“春はセンバツから”……2014年(平成26年)3月21日から12日間(休養日1日を含む)にわたって行なわれる第86回選抜高校野球大会の出場校32チームが、1月24日に決定した。出場校は次のとおり。
◇◇◇
≪第86回選抜高等学校野球大会 出場校≫
【北海道】
北海道 駒大苫小牧(9年ぶり3回目)
【東北】
青森 八戸学院光星(2年ぶり7回目)
宮城 東陵(初出場)
【関東・東京】
栃木 白鷗大足利(初出場)
栃木 佐野日大(7年ぶり4回目)
群馬 桐生第一(7年ぶり4回目)
山梨 山梨学院大付(20年ぶり2回目)
東京 関東一(2年ぶり5回目)
神奈川 横浜(2年ぶり15回目)
【北信越】
長野 東海大三(15年ぶり3回目)
新潟 日本文理(3年ぶり5回目)
【東海】
愛知 豊川(初出場)
三重 三重(2年ぶり12回目)
【近畿】
京都 龍谷大平安(2年連続38回目)
京都 福知山成美(5年ぶり2回目)
奈良 智辯学園(2年ぶり9回目)
和歌山 智辯和歌山(3年ぶり11回目)
大阪 履正社(4年連続6回目
兵庫 報徳学園(2年連続20回目)
【中国】
広島 広島新庄(初出場)
山口 岩国(14年ぶり7回目)
【四国】
愛媛 今治西(4年ぶり13回目)
徳島 池田(27年ぶり8回目)
高知 明徳義塾(3年ぶり15回目)
【九州・沖縄】
長崎 創成館(2年連続2回目)
熊本 鎮西(24年ぶり3回目)
鹿児島 神村学園(2年ぶり4回目)
沖縄 沖縄尚学(2年連続6回目)
沖縄 美里工(初出場)
【21世紀枠】
東京 小山台(初出場)
和歌山 海南(27年ぶり17回目)
鹿児島 大島(初出場)
【補欠校】
北海道:札幌大谷
東北 :青森山田(青森)、角館(秋田)
関東 :健大高崎(群馬)、霞ケ浦(茨城)
東京 :二松学舎大付
北信越:地球環境(長野)、新潟明訓(新潟)
東海 :静岡(静岡)、静岡商(静岡)
近畿 :三田松聖(兵庫)、PL学園(大阪)
中国 :倉敷商(岡山)、高川学園(山口)
四国 :生光学園(徳島)、坂出(香川)
九州 :日章学園(宮崎)、大分商(大分)
21世紀枠:角館(秋田)、坂出(香川)
◇◇◇
選抜出場校の選考は実力や結果だけではないために、時に微妙な選考になることは分かるのだが、今年の選考結果は、大いに首を傾げたくなることがあった。そのなかでも、関東・東京地区の代表選考について、述べたい。
おさらいしておくと、関東・東京の代表校は次の6校となった。
白鷗大足利(栃木2位・関東大会優勝)
佐野日大(栃木1位・関東大会4強)
桐生第一(群馬2位・関東大会準優勝)
山梨学院大付(山梨1位・関東大会4強)
関東一(東京1位)
横浜(神奈川1位・8強)
関東・東京地区は枠が6、18の候補校のなかから選出する。最初は関東から4校、東京から1校、これが基本線となり、6枠目を関東と東京のどちらかから選出する形だ。
まず、おおよそ関東大会4強はよほどのことがない限り選出される。関東大会準決勝以降のスコアを見ると、
【準決勝】
白鴎大足利 3-1 山梨学院大付
桐生一 5-0 佐野日大
【決勝】
白鴎大足利 6-3 桐生一
と、相当な得点差、実力差があるとは見受けられず、この4強4校に異論はない。東京も東京大会を優勝した関東一で異論はないだろう。問題は6枠目だ。
関東からは横浜が選出された。関東大会では準々決勝で佐野日大に3-5で敗れた。それ以外の8強は、習志野(千葉1位)、健大高崎(群馬1位)、霞ヶ浦(茨城1位)だ。横浜が選出された理由として、
・準々決勝(佐野日大戦)は、初回に5失点をした伊藤投手が2回以降は5安打無失点に抑えた
・大半が夏の甲子園の経験者で、特に浅間や高濱など強打者を軸に切れ目がなく打線、全員が強肩の守備
・関東No.1投手の佐野日大・田嶋投手から3点を奪った
が挙げられたという。
だが、これはどうなのだろう。関東大会の準々決勝を見てみると、
健大高崎 3-4 山梨学院大付
霞ヶ浦 1-2x 桐生一
白鴎大足利 3-1 習志野
横浜 3-5 佐野日大
と、一見どれも接戦に見えるが、準々決勝で敗退した高校のなかで、試合として競り合う展開とならなかったのは横浜だけなのだ。習志野は、初戦は常総学院(茨城2位)に8-2で勝利し、準々決勝で優勝した白鴎大足利に初回先制しながらも逆転負け。霞ヶ浦は準優勝の桐生第一に9回裏にサヨナラ負けの1-2と惜敗。健大高崎は初戦に水戸工(茨城3位)3-2で競り勝ったのち、準々決勝で山梨学院大付に中盤までリードしながら逆転され3-4で敗れた。
このことから、4強に留まった山梨学院大付に敗れた健大高崎はやや評価を落とさざるを得ない。さらに、霞ヶ浦は準優勝校に終盤サヨナラと紙一重で敗れたが、霞ヶ浦は開催県の茨城1位ということもあり初戦シードだったため、大会で1つも勝たずに終わってしまったことがマイナス要因になる。
となると、優勝した白鴎大足利に接戦で敗れた習志野が第一候補となるのが常道だと思うが、横浜となった。選出理由の一つ、佐野日大の田嶋から3点奪ったというのがある。確かに、佐野日大が桐生第一に敗れた準決勝では、田嶋が先発せずに初回に4失点奪われている。とはいえ、チームとして桐生第一に零封されていての0-5の完敗だ。であれば、佐野日大を5-0で完封勝利した桐生第一に僅かの差で敗れた霞ヶ浦を上位にとってもいいところ。ただ、これは霞ヶ浦が大会未勝利というところを選考委員に大きくマイナスととられたようだ。実力差ではなく、組み合わせの妙でたまたま未勝利となっただけにしか過ぎないのだと思うが。それと、すでに栃木で2校、群馬で1校が選ばれているということもあり、これ以上北関東の高校を選出してしまうと地域のバランスが崩れてしまうという要因も影響したのかもしれない。仮に、霞ヶ浦か健大学高崎が選出されてしまったとすると、関東は北関東と山梨からの選出となり、埼玉、千葉、神奈川といういわゆる野球実力県から1校も選出されない事態ともなりうる。
ここまでを見ても習志野が選出されても何ら問題ないと思うが、不可解なのは習志野は補欠校にもさえ選出されていない。千葉大会でも1位、関東大会でも優勝した白鴎大足利に接戦で敗れたのにも関わらずである。
次に東京の2番手高校との比較。東京大会で準優勝した二松学舎大附だが、決勝戦は延長10回の6-7のサヨナラ負け。準決勝では優勝候補の前評判も高かった日大三に9-3と圧勝している。選出された関東一と実力差ではそん色ないといえるだろう。
そこで関東大会と東京大会の比較となる訳だが、一つの物差しとして地方大会の後に行なわれる明治神宮大会というのがある。秋季地区大会の10地区(北海道・東北、関東、東京、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)の代表がトーナメント方式で優勝を競い、優勝チームの地区に選抜出場1枠を与える重要な大会だ。
関東地区代表の白鴎大足利は初戦、中国地区代表の岩国(山口)に4-6で敗退。東京地区代表の関東一は九州地区代表の沖縄尚学に3-8で敗れた。ただ、そのスコアを見てもらいたい。
【明治神宮大会・1回戦】
沖縄尚学 000 002 015 8
関東一 201 000 000 3
【明治神宮大会・2回戦】
白鴎大足利 110 020 000 4
岩 国 001 000 05X 6
問題はこの勝利したチームの対戦結果だ。
【明治神宮大会・準決勝】
岩 国 010 00 1
沖縄尚学 211 7X 11
沖縄尚学は岩国を5回コールド11-1の大差で岩国を破っている。そして、その後明治神宮大会を制して、九州地区に選抜出場枠を1つ確保させた。沖縄尚学に序盤リード終盤も8回裏終了までタイスコアの接戦を演じた関東一と、沖縄尚学にコールド負けを食らった岩国に敗れた白鴎大足利。もちろん、1チームで大会のレヴェルすべてを判断することは出来ないが、少なくとも地区代表として戦った結果として考えれば、明治神宮大会で優勝した沖縄尚学に接戦した関東一に、東京大会の決勝で1点差で涙を呑んだ二松学舎大附が、関東大会8強ということくらいしか強調できない横浜を下回るとは思えないのである。
仮に、これが習志野や霞ヶ浦であれば、かなり競った議論にもなると思われ、必ずしも二松学舎大附ではないことも納得がいく。横浜の選考理由をみると、この秋からの新チームの結果云々以上に、「大半が夏の甲子園の経験者」「浅間や高濱など強打者が軸」という期待値に比重を置いている。そこが問題だ。
また厄介なことに、といっては失礼だが、東京では21世紀枠で都立小山台が選出された。21世紀枠も北海道、東北など環境の困難な地域を除いて、通常出場校との実力的格差を広げないよう、これまで少なくとも地方大会で4強以上の学校が選ばれていたが、小山台は8強止まり。だが、近年は北海道、東北からの選出が通例化(昨年までの5年間で7校選出)の流れもあってか、全国的にそれほど大きな話題となる高校もなく、そろそろ他地区からもという思惑が働いたというのは、当たらずとも遠からずだと思う。東京そして都立出身の自分は、もちろん大いに小山台を応援したいが、日大三を破って関東一と接戦を演じ東京大会準優勝の二松学舎大附が選外されて、東京大会8強の小山台が21世紀枠とはいえ選出されてしまうところに、何とも言えないモヤモヤがある(4強以上ならそこまで感じなかったと思うが)。そして、それ以上に、横浜との比較対象で選外となったことに、強い違和感が残るのだ。
選考委員は二松学舎大附について、「打線は準決勝で優勝候補と評判の高かった日大三の三輪投手を打ち崩し、勝でも13安打を放つなど打撃が高い評価に繋がったが、決勝での4失策、そのうち3個がタイムリーエラーとなり投手陣を助けられなかった」ことを課題とした。
横浜と二松学舎大附については、「攻撃力は互角、投手力と守備力での安定度が高いのが横浜」という結論なのだという。果たしてそうなのだろうか。
おそらく、これは地区が持つ“枠数”に選考委員が拘ってしまったことによるのだと思う。
自分は、以前から選抜について「近畿の枠が多い」ことに対して苦言を呈してきた。近年、大阪桐蔭が優勝など結果は残してはいるものの、8強まで勝ち上がった地区の割合を見てみると、以前に比べて近畿勢のレヴェルダウンは否めない。ただ、高校野球とはいっても興行の要素が強いため、地元関西圏のチームが見られる回数が減るとなると、それは一つの問題にもなるのだろう。学校数との兼ね合いを考えても、兵庫、大阪、京都、奈良、和歌山、滋賀6府県で6枠は、たとえば、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨8都県の関東・東京と同数というのも、検討すべき余地がある。出場校数上位を考えれば、近年の夏の出場校でみると神奈川、愛知、大阪、千葉、兵庫、埼玉、東東京、福岡、西東京、南北海道の順になる。東東京と西東京を足せばダントツの1位(約270校、神奈川は190校)。逆に少ない順でみると、鳥取、福井、徳島、高知、山梨、和歌山、島根、香川、佐賀、奈良。これらの約25~40校あたりの県、近畿は和歌山と奈良が入っている。関東は上位のうち、東京、神奈川、千葉、埼玉。近畿は大阪、兵庫。一方少数は関東は山梨のに、近畿は奈良と和歌山。常に選抜大会で上位進出していてレヴェルの高いと思われる時期ならまだしも、層の厚さという意味ではそれほどまででなくても、枠数が保障されている感がするのだ。
これは一例でしか過ぎないが、近畿以外の地区は、結果を出さないと案外枠数を減らされることが多い印象がある。今回の関東・東京地区は、北関東からの選出が多く、いわゆる神奈川、埼玉、千葉という実力県というところから出場していない。仮に、初戦で関東・東京勢が勝ち進めない割合が高くなってしまうと、次の選抜の地区の枠数割り当てに影響してしまうのではないかと考え、全国的にも前評判も高い、勝利が見込める学校を選出しておきたいという心理が働いたのではないか。それが、横浜を選んだ結果に繋がったのではないかと、邪推する訳だ。
もちろん、選ばれた横浜に非はないし、推挙されるだけの実力はあると思うので、是非高い目標を目指して頑張ってもらいたいのだが、選出方法においては、例年以上になかなか納得のいかない結果になってしまった思いがまだ晴れずにいるのが、正直なところだ。
この32校、特に東京や関東の代表には頑張ってもらいたい。選ばれたからには全力を尽くして、よい大会になるよう願うばかりだ。
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