その音の彼方

いろいろな物語や日々の想いを切り取って言葉にして過ごしています。

夜空に

2011-12-17 | story
ふと思い出した。

あの感情はどこへ?

楽しみに待っていたあの気持ちは?

いつの間にか消えてなくなってしまっていた。こんなこと考えること自体、ナンセンス極まりない。

けれど、ふと思ってしまった。

金曜の夜。コーヒーショップにて。

そうだ、いっそこのままこの「楽しみ」について考える時間に浸ろう。

独りよがりの物事に理由付けはいらない。

誰に報告するわけでもないのだから。

「なぜ?」は決して聞こえてこない。

いや、いずれ自分で問うでしょう。

そして、答えを探しながら、違う問いへ辿り着きます。

至ってシンプルな作りだと僕は思う。

結果、答えというものが、必要なものではないことに気付く。

こうであっても良い、ああであっても良い。

いや、一方では、それであるが、もう一方ではあれでも、など。

もういい。

「時に食われたのではなく、我が時を食い尽くした」

年を取った、もう若くはない、そんな言葉がちらほら。

耳にしたこと、口にしたことあるでしょう。

右に同じ。

それは10代?20代?30代?いやいや60代?

そんなの問題じゃないよって。

いくつになっても同じようにたられば話を繰り返している。

少し過去へのそれも増えたけれど、相変わらず未来へも。

だけれど、同じことを言っているんだよって、つまり、時を食い尽くしただけのこと。

今からしかない。

だから、ノートに計画を立ててみる。

今度こそはと胸に誓う。

何度目?

笑えてくるぞ。

書いている内容はきっと何年も変わっていないでしょ?

それがそのまま答えでよさそうだ。

それでも、書き綴る。

悪くないと思う。

自分の世界観、大事にしたい。

政治に口を出したり、IT社会の劇的な進歩について討論する。

膨大な知識を求める。

何の知識なんだかわからない。

ただそうであろうとし始める。

なんとか政権はだめだと言う。

僕は知らない。

知らなくてよかった。

そんなものに興味はないはずだった。

多くの友人はどうなんだろう。

きっとそうだと思ってた。

だけど、昔からそうだったと口をそろえて言う。

夢ってそんなに難しいものじゃなくて、なりたい自分。

無くしてなんかいない。

僕は真っ当に暮らしている。

くだらない考えを巡らせているうちに、どうやら閉店の時間らしい。

冷え切ったコーヒー飲み干して、椅子に掛けておいたお気に入りのコートきて、外へ。

暖房のよく効いた店内から出たときにはじめに吹いた冷たい風が心地良い。

すーっと、今まで考えていたことを一斉吹き飛ばしてしまう。

数歩歩いて、鼻歌を歌い始めた。

誰かの歌のメロディ?

何度か繰り返し歌っても検討も付かず、パン屋が閉店間際に50%オフの看板を掲げているのを見て

「買って帰ろうか」と思った瞬間、夜風がメロディを攫った。

まさに「あっ」という間の出来事。

今日はまだ外にいたい気分。

とりあえずベンチに腰を下ろす。

近くにはいつもここにいるホームレスさん。

あなたはいつからここへ?

過去には何を?

人物が知りたくなる、悪い癖。

いやなところが見え隠れする。

思考中、彼をぽーっと見ていたらしく、はっと気が付くと、こちらをみて何やら言っている。

静かに席を立ち、それでも気にしていないそぶりをしながら、歩き出した。

もしかしたら贅沢はそのまま無駄と言い換えられてしまうのかもしれないとさえ思い始めた。

「楽しみ」

突然、数時間前の言葉が蘇る。

「時に食われたのではなく、我が時を食い尽くした」

何を言っているんだ。

冷静に振り返ると、おかしくて仕方がなくなった。

思いついた時は、名言とさえ思えたが、夜風にさらされた後の言葉は実に滑稽で味気ない。

おかしくておかしくて、一人声を出して笑った。

そういえば、昔の友人が、世界一周の旅をしているのを思い出した。

今頃どこにいるんだろうか。

残念だ。漠然とスリルがあって、なんだか果てしなくて、そんな浪漫を感じたいのに、

頭の片隅にお金のことが浮かぶ。

現実と戦っている証拠でしょうか。寂しい。

また違う友人を思い出した。もう出会ったのは二十年近く前の話。

小さな事務所。安月給。暮らし。生き様。

自分だけの、誰でもない、自分だけの。

唱えては、結局誰かの真似に見えてきて。

影踏み。誰の?自分の。踏めない。

「楽しみ」

今日三度目の登場。

ひとつ見つけた。

「再会

 新しい出会いではなく

 再会

 それは

 新しい出会い」

やっぱりおかしい。思わず顔が綻ぶ。

変な奴。

夜空


満月?

いや、妙な欠け方をした月を見上げて、自らに問います。





「ところで、結局あなたは何をしているの?」







「夢を見ています。ただそれだけ。」












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