その音の彼方

いろいろな物語や日々の想いを切り取って言葉にして過ごしています。

夜空に 2

2011-12-30 | story
一夜明けて。

山にでも登ろうか。

そこで澄み切った空気を思い切り吸い込めば心の中に充満している惰性を洗い流せるかもしれない。

いや、山はしんどいかな。

海へ行こう。

果てしなく広がる青を感じようではないか。

そうだ。街へ繰り出そう。

賑わう熱気を感じれば、また新しい世界へ。

思考するばかりで僕の視界は横向き。

まもなく正午。

悦に浸って無駄な苦悩。

昨夜の変な自分のことも遠い。

まるで何日も前のことにように思える。

このままではいけない。

何に対していけないのか。

そうだよ、このまま横になっていようよ、いいじゃない。

いいよな、別に。何に対して?

もう一度意識が飛びそうになって、起き上がった。

自分に対して。そういうこと。

山へ行こう。意味は無い。

慌ててシャワーを浴びて、ボサボサ頭にダウンジャケット。

安物のジーンズにスニーカー。

きっとダサい。

誰に会うわけでもない。

かまうもんか。

そうだ。せっかくだからカメラも持っていこう。

お気に入りの一枚を見つけよう。

この街から一時間と少し、電車に揺られて山の麓。

リフトなんかには乗らない。

歩き始めた。

山に登るのははじめてのことだった。

新鮮だ。

特に知識もないが、花や木に目をやり、できるだけ写真に収めた。

しかし、あいにくの曇り空。それくらいは確認しておくべきだったな、と少しの後悔。

さらに、驚くことには、もう日が暮れ始めているではないか。

いや、それはそうだろう。正午まで横になっていたんだ。

驚いている自分に驚かれるだろう。

顔がにやける。

もはや、やばい人。

それでも、登山客が大勢降りてくる中、一人逆向きに歩いていく。

どんどん暗くなり、すれ違う人たちに横目で見られ、随分心細くなった。

それにしても街灯のない道はこんなにも暗いのか、などと妙なことに関心していると、雨がポツリ。

ついに、といったところ。

敢えなく途中で下山することに。

なんだか間の悪い自分がおかしい。

帰りの電車に揺られて、何枚か取れたての写真に目をやる。

空と山。空と木。山道。

写真には撮影者の心が反映されることがあると、どこかで、誰かが言っていたような気がしたがそうかもしれないと思った。

雲がそれを憂鬱色に染めている。

もっと明るい景色だったような。

全体的に妙な閉塞感があり、美しくない。

無駄なため息が一つ増えた。

約一時間電車に揺られて、改札を出るともう外は真っ暗。

日は暮れてしまっていた。







最新の画像もっと見る

コメントを投稿