*** june typhoon tokyo ***

John Legend@パシフィコ横浜


 
 

 真摯なる愛のメッセージ。

 ジョン・レジェンドの2014年のワールドツアー“THE ALL OF ME TOUR”の日本公演“AN EVENING WITH JOHN LEGEND THE ALL OF ME TOUR”、昨日の大阪公演に続くパシフィコ横浜での公演を観賞(公式アナウンスとしては“東京”公演の模様)。ミッドウィークのみなとみらいという決して好立地ではない会場設定だったが、多くのジョン・レジェンド・ファン、ブラック・ミュージック・ファンが集った。

 個人的にジョン・レジェンドのツアー公演を観賞するのは6回目。2005年の渋谷・duo music exchangeを皮切りに、東京国際フォーラム、ブルーノート東京、SHIBUYA AXのステージ、幕張メッセでのイヴェント“スプリングルーヴ”を見届けてきた。その時の記事は次のとおり。(リンク先から記事へ飛べます)

2011年04月18日 JOHN LEGEND@AX
2009年04月06日 JOHN LEGEND@AX
2009年04月04日 Springroove 09@幕張メッセ
2008年03月12日 JOHN LEGEND@BLUENOTE TOKYO
2007年01月11日 John Legend@東京国際フォーラム

 ステージは至ってシンプル。中央より後方が高台となっていて、左のスクエア台にはドラム、中央~右までの長方形のエリアにはストリングス4名が陣取る。前方左右にギターとベース、前方中央にジョンが奏でるピアノが置かれている。コーラス隊やDJセットはなく、アコースティックな仕様でのパフォーマンスとなった。

 白のジャケットに黒のシャツとパンツという出で立ちで暗転からスポットライトを浴びたジョンが後方高台中央から登場。場内割れんばかりの拍手が起きる中、おもむろにステージ中央前方へと歩みを進め、静かにピアノへ向かって腰を下ろす。横浜での最初の楽曲は、新作『ラヴ・イン・ザ・フューチャー』から官能的な「メイド・トゥ・ラヴ」を。続いて「トゥナイト」を披露した後は、自身のこれまでのスターとなるまでの道のりを自伝的に語りながら、ところどころに歌を挟んでいくストーリーテラー・スタイルへ。

 「最初は5人くらいしか観客がいなくて、レーベルも相手にされなかった」「でも、カニエ・ウェストの〈GOOD Music(Getting Out Our Dreams)〉レーベルへ所属して売れていったから……当初相手にしてくれなかったレーベルはミスしたよね」などと苦労話に少しずつ笑いを採り入れ、ジョンが提供した楽曲のフック・パートを歌いながら、彼の経歴を追っていく。アリシア・キーズ「ユー・ドント・ノウ・マイ・ネーム」ではメインのリリックではなく、彼がレコーディングしたと思われるバッキング・コーラスを弾き語りで歌っていた。
 そして、ヒットしたソロ曲へ。「レッツ・ゲット・リフテッド」から「ユースト・トゥ・ラヴ・ユー」と繰り出し、野太く高い伸びのある声で場内を一瞬にして興奮の坩堝へと変えていく。

 今公演、アッパーなテイストは中盤の「グリーン・ライト」、マイケル・ジャクソンのカヴァー「ロック・ウィズ・ユー」くらいで、基本線はミディアム~スローでまとめた構成。新作『ラヴ・イン・ザ・フューチャー』のタイトルのごとく、“愛”のメッセージをストレートに伝えるために必要最小限のステージングを求めたのだろう。感情をいっそう豊かにさせるストリングスが楽曲を神秘的にさえさせるほどの効果をもたらしたのは確かだが、あくまでも主役はジョンの声だった。派手な飾りつけも、刺激的な抑揚もない。ただピアノに向かい、時に客席へ向かって、おもむろに衒いなく問いかける歌唱だ。だが、その赤裸々で生々しささえ感じる声の波動がオーディエンスの胸を揺るがせ、締め付ける。固唾を飲み、その歌が体内を巡ると、瞬時に抗いがたい興奮に包まれていく。

 特に印象的だったのが、このセット・リストにおいてはいささか異色に思えるサイモン&ガーファンクルの1970年発表の「ブリッジ・オーヴァー・トラブルド・ウォーター」(明日に架ける橋)のカヴァー。亡くなった祖母へのトリビュートと呟いてから始まったこの歌には、直接的な言葉はなくとも、祖母への愛が満ち満ちていた。安らかな歌い口ながらも彼の溢れるばかりの憧憬や哀切を秘めた、本編でも一、二を数える名演だったように思う。

 そして、終盤。今度はオーディエンスへ愛を問いかける。“テイク・イット・スロウ……”のコール&レスポンスでの共感をそのまま恍惚へと昇華させた「オーディナリー・ピープル」、ホープフルなメロディとまさしく天を駆け上がるばかりのエモーショナルなヴォーカルで心を捉えた「ソー・ハイ」。予測はついていながらも、ジョンの圧倒的な情動とソウルフルな歌声に身を委ねるばかりの時間がそこにはあった。

 アンコールはジョンが独りステージへ登場し、ピアノの弾き語りのみでの「オール・オブ・ミー」。今回のツアー・タイトルにもなっている楽曲だ。ステージ中央にはジョンとピアノだけ。それだけなのだが、圧倒的な迫力と訴求力がその空間を支配していた。

 昨年9月にモデルのクリッシー・テイゲンと結婚し、公私ともに充実期といえるジョン。振り返れば、アルバム『ラヴ・イン・ザ・フューチャー』は彼女に捧げたものと公言し、「オール・オブ・ミー」のヴィデオでは彼らの結婚式の模様の一部もインサートされている“私的な”アルバムだった。だが、そのパーソナルな愛とともに、オーディエンスへ愛の素晴らしさを感じてほしいという彼の願いが、このツアーのステージには宿っているような気がする。愛をシェアすること……その大切さをこのツアーで教えてくれているのかもしれない。

 圧巻。その一言に尽きるといっていい。大人の貫録と成熟に酔いしれた横浜の一夜となった。


◇◇◇


<SET LIST>

00 Introduction
01 Made to Love *(1)
02 Tonight(Best You Ever Had)
03 Prelude
~Everything Is Everything(Original by Lauryn Hill)
~Encore(Original by Jay-Z)
~Selfish(Original by Slum Village)
~You Don't Know My Name(Original by Alicia Keys)
04 Let's Get Lifted
05 Used to Love U
06 Save The Night *(1)
07 Something(Original by The Beatles)
08 Maxine
09 Again
10 P.D.A.(We Just Don't Care)
11 The Beginning *(1)
12 Save Room
13 Green Light
14 Rock With You(Original by Michael Jackson)
15 Who Do We Think We Are *(1)
16 Bridge Over Troubled Water(Original by Simon&Garfunkel)
17 You & I(Nobody In The World) *(1)
18 Caught Up *(1)
19 Ordinary People
20 So High
≪ENCORE≫
21 All of Me *(1)

*(1):Song from Album“Love in the Future”


◇◇◇













Love in the Future
John Legend
Sony









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