桃山 - 天下人の100年
2020年10月6日〜11月29日
東京国立博物館
「桃山文化」を味わいに、前期×2に引き続き、後期訪問。
茶道具、工芸品、刀剣・甲冑などの武具、着物、書、書状、小判などが多数並ぶ(彫刻はない)なか、今回も絵画作品を主に鑑賞する。
大きな屏風作品や襖絵作品が多くて、豪華な布陣。
以下、特に楽しんだコーナー。
1)洛中洛外図コーナー
後期展示は、重文《洛中洛外図屏風(勝興寺本)》(富山・勝興寺)と《洛中洛外図屏風》(個人蔵?)+狩野永徳筆の《洛外名所遊楽図屏風》(個人蔵?)。
重文《洛中洛外図屏風(歴博甲本)》(国立歴史民俗博物館)と国宝《洛中洛外図屏風(上杉家本)》(米沢市上杉博物館)+《聚楽第図屏風》(三井記念美術館)が並んだ前期展示と同様に、人が集まるコーナーとなっている。
制作年代としては、前期展示の洛中洛外図屏風2点が16世紀・室町時代で、後期展示の洛中洛外図屏風2点が17世紀・江戸時代であり、時代を前後期で分けたようである。
これら6点のなかでの一番のお気に入りは、国宝《洛中洛外図屏風(上杉家本)》に描かれた人物たち。次回の鑑賞機会には予習したうえで臨みたい。
2)永徳と等伯の競演
後期展示の狩野永徳の《唐獅子図屏風》(宮内庁三の丸尚蔵館)、長谷川等伯の前期途中から展示の国宝《松林図屏風》(東博)と通期展示の国宝《楓図壁貼付》(京都・智積院)の競演。
《唐獅子図屏風》がでかい。ガラスケースの高さギリギリまである。隣の《松林図屏風》がえらく小さく見える。1年半前に東博の特別5室で見ているが、これほど大きいとは感じなかった。ただ、高さギリギリといっても、ガラスケースの高さ自体には余力があるのだが、他作品(特に隣の《松林図屏風》)とのバランスのためだろう、上部を塞いでギリギリとしているのだけれど。
3)南蛮美術コーナー
重文《泰西王侯騎馬図屏風》(神戸市立博物館)は通期展示。
前期限りで退場した重文《聖フランシスコ・ザビエル像》(神戸市立博物館)の代わりに何が展示されるのかなあと思っていたところ、代わりは無く、その場所のガラスケースは壁で閉じられている。どおりで、前期は隣り合わせ展示の両点の間に不自然な境界が設けられていたわけだ。
後期展示の重文《日本図・世界図屏風》(福井・浄徳寺)は、前期展示の重文《日本図・世界図屏風》(個人蔵?)と同じ図かな。海の色が前期展示の濃い青色に対して、浄徳寺版は水色。制作年代としては、浄徳寺版のほうが先のようである。
後期展示の《南蛮人渡来図屏風》(宮内庁三の丸尚蔵館)は、大きめに描かれた人物たちの行動が興味深い。
通期展示の南蛮人と洋犬の彫りが可愛い《南蛮人洋犬蒔絵硯箱》(神戸市立博物館)、南蛮人や背面には象の透かし彫りがなされた折り畳み式の椅子の重文《南蛮人蒔絵交椅》(京都・瑞光寺)などの工芸品も、やはり良い。
4)桃山前夜-戦国の美
後期展示の狩野元信筆の重文《四季花鳥図》(京都・大仙院)と、後期途中から登場の同じく狩野元信筆の重文《四季花鳥図屏風》(白鶴美術館)。前者は、サントリー美術館での初見以降お気に入り作品であり、嬉しく観る。
5)桃山の成熟-豪壮から瀟洒へ
後期展示の岩佐又兵衛の国宝《洛中洛外図屏風(舟木家本)》(東博)は、人が集う人気作品。単眼鏡で鑑賞する人も多く、私も少し参戦する。他の「洛中洛外図屏風」と比べ、人物が小さく画面も暗めで見づらい感。私の単眼鏡はかなり以前のものなので、新しく購入しようかなあ。
関東大震災で右隻中央を失った狩野長信の国宝《花下遊楽図屏風》(東博)は、通期展示。大きめに描かれる人物たちの表情・仕草が実に好ましく、今回も楽しく観る。
《遊楽人物図屏風》(個人蔵?)は、前期途中からの展示。後姿の白の衣装の女性像に、これって見たことあるかな、2019年のサントリー美術館「遊びの流儀」展に出品されていたかな、と思いつつ解説を見ると、「第二次世界大戦前には知られていたが、長らく所在不明で、今回再発見」とのこと。後姿の女性、座ってあるいは横になって楽器を奏でる2人の女性、踊る女性たち。惹かれる。
烏丸光広筆の《田舎絵巻》(東博)は、所せましと文字が書き連られられる合間に、農夫たちの農作業姿や田舎の風景がゆるかわタッチで描かれる。この作品は初見。今度総合文化展で展示されるときには撮影しにいきたい。
今回は週末午後の訪問。
その時間帯の日時指定入場券は、当日の直前でも入手可能であったが、残り枚数は前期訪問時より少なめ。しかし、展示室内の混雑具合は前期と変わらない印象で、人の集まる洛中洛外図屏風3点は別として、じっくりと鑑賞できた(90分以内の鑑賞・滞在が推奨されているけど)。
この時期にこれだけの規模の展覧会を開催してくれた東京国立博物館と関係者および作品を貸し出してくれた所蔵者の方々に感謝である。