今度は両腕。(笑)
レデシーのコットンクラブでのラスト公演を観賞してきた。前回(2007年11月)はビルボードライブ東京だったが、キーボードでバンドマスターのアンソニー・ウォーカー、ギターのアーヴィン・ホワイト、ベースのケン・フレンドは今回も来日。キーボードを1人追加、バックヴォーカルを男性1人から女性2人にした、総勢2名増量の編成。左からキーボード/ピアノのアンソニー、ギターのアーヴィン、ドラムのジェイソン・ホルト、ベースのケン、キーボードのロレンゾ・ジョンソン(ハンチング姿がちょっぴりダニー風…笑)。ベースの前に二コール・コールドウェルとサラ・ウィリアムスの女性ヴォーカルが立ち、中央にレデシーといった布陣だ。
前回のビルボード公演(その時のライヴ・レポートはこちら)では右腕に包帯(ギプス)をしていたんですが、今回は完全復活の両腕完治。(笑) 包帯(ギプス)をしていても相当パワフルだっただけに、両腕の今回はいっそうの期待が……。
年齢層は予想していた以上に高め。40、50代以上の人がかなり多かった。ジャズ仕事が評価されたというのもあるんだろうか(レーベルもユニバーサルジャズだし)。サイドや後ろの指定BOXシートはやや空いていたが、それ以外はいっぱい。8割ほどの客入りか。
アンソニー、アーヴィン、ケンら前回メンバーとは息もあっているようで、特にバンドマスターでもあるスキンヘッドのアンソニーは、優しい瞳とにこやかな笑顔でレデシーを見つめながら、絶妙なタイミングで伴奏していく。レデシーは時折トリッキーなブレイクやスキャットを披露するので、そのあたりを熟知していないと出来ない手馴れだ。やや固めのドラムも意外と合っていたし、キーボード2人体制もサウンドに深みを増したようで良かった。バックヴォーカルの2人はあまり熱唱するタイプではないコーラスで、もう少し前面に出てきてもいいのではないかと思った。まぁ、それもレデシーのヴォーカルの力強さが際立っているがゆえ、そう感じたのかもしれないが。
ところで、本編でのメンバー紹介&ソロ・パート披露の時、バックヴォーカルの1人がメンバー紹介されるもソロ・パートを披露しないで終わってしまって、何だかその後哀しそうな顔をしていたんだけど、あれは何だったんだろうか。「私は(声の調子的に)いいわ」とレデシーにサインを送った気もするし…うーん。でも、アンコールでは笑っていたし、元来レデシーとは対照的な哀しげな顔立ちの人だったし(笑)、最後にヴォーカル3人が手を繋いで駆け足でステージ・アウトしたところを見ると、単なる勘違いかもしれない。
それはいいとして、ライヴであるが、自由に両腕を使えるようになったレデシー。さらなる高みへと昇り詰める“ヴォーカルの翼”をのびのびと広げた、空間を縦横無尽に飛び回る圧巻のパフォーマンスで魅了してくれた。2曲目からの「ジョイ」「アイ・トライド」の流れなんかは、ライヴ終盤のような興奮度だったのだが、観客の年齢層が高いからか、やはりシャイな日本人気質なのか、序盤からは観客は立たない。(泣) 今回は受付開始時刻よりちょっと遅れて会場へ到着したので、既に埋まっていた前目のテーブル席へは行けなかったのだが、自分が最前列やらそのあたりだったら、立って周りを煽ってたのに。(苦笑)
マウス・スクラッチのイントロもしっかりと披露してくれた「シンク・オブ・ユー」では、スキャット・アレンジも冴え、手や腕を小刻みに動かしながら独自の世界へと入っていく。ノリがいい曲はとことんグルーヴィに、メロウやスピリチュアルかかった曲ではしっかりとした世界観を創り上げるといったその音楽性振幅の広さは、恐れ入るところ。「トゥデイ」の後、どうにも我慢ならなかったのか、レデシーが“さあ、ダンスパーティよ、立って!”というと観客がいっせいに立ち上がる。やっとキター。(爆) ベースのグルーヴにあわせて“さあ、あたしについてきて!”と手を振り腰を振ってのダンス・パーティへと一瞬にしてはや代わりだ。腰を低くかがめて左右に揺れるダンスを披露した後に手で腰を押さえて、“フー、ちょっと腰が痛いわ”みたいなポーズをとって笑わせたりするなど、お茶目なところもいい。時に神妙に時にジョイフルに、さらにアゲアゲに……メリハリを効かしツボを突いたパフォーマンスで会場の空気を変化させる術を持っている彼女は、まさにエンターテイナーそのものだ。
“トーキョー、サンキュー。Sit down”と熱冷めやらぬうちに繰り出したのが、彼女の得意とするスキャット。楽器を模した手振りから、途中でちょっとしたコミカルなブレイクも挟みつつの、肉体的な楽器と化した数分間だった。
歌い出しで観客から歓声があがったのが、昨年末にリリースしたアルバム『イッツ・クリスマス』に収録された「この素晴らしき世界」(「What A Wonderful World」)。サッチモの名曲で、日本ではホンダのCM曲としても知られるナンバーだ。このあたりの反応が素早いというところに、客層が窺えるか。このアレンジも大サビで得意のスキャットを挟み込んでいくというレデシー・オリジナルで魅せてくれる。しかも、それが自己満足風ではなく、聴かせるものとしてしっかりと完成しているところが素晴らしい。
コール&レスポンスなどをしながら、本編は「オールライト」で幕。もっと派手めのナンバーで終わると思っていたので意外だったが、それはアンコールにとっておけということなのか。“アリギャドゴザイマジダ”(っていうように聞こえる)と日本語で叫んだ後、“See you soon!”と言ってステージ・アウト。もちろんスタンディングオベーションでメンバーを見送る。
やおら、鳴り止まぬ拍手の波に促され、再びステージへ戻るメンバーたち。ここでタイトなグルーヴがドンと鳴り出すと、観客が総立ちとなって「グッド・ラヴィン」へ。ヒート・アップしたクライマックスは、大きなうねりと心地よい歓喜を、会場に、それぞれの体内に生み出していくエンディングとなった。最後にまた“アリギャドゴザイマジダ”“トーキョー、ダイスキ!”と濃厚キッスを振りまいてステージ・アウト。これぞシンガー、これぞエンターテイナーという矜持を見せ付けたアクトであった。
◇◇◇
前回のライヴも素晴らしかったけれど、今回も満足。こういうのを体感しちゃうと、線が細かったり、上手くないシンガー(特に日本)とかを聴いてられなくなっちゃうんだよなー。マイクから口がかなり離れていても、その声量と迫力は、近づけて歌っている時となんら遜色ないんだもの。あー、こういうステージならもっと行っておけばよかった(と、前回のライヴ・レポートでも言っていた…苦笑)。で、レデシーのMySpaceに行ってみたら、今後のライブ予定に2009/1/23~2009/1/29まで“Blue Note Toyko, Japan”って書いてあるんですが。(笑) え、そうなの?これ、本当だったらいいんだけど、何とかならないのか。(爆)
あと、彼女の1枚目に『SOULSINGER』というアルバムがあるんですが、これがどこにも売ってないんだよなぁー。是非(数曲追加された盤を)再発して欲しいところです。ハイ。次回の来日には、しっかりと資金を貯めて、2公演以上参加出来るようにしておかないとな。(汗;)
◇◇◇
<SET LIST>
01 Children, Go Where I Send Thee
02 Joy
03 I Tried
04 Think of You
05 Today
06
07 Scat / Straight No Chaser
08 In The Morning
09 What A Wonderful World (Original By Louis Armstrong)
10 Best Friend
11 Someday
12 Alright
≪ENCORE≫
13 Good Lovin'
<MEMBER>
Ledisi (Vo)
Nicole Caldwell (Back vo)
Sara Williams (Back vo)
Anthony Walker (Key,MD)
Lorenzo Johnson (Key)
Alvin White (G)
Ken Friend (B)
Jason Holt (Ds)
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