白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ
2012年12月22日~2013年2月24日
Bunkamuraザ・ミュージアム
白隠の禅画は、これまでも展覧会で何点か見たことはあるが、一瞥程度で通り過ぎていた。
Bunkamuraで日本美術の展覧会とは珍しいと思いつつ、「いつか、白隠だけの、思い切り精選した展覧会を実現して、もっと多くの人を、びっくりさせてやりたい」と前々から宣言していた山下裕二氏が監修する、史上初の大々的な展覧会ということで、新たな出会いを期待しての訪問。
会場の入口に立ちふさがるように登場する、約2m×約1mの大作「隻履達磨」にまず驚かされる。
出品数は約100点。
全国の寺院から作品を集めてきている(埼玉、東京、山梨、長野、静岡、愛知、岐阜、京都、島根、山口、愛媛、大分と12都府県)。
また、永青文庫からの出品も多く、白隠のコレクションが充実していることが伺えたが、通期出品はなく、前期後期で展示替えが予定されている。
アクリル板の展示ケースは、作品との距離もごく近く、光の反射もないので、非常に見やすい。
やはり大作に魅かれた。お気に入り作品は次のとおり。
No. 1 隻履達磨(龍嶽寺・長野)
・会場の入口に立ちふさがるように登場する大作。
No.13 地獄極楽変相図(清梵寺・静岡)
・様々な地獄の責め苦の場面。毎年7月の地蔵尊縁日の際、本図が掛けられるとのこと。
No.15 半身達磨(萬壽寺・大分)
・80歳を越えての最晩年の大作。背景は黒。朱色の衣装。「直指人心、見性成仏」。
No.21 半身達磨(永明寺・静岡)
・40歳代の若書きの大作。
No.33 大燈国師(串本応挙芦雪館)
・永青文庫所蔵の恐ろしげな様相より、こちらの愛嬌のある方が好み。
No.53 鍾馗鬼味噌(海禅寺・島根)
・鬼を摺って鬼味噌作りに励む親子。さぞ辛口の味噌になるだろう。
No.60 白澤(大龍寺・岐阜)
・徳の高い為政者の治世に姿を現す聖獣。牛のような体に人面、顎髭を蓄え、顔に3つ、胴体に6つの目。
No.62 涅槃経油鉢喩図(禅叢寺・静岡)
・こぼさぬよう慎重に油を運ぶ。失敗したら処分するため後ろで見張る輩の表情。
白隠は、大量(1万を超えるという)の書画を遺したということは聞いていたが、それだけではない存在のよう。
江戸時代中期の禅僧であり、大量の書画を遺した白隠慧鶴(はくいんえかく)(1685〜1768)。500年に一人の英傑(えいけつ)として讃えられ、現在の臨済宗の僧侶たちの系譜をさかのぼれば、すべて白隠に行き着くほどの重要な存在です。
「画賛に込められた深いメッセージ」を味わう力があれば、もっとよかったのだろうけれども。