2022年の“球春”に、32校出揃う。
3月18日(金)に開幕を迎える第94回選抜高校野球大会の選考委員会が1月28日(金)にオンラインを併用して行なわれ、2022年の“センバツ”出場校・全32校が発表された。
まずは、多角的に出場校を選出するセンバツの特性を生かした21世紀枠の3校から。21世紀枠は“部員不足やグラウンドがない、豪雪地帯といった学校・地域の特性などの困難を克服した学校や、ボランティア活動といった野球以外の活動での地域貢献で他校の模範となる学校”から選出されるという主旨はあるものの、実質は地方大会上位進出の公立校が優先される傾向は否めない。ただ、設定当初からは128校を上回る都道府県では32強、それ以外は16強以上と条件が改定され、現実的には4強ないし8強以上の成績を残していなければ、選出は厳しい。
ということで、近年は21世紀枠選出校のレヴェルも高くなってきているのだが、それでも殆どが初戦で姿を消しているのが現状だ。昨年は具志川商(沖縄)が初戦を勝利したとはいえ、対戦相手が同じ21世紀枠の八戸西(青森)だった。それ以前での勝利となると、2016年の釜石(岩手)が挙がるが、この時も21世紀枠の小豆島(香川)に勝利したもので、21世紀枠以外の対戦での勝利となると、2015年の松山東(愛媛)が二松学舎大学付(東京)を下して2回戦進出した時まで遡らなければならない。それ以前も初戦敗退が続き、選抜で上位進出となったのは2009年の利府(宮城)、21世紀枠が誕生した2001年の宜野座(沖縄)がセンバツ4強を果たしているが、ともに(主旨と選出校の内実の“ズレ”も指摘された)選出条件改定前であった。
今回の21世紀枠に選ばれたのは、只見(福島)、丹生(福井)、大分舞鶴(大分)のいずれも初出場となる3校。21世紀枠候補9校がすべて公立校ということもあり、これまでのセンバツでの21世紀枠の成績を考えると初戦突破の壁は厳しそうだが、その前例を覆す“旋風”を起こしてもらいたいところ。なかでも、昨秋の大分大会で昨春のセンバツ準優勝の明豊に惜敗して準優勝し、その後九州大会では同大会を準優勝した大島(鹿児島)との初戦で引き分け、再試合の末、惜敗した大分舞鶴には、高い期待も寄せられそうだ。
各地区の一般選考では、時に疑義を生じる“最後の1枠”の争いがある「関東・東京」と「中国・四国」が毎年注目される訳だが、例年に違わず今年も「関東・東京」の“6校目”に視線が注がれた。関東の5校目の昨春のセンバツ覇者・東海大相模(神奈川)と秋季東京大会準優勝の二松学舎大附(東京)との争いは、二松学舎大附が制して、東京の2校選出となった。昨春センバツVという強力なアピールポイントもあった東海大相模だが、平均失点の多さなどで落選。東京大会決勝であとアウト1つとしながら國學院久我山(東京)にサヨナラ負けを喫した二松学舎大附に軍配が上がった。ただ、二松学舎大附は以前に横浜(神奈川)と“6校目”を争った時に、“先発投手1人に頼り過ぎ”という理由で落選となったが、今回はエース・布施が安定しているとして評価。東海大相模は昨年も最後の1枠でセンバツ出場を決めて、結果優勝。昨年同様の状況となったが、昨年とは異なり、選手の能力は高いが、安定感のある投手がいないとして評価を下げた。選出の基準に一貫性が見られない問題は、依然としてあるようだ。
激戦が予想された「近畿」や“最後の1枠”を持つ「中国・四国」は思ったほど賛否が生まれなかった印象。特に近畿は大阪桐蔭(大阪)が明治神宮大会で優勝し“神宮枠”1つを加えた7校となったことで、比較検討に幅を持てたこともあるか。近畿大会4強の当確4校と京都国際(京都)を選出した後、市和歌山(和歌山)、東洋大姫路(兵庫)、近江(滋賀)の3校を比較し、市和歌山と東洋大姫路を選出。昨夏甲子園4強の近江は、秋季近畿大会の準々決勝で金光大阪に6点差をひっくり返されたことや、原動力となった投打の中心・山田が故障で1試合も登板できなかったことが響いた。
中国・四国の最後の1枠は、中国大会4強の倉敷工(岡山)と四国大会4強の明徳義塾(高知)での比較検討に。地域性も含め、倉敷工に軍配が上がった。
予想外の波乱となったのが「東海」。秋季東海大会優勝の日大三島(静岡)に続く2校目は、同大会準優勝の聖隷クリストファー(静岡)と多くが予想するなか、同大会4強の大垣日大(岐阜)を選出。選考理由として、選考委員会でも賛否両論あったとした上で、簡潔に言えば「拮抗するも、投打に大垣日大が上回った」ということらしい。粘り強く接戦で準優勝した聖隷クリストファーだが、東海大会3試合で15失点という失点の多さを挙げ、「センバツは失点の多いチームは厳しい」との評価を下した。同大会優勝の日大三島との同県選出となるため、地域性も考慮されたと思われたが、それはなく「センバツは投手力が有利なため、失点が少ないチームが甲子園で勝つ可能性が高い」と実力を重視したというが見解らしい。
この論点から考えると、優れた才能を持つエースはいないものの、粘り強さとチーム力で接戦を勝ち上がってきたスタイルのチームは、大会決勝に進出してもその成績が有利とはならないことにもなる。聖隷クリストファーはエースが故障により、2番手以下で東海大会決勝まで漕ぎつけたのだが、エースが不在で失点過多というのは、近畿の近江と事情は似ている。
とはいえ、東海大会決勝で3対6で敗れた聖隷クリストファーに対し、大垣日大は同準決勝で日大三島に5対10と10失点で敗戦。大会優勝の日大三島を基準に考えても、決勝で3点差6失点の聖隷クリストファーが準決勝で5点差10失点の大垣日大を大きく下回ることは考えづらい。秋季東海大会の優勝・準優勝が順当に選出されなかったのは、1978年以来44年ぶりの“異例”ということからも、この選出には異論が噴出しそうだ。東海地区の選考委員長は慶應義塾大学の監督も務めた鬼嶋一司で、まさか77歳の名将・阪口慶三監督に忖度したとか東海地区は日大勢で……という圧力があったとは思わないが、非常にすっきりとしない選考結果となってしまったのは否めない。だが、選出された大垣日大に非がある訳ではないので、この波乱を吹き飛ばすような活躍を期待したい。
初出場は21世紀枠の3校に、クラーク記念国際(北海道)、和歌山東(和歌山)、有田工(佐賀)を加えた6校で、最多出場は天理(奈良)の26回。その天理と大阪桐蔭(大阪)が3年連続出場と近年活躍する一方で、日大三島が38年ぶり、広島商(広島)が20年ぶり、長崎日大(長崎)が23年ぶりなど、久しぶりに甲子園出場を決めた高校も。
2022年に紫紺の優勝旗を掲げるのはどの高校になるのか。組み合わせ抽選会は3月4日(金)に行なわれる。
それでは、出場32校を列記していこう。
◇◇◇
【21世紀枠】
只 見 (福 島)初
丹 生 (福 井)初
大分舞鶴 (大 分)初
【北海道】
クラーク記念国際(北海道)初
【東 北】
花巻東 (岩 手)4年ぶり4回目
聖光学院 (福 島)4年ぶり6回目
【関東・東京】
明秀学園日立(茨 城)4年ぶり2回目
山梨学院 (山 梨)2年ぶり5回目
木更津総合(千 葉)6年ぶり4回目
浦和学院 (埼 玉)7年ぶり11回目
國學院久我山(東 京)11年ぶり4回目
二松学舎大附(東 京)7年ぶり6回目
【東 海】
日大三島 (静 岡)38年ぶり2回目
大垣日大 (岐 阜)11年ぶり4回目
【北信越】
敦賀気比 (福 井)2年連続9回目
星 稜 (石 川)2年ぶり15回目
【近 畿】
大阪桐蔭 (大 阪)3年連続13回目
和歌山東 (和歌山)初出場
天 理 (奈 良)3年連続26回目
金光大阪 (大 阪)13年ぶり3回目
京都国際 (京 都)2年連続2回目
市立和歌山(和歌山)2年連続8回目
東洋大姫路(兵 庫)14年ぶり8回目
【中国・四国】
広 陵 (広 島)3年ぶり25回目
広島商 (広 島)20年ぶり22回目
高 知 (高 知)4年ぶり19回目
鳴 門 (徳 島)9年ぶり9回目
倉敷工 (岡 山)13年ぶり11回目
【九 州】
九州国際大付(福 岡)11年ぶり3回目
大 島 (鹿児島)8年ぶり2回目
有田工 (佐 賀)初出場
長崎日大 (長 崎)23年ぶり3回目
◇◇◇
<補欠校>
【21世紀枠】
札幌国際情報(北海道)
倉吉総合産業(鳥 取)
【北海道】
旭川実 (北海道)
東海大札幌(北海道)
【東 北】
八戸工大一(青 森)
青森山田 (青 森)
【関東・東京】
東海大相模(神奈川)
桐生一 (群 馬)
関東一 (東 京)
日大三 (東 京)
【東 海】
聖隷クリストファー(静 岡)
至学館 (愛 知)
【北信越】
小松大谷 (石 川)
富山商 (富 山)
【近 畿】
近 江 (滋 賀)
八幡商 (滋 賀)
【中国・四国】
岡山学芸館(岡 山)
下関国際 (山 口)
明徳義塾 (高 知)
徳島商 (徳 島)
【九 州】
興 南 (沖 縄)
海 星 (長 崎)
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