※ 以下、公演について詳細な記述を含むため、了承の上閲覧ください
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結成15周年、メジャー・デビュー10周年のアニヴァーサリーを迎えたテクノポップ・ユニット、Perfume。メジャー・デビュー日となる9月21日から10日間にわたって開催されるイヴェント〈Perfume Anniversary 10days 2015 PPPPPPPPPP〉のうち、単独公演となる〈LIVE 3:5:6:9〉の9月29日のステージ“day7”の模様を観賞。“day2”の対バン企画〈Perfume FES!! 2015 ~三人祭~〉から始まった日本武道館でのイヴェント&ライヴの最終日前夜のステージだ。いまや世界的に活躍するPerfumeだが、アニヴァーサリーとはいえ日本武道館をほぼ10日間貸切ってライヴ&イヴェントを行なうことを目の当たりにすると、彼女らの躍進がいかにもの凄いことかを実感させられた。
個人的にPerfumeを知ったのは中田ヤスタカをサウンドプロデューサーに迎えた2003年で(インディ1stシングル「スウィートドーナッツ」発表もこの年)、翌年のインディ3rdシングル「ビタミンドロップ」(超名曲。かしゆかがまだツインテールの時代)を聴いて興味を示したのだが、実際生でライヴを観賞したのは少し先の2008年から。その前年に「ポリリズム」がリリースされ、一気にブレイクした後になる。観賞記録は次のとおり。
2008/11/06 Perfume@日本武道館
2012/01/28 Perfume@さいたまスーパーアリーナ
2013/12/25 Perfume@東京ドーム
2014/09/18 Perfume@代々木第一
※参考記事 Perfumeにおけるディスコ論?(2010/02/13)
ファンクラブ会員であってもチケット争奪戦となる彼女らの公演、ましてや自分のように非会員ともなると、大きな会場であってもなかなかチケットを獲得することが難しい。転売目的でのチケット購入も後を絶たないなか、記念すべきライヴということもあって、このワンマンライヴ〈LIVE 3:5:6:9〉は「当日座席番号発券システム」を導入し、入場時にチケット購入者の身分証明書および座席指定券引換券提示という形で不正を防ぐ対策がなされた。音楽シーンではCDの売り上げの激減によりライヴやグッズへ収益の重心が移っていると言われて久しいが、それでも集客が伸び悩むアーティストも多いなか、今のPerfumeにとっては要らぬ心配。連日満席状態といえる多くのファンが会場に詰め掛けた。
老若男女さまざまな層から愛好されているのも彼女らの特徴で、“テクノポップ+アイドル”という形の成功例として強烈なインパクトをまざまざと見せつけている。
さて、アニヴァーサリー企画のうち東京では4日間にわたって行なわれるワンマンライヴだが、そのタイトルは〈LIVE 3:5:6:9〉。この数字は何を意図するものなのか当初から気になっていたが、その意図がファンへの感謝と絆を示すのに大きな役割を果たしていた……終演を待たずにその認識を強め、この公演の大きな成功を確信した。
会場内に入るとアリーナ中央に四方360度が見渡せるステージ。日本武道館の形状に合わせたような八角形と円形を組み合わせた“せり上がり”を含むステージに、激しいフラッシュやカクテル光線、スポットライトなどが注がれる。
時にはステージ上の溝からステージを囲むようにせり上がった透明なスクリーンに彼女たちの姿やファッショナブルな映像が映し出され、決して大きくないステージのなかで遠近感や3D的なモードを創出。2階席の高さまで上昇する昇降台も駆使するなど視覚的な部分にもかなりこだわり、日本武道館をエンターテインメント性の高いライヴハウスへと変貌させていた。
最初に彼女たちを観た2008年の日本武道館公演でのレポートに、次のようなことを書いた。
ステージにはバンドもいないし、そもそもヴォコーダーやハーモナイザーを駆使したヴォーカル・ワークとピッチシフトを多様したサウンドであるから、ライヴ・バンド・スタイル的な“生”の音は、当たり前だがほとんど存在しない。だが、究極のリップシンク・エンターテインメントとしての“生”感には圧倒されるものがある。現在は中田ヤスタカが全面的にプロデュースをしているが、彼のアイディアが枯渇しない限り、しばらくはこの勢いは止まりそうになさそうだ。
生音や圧倒的なヴォーカルがライヴの醍醐味のなかの最上位を占めるうちの一つと考える自分にとって、その点だけに固執すれば、Perfumeのライヴは最上位足り得ない。だが、彼女らのステージにはそれらに匹敵するだけのものを兼ね備えている。エレクトロなサウンドと3人のダンス&ヴォーカルを軸としたバランス感覚に優れたステージやパフォーマンス、マクロ的な視点でもミクロ的なそれにおいてもしっかりと計算されたデザイン性、さらには出自でもある彼女らが持つアイドル性や親近感。それらが抜群の距離感を保って発信され続けているという事実が、彼女らのライヴを完成度の高いエンターテインメントへと導いている理由だといえる。
その発信源となるセンターステージ。以前、今後大きな会場では3人を大きく見せるような配置を考えることが課題となるだろうと記事にしたことがあるが、現在、その思慮は杞憂でしかないといっていいだろう。この日も、もちろん日本武道館というキャパシティの割に全方位で充足度が高い視覚性を持つ会場ということもあるが、3人の抜群のバランス感覚を披露。空間的な距離感も含め、“ステージで生み出す究極のトライアングル”もほぼ完成形に近づいたのではないかと思わせるパフォーマンスだったと感じだ。
もう一つ、彼女らのステージの特色としてMCというのがある。ファンとの距離を縮めたり、楽曲や演出だけでは知り得ない話など、彼女らの素の一面を知るという意味では非常に貴重なものではあるが、やや冗長のきらいがあるのも事実。特に、コール&レスポンスや会場全体でダンスをするなどライヴでしか味わえないお楽しみ要素が強い「P.T.A.のコーナー」で顕著になることが多い。もちろん全否定はしないが、台本がある訳でもなさそうで(それゆえ素の声が聞こえて良いということもあるが)、結果、必要以上に時間を費やしてしまう傾向にあるのも否めない。
今回は、彼女たちが以前に着想し温めてきた「“Live 3:5:6:9”」コーナーにもその要素が含まれていたが、「P.T.A.のコーナー」とは異なり、楽曲演奏とそれにまつわるトークをパッケージングしたことで新鮮な感覚をもたらした。
コーナー名(ワンマンライヴ名でもある)の“3:5:6:9”とは3人に言わせると“ス・ゴ・ロ・ク”の意味で(“3=ス”がやや厳しいが)、予め選ばれた楽曲にそれぞれ数字を当てて、特製の大きな10面体ダイスを振って演奏する楽曲を決め、その日ならではのセット・リストを作ろうという企画。ダイスはPerfume3名のほか観客から二人ほどステージに登場してもらって、計5曲を各楽曲につく“指示書”のもとで展開する。その際、楽曲ごとに東西南北の方向を指定して全方位に対応するという配慮も。ダイスを振って出た目の数だけ、ステージの周囲に映し出された楽曲名が書かれた“コマ”を進むという“すごろく”形式で楽曲を披露するのだが、初期の楽曲や“指示書”の面白さもあり、当時の思い出を振り返りながらレア曲を体感出来るのは、アニヴァーサリー・ライヴならでは。
ハイライトは、最後にダイスを振ったあ~ちゃんが「どうせなら〈彼氏募集中〉を出すか」と広島限定でリリースされた“ぱふゅーむ”名義時代の楽曲を狙ったところ、ダイスの目が「彼氏募集中」を引き当てたというくだりか。まだパッパラー河合プロデュースのローカルアイドル時代の楽曲が、日本武道館公演のセット・リストに組み込まれるというサプライズに、観客だけでなく自身たちも驚いていたのが印象的だった。
この試みは非常に良い感触を得たのではないか。個人的には「P.T.A.のコーナー」は学芸会というか、ややお遊戯的な要素が強くもあり、長尺を費やすまでではないと思ってしまうタイプだが、この“Live 3:5:6:9”コーナー
は楽曲演奏を軸にしていることもあり、大いに楽しめた。こういう形でMCを挟むならば、後半への展開とのメリハリも出来、テクノ・ポップ・アーティストな側面も、アイドル的な側面も、ファンへ感謝を伝えながら対話する交流的な側面もあって、彼女ららしさを打ち出したステージの完成度を高めてくれるのではないかと思う。
終盤は「ワンルーム・ディスコ」から2008年の日本武道館公演でアンコール1曲目に演じた当時の新曲「Dream Fighter」でギアを加速させ、「チョコレイト・ディスコ」「Puppy love」といったライヴ定番曲で本編は幕。特に、“最高を求めて~前を見て歩く”と当時のこれからの決意を代弁したかのような「Dream Fighter」からのクライマックスは圧巻。ミラーボールの輝きで包み込み、日本武道館が巨大なディスコホールと化した「チョコレイト・ディスコ」でのオーディエンスから沸きあがる興奮の波は、アーティストと観客・ファンというだけではない信頼性、強い絆を確かめ合ってるのではないかと思うくらいの熱気が渦巻いていた。
アンコール後には新曲の「STAR TRAIN」。今秋10月31日より全国公開となる主演ドキュメンタリー映画『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』の主題歌となる22ndシングルで、Perfumeの普遍的な印象とはまた異なった結成15周年&メジャー・デビュー10周年ならではのメッセージ性の高い楽曲だ。まだまだ前を見据えて歩み続ける彼女たちが、ここまで駆け上がってきた経験や努力を通して今伝えたいことを歌に乗せた……そんな気さえ感じたアンコールには、多くのファンが優しい目を注いでいたようにも思えた。
さらなる高みを求めて、どんな仕掛けを繰り出してくるのか。Perfumeのトライアングルの結晶は、いっそうその純度を濃密なものにしていきそうだ。
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<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 FAKE IT
02 NIGHT FLIGHT
03 コンピューターシティ
04 Pick Me Up
~“Live 3:5:6:9”コーナー ~
05 シークレットシークレット
06 スウィートドーナッツ
07 微かなカオリ
08 Twincle Snow Powdery Snow
09 彼氏募集中
10 GAME
11 STORY
12 Party Maker
13 P.T.A.のコーナー
including song's phrase of...
2億4千万の瞳
survival dAnce ~no no cry more~
ultra soul
14 ワンルーム・ディスコ
15 Dream Fighter
16 チョコレイト・ディスコ
17 Puppy love
≪ENCORE≫
18 STAR TRAIN(New Song)
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Perfume - Pick Me Up
PerfumeにもEDMの波が。
Perfume - FAKE IT
一発目はこの「FAKE IT」。演奏中のステージセットもMVに似たような感じに。