意外にもレアグルーヴとのエフェクトを見出したニューシングル。
ソロ・デビュー・シングル「IN THE CITY」をリリースしてから1年を迎えた11月に、4枚目のシングル「WINGSCAPE」をリリースした脇田もなり。同シングル・リリース記念のミニ・ライヴがリリース当日の11月22日を皮切りに連日行なわれているなか、我が地元の新宿でもインストア・ミニ・ライヴを開催するとのことで、11月25日土曜の夕方にHMV Rercord Shop 新宿ALTAへ足を運ぶ。同会場は、以前6月にもインストアを開催(当日は奇しくも自分の誕生日だったので、勝手を言って「誕生日おめでとう」一言つきサインを貰った)。脇田もなりの生の歌声を聴くのは、9月8日の渋谷・clubasiaでのワンマンライヴ〈『I am ONLY』Release Party〉以来となる。
今作のタイトル曲「WINGSCAPE」は脇田本人曰く“ブラジリアン・ファンク”で、カップリングの「LED」はデビュー当時持ち曲が少ない時に歌っていたカヴァー曲とのこと。その原曲を手掛けていた前園直樹と新井俊也による音楽ユニット、冗談伯爵(COUNTJOKE)が2曲ともプロデュースを担当。まったくの予備知識なく初めて聴いたが、どちらもラテンやレアグルーヴ度が濃いファンキーなアプローチを強調しており、初夏の涼風のような南国感が味わえるラテン・サウンド&コーラスに伸びやかなファルセットも駆使したヴォーカルワークが映える、リズミカルなグルーヴ・チューンとなっている。
これらの楽曲に垣間見られるのは、ジョン・ルシアン「ウッド・ユー・ビリーヴ・イン・ミー」(Jon Lucien「Would You Believe in Me」)やビル・サマーズ「ブラジリアン・スカイズ」(Bill Summers「Brazilian Skies」)などの70年代のレアグルーヴと、そういったレアグルーヴを再評価した90年代ハウスDJ、たとえば、ルイ・ヴェガとケニー・ドープによる“90年代最強のハウス・ユニット”と言われたマスターズ・アット・ワーク(MASTERS AT WORK)やニューヨーク・ブラック系ダンス・ミュージックやガラージ・クラシックスの名曲を生み出したDJ、ティミー・レジスフォード(Timmy Regisford)あたりの“クラブ・ソウル”的な要素。端的に言えばハウス的なアプローチを含有したラテン・フレイヴァのレアグルーヴで、それらをハウス寄りポップスとしてアップデートさせたといえばいいだろうか。
「WINGSCAPE」のイントロにはソウルの漆黒さが十分に染み込んでいて、伸びやかなファルセットから“パッパラパパーラ”のリズムで開放感を伴って展開するフックが実に快活で痛快。ファルセットと地声のスイッチが歌い手にとっては容易でない曲だが、そのヴォーカルライン自体は歌い心地も良さそう。MONDO GROSSOがbirdを客演に迎えた「LIFE」のようなポップとハウスを往来するようなフットワークの良さも、中毒性に一役買っているのかもしれない。
一方「LED」はいわゆるバーナード・パーディーが多用したドラム・フィル“ダ・チーチーチー”を採り入れ、こちらも軽やかに踊るようなホーン&コーラスに乗せられるかのようにハイトーンを駆使する清々しいサマー・アンセム風となった。前作3rdシングル「I'm with you」では、日本のハウス界の重鎮、福富幸宏プロデュースのハウス・チューンにトライした脇田もなり。そのハウスとの融合が思った以上にしっくりときたという実感から今作もハウス作風に寄せた、と考えるのは早計かもしれないが、彼女のヴォーカルや表現力の奥行きを持たせる意味では今作は効果的なセレクトといえそうだ。
11月22日からスタートしたミニ・ライヴは今回で4日目の6ステージ目ということで、リハーサルなどの歌唱では多少疲れも見えたが、その一方で経験値を重ねているのも事実。自分の意志をもって声の表情をアレンジしてみるなど、歌唱に生命力や躍動感を送り込んでいるようにも窺えた。残りは、26日に2ステージと30日に1ステージ。12月15日には六本木VARIT.で、来年1月7日には大阪でワンマンライヴが控えている。1stアルバムから楽曲と表現力を加えてのワンマンライヴには、さらなる成長が感じられそうだ。
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<SET LIST>
≪REHEARSAL≫
00 赤いスカート
≪MAIN PERFORMANCE≫
01 Boyfriend(Extended Mix)
02 祈りの言葉
03 LED
04 WINGSCAPE
<MEMBER>
脇田もなり(vo)
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【脇田もなりに関する記事】
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・2017/06/20 脇田もなり@HMV record shop 新宿ALTA【インストア】
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