原っぱ夕景

最近いろんな事が妙に懐かしくなった昭和生まれのおっさんの埒もない独り言にお付き合い下さい。

夕陽に融けたスーパーボール

2022-03-02 10:50:00 | 日記

先日ちょっと用があって小さな公園を横切りました。そこで見つけたとある物体。
「ん?プチトマトか…?」
ベンチの脇に赤い球体が転がっています。拾い上げると、それは直径2センチ程のスーパーボールでした。縁日なんかでよく見るスーパーボール掬いでぷかぷか流れてるあのサイズですね。

軽く地面に落とすと、びょ〜んとよく弾みました。それを見て子供の頃のある出来事を思い出しました。今回はそのお話です。

確か小学校の3・4年生位の頃だったと思います。
ある日、親戚のおじさんがうちに来まして、会社の取引先から貰ったというある物をくれました。
「なんかアメリカで流行ってるボールなんだって」
そう言いながら鞄から出してくれたのは、直径5センチ位の青黒いボールでした。
なんか硬いぞ、変なボールだな…そんな事を思いつつも、とりあえずお礼を言って部屋へ戻りました。
部屋でしばらく眺めたり転がしたりしてたのですが、特に面白くもないので机の引き出しに放り込んで遊びに出かけました。
きっと変なボールよりも楽しい事があったんでしょうね、それが何だったかは忘れましたが(笑)

そのボールの事など忘れてかけていたある日の昼休み。校庭の隅っこで友達4・5人と空気の抜けかけたボールで遊んでいた時の事。あ、校庭を広く使えるのは最上級生の6年生だけなんです。だから私たちが使えるのは隅っこだけ。
ちっとも弾まないボールを蹴りながら一人の友達が言いました。
「ねえスーパーボールって知ってる?」
「あ、知ってる!マガジン(少年マガジン)に載ってた」一人が言うと、他のみんなも口々に「ちょっと落としただけで10メートル弾むんだって!」とか「世界記録は100メートルなんだぞ」とか、一体どこからの情報なんだか分からない事を次々に口にします。

私以外の全員がスーパーボールを知っていた事に驚いてしまいましたが、話題になってるスーパーボールとは私がおじさんにもらった件の「アメリカ製のボール」である事は間違いないようでした。
そこでちょっと声をひそめて(なぜ?)「スーパーボール、オレ持ってるよ」と言うと、皆んなに囲まれてしまいました。
「な、な、なに?」驚く私に皆んなは口々に「見せて!」「本当に100メートルも弾むんか?」「嘘ついたら針千本だぞ!」「くれ!」「明日持ってきて!」ちなみにどさくさに紛れて「くれ!」って言ったのは、クラスのリーダー格だったヤツで「けっちょん」と呼ばれてました。
てな訳で次の日学校に持ってくる事になってしまいましたが、さすがに小さなボールとは言え、おもちゃみたいなもんですからね。先生に見つかったら怒られるので学校終わったら公園に集合して、そこでお披露目、という事にしました。

午後4時過ぎ公園に行くと既に全員集合。と言うか人か増えてるし、犬連れてきてるヤツいるし(笑)きっと散歩のついでに来たんだろうな。犬は当時よく飼われてたスピッツでした。白い長毛のきゃんきゃんよく吠えるわんこです。

「あ、やっと来た!遅い遅い!早くスーパーボール見せろ!」と少し食い気味に迫って来るのはリーダー格のけっちょん。
私はポケットからあの青黒いボールを取り出してみんなに見せました。「おー!」「すげー!!」何がすごいのかよく分かりませんが…。

ボールを手にしたけっちょんは最初ボールを指でつついてましたが、おもむろに鼻に近づけて匂いを嗅ぎます。
「なんか変な匂いがする」
けっちょん、それ多分ゴムの匂いだから。

そんなけっちょんを無視して他のメンバー達は「早く遊ぼうぜ!」の大合唱。
私はけっちょんからボールを取り上げて、まず軽く地面にボールを弾ませてみました。
確かにいつも遊んでる白いゴムボールよりかは弾んだように見えましたが、10メートルだ100メートルだと騒いでた割に…全員がいわゆる「思てたんと違う」状態になってました。

そこでけっちょん再び登場。
「いや、もっと強くやんなきゃだめだって」そう言うと私よりも力を入れて地面に叩き付けました。すると本当に10メートル位跳ね上がったのです。
「おおおっ!」沸き起こる歓声。
テンションが上がった私は落ちて来るボールをキャッチし、そのまま渾身の力で、そう本当に力いっぱいボールを固い地面にぶっつけたのです。
みんなもボールの行方を追って一斉に暮れなずむ空を見上げています。

10分後、夕陽に染まる公園に一人残された私。そう、高く高く跳ね上がったスーパーボールはそのままどこかへ飛んで行ってしまったのでした。

mama do you remember…
母さん、僕のあのボール何処へ行ったんでせうね…なんちて(笑)


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