の妙が融合したグルーヴィなアクト。

 “フェアラブ”の名でファンに親しまれているガールズ・ダンス&ヴォーカル・ユニットのFAREWELL, MY L.u.v(以下:フェアラブ)が新体制として再始動後、主催公演の第2弾〈DONT TOUCH MY RADIO VOL.2〉を開催。日曜の昼前に渋谷へと駆け付けた。会場はLOFT HEAVENと前回と同様だが、先の再始動第1弾公演(記事 →「FAREWELL, MY L.u.v @LOFT HEAVEN」)と異なるのは、ゲストを迎えたということ。主催公演〈DONT TOUCH MY RADIO〉初となるゲストはシンガー・ソングライターのHALLCAで、ともに注目しているフェアラブとHALLCAという組み合わせは、個人的に期待していたカップリングだ。

 ステージ進行は、フェアラブとHALLCAのステージを交互にし、合間にインタールード的にトークセッションを挟むといった構成。大学生&新高校生のリアルシスターズと妙齢のソロシンガーは初めて話すということだが、戸惑いや照れくささも覗かせるフェアラブ2人を“お姉さん”格のHALLCAが上手くリードしながら、妹・ゆいかのたどたどしい口調とは一転した“ナチュラルボーンファニー”な発想のトークが炸裂するなど、初々しさと笑いが同居したセクションとなった(その横で「何言ってんだよコイツは」という思いが目や表情にだだ洩れな姉・美月の姿も)。
 その決してスムーズに進行しない(笑)トークは、正直友達や家族の間で交わされる他愛もない内容に過ぎないのだが、彼女らの素の表情が垣間見られる瞬間でもあり、今後はファンが望めば本企画の名物コーナーになる可能性もあるのだろうか? それにしても、姉の美月が「曲フリして」と言っても、即座に応えられなかったり、曲順も覚えていなかったりもする妹・ゆいかなのだが、イントロが流れるやいなや躊躇せず歌い踊り始めるのは、なかなか特殊なスキルといっていいのかもしれない(笑)。


 さて、本編のライヴだが、本公演を導く案内役的にフェアラブがオープニングで開演宣言と「Good Day」を披露した後に、まずはゲストのHALLCAが登場。最初のセクションでは、フェアラブのファンへ“はじめまして”の意味を込めてか、ソロとしての嚆矢となる曲「Diamond」を演奏すると、「コンプレックス・シティー」「WANNA DANCE!」など1stアルバム『VILLA』の楽曲を中心に、2ndセクションでは、アルバム・タイトル曲「Paradise Gate」のほか「Pink Medicine」「Fall Back Asleep」「Labyrinth」「Precious Flight」と2ndアルバム『PARADISE GATE』収録曲をそれぞれにラインナップ。

 ライヴとしては2月のアルバム『PARADISE GATE』のリリース・パーティ(記事 →「HALLCA @GARRET udagawa」)以来ゆえ、約2ヵ月ぶりのステージとなるが、毎週日曜のYouTubeでの配信ライヴで数曲を披露していることもあり、歌い慣れている自信からか安定感ある歌唱で表情も豊か。「(フェアラブが若いので、それに負けないように)フレッシュな気持ちで」と語っていたが、まずは自身が楽しむということを心掛けたようなステージングは、気負って力むようなこともなく、肩の力が抜けて表現の可動域が広がったような効果も生み出していて、「WANNA DANCE!」ではクラップの波とグルーヴにうねるオーディエンスをフロアに出現させていた。

 なかでも、1stセクションでは新たなキーボード・アレンジを組み込んできた「コンプレックス・シティー(東新レゾナントRemix)」、2ndセクションではハイトーンのファルセットも快哉だった「Pink Medicine」や、ポップなHALLCAとは異なる艶やかな一面を滲ませた「Labyrinth」が出色の出来。そんな仄かな妖しいムードを漂わせつつも、ラストは元来持つ天真さが全編に出た「Precious Flight」でカラッと終わらせるところに、HALLCAらしさが出ていたといえるだろうか。自然体に努めようとしたのが奏功したのか、明澄なテイストの楽曲では微笑みを絶やさず、内なる情炎を灯すような楽曲ではそのテイストやムードに寄り添いながら感情を吐露するというように、たおやかかつしなやかに表情に富んだ歌い口がフロアの耳目を惹いていた。


 ホストのフェアラブは、前述の「Good Day」を含むイントロダクション的なセクションに加えて、2つのメイン・セクションで各4曲を披露。序盤の「obsession」「GOLD」あたりは、コンビネーションとしてのぎこちなさが見えたものの(そもそもこれらは佳曲だが、ヴォーカルワークやテンポなど含めてパフォーマンスは容易ではないと思しき楽曲)、歌唱を進めていくうちにグルーヴを捉えていくように。もちろん再始動からまだ間もなく、第1弾公演(「FAREWELL, MY L.u.v @LOFT HEAVEN」)の時にも述べたように、歌唱にばらつきやピッチの不安定な部分など“発展途上”を域の出ないが、ステージや歌唱の回数を重ねた“成果”の跡が見え隠れするところも。

 たとえば、姉・美月が、3rdセクションの冒頭で披露した「gloomy girl」で少女と大人の女性の狭間にあるような微妙な面持ちをところどころに醸し出し、再始動初のオリジナル曲「STELLA」では微笑みを携えながらチャーミングに歌い踊るなど、楽曲によって表情の起伏の差を生み出そうとすれば、妹・ゆいかは「UP DOWN」などの自らの歌唱パートで、トークのたどたどしさからは一変した、なかなか押しの力があるヴォーカルを披露するなど、ステージにおける描出力の幅に少しずつ変化が見られるようにも。特に「STELLA」では、姉・美月が先導していくヴァースやフックを経て、姉・美月がダンスで、妹・ゆいかがラップで互いのビートをシンクロさせるブリッジ・パートでオーディエンスの目を惹かせるなど、新生フェアラブならではのリアル・シスターズらしい“呼吸”、コンビネーションを感じることも出来た。

 ラストで披露した「7 DAYS FOCUS」は、キュートなダンスも含めて良い跳ね加減のダンス・ポップで、チアフルなテイストもあり、いわゆるボーイ・バンドやガール・グループで見られるようなキャッチーでアップビートなバブルガム・ポップとして充分に楽しめそう。現在はオーディエンスからの声は出せないが、それが適ったあかつきには、フロアと一体感を生み出せる、いわゆるステージ映えするキラー・チューンの一つにもなりえるはずだ。


 現在は再始動からの楽曲が「STELLA」のみゆえ、旧体制時のフェアラブ楽曲を踏襲している形だが、単に受け継ぐだけではなく、徐々にリアル・シスターズならではの咀嚼で、オリジナリティが芽を出そうしている感も。歌、ダンスなどのそれぞれの単体というよりは、全体的なパフォーマンスとしてそこかしこにその“薫り”も見受けられた。それを端的に言えば“成長”ということになろうか。パフォーマンスのスキルの差やバランスを鑑みると、その成長の到達点としてはまだこれからというところも少なくないが、成長率、度合いという意味では、若さゆえの吸収力の早さもあってか、短期間で進展しているようだ。

 ブラック・ミュージックの要素をポップスに落とし込んだ作風がメインというフェアラブ。ブラック・ミュージックといってもさまざまだが、これまで軸となっているのはコンテンポラリーなR&B/ダンス・ミュージックといえそう。それが今後、シスターズの成長と共にどのような進化を遂げるのか。たとえば、ラップパートを積極的に導入したものをはじめ、エラ・メイのヒット曲「ブード・アップ」マナーのヒップホップ・ソウルに現行ポップスの要素を加味したもの、近年の音楽シーンを席巻しているブルーノ・マーズに良く見られる80年代のソウル/ファンク・サウンドや「フィネス」でのニュージャックスウィング・マナー、ブライソン・テイラーのような90年代スロウ・ジャムとトラップR&Bを組み合わせたトラップソウル、さらにはR&Bとヒップホップのビートを軽快かつ幻惑的にブレンドさせたサマー・ウォーカーあたりのシンセ・サウンドを強調したフューチャーファンク/ネオソウルといったアプローチが、フェアラブ流の解釈でも見られる可能性もあるのか……などと考えても尽きないが、あくまでもコンテンポラリーなR&Bという重心を外さずにさまざまなチャレンジをしてもらいたいところ。もちろん、ジャンルに囚われる必要はなく、シスターズならではの呼吸やコンビネーションを強調する構成の楽曲などもいずれは出てくるだろうから、そういった新生フェアラブの資質に特化した楽曲やパフォーマンスにも期待したい。


◇◇◇

<SET LIST>
《FAREWELL, MY L.u.v Section #1》
00 INTRODUCTION~プリティKiSS(BGM)
01 Good Day
《HALLCA Section #1》
02 Diamond
03 Twisted Rainbow
04 コンプレックス・シティー(東新レゾナントRemix)
05 WANNA DANCE!
《FAREWELL, MY L.u.v Section #2》
06 obsession
07 GOLD
08 染まってゆく
09 HAPPY LIGHT
~FAREWELL, MY L.u.v ✕ HALLCA Talk Session~
《HALLCA Section #2》
10 Paradise Gate
11 Pink Medicine
12 Fall Back Asleep
13 Labyrinth
14 Precious Flight
~FAREWELL, MY L.u.v ✕ HALLCA Talk Session 2~
《FAREWELL, MY L.u.v Section #3》
15 gloomy girl
16 UP DOWN
17 STELLA
18 7 DAYS FOCUS

<MEMBER>
FAREWELL, MY L.u.v are:
金津美月(vo)
ゆいか(vo)

HALLCA(vo,key)


◇◇◇

【FAREWELL MY L.u.vに関する記事】
2018/12/31 MY FAVORITES ALBUM AWARD 2018(「ブライテストホープ賞」の項)
2020/07/11 FAREWELL, MY L.u.v『DONT TOUCH MY RADIO』
2020/12/09 FAREWELL, MY L.u.v『GOLD』
2021/01/13 MY IMPRESSIVE SONGS in 2020
2021/12/04 FAREWELL, MY L.u.v @LOFT HEAVEN
2022/04/17 FAREWELL, MY L.u.v / HALLCA @LOFT HEAVEN(本記事)

【HALLCAに関する記事】
2018/08/04 HALLCA『Aperitif e.p』
2018/11/26 HALLCA@中目黒 楽屋
2019/08/30 HALLCA @Jicoo THE FLOATING BAR
2019/11/02 HALLCA @CHELSEA HOTEL
2020/01/19 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2020/01/25 〈FRESH!!〉 @六本木 VARIT.
2020/11/01 HALLCA @六本木Varit.
2020/12/13 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2021/05/31 〈HOME~Thank You “Daikanyama LOOP” Last Day~〉@ 代官山LOOP
2021/07/25 HALLCA @GARRET udagawa
2021/09/19 HALLCA @代々木LODGE
2021/11/24 HALLCA @TOWER RECORDS渋谷【In-store Live】
2022/01/11 HALLCA『PARADISE GATE』
2022/01/26 〈生存戦略〉@高円寺HIGH 【HALLCA / 仮谷せいら / hy4_4yh】
2022/02/23 HALLCA @GARRET udagawa
2022/04/17 FAREWELL, MY L.u.v / HALLCA @LOFT HEAVEN(本記事)

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