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45 『The Revenge of Soul』

45_therevengeofsoul ■ 45 『The Revenge of Soul』

 渋谷周辺のジャム・ムーヴメントの中心にいる鍵盤奏者、SWING-Oの別名義“45”での2ndアルバム。前作『HELLO FRIENDS』で魅せた官能的でダンディなアティテュードは健在。音楽的資質が存分に発揮された、スウィートなソウル・フレイヴァを醸し出した大人の一枚となっている。

 霞がかったラジオ越しからの音声のようなヴォイス・メッセージ「Message」から幕開け。続くキーボードとストリングスをあしらった光沢あるアレンジのアシッド・ジャズ風ソウル「I Believe」では、新進気鋭の女性アーティスト、ステファニー・マッケイがときどきハスキーなヴォーカルを聴かせながら、味わい深いグルーヴを創り出している。
 ヴォーカルに迎えたライアン・ショウが醸し出す世界観にふさわしいレトロ調のミッド・スロー・ソウル「The Dawn」では、ライアンもここぞ我がホームといわんばかりの、水を得た魚のように伸び伸びとした歌唱を披露し、「Fagettaboutit」ではいずれも淡色系のポップな電子ピアノとファンキーなビートの上で、まさに漂うように心地よくYoungsがフロウするジャジィ・ソウル風のヒップホップ・トラックに。
 落ち着いた色調の鍵盤とムーディなベースを軸としたトラックに、時折宇宙的な効果音が入り込むインスト曲「Mysterious Journey」から、薄明かりが射す夜明けあるいは宵のような雰囲気を醸し出すムード・ジャズ風の「Another Place」などは、その音楽にそのまま身体を委ねていきたいような安心感を携えている。

 一転して、Marcellus Nealyをフィーチャーし、快活なラテンのリズムを走らせた「Big Man Hunting」は陽気なアッパーだが、高揚感を煽るホーンやパーカッションは全開にファンキーという訳ではなく、アダルトなムードをしっかりとキープさせた心憎い演出を施し、Amphibious UndergroundとYoungsを迎えた「Right Now」は、ファットなベースと転がるようなキーボードを軸としたアブストラクトなビートが特徴のジャジィなナンバー。セッション風からインストでのアウトロで締める展開がクール。
 上質な肌あたりと浮遊感を携えたスムース・メロウ「Nothing Feels Better Than You」は、アダルトでこそ味わえるような趣がある。客演のJimmy Abneyもそうだが、バック・コーラスが雰囲気をいっそうスウィートに彩っている。

 終盤のトピックはSuji Tapを迎えての2曲。「Soul 2 Sole」は文字通りタップ音とピアノによるナンバー。レトロ感がありながら軽快なリズムが刻まれていく、2分にも満たない小曲だ。同じくSuji Tapを迎えた「Sole Music」だが、こちらは前半がクラップ、後半がタップを主導に展開していく。気品ある瑞々しいピアノと雲上を駆けるような爽快感に満ちたナンバーだが、時折みせる変調が程良いアクセントとなっている。
 「Que Chevere!」はオーセンティックなラテン・ミュージックで、ミディアム・テンポで繰り広げられる陽気さは、まさに南国の楽園風。ホーンやキーボード、パーカッションと色とりどりの楽器が入り込んでくるさまは、さながら音のおもちゃ箱のようだ。

 アルバムの最後を締めるのは、アルバム・タイトル曲「The Revenge of Soul」。前曲「Que Chevere!」の勢いを受け継いだような明るさがあるインスト・ナンバーだが、しっかりと低音のボトムを効かせて洗練された空間を創り出しているところがクール。そのボトムの上で鳴るキーボードは、羽を広げるかのごとく伸びやか。ひとときのスタイリッシュな音空間をさわやかにクローズしてくれる、幕にふさわしいナンバーとなっている。

 艶とグルーヴが一体化したアーバンなファンキー・ソウルの世界を髄まで楽しめる傑作だ。

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