※ 以下にはライヴの詳細についての多くの記述が含まれています。その旨ご承知の上、自己責任において閲覧ください。
“世界にひびけ、音楽日本代表”をキャッチフレーズに、2020年の東京オリンピック/パラリンピック開催で注目されるなか、スポーツだけでなく日本の文化を世界の人たちに知ってもらおうと世界で人気を博す日本のアーティストたちが集う企画イヴェント〈NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO〉。2018年1月1日と2日にはNHKワールドTVで、1月8日には総合テレビで放送する番組の公開収録が11月25日と26日に東京・渋谷のNHKホールにて実施。その第2夜(NHK総合では1月8日22:50から放映)の公開収録に運よく招かれたので、青のライトでデコレーションされた並木を通りながら、NHKホールに足を運んだ。
第2夜のアーティストラインナップは、AKB48、久石譲、関ジャニ∞、Linked Horizon、LiSA、MIYAVI、Perfume、X JAPAN。自分が実際にライヴで観たことがあるのはPerfumeのみゆえ、新鮮な心持ちでステージを凝視した。司会は関ジャニ∞の村上信五とNHKアナウンサーの有働由美子。レポーターはホラン千秋が担当。村上はなかなかの進行ぶりで、近い将来の『紅白歌合戦』での司会就任の可能性が高そう。NHKの“朝の顔”有働アナはさすがの安定感。この番組の主旨が世界へ発信ということで、ホールには多くの外国人が席を埋め、そのレポーター兼通訳としてホラン千秋(しゃべらないともっと美人に感じる系?)がフランクなインタヴューで会場を沸かせるのに貢献していた。
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トップバッターはPerfume。世界へ発信されるということで、恒例の自己紹介も“We are Perfume!”と英語ヴァージョンも披露。「FLASH」での手裏剣を投げるダンス(本当は“かるたを取る”動き)もキレを増しているのをはじめ、3人のパフォーマンスのシンクロナイズの緻密さとトライアングルの絶妙な距離感は、海外公演を含めて研鑽を積んできた努力の賜物なのだと感じた。
最後は「If you wanna」。“フューチャーベース”をPerfumeが新機軸として採用した曲で、クラブ系に明るい人はもちろん、それなりに洋楽(特にUSシーン)を聴いている人はそれほど目新しくないかも知れないが、J-POP中心リスナーには馴染みのないサウンドかもしれない。ということで、曲前に振り付け指導が入ってから本番へ。ビルドアップからのファットなボトムを下敷きにしたEDMな展開だが、サビというサビはないゆえ、ビルドアップ後のタイミングで両手を同時に前後に振り下ろすダンス指導の効果あってか、しっかり観客も盛り上がりを見せていた(あ~ちゃんいわく「その時は私ら“爆踊り”してるからよろしく頼むよ」との“依頼”も)。ここでも彼女らのシンクロ性は圧巻の一言だった。
続いて、Linked Horizon。通称は“リンホラ”。Sound Horizonの主宰・Revoによる他作品(特にアニメやゲーム)とのコラボレーションに特化したプロジェクトで、アニメ『進撃の巨人』主題歌で注目され、2013年末にはNHK『紅白歌合戦』にも出場。NHKホールはそれ以来の出演ということで、当時『紅白歌合戦』でスタッフにマイクを返すタイミングが悪く、Revoがマイクを返さないで持ち去ってしまったという“騒動”について自ら触れ、「時を超えて今日、(マイクを)返しに来た」と笑いをとるなど、ルックスとのギャップのある茶目っ気も見せていた。
演目はその『進撃の巨人』の楽曲をパフォーマンス。自分はあまりアニメを見ることはなくなったが、シーンでは絶大な人気を誇る彼ら。Revoは正直なところ、ピッチや声量も含めて歌唱力がずば抜けてあるとは感じないが、客席とともにフロアを一体化させる扇動力はさすがといったところ。圧巻のコーラス隊、オーケストラ・バンドにパフォーマーという大所帯を執りしきる熱量が高く、そのエネルギーやパッションは観客にもシンパシーを与えていた。おそらく、瞬間最大の歓声が巻き起こっていたのは彼らだったと思う。一心不乱に赤いケミカルライトを振り続ける(時にはコールも)観客の姿を見ると、ここまで虜にさせる力を如何にして生んでいるのかにも興味が湧いた。Revoは「やはり作品の世界観を曲や歌のなかに取り込み、魂を入れることが大事」というようなことを発していたが、アニメやゲーム等の世界観を“憑依”というくらいに乗り移させながら、彼らの独自性をアクセントにさらなる熱量を加味するステージは、新世代のミュージカルともいうべき魅力を打ち出していたと思う。
リンホラのRevoと同時にインタヴューを受けていたLiSA。ロック・バンドやTVアニメの劇中バンド“Girls Dead Monster”のヴォーカル・パート役などを経てソロ・デビューし、こちらもアニメやゲームとのタイアップが深い。『ソードアート・オンライン』の「crossing field」「Catch the Moment」や『魔法科高校の劣等生』の「Rising Hope」と彼女の代表曲を披露してくれた。決して大きくはない体躯からパワフルに繰り出すロック・テイストの歌唱が特色で、耳で聴きとりやすい発声も含めてヴォーカルは巧み。躍動感に溢れながらも媚びすぎないキャッチーな声質も魅力の一つなのかなと感じた。
ただ、欲を言えば、アニメやゲームの世界観から脱してソロ・ヴォーカリストしてみた時に、もうワンアクセント訴求するものがあればとも。確かに歌も上手く、観客を乗せる術も持ち合わせているのだけれど、特に楽曲性により深い個性を見出せたら、さらに人気が出るのではないかとも思えた。愛嬌は抜群だった。
大所帯という意味では『紅白歌合戦』のステージでも恒例のAKB48は、インドネシア・ジャカルタからJKT48、タイ・バンコクからBNK48、台湾・台北からはTPE48の選抜メンバーと日本全国の“48グループ”からの選抜メンバーからなる“AKB48世界選抜”としてラインナップ。各国で人気が高いという「会いたかった」「ヘビーローテーション」「365日の紙飛行機」「恋するフォーチュンクッキー」の4曲をセレクトし、サビなどには各国の母国語パートを採り入れて“世界色”を強調。とはいえ、しっかりと“48グループ”としてのスタンスは崩れずにいるのが、48グループの良さでもあるのだろう。
世界選抜の総監督・横山由依、松井珠理奈、柏木由紀、峯岸みなみあたりしか自分は分らなかったけれど、ステージ前方組と階段、その上段のステージにポジション分けされているのだが、やはりステージ前方にいるメンバーはダンスにしても(決して全員が上手い訳ではないが)“目が行く”動きをしているのだなと単純に感じた。おそらく人気の高いメンバーが露出の高い位置にいるのだと思うが、そういった“目を引く”ものを持っているかどうかの差がポジションの差になっているのかなと。後方上段にもルックスがキュートなメンバーは多くいたが、前面に配されないのはそのあたりなのかなと邪推しながらパフォーマンスを観ていた。
それと、メンバー全員を知らなくても“AKB48”として聴けてしまうのは、良くも悪くも秋元プロデュースならでは。それだけ楽曲にAKB48らしいオリジナリティを持つパワーがあるともいえそうだ。
テイチク時代は関西コテコテを強調していたが、インペリアルに移籍してからは徐々にポップ・ロック・テイストへ重心を寄せてきた関ジャニ∞。自分はインペリアル初期の「ズッコケ男道」「イッツ マイ ソウル」「無責任ヒーロー」や若旦那がプロデュースした「キング オブ 男!」くらいは知っていたが、INFINITYに移ってからはさらにしっかりとしたバンド・スタイルへと成長していたよう。それはこの日のステージでも大いに実感。冒頭曲「Highspirits」はなんとインストで、渋谷すばるがブルースハープを感情露わにかき鳴らせば、丸山隆平がスラップベースでファットなボトムを提供。横山裕がトランペットで高鳴りを与えるなど、付け焼刃ではないバンド・スタイルで真正面に勝負している姿が痛快。バンドという意味ではTOKIOがそのスタンスを築いてきたが、それを高いクオリティと彼らが持つオリジナリティをアクセントにしながら(これが結構重要)更新していて、女性だけではなく男性の音楽ファン、ロック・ファン、バンド好きにも充分アピール出来る訴求力を擁していた。
錦戸亮が詞曲を手掛けたという「Tokyo holic」は〈SONGS OF TOKYO〉のステージということで選曲したのだと思うが、よく聴けば“本当のとこやっぱり もうI don't like you Tokyo!!”など東京を“ディスってる”歌詞が飛び込んできて、生粋の東京出身の自分としては「無理矢理“Tokyo”に合わせて披露しなくても良かったのでは」?と思ったが、ラストに“I can't hate you Tokyo!!”と締めてきた。夢見て上京するもなかなか思い通りに行かず、自分を忘れてしまいそうにさせる東京に苛立ちを感じながらも、それでも叶えられる希望や夢がある場所だから嫌いになれないんだというジレンマを綴った関ジャニ∞だからこそ歌えるストーリーを、エッジの効いたロック・サウンドで披露。
一転「NOROSHI」を経て「DONAI」では関西弁の“どない?”と土曜の夜“土ナイ”を掛け合わせた詞とロカビリー・コーラス風の“パッシュワー”が心地いい曲という、関ジャニ∞が本来持つエキスに満ちたパーティ・ソング。クールなロックからアイドル・ポップスへの音楽的な振り幅の広さも見せたパフォーマンスは、これまでジャニーズ曲をあまり知らない層にジャニーズが持つイメージを変えさせるような新鮮さをもたらしたのかもしれない。帰り際にあちこちで耳にした「関ジャニ、バンドしてたなあ」という声が、その証左の一つだと思う。
個人的にはPerfumeとともに目当てだったのがMIYAVI。ギタリストながらもパーカッシヴなスラップ奏法による独自のスタイルで世界を股にかけ、“サムライギタリスト”の異名を持つ男だが、m-floファンにとっては“Melody.の旦那”という位置づけも(笑)。元来はヴィジュアル系でそのあたりは知らなかったが、“SAMURAI SESSIONS”プロジェクトでのKREVAとの「STRONG」には強烈なインパクトを受けた。
この日は盟友ドラマーのBOBOに加えて海外からコーラス隊などを含む編成。とにかく激しいパッションとグイグイと掻き分け風を呼び起こすようなパワフルなエナジーでフロアを席巻。UNHCR親善大使として日本人で初めて任命され、難民キャンプ視察後に制作したという「Long Nights」などメッセージ性の溢れる楽曲も含め、強い決意と屈強なプライドが波のように客席に押し寄せたかのような、心を焚き付けられる刺激的な演奏だった。“生演奏”ゆえの生々しさとその裏にある愛情が見え隠れした人間性も垣間見えた気がした。
MIYAVI以降は圧倒の連続。X JAPANはYOSHIKIの首の手術後ということもあってアコースティック・セットとなったが、それでも十二分に“聴かせる”術を持っているグループ。クラシカルな美しい旋律とToshlのハイトーン・ヴォーカルはいまだ健在。代表曲のひとつ「Endress rain」ではやや高音を出しづらい場面もあったが、それも些細なこと。それまでのMIYAVIの動の炎から一瞬にして静の炎へと変化させてしまう存在感の強度といったらない。そのなかでも、YOSHIKIが英語を含めたMCをするなかで、ステージを一旦退いたToshlに“早く出てきて”みたいに語りかけたり、Toshlも「これはお正月に放送されるということで…」という前振りから「あけましておめでとう! ハッピーニューイヤー!」と叫ぶなど、観客と向き合いながら彼らの個性を存分に輝かせるパフォーマンスに共感を呼んでいた。特に、世代の上の人たちからの渋め(笑)の掛け声が響いていて、長く愛されてきたバンドなんだなあと実感した。
今回はアコースティック・セットだったが、YOSHIKIの首が完治してのドラム演奏もこなすX JAPANとしての復活を期待したいところだ。
トリは久石譲と東京フィルハーモニー交響楽団。もう久石譲はその名のとおり“和製クインシー・ジョーンズ”足り得る存在感で、なんとなく風貌も似てきた気が。ちょっと優しめのクインシーのような(笑)。特にジブリ作品で知られる彼の楽曲だが、自分はあまりジブリ作品は観ないのでそのストーリーの詳細などは知らないのだが、彼の奏でる楽曲を聴くと、それとなく物語性が脳裏に浮かんでくるから不思議だ。センチメンタルで郷愁もありながら、どこかハートに優しい旋律は、日本人ならではの作風なのかもしれない。
それでも、聴けば『千と千尋の神隠し』で流れていた曲だとか、サントリー「伊右衛門」のCMで聴いた曲だとかが解かってしまう浸透性の強さは、久石の世界観がよどみなく多くの人に受け入れられる素地を有しているからだと思う。それを東フィルの盤石のオーケストラで再現した楽曲に、観客に影響を与える力が生まれない訳はない。
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当初の終了予定から30分以上オーヴァーして22時前に終演。長丁場であったが、番組進行のテンポも悪くなく(特に村上の司会ぶりに感心させられ、おそらく数年後は紅白の司会をしているんじゃないかと思った)、それほど冗長に感じなかったのは、よいイヴェントだった証拠だろう。
ホラン千秋のぶっちゃけツッコミインタヴューも面白かったし、ニューヨークヤンキースの帽子を被っていた外国人の観客に「松井秀喜知っていますか」と聞いて応えられないと「松井を知らないなんてもぐりよねー」と語った有働アナのアドリブ力に関心した(笑)有意義に一夜となった。
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<SET LIST>
00 INTRODUCTION
≪Perfume≫
01 FLASH
02 Spending all my time
03 if you wanna
≪Linked Horizon≫
01 紅蓮の弓矢
02 心臓を捧げよ
≪LiSA≫
01 crossing field
02 Rising Hope
03 Catch the Moment
≪AKB48世界選抜≫
01 会いたかった
02 ヘビーローテーション
03 365日の紙飛行機
04 恋するフォーチュンクッキー
≪関ジャニ∞≫
01 Highspirits
02 Tokyo holic
03 NOROSHI
04 DONAI
≪MIYAVI≫
01 Raise Me Up(Jonny Dope Remix)
02 What's My Name?(Day 2 mix)
03 Long Nights
04 Fire Bird
≪X JAPAN≫
01 La Venus
02 HERO
03 Endress rain
≪久石譲 with 東京フィルハーモニー交響楽団≫
01 Links(〈JAPAN国際コンテンツフェスティバル〉テーマ曲)
02 One Summer's Day(あの夏へ)(Music From The Motion Picture Soundtrack“Spirited Away / 千と千尋の神隠し”)
03 Oriental Wind(It's known as CM song SUNTORY“IYEMON / サントリー伊右衛門”)
00 GRAND FINALE
※ 反転推奨
<PRESENTERS>
Shingo Murakami(KANJANI 8)/ 村上信五(MC)
Yumiko Udo(NHK announcer) / 有働由美子(MC)
Chiaki Horan / ホラン千秋(International Reporter)
<ARTISTS>
AKB48(World Selection)/ AKB48
Joe Hisaishi / 久石譲
KANJANI∞ / 関ジャニ∞
Linked Horizon
LiSA
MIYAVI
Perfume
X JAPAN
Tokyo Philharmonic Orchestra / 東京フィルハーモニー交響楽団
<BROADCAST DATE>
・NHK WORLD TV Jan. 1(Mon),2018
Part1: 7:10 etc. [JST] Part2: 8:10 etc. [JST]
・NHK WORLD TV Jan. 2(Tue),2018
Part3: 7:10 etc. [JST] Part4: 8:10 etc. [JST]
・NHK総合 2018年1月8日(月)時間未定
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