ブルーノート東京での“Sweet Christmas Evening with Voice of Neo-Soul” と冠されたドゥウェレイのライヴに行ってきた。グラス・シャンパン+クリスマス・ディナー付きは21000円という値段だが、(もちろん)ディナー別ミュージック・チャージのみで予約(それでも8400円+αだけど)。クリスマスにフォーマルな大人の男女が集う中、ラフな格好をしたジジイがひとーり。でも、そんなの関係…。
メンバーは左からコーラス2人(ロイド・ヘンダーソン、ジェームス・テイト)、ギターのゲロム・マーティン、ドラムのデミオン・ハインズ、ベースのギャレット・セイヤーズ、キーボードのヴァーノン・ヒルズ。そして中央に幾何学模様風のヘアにサングラスをかけたドゥウェレイ。クリスマスでしっとりというムードだからか、年齢層がちょっと高めだったり、いかにもドゥウェレイなど聴いてないようなビジネスマンやらが多いからか、最初は比較的大人しい雰囲気。コール&レスポンスを促すところも、右側半分からあまり声が聴こえず「そっちは誰もいないみたいだね…(笑)」なんてドゥウェレイに言われちゃう始末。(苦笑)
ただ、そこはヴォイス・オブ・ネオ・ソウル。じっくりと場内を熱いグルーヴに包んでいく。多くの曲がバンドとのアドリブ・セッションを含むアレンジで、バンド・メンバーのソロを組み込みながら、ソウル・ミュージックの醍醐味を見せていく。
とりわけ、ドゥウェレイが「サンバ」というとサンバ・テイストのバンド・セッションのフレーズを演奏し、「ジャズ」というとジャジーなフレーズを演奏するといったやりとりが圧巻。続いて「ロック」「ヒップホップ」「カントリー」というと、それぞれのテイストでバック・バンドが応え、場内が拍手の嵐に。そうすると、客席から「ボサ・ノヴァ!」「レゲエ!」と声が掛かる。それに応えて、ボサ・ノヴァの軽快なテンポから、レゲエの引きずるようなリズムへと。こういった対応力からも、実力のあるバンド・メンバーであることが窺える。
ドゥウェレイは結構お茶目な人で、各バンド・ソロ・パート前にメンバーを紹介する時、「右側、みんなから見て左の…」といいながら、マイク・スタンドを右に倒して戻す。「左側の…」といえばマイク・スタンドを左に倒して戻す。そして今度は前に倒して前の客を驚かす。ちょっとしたマイク・スタンド・プレイで和やかな空気を作ったかと思うと、一転して熱を帯びたヴォーカルを披露する。
また、フレーズを繰り返しながらブレイクするたびに、「サイコー」「ミズ…water」「アイシテルー」「オッパッピー」(笑)と日本語を繰り出したり、MCで「僕に日本語を教えてくれないか」と前の女性に尋ねたり。その前の女性は「アイシテル」というと、「それは知ってるんだ…他にはないかな?」というと、サイド席の方から「どんだけ~!!」の声が。それに「ド、ドンダケェ?」と応えたり。(笑) 決して派手ではないけれども、実に飽きさせないステージングを構築してくるのはさすがだ。
ハプニングもあった。「次の曲はアルバム『サム・カインダ…』からの…」と説明したあとで、キーボードについたが、始まったのはすでに披露した曲目のイントロ。そうすると、ヴィデオを巻き戻しするかのように、逆回転歌唱と逆回転パントマイム(?)をはじめるドゥウェレイ。そして、「次の曲はアルバム『サム・カインダ…』から…」と同じようにまた繰り返しはじめる。その機転のよさに思わず笑顔が。
そして、サプライズは、「今日は誰と来てるの?ガールフレンド?」と客席に向かって声をかけた時、「EX」「EX?…hahaha」(※EXは元、つまり元カノ、元カレの意味)とのやり取りがあった後、「ステージに上がってきなよ」とドゥウェレイに促されてステージに立ったハンチング帽をかぶった男性が出てきた時。ドゥウェレイが「君、英語解かる?」というと男性が「ちょっとなら」。「あ、そう、僕は日本語解からないからね(笑)」「後ろを向いて…ドラマーの目を見続けて。他を向いちゃダメだよ。それで、両手を広げて…マイクを持ってて」と言われるがままに客席に背を向けて立つ男性。その間、気づかれないように、その男性が座っていた席にドゥウェレイが座ってしまうという…という、ここまではよくあるビックリ。だが、その後、バック・バンドが演奏するリズムに乗せられたのか、その男性がステージ上でダンスを! これには観客、ドゥウェレイ、バンド・メンバーも大うけ。すっかりドゥウェレイが仕掛けたいたずらが薄くなってしまった。(笑) それに触発されたのか、コーラスの2人もその後にロボット・ダンスを披露したりしていた。
バンドは実力派メンバーといった感じ。特に目がいったのは、キーボードのヴァーノン・ヒルズ。ボブ・マーリィというかスピーチみたいなルックス(もちろんドレッド!)で、天を見上げて首を左右に揺らしながらの演奏は、まさに“スティーヴィー”ライク。耳に手を当てて観客からのレスポンスを期待するポーズをとったり、手を上げて観客を煽ったりと、盛り上げに欠かせない人物だった。彼とドゥウェレイのキーボード同士のやり取りは、実にソウルフルでファンキーだった。
ラストは、ドゥウェレイが歌うクリスマスを祝う歌が途中で替え歌となり、各メンバー・ソロの前フリを面白おかしく歌う展開。そこでのコーラス2人のやりとり、「日本を離れるのは寂しいな」「オレは家族がいるから家に帰るよ」「オレだって13時間フライトすれば帰れるんだ~」…は笑えたな(1人はロボット・ダンス、1人はヒューマン・ビートボックスを披露するなど、実にフットワークの軽いバック・コーラスだった)。
最後の最後に、スペシャルゲスト、トランペッターのTOKUが呼び出され、ステージに。ドゥウェレイとガッチリ握手したあと、途中で「ジングル・ベル」のフレーズを挟みながら、トランペット・ソロで会場を盛り上げた。
フェンダーローズをサラッと使いこなしながら、決して押し付けがましくない、だけれども、しっかりと心地よいコクを耳に身体に残してくれるドゥウェレイ。バンドとの息もピッタリで、爽快なグルーヴで酔わせてくれる。アルバム・セールス上位にランクされたミュージックソウルチャイルドが注目されるならば、このドゥウェレイももっと注目されてもいいのではないか。少なくともライヴでの立ち回りは、心地よいグルーヴと音楽を愛する気持ちをもたらすのには絶好のものだった。またの来日に期待したい。
そういえば、CD棚を見たら、ドゥウェレイのアルバム、『サム・カインダ…』と『サブジェクト』がないんですよ。誰かに貸したまま返ってこないのかなぁ。仕方ないので今から買ってもいいんだけど、その盤はCCCDだからなぁ。出来ればノンCCCDで再発してくれると助かるんだけども。
◇◇◇
<SET LIST>
01 PAPAYO
02 PIMPS DREAMS
03 DIAMONDS
04 FLAP JACKS
05 KNOW YOUR NAME
06 SUBJECT
07 HAVE YOURSELF A XMAS
08 HOLD ON...
09 OLD LOVES
10 THIS CHRISTMAS
11 LAY IT DOWN
12 TRUTH
13 I THINK I LOVE YOU
≪ENCORE≫
14 FIND AWAY
15 (CHUCK JACKSON)
16 WITHOUT YOU
≪MEMBER≫
Dwele (Vo)
Vernon Hill (Key)
Gehrome Martin (G)
Garrett Sayers (B)
Dameion Hines (Ds)
Lloyd Henderson (Back Vo)
James Tait (Back Vo)
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